1回戦は全く知らない先生同士のデュエルだったけどやっぱり、流石はデュエルアカデミア。
実技を担当する先生はみんな実力が高いし、デッキの構築の仕方も上手い。
初戦はアンデットデッキの先生と水属性で固めたデッキの先生とのデュエルだったけど、
アンデットワールドを発動されたせいで墓地からの特殊召喚をメインにしていた水属性のデッキは完全に封殺されて、ほとんどボコボコ劇で幕を閉じた。
そして次の対戦相手はというと
『ではこれより、用務員さんvs有坂先生のデュエルを開始いたします』
ようやく待ちに待った用務員のおっちゃんのデュエルが始まった。
さて、今回はどんなデュエルを見せてくれるのかな~。
『わしから行かせてもらうぞ。ドロー! サイバー・ドラゴン・ツヴァイを攻撃表示で召喚し、カードを2枚伏せてターンエンドじゃ』
『俺のターン! ドロー! 俺は王立魔法図書館を守備表示で召喚!
さらにミストボディを装備! モンスター効果により、カウンターを1つ乗せてさらに打ち出の小槌を発動し、4枚のすべてのカードをデッキに戻し、シャッフル!
その後、新たにドロー!』
王立魔法図書館を出したと言う事は有坂先生のデッキは俗にいう図書館エクゾって呼ばれている奴か。王立魔法図書館を召喚し、デッキに投入した大量の魔法カードを使ってカウンターを溜め、3つ取り除いてカードをドローし、エクゾディアパーツを揃える。
サイバーデッキと図書館エクゾ……優劣の差にはないけどサイバーデッキは圧倒的な攻撃力を⒈ターンで余裕で出せるからな。サイバーエンドなんか貫通ダメージだし。
『二重召喚を発動し、もう1体の王立魔法図書館を召喚! さらに強欲な壺を発動!
デッキからカードを2枚ドローし、カウンターが1つずつ乗る! 永続魔法・レベル制限B地区発動! これにレベル4以上のモンスターは守備表示となる! さらに先に出した王立魔法図書館の効果を使い、カウンターを取り除いてドロー! ターンエンド』
『わしのターンじゃ。ドロー』
完璧なロックを仕掛けてくる気だな……あとは無限の手札が来たら準備は万端だけど……あのおっちゃんの顔を見るからしてもしかしたらもうこのデュエルは終わるかもな。
モニターに映し出されている用務員のおっちゃんの表情はどこかうれしそうだった。
『サイバー・ドラゴン・ツヴァイの効果発動! 手札の魔法カードを見せることで、
このターンの間、サイバー・ドラゴンとして扱う!』
そう言い、おっちゃんが相手に見せた魔法カードがモニターにアップされたのをよく見ると字が小さくてよく見えなかったけど絵でなんとなくわかった……エヴォリューション・バーストだ。
『魔法カード・エヴォリューション・バーストを発動! お主の永続魔法を破壊じゃ!』
直後、サイバー・ドラゴン扱いになっているツヴァイの口が大きく開き、そこに光が集まっていき、ツヴァイがその輝きをレーザーとして口から放つと永続魔法を貫き、一瞬で破壊した。
『そして……パワーボンドを発動! サイバー・ドラゴン扱いになっているツヴァイと手札のサイバー・ドラゴン一体を融合し、サイバー・ツイン・ドラゴンを融合召喚!』
フィールドにサイバー・ドラゴンが出現し、ツヴァイと光を発しながら一つの存在へと進化すると、逆巻く光の渦から2体のサイバー・ドラゴンが1つの体を共有しているような姿をしているモンスターが出現し、大きく咆哮を上げた。
すげぇ……やっぱ、おっちゃんは本物のサイバーデッキ使いだ!
『パワーボンドの効果により、攻撃力は倍加され、さらにツインは2度、攻撃ができる。さらに装備魔法・ビッグバンシュートを装備し、貫通ダメージじゃ。行け!
サイバー・ツイン・ドラゴン! 王立魔法図書館を攻撃じゃ!』
『うわぁぁぁぁぁぁ!』
2本の首から光り輝くレーザーが2本、放たれるとミストボディを装備している方に直撃し、先生のライフを1度大きく削った後、さらに2本のレーザーが追加で放たれ、
王立魔法図書館に直撃すると有坂先生のライフを削り切った。
『勝者! 用務員のおじさん!』
MC役のお姉さんがそう言ったときに、俺はふと思った。
誰も用務員のおじさんの本名知らねえのかな。
「やっぱり、用務員のおじさん強いな~。ワンショットキルか」
「あの程度、出来て当然だよ。ま、僕なら後攻1ターンキルをするけどね」
自身に満ち溢れた表情でそう言うアイドさんを周りの取巻たちは尊敬の念を含めた目で見ていた。
咲さんと違ってこの人は自身を全身から出してるな……まあ、それだけ強いってことをこの前のトーナメントで見せつけられたからあってるんだけどさ。
ちなみの俺のデッキでやろうと思えば初手の手札でベビーマジシャンが来れば一応、
1ショットキルはできそうだだけど1ターンキルはできそうにないな。
『では次のデュエルを行います。開始まで少しお待ちください』
「おい、これで僕と彼の飲み物を買って来い」
「あ、大丈夫っすよ。俺買ってきます」
アイドさんが付き人にそう言ったのが聞こえ、俺は慌ててポケットから財布を取り出して、
立ち上がり、速足でアリーナから出ると一直線に自販機がある場所へと急いだ。
ふぅ……やっぱり俺、なんかアイドさん好きになれないな。
100円玉と50円玉を自販機に入れ、炭酸飲料のボタンを押すとガチャン! という音とともに取り出し口に炭酸飲料が入った缶が落ちて、それを取ろうと屈んだ時に視界の端に青色のスカートと足が見え、
顔だけをそちらへ向けると俺の方をじっと見ている今泉さんが立っていた。
「どうかしたんですか?」
「……予定が変わったわ。少しついてきてちょうだい」
そう言うと今泉さんは缶を取り、空いている手で俺の手を握るとそのままスタスタと歩き始めた。
ど、どうしたんだ?
「ていうよりも俺、まだ見たいデュエルが」
「うちの子に録画を頼んでいるからそれで我慢してちょうだい」
そう話す今泉さんの口調はいつもの落ち着いた雰囲気じゃなくてどこか焦っているというか、
そんな感じでいつもよりも早く喋っているように感じた。
話し方にまで影響が出るくらいの出来事って何なんだ。
そんなことを考えているうちにエレベーターに乗り込み、咲さんが最上階のボタンを押すと同時に、
扉が閉まり、そのままエレベーターは静かに上がり始めた。
アカデミアの最上階って何かあったっけ?
「着いたわ。さ、早く乗ってちょうだい」
エレベーターの扉が開いてそう言われた先にあるのは一機のヘリだった。
「な、なんでヘリなんですか?」
「良いから。飛んでちょうだい」
俺を押し込みながら咲さんも乗り込み、扉を閉めてパイロットにそう言うと、
徐々にプロペラが回る音が聞こえてきてやがて、ヘリの機体が浮かび上がり、飛び始めた。
…………何で俺はヘリコプターに乗ってるんだろうか。
「あ、あの咲さん。何故にヘリ?」
「……母から電話があってね。父が海外から帰ってきたらしいのよ……海外で見つけた婚約者を連れてね。
本来ならまだ2日は帰ってこないはずなのに」
はは~ん。要するに咲さんのおやじさんが予定よりも早くに帰ってきたから予定を繰り上げて、
俺をお父さんに見せに行くと…………それって俺、ヤバいってことじゃん。
一応、デッキとディスクは持ってるけど……まあ、デュエルをして片付くような話じゃないよな。
「ところで咲さんのお父さんってどんな仕事を」
「……カード作成会社のNO.2とだけ言っておくわ」
…………や、やっぱりアカデミアの金持のボンボンは次元が違うな~。俺なんて奨学金で来てるのに。
「あ、あの俺は何をすれば」
「何もしなくていいわ。私の隣にいてくれればいいわ」
「そ、そうですか…………だ、だったら着くまでデュエル……しないですね。すみません」
雰囲気を変えようとデッキを取り出しながらそう言うがギロリと咲さんに睨まれてしまい、俺は謝りながら取り出したデッキをポケットに戻し、黙りこくった。
こ、この人ってアカデミアにいるから仕方なくデュエルしてるんだな……こりゃ、相当デュエルモンスターズが嫌いでアカデミアに嫌々来てるっていうのも間違ってないな。
会話を成り立たせようにも咲さんと会話ができそうな話題が全く見当たらないので機内は外から聞こえてくるプロペラの動作音と通信らしきものが聞こえるだけだった。
はぁ……先生たちのデュエル見たかったな。
「着いたわ」
そう言われ、窓から下の景色を見てみると広大な土地にどでかい家らしい建物が立っており、その周辺には大小さまざまな建物が立っていた。
…………典型的なお金持ち所有のマンションって気がする。
ヘリが着陸し、咲さんが降りた方向のドアから降りるとメイド服を着た若い女性が一人、お辞儀をしながら立っていた。
「お帰りなさいませ、咲様。ご主人がお待ちです」
そう言うメイドを無視してツカツカと歩いていく後ろを俺も追いかけていくけど後ろから見ると、どこかいつもの落ち着いた雰囲気はどこにもなく、歩幅も結構大きくなっていた。
そんなに焦ってるなんて…………。
そう考えながら着いていくと大きな扉の前で立ち止まり、咲さんがその扉を軽く押すと後は自動的に扉が開き、目の前に玄関らしき広い空間が現れた。
…………いや、玄関広すぎね?
靴を脱ぎ、用意されていたスリッパを履いて階段を上り、曲がり角を一度曲がってからまっすぐ伸びている廊下を少し歩くと社長室と書かれてプレートがある扉の前で咲さんが立ち止った。
「貴方は何も喋らなくていいから」
「は、はい」
そう念を押すと咲さんはドアノブをもってドアを引くと広い部屋に一人のおじさんと呼べる風貌の男性が椅子に座って机の上で何か書類を見ており、その近くに置かれているソファには金髪の男性が座っていた。
「ただいま帰りました」
「遅いぞ。私が呼んだときはすぐに来いと言ったはずだ。座れ……隣にいる男は立っていろ」
俺も咲さんと一緒にソファに座ろうとした時に男性にそう言われ、座らずに咲さんの隣に立った。
「今日はお前の夫に相応しい男を連れてきた。婚約し、18になると同時に結婚。
卒業後は次期社長となる夫の秘書になれ」
「咲さん。絶対に君を幸せにするよ」
「……どうして寄ってくる男どもは全員、こんなにバカなんだか」
「彼はデュエルの腕もプロ並みだ。私がみっちり帝王学を教え、勉学の才能も有り、
周りからの信頼も厚い男だ。どこぞの男とは違う」
「デュエルがプロ並みで人望がある人なんてこの世に五万といるわ」
「確かに君の言う通りだ。だが僕はその中でも頭一つ……いや、見下ろすことができるほど、突き抜けているよ。それに顔もいい」
「知ってる? そう言うのはナルシストっていうのよ」
俺を無視して繰り広げられる怒涛の会話のマシンガンに俺は額から変な汗をかきながらも話に耳を傾けるがこの人もアイドさんと同じように自分に絶対の自信を持ってる人だ。
いや、まあ顔がいいのは認めるけど……にしても咲さん、今日はよく喋るな。
「咲。アカデミア入学を認めたのは特例中の特例だ。お前が行きたいというから入学させたんだぞ」
咲さんが行きたいから…………でも、あの時咲さん、アカデミアには嫌々来てるって……もしかして、やっと一人になれたと思えば家から派遣されたボディガードなんかが大量にいたから、嫌々来てるって……。
「残念ながら入学金も授業料も全て私の実力で無料にしました。貴方がくれたクレジットカードはおろか、貴方の稼いだお金、入金されるお金には一切手を付けていません。第一、認めたと言っておきながら、私の周辺にSPを大量に配置し、金で周りの生徒を買収して警備に着かせるのは認めてないでしょ」
マ、マジか。あの周りにいる大勢の女子たちって咲さんに自分から付き従っているんじゃなくて、給料をもらっているからついてるのか……だから食堂であった時もあんなにきつい視線だったわけか。
「ふふふ、凄いな。あの名高いアカデミアで女子の中でも最強の一角なんだってね。僕もアカデミアに在籍していたけどあそこは中々、生き残るのは難しいからね」
この人も……まあ、アカデミアに行かずにプロ並みの実力者ってあまりいないからな。
まあ、稀に天性の才能を持った人もいるけど……。
「さっきも言ったが咲。お前は将来の夫である彼の傍に着くんだ。そうすればお前は幸せになれる。
この2年間、お前を自由にさせている間、変な虫がつかないか心配していたんだぞ。
お前が結婚する相手は私が決める。私が認めた相手以外の結婚は認めん」
「…………残念ながら私はもう虫だらけです。ねえ、ご主人様?」
そう言い、咲さんは不敵な笑みを浮かべながら俺の腕に抱き付いてきた。
…………死んでもいいですか?