魔法少女の仮面の下にあった顔はなんと魔坂先生だった。
えぇぇぇ……明らかに魔法少女の時のテンションと俺とぶつかったときのあのあたふたしていたテンションとじゃ180度種類が違うし、喋り方もあんなにハキハキシテなかったのに。
確かにデッキコンセプトは一致していたけどさ……。
「あ……あ……」
「お、落ち着いてください。お、俺は怪しいものじゃないんです。許可証もあるし、
今日は先生に会いに来たと言いますか」
そう言いながら許可証を見せるが先生は顔色一つ変えずに固まったまま俺の方をずっと見ていたが、急に何か思ったのか落ちた仮面を取り、俺の端を通り過ぎてクローゼットから洋服一式を取り出し、
そのままシャワールームへと入ってしまった。
…………この状況、俺どうすればいいんだ。
その時、ガチャッとシャワールームのドアノブが回ったかと思えば扉が開いていつもの服装に戻った魔坂先生が眼鏡をかけた状態で俺と目を合わせないように下を向きながらベッドまで歩いていき、
力をなくしたかのようにベッドにボフッと座り込んだ。
「あ、あの先生」
「は、はいぃ!」
この人極度の対人恐怖症だな。仮面をつければリミッター解除されるみたいな。
「レッド所属の高槻です」
「は、はいぃ。名前くらいは……この前のトーナメントで」
先生はスカートの裾をギュッと握って俺と目を合わせないでそう言った。
「……俺、今度の選挙で先生に投票しようと思ってるんです」
「そ、そ、それだけは勘弁を!」
俺がそう言うと先程までのどんよりした雰囲気はどこへ行ったのか一気に明るい……というか爆発したかのように俺に飛びついてきて目に涙を浮かべてそう言ってきた。
ど、どうしたんだ一体。
「と、とりあえず落ち着いてください」
「こ、これが落ち着いてられますか! わ、わ、私があん、あんな人が大勢いる場所の真ん中なんて! 考えるだけでも鳥肌物です!
い、今すぐその投票資格を破棄するか投票先を変えなさい!」
「しょ、職権乱用だ! と、とりあえず俺の話を!」
「ふしゅー! ふしゅ…………あわわわ! ご、ごめんなさぃぃ!」
今にも突撃してきそうな闘牛のように荒い鼻息をあげる先生だけど自分の状況にやっと気づいたのか突然、誤りだしたかと思えば布団の中に潜ってしまった。
なんかもう対人恐怖症というか情緒不安定な人としか思えなくなってきた。
でも…………ますます、この人を応援したくなってきた。あの後攻1ターンキルを見た時からずっと、この人は強いって思ってたし。
「先生! 俺はあなたに投票します!」
「うぅぅぅ。何故ですかぁ。私なんかが行ってもどうにもならないですよ」
「そんなことないですよ。だって先生強いじゃないですか」
「……とりあえず今日のとこは帰ってください」
「……はい。分かりました」
先生の言葉通り、俺は教員棟から出てレッド寮へと歩きながら帰っていた。
あの状態で先生をいくらほめ倒しても逆に先生を追い詰めるだけだろうし、まずあの極度の対人恐怖症をどうにかしないと大勢の目がある前でデュエル出来ないよな。
やっぱりこのデュエルアカデミアにはちょっとひねった人が多い……こんな時間に何してんだあいつら。
向こうの方で青いコートを着た奴が一人と男と女の一組から何やらカードらしきものを受け取っている場面が広がっているのが見えた。
「何やってんだ? こんな時間に」
「お、お前は……ちょうどいい……あの時の借り! 今ここで返してやるよ!
俺とデュエルしろ!」
「……馬鹿が」
「あ、ちょっとあんた!」
ブルー寮の制服を着た奴がディスクを腕に装着して展開すると同時に男と女の一組は軽蔑の眼差しでブルー寮の制服の男を睨み付けるとそのままスタスタと歩き始めてしまい、その後を追いかけようとするが目の前に血走った眼をした男が立ちはだかった。
……あんな奴いたっけ……。
「デュエル!」
「あぁもう! デュエル!」
『LP4000vs4000』
「先行は俺から行かせてもらうぜ! ドロー! 魔法カード・手札抹殺を発動!」
いきなり全部の手札を交換かよ……ちぇっ。せっかく手札にシルバーウルフがいて、
しかもシルバーナイトまでいたっていうのによ。
俺は文句をたらたら言いながらも効果の処理を行い、全ての手札を墓地へ送ってその枚数分、デッキからカードをドローした。
「そしてこの瞬間! 暗黒界の武神・ゴルドと暗黒界の尖兵・ベージの効果が発動し、
墓地から特殊召喚される! 甦れ! 暗黒界たちよ!」
『ゴルドATK 2300』
『ベージATK 1600』
相手の墓地ゾーンからカードが二枚戻され、相手が二枚のカードをディスクにセットすると、黄金の色をして巨大な鉾のようなものを持ったモンスターと槍を持ったモンスターが出現した。
先行1ターン目でまさかのいきなり大型モンスターを出現か。それに暗黒界デッキ……面倒くさいな。
手札から捨てられたら墓地から特殊召喚されたり、他にも様々な効果が発動する。
「さらに俺は2体のモンスターを生贄に捧げて暗黒界の龍神・グラファを召喚!」
っっ! いきなり暗黒界のエースモンスター召喚かよっ!
「俺はこれでターンエンドだ。さあ、かかって来いよ! クズ野郎!」
……前にこの人とデュエルした時、この人こんなに言葉が悪かったか?
「俺のターン! ドロー!」
手札にあるのは連鎖変換、チェーンブラスト、シルバーディフェンダー、ナイト、
あとは細々としたカードか……いきなりエースモンスターの召喚には驚いたけど、
こっちだってやってやるよ! エースモンスターの召喚をよ!
「相手にのみモンスターが存在することにより、連鎖―シルバーナイトを特殊召喚!」
『ATK 2000』
「さらに俺は魔法カード・死者蘇生を発動! 墓地のシルバーウルフを特殊召喚!」
『ATK 1900』
よし、これで連鎖変換の発動条件は整った!
「そして俺は1枚カードを伏せて、ターンエンドだ」
「俺のターン! ドロー!」
さて、どんな手でくるんだ?
「……くくくくっく! 来たよ。来たよ来たよ! このカードがぁぁぁぁ!」
「っっ! あれはっ!」
突然、相手が大きく笑い始め、カードを空に向かってあげたかと思うとカードから紫色の輝きが放たれ、辺りの真っ暗な景色を紫色に染め上げた。
輝いているカードをよく見てみるとそのカードからは膨大な量の闇があふれ出ていた。
あ、あのカードはまさか闇のカード!
「おい! そのカードを使ったらお前だってただじゃすまないぞ!」
「んなこと知るかよぉぉぉ! お前さえ倒せれば良いんだからなぁぁぁ!
俺は手札より魔法カード・ダークエボリューションを発動!」
相手がディスクにそのカードを読み込ませた瞬間、ディスクからも膨大な闇があふれ出て、ディスクからあふれ出た闇が地面を伝わって召喚されたグラファに流れ始めるとその闇がグラファを包み込まんと周囲を旋回し始めた。
「このカードは自分フィールド上に存在するモンスターをダーク化させるカード!
俺はグラファを生贄に捧げて暗黒界の龍魔神・ダークグラファをデッキより特殊召喚する! 目の前のクズを血祭りにあげてしまえ!」
グラファを闇が包み込み、天に向かってその闇が伸びたかと思えば周囲に凄まじい爆風が放たれ、辺りに生えている木々をなぎ倒していく。
な、なんだこの力は……こんな闇の力初めて感じる!
【気を付けて! この力は……本当に危険よ】
あぁ、わかってるさ。
「ハハハハハハハハッハハハハハハ! これが究極に最恐のモンスターだ!」
『ATK 3000 DEF 2500』
こ、これが暗黒界の龍魔神・ダークグラファ。
俺の目の前に降り立ったモンスターは筋骨隆々とした姿に頭からは二本の黒い角が生え、さらにその両手首にはリングのようなものがはめられており、大きな鉾のようなものを背負っている。
「バトル! ダークグラファでシルバーウルフを攻撃!」
宣言の直後、グラファがその筋骨隆々とした腕を振り上げた。
「速攻魔法発動! 連鎖変換! フィールドの2体の連鎖モンスターを墓地へ送り、
そのレベルの合計と同じモンスターを一体、デッキより特殊召喚する!
シルバーナイトとディフェンダーのレベルの合計は8! よってレベル8を特殊召喚する!来い! 連鎖邪龍ーチェイン・カオス・ドラゴン!」
「ちっ。バトルステップの巻き戻しが発生し、攻撃を中断する。ターンエンドだ」
危ねぇ……あんな力を持っているカードに攻撃されたら闇のデュエルどころか物理的なダメージを受けてたかもしれないな……にしてもあのカードはいったい。
「俺のターン! ドロー!」
相手には悪いけどこのデュエルはさっさと終了してあのカードを破棄してやる!
「チェイン・カオスのモンスター効果発動! デッキから10枚の連鎖モンスターを墓地へ送り、このターンの間だけチェーン数を10にする! さらに墓地へ送ったシルバーベビーの効果発動! デッキから墓地へ送られたことでフィールドに特殊召喚!」
墓地ゾーンから2枚のベビーのカードがもどされ、そのカードをディスクにセットすると、赤い服を着ておしゃぶりを加えているモンスターが2体、フィールドに出現した。
「そして2体の連鎖モンスターを墓地へ送る!」
直後、デュエルディスクのエクストラデッキから眩い輝きが放たれ始めた。
「光が世界を希望で包みこむとき、光を従える龍が光臨する! 全てを希望の光で包みこめ! 光臨せよ! 連鎖光龍―チェイン・ホーリー・ドラゴン!」
エクストラデッキから1枚のカードを取り出し、ディスクにセットするとカードから眩い輝きが放たれると同時に俺の目の前に光があふれ始め、その光の中から光輝く龍が現れた。
「な、なんだこの輝きは」
「チェイン・ホーリーのモンスター効果! 墓地に存在する連鎖モンスターを任意の枚数除外することで除外した枚数分だけバトルフェイズ中のみ自身の攻撃力を×300上げ、相手の攻撃力を下げる! 俺が除外するのは5枚!
よって1500ポイントの上昇・減少が行われる!」
チェイン・ホーリーから眩い光が放たれたかと思えばグラファを覆っていた膨大な量の闇が浄化されるように消滅していき、相手のディスクからも闇が消えていく。
「バトル! この瞬間、チェイン・ホーリーの攻撃力は4000、グラファは1500に変化! チェイン・カオスでグラファを攻撃! カオス・バースト!」
「うああぁぁ!」
チェイン・カオスの口が大きく開かれ、ぎゅうぎゅうに体に巻き付いていた鎖が解き放たれて地面に突き刺さって自身の体を固定するとともに大きく開いた口に闇が集まっていき、それが放たれると一瞬にして相手のグラファを消滅させた。
「止めだ! チェイン・ホーリーでダイレクトアタック! ホーリー・バースト!」
「ぎゃぁぁぁぁ!」
チェイン・ホーリーの口から放たれた眩い輝きを放つ光線が相手に直撃すると相手の周辺にまきちらされていた闇はすべて光線の輝きに充てられてか消滅し、カードからの闇も消滅した。
「おい! 大丈夫か!」
倒れた奴のもとへ駆け寄るとバラバラに散らばっているカードの中から先程使われた闇のカードを手に取った瞬間、突然、カードの絵柄が消滅し、テキストから文字がすべて消えてしまった。
なっ……絵柄も文字も全部消えちまった。
「う、う~ん……あれ? 僕はいったい」
……記憶もなくなっているのか。
書き溜めてました