「僕のターン・ドロー! さあ、クライマックスと行こうか! アンティーク・ギア・ゴーレムで君が召喚したアマゾネスの射手を攻撃! 雑魚を蹴散らせ! アルティメット・パウンド!」
「うあぁぁぁぁ!」
振り下ろされた巨大な鋼鉄の拳がアマゾネスの射手を一瞬にして粉砕し、地面に拳が叩き付けられた際の凄まじい爆風が生まれ、俺の顔にまるで人の拳が殴りつけた時のような衝撃が直撃した。
『LP1200vs4000』
なんて破壊力だ……アマゾネスの射手がまるでハンマーで砕かれる小石じゃねえか……超絶にピンチだな。このデッキの中に攻撃反応型の罠カードは入っていないし、スケープゴートは墓地に行ったし、それを回収する手立ても今のところはない……今までにないくらいにピンチだな。
「僕はこれでターンエンドだ」
どの道、封印の黄金窯の効果で除外したあのカードは手札に来るけど肝心のダメージを与える罠が手札に来ていないし、2枚入れてるモンスターカードも片方は墓地に行ってしまった……正直に言うとこのデュエル、負ける気しかしない。でも、諦めないってあの時に決めたし、咲さんの鎖をぶっ潰すって約束したし。
「俺のっ!?」
デッキからカードをドローしようとした時、ディスクから凄まじい力のようなものを感じ、デッキに目線を落とすとデッキトップのカードから金色に輝いているオーラが溢れ出していた。
このオーラ……前にもどこかで感じたことがある。
「ターン!」
その金色に輝くオーラを放っているカードをドローし、確認するとレベル12の黄金色に輝く杖を持ち、その身に纏っている鎧、髪の色すべてが黄金色のモンスターだった。
ゴッド・マジシャン……そうだ! クラス別トーナメントで一瞬だけ見たあのモンスターだ! 確かに咲さんのデッキをベースにはしているけどこのカードはいれていなかったはず……もしかして。
まさかと思い、後ろを振り返り、咲さんを見てみると腕を組んだままじっとこちらのほうを見ていた。
「どうしたの? まさか、サレンダーかい?」
「まさか……黄金の封印釜で除外したカードを手札に加える。そして手札から死者蘇生を発動! 墓地に眠るアマゾネスの射手を特殊召喚!」
『ATK:1400』
んじゃ、行きますか。デッキよ……応えてくれよ!
「手札から魔法カード・モンスターゲートを発動! フィールドのアマゾネスの射手を生贄に捧げ、通常召喚が可能なモンスターが出るまでカードを引く」
直後、ディスクの仕様からか自動的に通常召喚が可能なモンスターのカードがデッキから突き出してきた。
突き出されたそのカードから上のカードをごそっと抜きとり、カードを確認してみると幸運か墓地へ送るすべてのカードが魔法カードだった。
「俺が出すモンスターは千眼の邪教神!」
モンスターをディスクにセットすると全身に千の眼があるモンスターが出現し、一斉に千の眼を真っ赤に染め、前方にいる相手を睨みつけた。
「墓地へ送ったカードの枚数は……28枚!」
「デッキの半分以上が魔法カード? そんなデッキで僕を倒せるとでも思ってるのかい?」
「倒せるさ……こいつは墓地に30枚以上の魔法カードが存在する場合のみ手札から特殊召喚することができる……幾千もの魔法を従えし最強の魔法使いよ。今こそ解き放たれ、世界を救え! 究極にして最強の魔法使い!
降臨せよ! ゴッド・マジシャン!」
ディスクにカードをセットした瞬間、カードから黄金の輝きが放たれると同時に俺の前方に黄金に輝いている光の粒子が部屋全体に噴き出し始め、その中からその身に纏うすべてが黄金の輝きを放っている黄金の魔法使いが徐々にその姿を見せていく。
咲さんがモンスターカードはこれで良いっていうのも納得がいく……それぐらいの強さだ。
『ATK:4000』
「っっ! このモンスターはっ! 咲! お前どういうつもりだ!」
突然、咲さんのお父さんが取り乱し、部屋に響き渡るほどの大きな声で怒鳴りだしたが咲さんはそんな怒鳴り声を腕を組んだまま、見向きもせずに無視していた。
「そのカードは私が特別に作らせたものだぞ!? それを地位の低いこんな奴に使わせおって!」
「カードは万人が使うもの……私は彼を信頼しています……」
そこまでいうと咲さんは俺のほうを見て小さく首を縦に振った。
「ゴッド・マジシャンの効果発動! 墓地に存在している魔法カードを除外することでこのターンの間のみ、そのカードの効果を得る! 俺は強欲な壺と使者への手向けを除外し、効果をコピー! コピーした効果で2枚ドローし、1枚をコストに使者への手向けの効果を発動!」
ゴッド・マジシャンが杖を上へ向けると杖の先端から天井近くに向けて一筋の光が放たれ、その一筋の光が球体に変化するとそこから幾千もの光り輝く槍が放たれてアンティーク・ギア・ゴーレムに突き刺さる。
すべて突き刺さった直後、音を立てながらモンスターが崩壊していく。
「そ、そんな! ぼ、僕のアンティーク・ギア・ゴーレムが!」
「さあ、終わりだ! その幾千の魔法にて縛りの鎖を打ち砕け! ゴッド・マジック!」
「うわあぁぁぁぁぁぁあ!」
『LP 1200vs0』
ゴッド・マジシャンが杖を相手に向けた瞬間、黄金の輝きが一点に凝縮していき、バスケットボールサイズまで膨れ上がった瞬間、相手に向けてその球体が放たれ、視界を塗りつぶすほどの輝きをあたりに放ちながら、巨大な爆発を挙げ、相手のライフを一撃で0にした。
決着がついた直後、ソリッドビジョンで表現されていたモンスターたちが消滅し、デュエルディスクが待機形態に戻った。
「ふぅ……咲さん」
ディスクからデッキを取り外し、彼女に手渡すとほんの一瞬だけ表情を和らげた。
「なんてことをしてくれたんだ! 君が絶対に勝つというからやらせたんだぞ!」
「も、申し訳あ」
「声も聴きたくない! 今すぐ私の視界から消えろ!」
そういわれた男性は酷く肩を落とし、俺の横を通り過ぎる時に一度、強く俺を睨み付け、部屋から出て行った。
「あの程度の男を選んでしまうとは。私の目も曇ったものだ。咲」
「はい?」
「すまなかった」
お父さんがそう謝罪の言葉を言いながら頭を軽く下げると咲さんは一瞬、驚いた表情を浮かべたけどまたすぐにいつもの落ち着いた表情に戻った。
でも、これで無事に解決だな。咲さんもこれで自由に過ごせる。
「あの程度の婚約者を連れてきてすまない。奴ではお前とは釣り合わんかったようだ。実は目にかけている男がもう一人いてな。すぐにそいつを日本へ呼ぼう。そいつなら咲も気に入るだろう。お前は私の娘だ……父親には娘を幸せにしなければならない義務がある。あいつのような失敗作はもう生み出さん」
「ちょっと待ってください。俺が出した条件はどうなってるんですか!」
「黙れ! 地位もないような貴様が出した条件を地位ある私が従うと思ったか! 連れ出せ!」
直後、ドアが開いたかと思えば黒服に身を包んだ屈強な男たちが部屋の中に数人入ってきて、両脇から俺の腕をつかむとそのまま無理やり俺を部屋の外へ出そうと引きずり始めた。
「離せよ!」
「離しなさい! その人は私の!」
「咲!」
咲さんが俺に手を伸ばした瞬間に父親に腕を掴まれ、彼女の手が俺の手に触れることはなかった。
ふざけるな! こんなことあってたまるかよ! ここで俺が手を伸ばさなかったら咲さんはどうなんだよ!
引きずられながらも男たちの拘束から逃れようと体を捩じるがいっぱしの高校生である俺の力と警護が仕事の連中に力でかなうはずもなく、抵抗空しく引きずられていく。
「ふざけるな…………ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁ!」
「な、なんだ!?」
「うわっ!」
俺の叫びが部屋の中に木霊した瞬間、ポケットの中にある俺のデッキが眩い光を放ち始め、男たちが吹き飛んだかと思えば俺の周りに長い胴体のようなものが周りにあるのが見え、視線を後ろへ向けると俺の背後にチェイン・ホーリーの姿があった。
「な、なんだこれはっ! ディスクを経由せずにモンスターを出すなど!」
「あんたは確かに咲さんの父親だ。でも、父親だからって子供にしちゃいけないことだってある! ギシギシに雁字搦めで子供を縛り付けていたら成長するものもしなくなる!」
「他人の貴様が私の教育方法にケチをつけるか!」
「他人がケチをつけるほどあんたの教育方法はひどいってことだ! もういい加減、咲さんを放してやってくれよ。咲さんにだってやりたいことだって山ほどある! 監視があるところじゃできないことだってしたいのにそれがあるからできない!」
「だ、黙れ! 子供の幸せを叶えてやるのが親の役目だ!」
「あぁ、そうだろうさ……だったら……咲さんの幸せを考えてるんだったら、好きに生きさせてやってくれよ」
そう言うと咲さんのお父さんは手を離すどころかさらに強く握りしめて、俺をにらんでくる。
「咲を護れるのは私だけだ! 雁字搦めに拘束しないでどうやって守るというのだ!」
「俺が護る!」
「っっ!」
「咲さんが傷つくのが怖いっていうんだったら俺が護る! アカデミアで咲さんを傷つけようとする奴らから俺がこの力で全力で護る! 俺の実力はもうさっきのデュエルで見せた! だから! だから、咲さんを離してやってくれませんか……咲さん自身の幸せのために」
俺がそう言うと咲さんのお父さんは俺を恐怖が灯った眼で見ながら俺が一歩歩むたびに一歩後ろへと下がり、その時に腕の力が弱まったのか咲さんがお父さんの腕を振り払い、俺のもとに駈け出して来た。
自分の親が名前を呼んでいるにもかかわらず、咲さんは振り向きもせずにただまっすぐ俺のもとに走ってきた。
そして俺の目の前まで来ると俺の手を握り、ドアを蹴り飛ばすように乱暴にあけて部屋から飛び出した。
「良いんですか?」
「良いのよ。どの道、会社は兄さんが継ぐし、母さんも自由にしていいって言ってくれてるわ」
「そうですか……でも、よかった」
「何が?」
「これで咲さんがアカデミアに嫌々通う理由がなくなったじゃないですか」
そう言うと咲さんは一瞬、驚いたように目を大きく見開くがすぐにいつもの表情に戻り、そして一瞬だけ笑みを浮かべるがすぐにそっぽを向いてしまった。
部屋から飛び出し、走る事2分ほどで玄関へとたどり着き、ドアを開けて外へ出るとここまで連れてきたヘリがまだ近くに止まっており、傍にいたメイド服を着た女性の腕を掴んでヘリに乗せた。
「お、お嬢様?」
「悪いけどデュエルアカデミアにまで戻ってくれるかしら。確か、貴方ヘリの運転はできたわよね?」
咲さんの質問にメイドさんは戸惑いながらも首を縦に振ってエンジンを入れるとプロペラが回りだしたのか外から騒音が聞こえ、あがっていく。
3分もする頃にはすでに咲さんの大きな家は小さく見える高さにまで上がった。
「迷惑をかけたわね。いろいろと」
「いえ、別に……でも俺、社長さん怒らしちゃったっすけど大丈夫ですかね。いろいろと」
仮にもあの人は世界でも有名なデュエルモンスターズカード会社の社長さんだ。
その気になれば莫大な金を使って平凡な家庭の一つや二つ、潰すことだって造作もないことだろうしモンスターをソリッドヴィジョン無しに実体化させる力だって使っちゃったからそれを公表されたりとか……。
「大丈夫よ……多分」
「多分てなんすか! 下手したら俺、破滅ですよ!?」
「大丈夫よ。そうなったら兄に助けてもらうわ。一生のお願いでね」
そう言いながら咲さんは今までに見たことがない満面の笑みを浮かべながら俺の方を見てきた。
っっっ! ……さ、咲さんの満面の笑みってみるの初めてだ……可愛い。
そんなことを考えている俺を乗せたヘリはデュエルアカデミアへと向かっていく。
「ハ…………ハハハハハ! いいネタを手に入れたぞ! このネタを売り込めば奴はアカデミアにはおれん。
見ておれ……大企業の社長を怒らせた罰を今貴様に」
「悪いがそれは勘弁願いたい」
「だ、誰だ貴様ら! どこから入ってきた!」
「悪いけどあいつのあの力を公表されるとこっちにまで迷惑がかかりますの。だから……あの力のことを知ってしまった貴方には消えてもらうわ……残るのは何も知らないあなたのみ」
「や、やめろ! やめてくれ! ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
本日のオリカです。
【ゴッドマジシャン】
魔法使い族/星12/攻4000/守0
自分の墓地に魔法カードが30枚以上ある場合のみ手札から特殊召喚可能。
このカードが通常召喚された場合、攻撃力・守備力ともに全て0となり、効果は無効となる。このカードが表側表示で存在する限り、自分の墓地に存在する魔法カードを墓地から除外することでそのターンの間のみ、このモンスターの効果として発動することができる。この効果で除外された魔法カードはいかなるカードの効果でも墓地へ戻すことはできない。