修学旅行当日の朝、レッド寮が一番少ないと言う事でレッド所属の俺がボートに乗って本土へと向かい、飛行機に乗って俺の地元へと向かうが今回は特例として山本さんも俺に同行して俺の地元へとくることになった。
で、何故かそのお見送りとして真白とノゾミさん、森先輩に咲さんまで来てくれた。
「私も貴方のご実家に行きたかったわ」
「またまた~。俺の実家に来てもやたらと元気な90歳の爺ちゃんと子供が遊んでいる間に親父とイチャイチャするような家族ですよ? 来ても微妙ですよ」
「……それでも普通の家族なんでしょう?」
……そっか。咲さんの家は欲しいといえば正直、なんでも揃うお金持ちの家。それに兄貴と母さんは普通の人なんだろうけど親父さんがあんなだったからな……普通の家族ってのに憧れてるのか。
「じゃあ、夏休みになったら来ます? 多分、母さんも父さんも喜びますよ」
「……そうね。行かせてもらうわ」
「良い雰囲気のところ悪いけどもう船来てるよ」
真白のその一言で今の状況を思い出し、2人して顔を赤くしてしまった。
そのまま皆に別れを告げ、アカデミアに来る際にも俺を島へと送ってくれたおっちゃんの船に乗り込み、
少しづつアカデミアがある島から離れていく。
なんか今までアカデミアがでかく見えていたけどこうしてみるとアカデミアってほんの小さな無人島に乗っかってるだけの建物なんだな。
「とりあえずさー!」
「え!? なんてー!?」
「とりあえずさー! 優斗君の家に着いたら写真一枚とるからねー!」
「おっけー!」
船のエンジン音で相手の声が聞こえないのでいつもの10倍以上の声量で話しながら船が本土の港に到着するのを待った。
船に揺られること30分、ようやく本土の港に到着したのは良いものの30分もの間、上下に大きく揺さぶられていたのでまるでトランポリンを長時間使用した直後のように体が勝手に上下に揺れてしまう。
にしても久しぶりの本土の空気は……くそまずいな。
アカデミア周辺が海に囲まれているのに加えてまだ未開発の森が広範囲に広がっているからか綺麗な酸素が多く排出されているアカデミアに比べて木々が少ない本土の空気は排気ガスに塗れているというかなんか、目の前で車の通気口を匂っているくらいにくさい。
「なんかくさいね」
「くさいな。数カ月ぶりの本土だからな。とりあえず空港に行こう……ん?」
空港へと向かおうと歩き出そうとしたその時、ふと視界の端に黒いドレスを着ている女性の姿が見え、思わず2度見してしまったが2回目に見た時はすでにさっきいた場所には女性はいなかった。
……なんか気になるな~。
1回目に青いドレスの少女を見た後にあんな希望の闇だの絶望の光だのということがあったせいでなんだかさっきの黒いドレスを着た女性も怪しく見えてきてしまう。
「どーん!」
「ぐうぇ! だ、誰……なんだ、母さんか……なんでいるの!?」
突然、後ろから突き飛ばされ、慌てて振り返るとそこには白いワンピースを着た母さんが買い物袋らしき袋を両手に下げて変わらぬニコニコの笑顔を浮かべて立っていた。
相変わらずいたずら好きな母さんだ。
「ふふふ~。優君、確かアカデミアじゃなかったかしら?」
「修学旅行で実家近くに行くんだよ。そのついでに実家にも帰ろうと思ってさ。ていうかなんで母さんここにいるの? もしかして母さんも旅行?」
「へぇ~そうなの~。ところでお隣さんは彼女?」
おい、息子の大事な質問を無視しないでくれ……まあ、昔から穴だらけの人だし。
「いいえ! 私は新聞部部員・山本です! 早速お母さん! 幼き頃の高槻君は一体」
鼻息荒くしながら母さんに詰め寄る山本さんの肩を後ろに引っ張り、とりあえず無駄な情報を収集させないように俺の後ろに隠した。
山本さんの手にかかればおっとりとした母さんからならいくらでも情報を盗めそうだからな。
「そ~う。彼女じゃないの~。残念」
「ですが彼女になりそうな人はもぐぅ!」
「良いから黙ってようぜ~。じゃあ、母さん。また家で」
「何言ってるの~? 私も同じ飛行機で帰るのよ~」
……こりゃ、いくつか修羅場を越えねばならぬようだな。
「……ほんとに何もない平和なところだね」
「カード屋、遊園地くらいしか娯楽施設がない田舎だからな。あ、家はこっちだぞ」
「まずは一枚」
そう言い、山本さんは風景を取るのと同時の俺の後ろから写真を次々ととっていく。
でも……変わってねえな。この町も……ま、数か月くらいじゃ街の雰囲気をまだ頭の中で覚えているからそんな懐かしい気分にもならないけどやっぱ、地元っていいよな。
そのまま母さんと共に自宅に向かって歩いていくが山本さんはひたすら写真を撮り続けていくし、母さんも母さんでアカデミアでのことを聞いてくるからなんかいつも以上に疲れてくる。
「ところで爺ちゃんは?」
「まだまだ、元気よ~。この前なんかね……えっとなんだったかしら……あ、そうそう。アクセルの資格を取ったりしてきたのよ~」
アクセルという名前に一瞬惑わされそうだったが母さんの発音からしてどうやらパソコンのエクセルのことを言っているらしい。
アクセルって聞いた瞬間、どこのエンジンブレードだよって思ったわ……いや、まあ90歳になっても普通にバイクを乗り回す爺ちゃんだから今度はハイテクの方に傾倒していくのも別におかしいことじゃねえけど……正直世界で一番元気な爺ちゃんだろ。
「母さん、それエクセルな」
「いやだわ~。アクセルよ」
「いや、だから……わかったよ……で、父さんは」
「あの人は変わらないわよ~」
母さんから見て変わらないと言う事はまた、爺ちゃんがいない間にイチャイチャチュッチュッして息子の俺がいなくても毎日をまるで若かりし頃の恋人時代の時の様に過ごしているってわけですか。
俺は一度、母さんと父さんのそのイチャイチャの様子を覗き見たことがあるがそれはもう目も当てられぬほどのイチャイチャぶりだった。いや、その時は俺がまだ小さかったからあんなことはしてなかったけどそれでも、父さんと母さんが顔を赤くさせながら手をつなぐ光景を見た時、結構興奮したのを覚えている。
「優斗君! 結構いい写真ばっかり取れてるよ!」
「それは良かった。とりあえず先に遊園地行くか。家にはあとで帰るわ」
「分かったわ~。じゃ、また後でね~」
分かれ道のところで母さんは実家がある方向へ、俺と山本さんは遊園地がある方向へと曲がり、そのまま道をまっすぐ歩いていると前方にあの時一瞬だけ見えた黒いドレスの女性の姿があった。
…………何もしなければ。
そのまま山本さんと雑談を交わしながら女性を通り過ぎようとした瞬間、まるで踏切の遮断棒の様に女性が片腕を伸ばし、俺たちが行く道を塞いだ。
「お初にお目にかかります。高槻優斗殿」
「知り合い?」
「いや、お初っていってんだから知らねえよ……そう言えばあんた、空港近くでもいたよな」
「仰る通りで」
「俺に何か用?」
「はい。用がなければ貴方に近づきなどしません。絶望の光と希望の闇……相反するものをその身に宿す貴方の力、是非ともこの身で体験をと思いまして……是非とも、私とデュエルを」
女性がそう言った瞬間、女性の腕から闇が放出されたかと思うとその中から漆黒のデュエルディスクが現れ、自動で展開されると何故か俺のデュエルディスクがカバンの中で自動的に展開された。
「え? な、何今の!?」
「……山本さん、下がってて。良いぜ、その挑戦状受けて立ってやる!」
カバンからデュエルディスクを取り出し、展開されたまま腕に装着すると液晶画面に自分のライフポイントが表示され、デュエルの準備が整った。
「「デュエル!」」
『LP 4000vs4000』
「先行は私から。ドロー! 私は手札のChaos・ブラストを発動しますわ!」
また聞き慣れないカード! あの青いドレスの少女が使っていたクリスタルシリーズと同じこの世に存在しないシリーズの使い手かよ!
「このカードの発動時、自分は手札をすべて墓地へ捨てます。さらにデッキから5枚カードをめくり、その中からモンスターカード1枚につき500ポイントの数値と同じ攻撃力を持つモンスター1体をデッキから特殊召喚しますわ! ふむふむ。これは良いですわ」
女性はデッキからカードを5枚抜き取り、確認すると口角を上げて笑った。
「モンスターカードは3枚! よって攻撃力1500のモンスター1体を特殊召喚します! 現れなさい!
Chaos・ソルジャーナイト!」
デッキからカードを抜き取り、ディスクへとセットすると地面に円形に闇が現れ、そこから漆黒の鎧に身を包みこみ、殺気を全身から出している戦士が出現した。
いきなりデッキからモンスターを特殊召喚!? しかも一気に墓地のカードを増やしやがった! でも、相手の手札は1ターン目から0! モンスター効果にさえ気を付ければなんとかやれる!
「さらに! Chaos・ソルジャーナイトのモンスター効果発動! このカードがデッキからカードの効果で特殊召喚された時、墓地に存在するカードを5枚まで選択し、手札に戻すことができる!」
「なっ! デメリットを帳消し!? その魔法カード専用の相棒ってわけか」
「その通り! このChaosと名の付くモンスターは通常召喚できず、特殊召喚されたターンは攻撃することができない。ですがこれぞChaosシリーズの強さ! すべての魔法・罠カードには発動条件として重いデメリットがある代わりにそのデメリットを帳消しにすることができる効果を持っていますわ! まさに兄様と私たち兄妹の関係を具現化したシリーズそのもの! これが希望の闇なのです! 私はカードを1枚伏せ、ターンエンド」
くそっ! デメリットを帳消しにする相方がいるんじゃノーデメリットで発動しているも同じ!
「俺のターン! ドロー!」
シルバーナイトは残念ながら初手にはない……相手の攻撃力は1500。守備力は優っている奴がいるけど攻撃力が勝るモンスターは残念ながらいない。ここはとりあえず防御を固めるか!
「俺は連鎖・シルバー・ディフェンダーを守備表示で召喚し、カードを3枚伏せてターンエンド」
「私のターン! ドロー! 私はChaos・リジェクションを発動! このカードの発動時、私はこのターン、貴方にいかなる方法でもダメージを与えれませんの」
「でも、それを消す相方がいるんだろ?」
「ええ、もちろん。フィールド上のモンスター1体を墓地へ送り、レベル、もしくは攻撃力がちょうど2倍のモンスター1体をデッキより特殊召喚しますの。デッキよりレベル8のChaos・ジャイアントを特殊召喚!」
地面に闇の穴が開き、そこから巨大な腕が出てきたかと思えば小さな穴を無理やり大きくして肌が真黒な巨人が出現し、その真っ赤に染まっている眼で俺を睨み付けてきた。
『ATK:2800 DEF1200』
こいつが奴のデッキの中堅モンスターか!
「このカードがデッキより特殊召喚された時、Chaosシリーズの魔法カードのデメリットを打ち消しますわ」
「だったらあんたのモンスター効果にチェーンしてチェーンブラスト、モンスターブロック、積み上げる幸福を発動! 積み上げる幸福の効果により2枚ドローし、モンスターブロックによりこのターン、モンスターは戦闘では破壊されず、チェーンブラストにより相手に500のダメージだ!」
カードの絵柄から出現した真っ赤な壺のようなものから炎が放たれ、彼女を包み込み、ライフを削った。
「ふふん。私はターンを終了しますわ」
テスト終わったので更新していきます。