罠カード。
戦闘で連鎖モンスターが破壊された時、デッキ・手札からレベル4以下の連鎖と名の付くモンスターを特殊召喚する。
「えっと、確かダークエボリューションだったよな」
謎の闇のカードとの対決の翌日の昼休み、俺はアカデミアにあるデュエルモンスターズの歴史がまとめられている部屋でカード検索を行っていた。
ここ、デュエルアカデミアでデュエルモンスターズを学ぶと言う事もあって膨大な数のカードのデータがここには収められているし、新発売されたパックのカードの情報はもちろんのこと、アニバーサリーとして発売されたカードも収められている。
昨日の暗黒界デッキの人は一応、保健室にはいかせたんだけど特に外傷はないって先生が言っていたし、肝心なことを本人が忘れていた。
「やっぱり出ないか」
1分ほど待ち、画面に検索結果が出されるの止まってみたが画面にカードが映し出されることはなく、
ただ単にそのようなカードは存在しませんという趣旨の文が表示されるだけだった。
そうだよな……だって、モンスターをダーク化させるなんて効果を持ったものなんてあの時に初めて聞いたくらいだし、進化させるカードはいくつかあるけどどれもLv関係だったりするし。
それにあの二人組の奴らも気になる……俺が来たとたんにどっかに消えたし、あの魔坂先生とデュエルした奴も恐らく闇のカードを使おうとしていたし……でも、あいつはセットしてたよな。
つまり、闇のカードは一枚だけじゃない。
「考えても仕方ないな。今は魔坂先生の件を片付けねえと」
検索システムをスタート画面まで戻してから職員室へと向かって歩き始めた。
最強教員決定選挙まであと2日……それまでになんとかして魔坂先生を説得して選挙に出てもらわないと……思っていたんだけどよくよく考えたら出るか、出ないかの判断は先生だよなってことに気づいた。
でも、一つだけ確かめておきたいことがある。
「失礼します。魔坂先生いらっしゃいますか?」
「魔坂先生なら先に向こうに行っているぞ」
「ミシェル先生」
職員室に入り、そう声を上げた時に後ろから声をかけられて振り返ってみると俺の後ろに多くのプリントの束などを持った先生が立っていた。
「一人でですか?」
「静かな場所が好きなのさ。前に人と1週間フルに出会っているとストレスで倒れたんだ。それ以来、校長許可のもと休みが週3日になった。明日から3連休だよ」
なんだ。案外、ここの学校って教員のこと考えてんじゃん……それと同じように俺たち生徒のことも考えてほしいもんだけどな。
「ちょうどいい。高槻、手伝え」
「え~」
「女性にこんな重い物を持たせるのか?」
「え、だって……持ちます」
一瞬、片腕で持ってるから楽でしょって言いかけたけどこれを言ったら実技の授業でぼこぼこにされそうだからどうにかして止め、先生が持っていた大きな書類の束を受け取った。
「どうせ次の授業は私担当の実技だ。一緒に来て損はなかろう」
「はぁ……魔坂先生ってどんな人なんですか?」
「一言で言えば引きこもりだな」
またズバッと言いますね。同僚相手に。
「が、ただの引きこもりじゃない。お前と似たようなタイプだ」
「俺とですか?」
「デュエルが好きで好きでたまらない。彼女は卒業してプロになった……が、想像していた華やかな舞台とは大きくかけ離れていたみたいでな。数か月でこっちに戻ってきた」
「と言いますと?」
「……一時期、プロリーグが汚職まみれになった時期を知っているか?」
今から大体3年ほど前、プロリーグでは汚職が蔓延していたらしい。
所謂、八百長……そんなものがプロリーグに蔓延していて盛り上がるはずの優勝決定戦なんかも観客は白熱したデュエルを求めているのにやっている本人たちからすればただの出来レース。
今は摘発されたり制度自体を大きく改革したりして汚職は目には付きにくくなっている。
「その時期に彼女は入ってしまったんだ。プロに……そこで彼女は現実に打ちのめされ、
人と会うことを極端に恐れるようになってしまったんだ」
「……」
だからあの人は魔法少女の格好をすることで他人からは見えなくしてアカデミアを一時期のプロリーグのような悪意が蔓延するのを防ぐためにあんなことをしていたのか。
…………なんか余計に俺がやっていることが間違っているような気がするな。
「お前が何をしようとしているのかは知らんが……人のトラウマをあんまり刺激しないようにな」
「……はい」
授業場所であるアリーナに到着すると既にクラスの皆が集まっていた。
「では、これより実技授業を行う。なお、今回に限ってだが担当教員は2人だ。
いつものクラス分けではできないので出席番号の奇数番を私が、偶数番を魔坂先生が担当する」
先生がそう言うといつものように下を俯いたままの魔坂先生がミシェル先生の隣に立った。
俺は奇数番だからミシェル先生か……。
「では授業を行う」
その合図とともに二組のグループに分かれて授業が開始された。
授業は何の問題もなく順調に進んでいき、今日やるべきカリキュラムが終わったのは授業終了のチャイムを告げる15分前のことだった。
「15分余ったか……魔坂先生。どうされます」
「ひぇっ! い、いえミシェル先生にお任せします」
「ふむ……」
ミシェル先生が腕を組み、少し考えると何か良いことでも思いついたのか俺の方を見てきた。
……嫌な予感がするような気が。
「だったら教師対生徒のデュエルでもやるか」
先生がそう言った瞬間、周囲の奴らのテンションが少し下がった気がした。
そりゃ、そうだよな……でも、これってチャンスじゃねえか? 魔坂先生とデュエル出来る最初で最後のチャンスだよな……よし。
「高槻。魔坂先生とデュエルをしろ」
「え!?」
俺が手を上げようとした時にミシェル先生に言われ、俺は嬉しかったんだが魔坂先生はミシェル先生がやると思っていたのか自分の名前を言われて辺りに響くくらいに大きく驚嘆の声を上げた。
「ミ、ミシェル先生! せ、先生がやれば」
「私は以前やったのでな。一度やった相手よりもまだやったことがない相手の方がいい。
まあ、無理強いはしないができればやってほしい」
「うぅぅ……分かりました」
魔坂先生が承諾するとともにミシェル先生が待機していた他の連中たちを俺たちから少し離れるように指示を飛ばし、俺たちはアリーナ中央にあるデュエルフィールドに対面して立った。
このデュエルで先生が選挙に出てくれればいいんだけど……まあ、そんなことは後回しにして今は先生とのデュエル出来るのを楽しみますか!
「じゃあ、先生準備は良いですか?」
「は、はいぃ」
「デュエル!」
『LP 4000vs4000』
「先行は俺から! ドロー! 連鎖―シルバー・ディフェンダーを守備表示で召喚!
そんでカードを2枚伏せてターンエンド!」
「わ、私のターン。ドロー」
先生はしきりに周囲をキョロキョロ見渡しながらデッキからカードを1枚ドローし、
それを手札に加えて手札で顔を隠すようにしながら考え始めた。
俺たちの周囲にいる観客は一クラスの人数なのにここまでオドオドしてしまうのか……やっぱ、俺が思ってたことは本人にとってはかなり苦痛だったんだな。
「先生」
「は、はいぃ!?」
「この前言ったこと、忘れてください」
「……?」
「選挙に出てくれってことです……このデュエルは普通に楽しみましょう!」
一応、笑顔を浮かべていってみたけど先生はキョトンとした顔を浮かべたまま固まるがすぐにその顔を手札で隠し、一枚のカードを手に取った。
「わ、私は魔導騎士・ディフェンダーを守備表示で召喚します」
『ATK1600 DEF2000』
魔導騎士・ディフェンダー……確か召喚時にあのカード自身にカウンターを一つ乗せて魔法使い族が破壊される代わりにフィールド上のカウンターを取り除く効果を与えるんだったっけ……これであいつがいる限り、魔法使い族は破壊耐性が付いたわけだ。
「カ、カードを一枚伏せてターンエンドです」
「俺のターン! ドロー!」
強欲な壺か……ここは一気にドローしますか。
「俺は強欲な壺を発動し、 カードを2枚ドロー!」
デッキの上から2枚のカードを引き、それらを見てみると連鎖爆撃ともう一体のシルバーディフェンダー。
連鎖爆撃か……魔法使い族って結構、特殊召喚してくるからな。
とりあえずは手札に置いておくか。
「俺はカードを1枚伏せ、ディフェンダーを守備表示で召喚しターンエンド!」
「私のターン。ドロー……私は手札を1枚墓地へ送り、The・トリッキーを特殊召喚」
トリッキーか……てことはあのリバースカードはもしかすると。
「さらに私はトリッキーにワンダー・ワンドを装備します」
『トリッキーATK2000⇒2500』
確かあのカードは装備した魔法使い族モンスターの攻撃力を500上昇させると同時に装備モンスターと装備カードを墓地へ送ったときに、カードを2枚ドローできる効果のはず……恐らくあのリバースカードはディメンションマジック。カードを2枚もドローされたら最上級モンスターが召喚されちまう。
「わ、私はトリッキーで君のモンスターを攻撃」
「くっ!」
トリッキーがこちらへ腕を向けたと同時に相手の手のひらから魔力のようなものがレーザーの様に放たれ、ディフェンダーを貫通し、一瞬で破壊した。
「罠発動! 連鎖の共鳴! 自分の連鎖モンスターが戦闘で破壊された時、デッキ・手札からレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚することができる! 来い!
連鎖――――シルバー・ガンマン!」
『ATK;1500』
デッキからカードが1枚、射出されてそのカードを受け取ってディスクにセットすると俺の目の前に銀色のスコープがついた長い銃を持ったモンスターが現れた。
「ワ、ワンダー・ワンドの効果でこのモンスターと装備カードを墓地へ送ってカードを2枚ドロー。これで私はターンエンドします」
「俺のターン! ドロー!」
今の俺の手札の枚数は4枚……先生の墓地にはトリッキーが存在するし、あの手札の枚数ならディメンションマジックが存在してもおかしくはない……それにまだエースカードは来ていないし……ここはチェーン数を一気に貯めると同時にドロー加速しますか。
幸運にも積みあがる幸福が2枚来てるわけだし。
「俺は4枚のカードを伏せてターンエンド」
「よ、よく伏せますね。私のターン、ドロー……手札から速攻魔法」
っっ! 来る!
「ディメンションマジックを発動します。ディフェンダーを墓地へ送り、
時花の魔女ーフルール・ド・ソルシエールを特殊召喚し、貴方のシルバー・ガンマンを破壊します」
「俺もそのカードにチェーンしてチェーンブラスト、モンスターブロック、
積みあがる幸福を2枚発動! 積みあがる幸福の2枚の効果で合計で4枚ドローし、
先生に500のダメージを与え、モンスターブロックによりこのターン、
モンスターは戦闘では破壊されない!」
シルバー・ガンマンの頭上に時空のゆがみのように大きな穴が開くとそこにシルバー・ガンマンが吸い込まれ、墓地へ送られたと同時に相手のフィールドに光が発せられたかと思うとその輝きの中から、女性型のモンスターが出現した。
「と、時花の魔女-フルール・ド・ソルシエールの効果を発動します。
貴方の墓地に眠るシルバー・ディフェンダーを私の場に特殊召喚します」
「う、うそぉ!?」
俺のディスクの墓地ゾーンが輝いたかと思えばディフェンダーのカードが勢いよく射出されて、先生の手の中に納まり、セットされると相手の場に特殊召喚された。
「さ、さらに私はおろかな埋葬を発動し、デッキから昇霊術師・ジョウゲンを墓地へ送ります。そ、そして墓地の闇属性・光属性をそれぞれ除外し、カオス・ソーサラーを特殊召喚します!」
っっ! やっぱり、先生もエースカードを出せた時は嬉しそうなんだな。
フィールドにエースモンスターであるカオス・ソーサラーを特殊召喚したときの先生の表情は今までに見たことがないくらいに輝いていた。
「カオス・ソーサラーの効果を発動します! 君のモンスターを除外し!」
カオス・ソーサラーから漆黒のオーラが放たれ、俺のモンスターに直撃するや否や、
俺のモンスターが闇色に輝き始め、そのまま消失してしまった。
⒈ターンに1度、ほぼノーコストで相手のモンスターを除外する魔法使い族の中でも、
上位にはいるモンスター……ほんとここの教師陣はいくつ切り札を忍ばせてるんだか。
「時花の魔女ーフルール・ド・ソルシエールでダイレクトアタック!」
「ぐぁぉぉ!」
相手のモンスターが腕を払うと凍てつくほどの冷気が俺に直撃し、一気にライフを減少させた。
『LP1100vs3500』
「冷てぇ~。やっぱ、先生強いっすね」
「もちろんです! これでも私は元…………うぅ、一枚伏せてターンエンドです」
いい具合に元気になったのに周りの状況を思い出したのかまた元に戻ってしまった。
「謝る必要はないですよ、先生」
「え?」
「先生がどんな嫌なことを経験してきたか、俺には分からないですけど少なくともこのデュエルアカデミアでそんな嫌な経験をすることはないですよ! それに俺、先生とデュエルしてるとドキドキしてくるんです!」
「ド、ドキドキですか?」
「ええ。こんな大型上級モンスターをあっという間に出してきた先生。
対してフィールドには何もない俺。ここからどうやって逆転するのか、
どうやって先生は逆転を阻止するのか。想像しただけでニヤニヤしますよ!
見ててください! 先生! 俺の逆転の様を! 俺のターン! ドロー!」
久々にクウガ見直してます。
今思うとですがドラマ重視で戦闘シーンは結構少なかったんですね。