「あー楽しかった!」
「……俺はもう真っ白につきそうです」
無事に2泊3日の修学旅行は終わらせることが出来たものの毎度毎度、俺に咲さんについての質問をぶつけてくるし、母さんは母さんでその話を嬉々として聞こうとしてくるし、地元の知り合いの餓鬼どもに山本さんと一緒にいるところを見られてカップルかと冷やかされたかと思えば私よりもすごい彼女がいるんだから! と宣言され、母さんは後ろに鬼を浮かばせて聞いてくるわ、親父は親父で連れて来いとか言うわ……もう、まじで今度から山本さんには注意しておこうと考えさせられた2泊3日だった。
「ふふふふ~。優君、その美人で何でもできる彼女さん、夏休みに連れてくるのよ~」
「つ、連れてこねえよ! ていうかまず、まだ彼女いねえし!」
「あらあら~。恥ずかしがり屋さんね~」
「とにかく! 時間だからもう行くからな!」
「またね~」
恥ずかしさのあまり、顔から火が出るほど赤くしながら手荷物チェックを受け、指定されたゲートを通って機内に乗り込み、チケットに描かれている座席に座った。
あ~、まじで疲れた2泊3日だった。
「ぬふふふ。君の傍にいるだけで心の記事が増えて初めて2冊目に突入だよ」
山本さんの手には心の記事NO,2と書かれた大学ノートが握られており、それの1行目には早速俺のことに関しての記事が2つほど書かれていた。
チラッと見てみるとどれも俺の幼少期の時代の恥かしい出来事ばかり。
……この時だけは敢えてこういわせてもらおう。あのクソババァぁぁぁぁぁ! 俺の小さい頃の恥かしい出来事を言っちゃいけない奴に言いやがってぇぇぇぇぇぇぇぇ!
「ん~でも楽しかった! 優斗君のお母さんにまた会いたいな」
「それは別の意味でだろ……はぁ。マジで先が思いやられる……寝よ」
これ以上、恥ずかしいことを聞きだされない様に俺はアイマスクをつけて眠りについた。
「----きて!」
「……んん。もうちょっと」
「起きて! 着いたよ!」
「ほぇ? あ、着いたの」
山本さんの大きな声で目覚め、大きく伸びをしながら周りを見ると既にほかの客たちは降りる準備をしており、すでに飛行機もアカデミアへの船がある空港に着陸していた。
あぁ~。結構寝たな……にしても曇ってるな~。
「熟睡してたね」
「まあ、意外と疲れたしな。はい、山本さんの」
「ありがと」
収納スペースから彼女の荷物と俺の荷物を取り出し、そのまま出口へ向かって歩き、出口から伸びているスロープから地上へと降りていくがさっきまでの快晴はどこへ行ったのかどんよりとした曇り空になっていた。
なんか嫌な曇り空だな……太陽の光が全く見えない嫌な曇り空だ。
「ね、ねえ優斗君! アカデミアが!」
「ん? な、なんだあれ」
山本さんに言われ、アカデミアのある方角を向くとアカデミアだけが何か黒いものに覆われているかのように建物の姿が全く見えないし、無人島の姿さえ見えない。
【あの闇……まさか、あんたがいない間に】
……っっ! あの時、ダークエボリューションとか言う闇のカードをばら撒いていた奴らか! ていうことは向こうであった黒いドレスの女とそいつの兄貴が犯人か!
「ど、どうしよう! 真白君たちにつながらないよ!」
「……行こう。向こうで一体何が起きてるのか」
俺たちはすぐさま船のおっちゃんに少々無理言ってアカデミアの港まで送ってもらい、アカデミアが建っている島に到着したんだが闇で空は覆われ、明かりは夜だと勘違いしている街灯だけだった。
ここだけ夜に取り残されたみたいだな……この感じ、前にも感じたことがある……闇だ。
【そうね。希望の闇……その使い手がこの島を取り込んだんだわ。気を付けて】
「山本さんはここで待っててくれ。様子を見てくる」
「う、うん。気を付けてね」
少女の警告を胸に止めながらまるで夜の様に真っ暗なアカデミアに続く坂道を上がっていくけど誰一人として出会うことなく、街灯の明かりがひどく不気味に見えて仕方がない。
誰もいない……修学旅行でみんないなくなってるはずはないんだけどな。1、2年生はともかく上級生は俺達とは別日程で予定されていたから……どうなってんだ一体。
「誰か! 誰かいないのか!」
大きな声で叫ぶものの誰も俺の声に反応する奴はいない。
「た、高槻か?」
「っ! ミッシェル先生!」
森の方から声が聞こえ、そちらの方を向くと木々の間からミッシェル先生が出てきた。
良かった! 俺と山本さん以外にも無事な人がいたんだ!
「何があったんですか!?」
「分からん……急にアカデミアが暗くなったかと思えば生徒たちの叫びが聞こえてきて……私は真っ暗になった時に何かに躓いて森の中に転げ落ちたんだ」
……やっぱり、希望の闇の力を使っている黒いドレスの女の仕業か……生徒たちがどうのこうのってことは咲さんの身にも何かが起きたかもしれないってことか。
早く助けねえと!
【っ! 気を付けて! 奴が来るわ!】
少女の声が頭の中で響いた瞬間、後方から圧力のようなものを感じ、振り返ってみると円形に広がっている闇の中から黒いドレスの女がゆっくりと出てきた。
「お前の仕業か!」
「ふふふ。あなた以外にも生存者がいたとは……」
「なんでこんなことを」
「貴方を抹殺するため……とある方にそう命令されましたの。だから手始めに強者が集まっているというこのアカデミアを闇で染め上げた次第ですわ。私とて兄様と違って最強ではありませんから」
っっ! じゃあ、咲さんもこいつらに!
「さあ、あの時の続きと行きましょうか」
そう言うと女性の腕に闇が集まっていき、漆黒のデュエルディスクが出現し、展開された。
「上等だ!」
「待て、私がやる」
「せ、先生?」
先生の横顔は今までに見たことがないくらいに怖いもので一目で怒っているのだと気付いた。
「私はどちらでも構いませんわ。どの道、お2人とも消す予定ですし」
「相手もそう言っている。良いな」
「……わ、分かりました」
そう言い、先生から数歩下がると同時に俺を含んだ3人の周囲を円形に闇が走っていき、外部からの妨害を防ぐ壁の様に周囲を取り囲んだ。
これは闇のデュエル……でも先生なら。
「気を付けてください。あいつ、未知のシリーズを使います」
「分かった」
「では、行きますわ」
「「デュエル!」」
『LP4000vs4000』
「先行は私から。ドロー。私は手札からChaos・マシンガンを発動します。このカードの発動時、私のライフは半分になります。ですが……手札に存在しているモンスターカードの数×800ポイントダメージを与えますの。私の手札には3枚のモンスターカードがあります。よって2400のダメージですわ!」
手札の三枚のカードが黒く染まり、そこから三本の黒い槍が飛び出てきて先生の胸を貫き、一ターン目から先生のライフを半分以上、削った。
半分支払ったと言う事はそのライフを元に戻す相棒もいるはず。
「残念ながらこのカードには相棒はいませんの。それにChaosシリーズのモンスターは全てが通常召喚不可能なモンスターばかり。あ~。私のフィールドはがら空きですわ」
口ではおどけながらそう言うが黒いドレスの女性の表情はそれとは全く逆の表情をしており、自分勝つことを信じて疑っていない様子だ。
その後、相手はフィールドに1枚のカードを伏せてターンを終了した。
「私のターンだ。ドロー! 手札よりおろかな埋葬を発動。ミンゲイドラゴンを墓地へ送る」
ミンゲイドラゴンの効果はスタンバイフェイズに墓地にミンゲイドラゴンがあれば表側攻撃表示で特殊召喚できる……でも、少なくとも次のターンでしか発動できない。恐らく先生はこのターンはどうにかして耐えて次のターンから一気に攻め込む気だ……でも相手は未知のシリーズを使う相手……先生!
「さらに私は手札段殺を発動。二枚墓地へ送り、二枚ドロー! そして墓地へ送られたコドモドラゴンの効果発動! 手札の青氷の白夜龍を特殊召喚! 来い!」
フィールドに全身が氷の鱗で覆われたドラゴンが出現し、空に向かって咆哮を上げた。
こっちもいきなり攻撃力3000の最上級モンスターを召喚かよ! でもコドモドラゴンの効果を使ったターンはバトルフェイズを行えない。どうするんだ先生。
「手札よりスタンピングクラッシュを発動。貴様の伏せカードを破壊し、500のダメージだ」
発動した瞬間、青氷の白夜龍が相手の伏せカードめがけて大きく腕を振り下ろし、カードを破壊するとその破片が相手の全身に突き刺さり、ライフを削った。
「ターンエンドだ」
「私のターン。ドロー……流石はアカデミアでも最強と歌われている教師ですわ。まさかいきなり最上級モンスターを召喚してくるなんて」
「……戯言はいい。さっさと来い」
……デュエル中はいつも落ち着いているのに今日の先生はどこか焦っているような感じがしてたまらない。それに何かに対して怒っているような……。
「ふふ。怖い顔。美しい顔が勿体ないですわ。では、行きますわよ!」
「……何か用か?」
「あ、ばれちった?」
「観測者が何の用だ……まさか邪魔をする気ではないな?」
「まさか……私は観測者だよ? そんなことしたらせっかくもらった命が消されるじゃない」
「そうだったな……で、今はそんな姿か」
「はじめてあったくせに長く生きているような発言だね」
「あのお方から貴様の話は聞いている。なんでも一世紀前は老人だったらしいじゃないか」
「まあね~。時代によって変えてるんだよ……ところで随分余裕なんだね」
「もうここは落ちた。あとは高槻優斗を抹殺すればあとはすぐだ」
「……まあ、一応言っておくけど気をつけなよ? 彼は希望の闇と絶望の光の二つを宿してる。何が起きても不思議じゃないし、彼の周りも強い奴がいるんだよ」
「……たとえ二つを備えていようが俺たちは負けん……願いを叶えるまでわな」