三年生の森先輩とのデュエル終了後、もう一度入学式会場へ戻るとどうやら、
上級生からの連絡を教師たちが受けていたのかその後の寮への荷物の搬入などは全て、
終わっており、今日から寮生活が始まるといわれた。
校長先生曰く、新入生の中で寮の繰り上げがあった生徒はいなかったらしく、
大体の生徒は負けたらしい。
「はぁ。まさか入学式当日に一日に二回も負けてしまうとは」
一度目はあのサイバーデッキのおっちゃんとのデュエルで二回目は正確には引き分けだったけど、
デュエルが終わってからデッキの一番上のカードを見てみると死者転生だった。
つまり森の女王を倒すことはできなかったわけである。
だけどまあ、意味のある敗北だったと思ってる。
「えっとレッド寮は……あ、あれか」
先生からもらった地図を手に、あちらこちらへと行っていると校舎から少し離れたところに、
赤い屋根の寮が見えた。
森先輩が言ったように外観は民宿みたいだけど綺麗に保たれているみたいだし、
どちらかというと高級民宿って感じだな。
部屋の扉の前に立って細かく見ていくけど壁もきれいにされているし上ってきた階段だって、
どこかが割れているとかはない……ただ、なんで海の近くの断崖絶壁に建ってるんだ?
寮のすぐ後ろには地面はなく、ただただ海が広がっているだけだった。
「まあ、とりあえず大事なのは部屋だよ、部屋」
そう言いながら鍵を開けて部屋の中へ入ると二段ベッドが一つ、そして机が一つ、
小さな本棚が一つ、さらに床は畳というとても質素な部屋だった。
俺の部屋の隣には小さな食堂スペースもあり、そこに入ってみると定食屋のように、
机が5つほど並べられているだけで台所と小さなテレビがあるくらいだった。
…………うん。要するに自炊しなさいという生徒の社会性を育てる狙いなんだろうな。
「まあ、悪くはない。それに俺、畳好きだし~」
自室へと戻り、ディスクを外して机の上に置き、畳の床に寝転がると実家を感じる、
畳の丁度いい固さが背中で感じられた。
ここに来る前に置かれていたパンフレットを取ってチラッとブルー寮、
イエロー寮の部屋の様子もパンフレットで見てきたけどどこも高級ホテルみたいな、
設備が入れられておりエアコンは最新式、テレビもちろん最新式だった。
でも、俺はどっかの豪華なホテルみたいなところよりも畳の方がやっぱり落ち着くよな~。
「んん~…………ん?」
寝転がりながら体を伸ばし、首を右に傾けたときに猫の餌を入れる器のようなものが見え、
さらにその隣には文字が書かれた小さな四角い板が“あ”から“ん”まで床に置かれてあり、
器の隣にはその四角い板が並べられて『りょうちょうのいうことはきくように』という、
文が作られていた。
「なんだこれ?」
「にゃ~」
「あ、猫だ」
後ろから猫の声が聞こえ、振り返ってみるとそこには真っ白な毛並みの猫が座っており、
俺の方をじーっと眺めてきた。
「どうしたんだお前? 野良猫か?」
「にゃっ!」
「イタッ! なにす……は?」
猫を抱き抱えようと手を伸ばすが猫パンチを食らい、腕をひっこめると、
猫は俺の隣を通り過ぎていき、餌やりの器の前に立つとその白い毛でおおわれている足で、
パンパン! と器用に器をたたきながら、何故か見下しているような感じを覚える見方で、
俺を見てきた。
戸惑いながらもあたりを見渡すと本棚に猫の絵が描かれている袋が見つかり、
それを指さしながら猫を見ると首を縦に振った。
…………まさか、猫に顎で使われるとは。
「ほい。餌ですよ~」
「にゃっ! にゃにゃにゃ!」
「な、なに怒ってんだよ」
猫は何故かプンスカ怒ったように声を荒げながら、
器の隣に置いてある文字の四角い板を並べ変えて文を作るとそれを俺に見せてきた。
「……りょうちょうにむかってなんたることばづかいだ。みのほどをしれ……まさか、
こいつ、人間の言葉わかってんの?」
猫は気が済んだのか器に入れた餌を食べ始めた。
……実家で犬を飼ってたから犬は人間の言葉を3割くらい理解してるって感じは知ってたけど、
まさか猫が自分でコミュニケーションできるとは思っていなかった。
「ふぅ。にしても疲れたな…………寮長!?」
再び畳の床に寝転がり、数秒経ったところで俺はようやくそのことに気づいた。
「ね、猫が寮長……恐るべし、レッド寮」
「お邪魔しま~す」
「あ、森先輩」
ドアが開かれ、後ろを振り返ると何やら袋を抱えた先輩が俺の部屋に入ってきて、
袋を机の上に置くと俺の前に座り込んだ。
「あ、寮長。おはようございます。これ、そこで拾ってきた猫じゃらしです」
「にゃ~♪」
猫は森先輩からもらった猫じゃらしを器用に前足二本で挟み込むと、
口にくわえてそのまま外へと出て行ってしまった。
……まさか、リアルにあの猫が寮長なのか。
「驚いたでしょ? レッド寮の寮長が猫だったなんてって」
「そりゃ驚きますよ。しかもあの猫、文字も扱えるし」
「ふふ。あの猫ね、私が入学したときくらいにすみ着いたらしくてそれ以来、
ここの寮寮に何故かなっちゃったのよ。まあ、レッド寮に入寮した人は君が初めてだし」
そう。レッド寮に入寮したのはアカデミア史上、俺が最初の人間らしい。
まあ、デュエルアカデミアに入学すること自体がもうかなり難しいことだし、
入学したらしたで今度はデュエルで勝たなきゃいけないし、勉強もしなきゃいけない。
「でも、君なかなか強かったね~。びっくりしちゃったよ」
「俺なんてまだまだですよ。一日で二回も負けましたもん」
「二回? ……あぁ、用務員のおじさんとデュエルしたんだってね」
「知ってるんですか?」
「うん。なんでもここが設立された当初からずっと用務員をしている人でなんでも、
噂ではプロリーグからもお誘いがあったらしいけどそれを蹴って用務員になったとか」
先輩のその話を聞いて俺はあの用務員のおっちゃんの強さに納得できた。
プロリーグってのは大体は自分から入らせてくださいって頭下げるんだけど、
例外中の例外としてプロリーグ自体が頭を下げて入ってくださいってすることがある。
プロリーグが始まってから今までに三人くらいの人がそれで入った。
「そうそう。机の上に置いた袋の中に教科書があるから。それとこれ」
そう言われ、袋から取り出されて渡されたのは大きい袋に入れられた赤い長袖のコート、
そしてカラーリングが部分的に赤く染められたデュエルディスク。
ちなみに先輩が着ているのは青と白で塗られているノースリーブの上と青一色のひざ丈のスカート。
ちなみに女子生徒は例外なく全員が最初からブルー寮という特典付きである。
まあ、女性でデュエルをする人は結構少ないらしいからな。
「学校にいる間はこの服を着ないとダメよ。ディスクに関しては自由らしいけど、
いつデュエルを申し込まれてもいいように付けておいたり、かばんに入れていた方が便利よ」
「なるほど。ところで授業っていつから」
「ん~。新入生予定表に書いてあると思うよ」
そう言われ、あたりを見渡してみると先輩が置いた袋の横に紙が一枚置いており、
それをとってみてみると新入生予定表と書かれており、
それによると授業は明日からになっていた。
……へぇ。アカデミアって4クラスしかないんだ……まあ、募集定員も少ないし、
一つの教室に多めに入れてるんだろうな。
「これから暇なら学校案内でもしてあげようか?」
「ぜひ、お願いします」
森先輩のお誘いに乗り、渡されたコートを着て部屋のかぎを閉めて先輩についていき、
校舎へと向かう道を歩いていく。
にしても……孤島に立てただけあって自然豊かだよな~。都界じゃ絶対に見れないよな。
その時、視界の端に青色をした何かが入り、そちらのほうを見てみると、
青いドレスを着た女の子が俺の方をただじーっと見つめていた。
少しの間、その子のことを見て、瞬きを一回だけした後にもう一回見てみるが、
すでにどこにも青いドレスを着た女の子の姿はなかった。
「どうしたの~?」
「あ、いえ……別に」
青いドレス……デュエルアカデミアの生徒はここにいる間は制服着用になっているから、
あんなきれいな服を着ている女の子はこの島にはいないはずなんだけどな……もしかして、
学園関係者の娘さんとかか?
不思議に思いながらも先輩の後を追いかけた。
「ここが購買部。パックも売ってるし文房具とか勉強必需品とかも売ってる」
校舎に入り、まずは一階部分にある部分を紹介してくれることになり、
まず始めに来たのは購買部だった。
先輩の言う通り、今までに発売されたすべてのパックが置かれており、
その値段も学生割引が効いているのか市販されている値段よりも30円ほど安く売られている。
「連鎖のパックありますかね~」
「ん~。表示されているものを見る限りはもうないみたいね~。なんせ、
デュエルモンスターズのアニバーサリー企画として発売されたパックだから絶版でしょうね。
たぶん、この世界で連鎖デッキ使っているのは君くらいよ」
そう言われても仕方がないくらいに構築するには素材がないからな~。
俺が生まれて初めて買ってもらったパックが連鎖のパックだったし、
初めて箱買いしたのもこのパックだし、初めてデッキを構築したのもこのデッキだったからな。
いろいろと思い出がありすぎるんだよな。
「じゃあ、次行きましょうか」
「あ、はい」
森先輩についていき、次に案内されたのは購買部から少し歩いたところにある職員室、
そしてその周辺にある保険室などを案内してもらった。
こうしてみるとアカデミアってかなりお金をかけてるんだな。
「一階で一番の重要な場所といえばここかしらね」
「すっげ~」
最後に案内された場所は非常に広い場所でここだけは一階の通路を歩いて、
校舎の隣にある大きなドーム型の建物に入った。
中央にデュエルフィールドがいくつも設置されており、
それを囲うようにして全校生徒分の観客席が設置されており、
どこに座っても真ん中が見えるようになっており、さらには大きな液晶画面まで用意されている。
「ここで実技試験とか行事が行われたりするのよ。クラス対抗だったり学年対抗だったりね」
「なるほど。じゃあここから上はもう教室ですか?」
「うん。一年生が二階、二年生と三年生は三階を一緒に使ってるわ。ちなみに私はA組だから、
お姉さんのことが恋しくなったら会いに来てもいいよ~」
「そりゃ、ないっすよおぉぉ!」
そう言った瞬間、思いっきり踵でつま先をふんづけられ、さらにグリグリのサービスまで、
もらってしまい、あまりの痛みに思わず大きな声をあげてしまった。
その大きな声が反響しまくり、肉体的にも精神的のもダメージを受けてしまった。
「気の利く男の子ならぜひ、会いに行きますくらい言うわよ。後輩君……ところで名前何?」
「た、高槻優斗です。イタイ」
「ふむふむ。じゃあ、優斗君。寂しくなったら会いに来てもいいのよ?」
「ぜ、ぜひ行かせてもらいます」
再びあの痛みを味わいたくないの一真で心にもないことを言いながらいまだに痛む、
つま先のことを気にしていた。
「こんなところかしらね~。決着つかなかったあのデュエル、もう一回やってみる?」
「是非、そうしたいんですけどまだ荷物の整理があるので」
「あ、そっか。これは失礼。じゃあ、あの決着はまた今度ね」
あの時のデュエルは完全に俺の負けだったと思う。手札もゼロだったしまだ、
森の女王の効果だって発動すらしていなかったから……でも今度こそは絶対に、
勝ってみせる……でも、その前にデッキの調整もしないとな。
「入学記念にパックでも買ってみたら? 新入生だったら安くしてくれるわよ」
「じゃ、じゃあ是非」
そんなわけで大きなドームから出て、もう一度最初に案内された購買部へ戻ると、
何人かの上級生らしい人たちが数人購買部にいて、パックを開けていた。
と、その中の一人がチラリと俺のことを一瞬だけ見て目をそむけ、今度は驚いた様子で、
俺のことを二度見してきた。
まあ、ある意味史上初のことをしちゃったからな、俺。
「ところでなんのパック買うの? 君のデッキだったらチェーン関係のカードじゃない?」
「いや、俺ってチェーン系のカードはほとんど集めたんでどちらかというと、
罠カードのもっと充実させたいというか。戦闘に関する罠カードって、
和睦の使者くらいしかなくて」
メジャーな聖なるバリア・ミラーフォースだったり、激流葬だったり、
攻撃の無力化だったりのカードはないからな。
「じゃあ、初心者パックじゃない? あれにはそう言う系のカード入ってるし」
「すみませ~ん。初心者パックってあります」
「あるよ。どれにする?」
店員のおばちゃんが出してきた箱には二つほど、種類の違うパックが入っており、
一つは初心者には絶対に欠かせないようなカードが入っているパック、
もう一つは初心者でもいらないカードがあるパック。
「じゃあ、こっちで。二つ」
「あいよ。学生証あるかい?」
おばちゃんにそう言われ、学生証を渡すとレジのバーコードを読み取る機械に当て、
それを確認して、学生証を返され、二つのパックを新入生価格で購入できた。
ちなみに購入したのは後者の方のパック。
「じゃあ、早速」
ビリビリっと封を切ってカードを見てみると攻撃の無力化、サイクロン、
神秘の中華鍋、トラップジャマー、そして最後はベビーマジシャン。
二つ目を開けるとハリケーン、強制脱出装置、ライトニングボルテックス、
またもやベビーマジシャンが来て最後はベビーマジシャンの融合体であるアダルトマジシャン。
「ありゃりゃ。ベビーマジシャンか~。1ターンに1度、デッキから罠か魔法を1枚、
墓地に送ることができる。アダルトマジシャンが1ターンに1度、
相手の墓地からカードを除外できる。
正直、いらないやつね~。ベビーマジシャンは攻守ともに300。
アダルトマジシャンは1000。わざわざ召喚して使う必要はないカードね」
「そうっすか? 俺的にはライボルよりも使えそうな気がしますけどね」
「ウソ~」
確かにこの効果だけ見たら使えない効果に分類されるかもしれないけど、
別のカードと組み合わせたらすごいコンボだって組めるかもしれない。
そんなことを思いながら俺はベビーマジシャンのカードを見ていた。
最初の方でチェイン・ドラゴンの効果が意味不明になっていたのを正規のものに書き直しました。
そりゃ、低い点数付けられるわけだ。良かったら感想ください。
まあ、感想が来ないとは思っていますが