ミッシェル先生が黒いドレスの少女にデュエルで勝ってから俺は先生とノゾミさんと一緒に闇に囚われたアカデミアに他の生徒がいないか探していく。
「誰もいない」
「マ、マー君は」
「大丈夫です。ノゾミさんが生きていることを考えれば真白も他の奴も生きたまま囚われているはずです」
「……高槻。お前、この現象が何か知っているのか」
「いえ、俺も知らないです」
絶望の光と希望の闇のことを先生たちに言えるはずがない……山本さんは良いとしても今の状況で先生に言えるはずなんてない。やっとノゾミさんと一緒になれたんだ……巻き込むわけにはいかない。
その時、後ろから砂を踏みつける音が聞こえ、振り返ると黒髪を無造作に流し、膝丈の黒いスカートに黒いノースリーブを着て黒いドレスの少女と同じ漆黒のディスクを腕に付けた見知った女性が立っていた。
「……さ、咲さん?」
雰囲気はかなり変わっているがどこからどう見ても今泉咲さんだ……咲さんまで。
「高槻優斗……貴方を抹殺しに来たわ」
「咲さん! 目を覚ましてください! 俺たちが闘う必要なんてないですよ!」
「咲? 私はそんな名前じゃない。私はパズル家長女・エンヨ」
な、何を言ってるんだ……まさか闇に記憶を消されて。
【いいえ。希望の闇は記憶は削除できても埋め込みはできないはずよ。ましてや他の人物の名前を言う事なんて絶対にありえないわ】
青いドレスの少女の声が俺の頭の中で響くがさっきよりも疑問が頭の中で増殖し続け、もうパンク寸前のところまで来てしまっている。
「咲さん!」
だが俺の声も虚しく、咲さんがディスクを起動した瞬間、腕につけている俺のディスクが強制的に起動し、デュエルモードに入ってしまった。
その瞬間、俺達のデュエルフィールドを形成するかのように闇が地面を円を描くように走る。
そ、そんな……咲さんと……。
「さあ、デュエル」
「……デュエルっ!」
俺は奥歯をかみしめながらそう叫ぶとディスクのディスプレイにライフが表示される。
「先行は私。ドロー。私は手札から地獄の拷問部屋を発動」
「なっ!?」
地獄の拷問部屋は効果ダメージが相手に与えられた場合、それに追加して300ポイントのダメージを与えるダメージデッキには必須と言えるくらいのカードだけどそんなことで驚いたんじゃない。
咲さんのデッキはエンディミオンを主力にしたマジカルエクスプロージョンデッキのはずだ……なのに何でダメージデッキに入るようなカードがあるんだ。
「手札より魔法カード・デスメテオを発動。相手に1000ポイントのダメージを与える」
「くぅ!」
「さらに拷問部屋の効果も受けてもらうわ」
上空から火球が俺の目の前に直撃し、爆風と熱風が俺を同時に襲う。
違う! 咲さんはこんなデッキ使わないはずだ!
「モンスターを裏守備でセット。カードを一枚伏せてターンエンド」
『LP2700vs4000』
「俺のターン! ドロー!」
手札にはシルバービースト、チェーンブラストが2枚、積みあがる幸福が1枚と連鎖龍の壺、そしてさっき引いたカードでシルバーディフェンダーがある。
咲さん……ダメだ! 今はデュエルに集中するんだ!
「俺はカードを3枚セットし、シルバービーストを召喚! そして効果発動!」
「この瞬間、罠発動! 仕込みマシンガン!」
「っっ! がぁ!」
罠が発動された瞬間、俺の目の前にマシンガンが出現し、6発の弾が連続で発射され、俺に直撃し、ライフを1200ポイント削ると同時に拷問部屋の効果ダメージも加わり、往復2ターン目で1200しかライフが残っていない状況になった。
完全に……完全にあのデッキはダメージデッキだ!
「咲さん! 貴方が使ってたのはそんなデッキじゃないだろ!」
「私は昔からこのデッキよ。もしかしてこれのことを言っているのかしら」
そう言うと咲さんはスカートのポケットから1つのデッキを取り出し、俺に見せてくる。
デッキの一番下のカードを見るとどこからどう見てもそのカードはゴッドマジシャンにしか見えない。
「そうだ! 貴方が使っていたのはそのデッキだろ!」
「馬鹿馬鹿しい……私は昔からこのデッキよ。こんなもの」
「っっっ!」
そう言い、咲さんは俺と一緒に構築したデッキを放り投げる動作をするがその手からデッキが離れることは無く、そのことに俺はおろか咲さん自身でさえ、驚いていた。
「……手が……デッキを離さない」
……今すぐにその闇を振り払います!
「シルバービーストの効果により、俺は装備魔法・連鎖の剣を手札に加え、シルバービーストに装備!」
『ATK1800⇒2300』
裏守備でセットしたと言う事は恐らくあのモンスターはマシュマロンかデス・コアラのようなリバースした際に俺にダメージを与えるカードのはずだ……ここは次のターンでシルバーディフェンダーを出した後に連鎖の導きを使ってデッキからモンスターを特殊召喚して並べる!
「俺はカードを1枚伏せてターンエンド」
「私のターン。ドロー。手札断殺を発動」
手札から連鎖連撃とシルバーディフェンダーを墓地へ送り、カードを2枚ドローすると1枚はシルバーガンマンでもう1枚はチェイン・カオスだった。
早い……いつもならもっと後に来るのに。
そんなことを思いながら俺は手札に加える。
「私は手札1枚を墓地へ送り、ダメージ・ドラゴンを特殊召喚!」
咲さんのフィールドに闇がゴポゴポと噴き出し、そこから銀色の鱗を持ったドラゴンが姿を現し、俺に向かって甲高い声で芳咆哮を上げた。
な、なんだこのモンスターは!?
「ダメージ・ドラゴンの攻撃力・守備力はこのデュエル中に相手に与えたダメージと同じ数値になる。よってダメージ・ドラゴンの攻撃力は2800! さらに1ターンに1度、フィールド・および手札から効果ダメージを与えるカードを墓地へ送る事で相手に1000ポイントのダメージを与える!」
「俺はその効果にチェーンし、チェーンブラストを2枚、積みあがる幸福を1枚発動! 積みあがる幸福の効果によりカードを2枚ドローし、チェーンブラストの効果で1000ポイントのダメージだ!」
咲さんに向かって炎が放たれるのと同時にダメージ・ドラゴンの口が大きく開き、底から地面を抉るほどの強い衝撃波が俺に向かって放たれる。
衝撃波は俺に容赦なく叩きつけられる。
こんなの……こんなの咲さんのデュエルじゃない!
「止めよ。ダメージ・ドラゴンでシルバービーストを攻撃!」
「カウンター罠・攻撃の無力化発動!」
ダメージ・ドラゴンから放たれた衝撃波が俺の目の前に出現した空間の歪に吸い込まれ、消滅し、強制的に相手のバトルフェイズを終了させた。
「ちっ! ターンエンド」
「俺のターン! ドロー!」
このターンであいつを潰すか、勝利しないと俺の敗北だ……でも、俺が勝ったら本当に咲さんは元に戻るのか……黒いドレスの女はどこかへ消滅した……なあ、俺が勝っても何も起こらないよな!?
【…………】
青いドレスの少女に語り掛けるが少女からの返答はなく、頭の中に只々静寂が走る。
なあ、何か言ってくれよ! このまま続行してもいいんだよな!?
【……闇のデュエルにおいて敗者の魂は闇に吸収され、肉体は消滅する】
た、魂が吸収される……で、でもお前の肉体は消滅していないんだろ!?
【あの時は私が特別強い闇の力があったからよ……今の彼女の中にある闇は精神を支配するだけの弱い闇……敗北した瞬間、抗う事すら許されず、消滅する】
で、でもチェイン・ホーリーの光なら咲さんの闇だけを消せるだろ!?
【無理よ。アカデミア全体が闇に支配されている以上、チェイン・ホーリーだけの光では】
そ、そんな……。
「何もしないのであればターンを回すわよ」
「……俺はシルバーガンマンを攻撃表示で召喚! そして2体の連鎖モンスターを墓地へ送る! 闇が世界を絶望で包みこむとき、闇を従える龍が降臨する! すべてを絶望の闇に染め上げろ!
降臨せよ! 連鎖邪龍・チェイン・カオス・ドラゴン!」
2体のモンスターが闇の球体へと変化し、俺の目の前で1つに合体するとその球体が徐々に形を変えていき、あっという間に目の前にチェイン・カオスが現れ、咆哮を上げた。
どうすればいいんだ……咲さんを救うにはどうすればいいんだよ!