特に何事も起きずに早数日が経ち、修学旅行も目前に控えた今日の放課後、突然ミッシェル先生に呼ばれたかと思えば職員室で1つの箱を手渡された。
「あ、あのなんですかこれ」
「私の……愛が籠ったプレゼントだ」
「マジですか」
「嘘に決まっておろうが。昨日、お前宛に届いたんだ。送り主を見てみろ」
恥ずかしそうにくねくねしながらそう言う先生の姿を見て一瞬、マジかとも思ったが一瞬で現実を見せつけられてしまった。そして先生の言うとおりに箱の上部に張られれているシールをよく見て、送り主の名前を見た瞬間、俺はその箱を落としかけてしまった。
……うそ~ん。何で俺に? ていうか何故に?
「こ、この会社って」
「今泉咲君のお兄さんがしている会社だ」
シールの上に描かれていたのは今泉カード会社。そう、以前言っていた咲さんのお兄さんがしているという、というか咲さんのお父さんが社長の会社の支社の社長で時期に全ての会社のトップに立つお兄さんだ。
確かにお父さんとはいろいろあったけど何でお兄さんから俺宛に……不思議なこともあるもんだ。
「最近、咲君は君に恋焦がれているようだ」
「へ?」
「冗談だ。だがお気に召したらしく、この前のレポートは君の連鎖デッキについてだったよ」
「は、はぁ。まあ、嬉しいです」
にしても連鎖デッキについてのレポートか……いったいどんな事書かれたんだ。是非とも読みたいけど一般生徒の俺が教師に提出されたレポートを見ることなんてできるわけないか。
弱点としてはやけに手札消費が早いことと魔法・罠ゾーンが埋まりやすいってことか。まあ、大嵐撃たれてもそれにチェーンして行動ができるから割かし破壊系には強いけどな。
「何かあったのか? 最近、君と学食でご飯を食べているらしいが」
先生にそう言われ、何故か咲さんの部屋で寝落ちしてしまったときのことを思い出してしまい、恥ずかしくなってしまった。
「ま、まあいろいろと」
「そうか。まあ、生徒のことに関しては生徒の自由だが……オギャーなことはしないように」
「し、しませんよ! 失礼します!」
先生が遠まわしに言ったことが一瞬で分かってしまい、恥ずかしさを紛らわすために大きな声を出しながら食寝室から出て早歩きで購買部へと直進し、空いている椅子に座ってテーブルに箱を置いた。
たっく、何がオギャーなことだよ……い、いやまあ俺だって思春期の男だからそんなことは想像したりはするけど絶対に行動に移して現実にすることはない!
「ところで何のカードが入ってるんだ?」
「気になりますね」
「店員さん。こっそり後ろに付かないでください。ていうかいつの間に山本さんは後ろにいたんだ!」
「実は私、青い忍者なの」
「こりゃ納得! するかボケ! たっく、とりあえず開けるぞ」
一通りのコントをやった後、一息ついてテーブルの上に置いた箱を開けてみると一番上に便箋に入った手紙が置かれており、その下にスリーブに入れられて裏返しにされている10枚ほどのカードがあった。
一番上に入っていた手紙を見てみるとそこには咲さんのお兄さんからの直筆の手紙が入れられており、内容を要約するとこの前の一件でお父さんも懲りたのか咲さんのことについては何も言わなくなったらしい。
んで、そのことを聞いたお兄さんが俺にお礼をと言う事で手紙と俺のデッキに役に立つカードを10枚ほど新規開発して送ってくれたらしい。
「すご~い! いつの間に咲さんとそんな関係になったの!?」
「なってねえよ。ていうか記事に書くなよ」
「大丈夫……私の心の記事に書くから」
そう言う山本さんの手にはマル秘ノートと書かれた手帳が持たれており、その表情は黒く見えた。
……いったい何人があの心の記事という名の悪魔の弱みノートに書き込まれたんだ。
「とりあえずカード見てみましょうよ! 楽しみです」
「よし……じゃあ、1枚目」
店員さんに急かされ、10枚のカードを裏返しのまま手に持って1枚目をテーブルへ置くとそのカードは罠カードでレアリティ―はレア、カウンター罠でカード名は【連鎖龍の怒り】。
その効果はよく見る条件となるモンスターがいれば相手が発動した魔法・罠、そしてモンスター効果をいずれかをノーコストで無効にできるというカード。
「2枚目はこいつだ」
2枚目のカードはモンスターカードで名前は【連鎖の守護師】。
レベルは4で攻撃力は0の代わりに守備力は2200。ただし、フィールド上に表側表示で連鎖と名の付くモンスターが存在していないとこのカードを破壊して守備力分のダメージを受けてしまう。
ただし、連鎖モンスターがいると相手の発動する魔法・罠・モンスター効果の対象を永続的にこのカードに変更することができるというカード。
うん。なかなかいいカードじゃん。デメリットがすんげえいたいけど。
「3枚目は魔法カード・連鎖龍の壺」
「強欲な壺に指定モンスターがついた感じですね」
「ですね。4枚目は永続罠カード・連鎖邪龍の咆哮……こいつは連鎖邪龍がいる限り、相手は連鎖邪龍にしか攻撃できなくするのか。ほほぅ、なかなかいいじゃん」
「でも永続だから魔法・罠ゾーンを圧迫しちゃうんじゃない?」
「だよな。こいつはサイドデッキ行きかな。ラストは……なんじゃこりゃ」
最後のカードは連鎖融合という通常魔法なんだけど効果をよく見てみると連鎖モンスターと名の付くモンスターを素材にする融合モンスターの専用魔法カードみたいなんだけど連鎖デッキには融合モンスターはいないし、連鎖モンスターを素材にするカードも存在しない。
5枚×2セットずつか……3枚作らないとこを見るとバランスを考えてくれたんだな。
「もしかしてまだ開発中とか?」
「かな……でも、俺のデッキも強化されるな……よし! 早速寮に帰って調整するぜ!」
「私も行くぜ!」
『あ、咲? 先が言ってたカードは全部送っておいたよ』
「ありがと、兄さん。先生から聞いたわ」
『でも、まさかあのお前がね~』
「な、何かしら」
『まさか男にカードをあげるとはね~。お前もそう言う年齢か』
「な、何を言ってるのよ兄さん! わ、私はただ彼のデッキを相対的に見て足りない部分を埋められるカードがなかったから兄さんに頼んだだけであって決してそう言う事では」
『お前が講釈垂れる時は決まって何か隠してるんだよ。でも、よかったよ。お前にもそう言う人ができて』
「だ、だから違うって言ってるのに……もぅ」
『ハハハハハハハ! 是非ともお前を救った男の子というのを見てみたいよ。そう言えばなんであのカードだけお前に渡してくれって言ったんだ? ついでに入れておけばいいのに』
「う、うん……あのカードのイラストは私の友達が書いてくれなの……で、そのカードと一緒に……その」
『なるほどね。了解。ま、頑張りなよ。兄はいつだってお前の味方だからな』
「お兄様。どうやら高槻優斗はこの学園から数日ほど離れるようです」
「そうか……それは好都合だ。その間にこの学園を闇で染め上げてしまおう」