たっく、ほんとなんで希望の闇とかを使うやつはゲームバランスを崩す勢いのオリジナルカードを平気で何枚も作って使うのかねえ。
「俺のターン! ドロー!」
ふむふむ……相手の場には伏せカードもなく、あるのは攻撃力2800の中堅モンスターのモンスターのみ。それに対して俺の手札には相手の攻撃力を上回ることができるモンスターはいない……が、効果ダメージなら相手にダメージを与えることができる。
俺の手札にはさっきの積み上げる幸福で引いた連鎖の剣とシルバーナイトが手札に来ており、そしてさっきのドローで連鎖の共鳴が来た。
とりあえずこいつを伏せておいて直接攻撃は防ぐか。
「カードを1枚伏せる。そして連鎖―シルバーガンマンを守備表示で召喚! ターンエンド」
「私のターン、ドロー! 私は手札からChaos・ダークネスマジックを発動しますわ!」
今度はいったいどんなデメリットがあるんだ?
「このカードを発動する際、デッキの上から10枚を墓地へ送りますわ」
おいおい、10枚も送って一気に墓地肥し、そしてそのデメリットを打ち消すことができるモンスターを召喚することで実質ノーデメリットでの発動かよ。相変わらず凄い効果だな。
「デッキから3枚のChaosシリーズの魔法カードをランダムに選択、それを相手に選ばせ、それ以外のカードはデッキに戻し、シャッフルいたします。さあ、選びなさい」
デッキからランダムに出された3枚のカードがソリッドビジョンによって空中に投影された。
くそ……今までの魔法カードを見ていたらどれも凶悪そうなデメリットと面倒くさそうな効果がある奴にしか見えない……ええい! どうせ、デメリットは打ち消されるんだ! この際何でもいい!
「俺は右の」
「あら、時間ですか」
カードを選択しようとした瞬間、彼女の足元から闇が吹き上がり始め、ゆっくりと上がっていき、彼女を足から包み込み始めた。
「どうやらお遊びはここまでのようです。残念ですわ、貴方の切り札を拝めなくて……では、最後に私の切り札となるモンスターの姿でも拝ませましょうか。いでよ、Chaosシリーズ最強のモンスター! Chaos-エンドデーモン!」
女性が1枚のカードを空に向けて掲げた瞬間、女性の背後からまあるで壁のように闇が伸び、徐々に形を変えていき、背中に2本の大剣を担いだ巨大なモンスターへと変化した。
こ、これがあいつの切り札! な、なんてでかさだ。
「これこそが私が用いる最強の僕ですわ」
「はっ! できれば効果や攻撃力なんかも教えてくれるとうれしいんだけど」
「それは嫌ですわ。貴方との再戦、楽しみにしていますわ」
女性が喋り終えると同時に闇が全てを飲み込み、地面へと消えていった。
「あ、あわわわわ! な、何あれ! ソリッドビジョンじゃないよねぇ!」
「あ~……ん~……どうやって説明したらいいんだ」
「なんかすごいことが起きそうな予感! やっぱり君についてきて正解だったよ!」
【ま、この調子なら記憶をいじる必要はないわね】
こんな子じゃなかったら記憶を改竄する気満々だったって訳ですかい……まあ、山本さんならちゃんと新聞に載せるか載せないかの判断はしてくれると思うし、とりあえず今は何も話さないでおくか。
「あ~、山本さん。悪いんだけど今のは」
「もっちろん! 私の心の記事に書くから! やっぱり君についてきて正解だったよ!」
「あ、そう」
「興奮冷めやらないうちに心の記事に書きたいから早く遊園地いこ!」
「あ、おい」
興奮している山本さんに腕を掴まれ、そのまま女性とは思えないくらいに強い力で遊園地の方へと引っ張られた。
「お痛が過ぎるんじゃないのか? アカネ」
「ふふふ。少し味見をしただけですわ、お兄様」
「はぁ……まあ、良い。直にこの学園の全生徒は闇に染まる。奴が先に行ってくれて良かった」
「ふふふ、お兄様。この学園を落とし、高槻優斗を消せば私たちは”あの方”から」
「あぁ。貰えるさ……本当の幸せが」
「……人居なさすぎだろ。平日だとしても」
遊園地に着いてから早2時間、あらかたのアトラクションを楽しんだ俺達は食事をとるためにフードゾーンへ向かい、そこに置かれている木のテーブルで昼食を摂っていた。
山本さんは片手でペンを走らせ、片手で食事をとるという凄まじい両立の仕方で食事と記事の完成をしている。
平日と言っても遊園地は大体、人が少しはいるものなんだけどどうやら閉園一歩手前状態らしいのか人は少なく、今までに通り過ぎた人の数なんて片手で数えられるくらいだ。
それにしても……あいつはいったい誰なんだ。お兄様とか言ってたけど……新手の敵か?
【少なくとも私がいた時にはいなかったわ。ま、弱い精神だからほとんど眠っていたけどね】
つまり情報もほとんど分からず終いか……それにあのオリジナルシリーズを使うってことはあいつの言っていたお兄様ってやつもオリジナルシリーズを使うのか……なんでこうも希望の闇ってのはオリジナルシリーズを渡すのかね。
「でっきたー! 私の心の記事! ぐっふっふふふ! まさか超常現象をとうとう取材するとは思いもしなかったわ。これこそ新聞記者の最高の幸せ!」
……まあ、当分は山本さんも気にしなくていいか。
「さて! 優斗君、今度は何に乗る?」
「何にって……じゃあ、観覧車でも乗るか」
「お、良いね~」
俺の提案がそのまま通り、普通の遊園地なら少しは待つであろう遊園地に並んで数秒も経たないうちに乗ることができ、2人とも残念な気分になって観覧車に乗り込んだ。
……昔、来たときには平日でもいっぱい人がいたんだけどな……これも田舎にできた遊園地の宿命ってやつか。
「……ねえ、優斗君はブルーに上がらないの?」
たとえレッド寮に所属していたとしてもある一定の功績を出すことができれば寮のランクアップは可能だ。それはデュエルの実力だけでもある程度は考えられるし、勉強に関しても考えられる。
つっても教師陣の中でもほとんどがゴリゴリのエリート思考だからな……特にあの縮退回路入れてる文末の言葉だけが何故かカタカナ読みになるあの先生がいるからな~。
「さあ……でも、今のままがいいと思ってる」
「どうして? レッド寮だったらこれからもいろいろと」
「確かに色々と差別は目の当たりにするかもしれない……でも、レッドだったからこそみんなが興味を持って俺に近づいてきてくれたし、色々な強い人ともデュエルが出来た……まあ、真白とはそれがなくても友達になれたとは思うけど咲さんだったり、森さんだったりとかはレッドだったからってこともあったと思う。それにさ」
「それに?」
「レッドの方が色々と良いこともあるしさ。寮長は猫だけど可愛いところもあるし、今は古谷もレッドだけど色々とブルーの話とかも聞けたし……俺的にはレッドがなんか似合うっていうか」
「そっか……でも、多分だけどレッドとか関係なしに今泉先輩とか森先輩とかには出会ってたと思う」
「へ? なんで?」
確かに森さんとの初対面はあの森の中だけど俺がブルー寮だったらいろんな説明会とかに出席しなきゃいけなかったから大きな森をかけたデュエルにだって参加できなかっただろうし、咲さんだって俺がブルー寮だったら制服から興味を持たなかったわけだし。
「だって、なんか優斗君って色んなことを起こすから。先生とデュエルしてあともう少しってところまで追い詰めたり、クラス別トーナメントで優勝しちゃったり……トラブルメイカーゆえに持ったカリスマってやつ?
ほら、何か大きな事件が起きたりするとその周辺に人が集まるじゃない? あんな感じ……きっとブルー寮やイエロー寮だったとしても君の周りにはいっぱい、人が集まると思うよ。私はだけど」
「……だと良いけどな」
「ま、咲さんとのラブラブはレッドだからこそかもね」
そう言われた瞬間、一気にあの時のことが脳裏を駆け巡り、ゴンドラの仲という閉鎖された空間の中にいると言う事も相まって恥ずかしさのあまりだんだん暑くなってきた。
ぐぅぅ! 山本さんには一生、口喧嘩では勝てない気がする!
「で、咲さんのことはどう思ってるの?」
「ど、どうって……美人だと思うけど」
「ほぅほぅ。咲さんは美人っと……私的にはデュエルが強いとか出てくると思ったんだけど」
「……くぅぅぅ! そ、そりゃ少し突発なことが起きたら慌てるところかは可愛いとは思うけど」
「……あら、意外と出てくるわね」
「そ、それに……わ、笑ったところとか……か、可愛いと思う」
そう言うとさっきまで狭いゴンドラの中に響いていたペンを走らせる音が突然止まり、ゴンドラが揺れ動く機械音がやけに大きく聞こえてきた。
「そっか…………咲さんは本当に貴方に救われたんだね。いろいろな意味で」
チラッと見えた山本さんの表情はどこか母親っぽい顔というか、嬉しいような安心しきったような、そんな表情に見えた気がした。
山本さんの真意は俺には計り知れない。いつもどこからともなく表れるし、どこで情報仕入れてるんだってことも……それ故にどこか不思議な存在だ。
……アカデミアで一番気をつけなきゃいけないのは山本さんかもしれないな。