遊戯王   連鎖する想い   作:kue

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第四十二デュエル

『LP400vs1500』 

…………あれ?

 突然浮遊感がなくなったので恐る恐る目を開けると届かないはずの距離の所にあったはずのパネルを俺の手が勝手に掴んでギリギリのところで浮いていた。

 ……確実に届かない距離にあったはずなのに……なんで……。

『優斗』

「っっ!」

 その時、周りの景色が真っ白になったかと思うと残り少ないパネルの上に咲さんの姿が現れ、しっかりと俺の手をその綺麗な手で掴んでくれていた。

 その瞳はいつものように美しく、俺に諦めるなと訴えるかのようにずっと俺のことを見つめていた。

『……待ってる』

 笑みを浮かべながらそう一言いうとともに咲さんの姿は消え、元の景色に戻った。

 ……そうだ…………何諦めてんだよ俺は! あの時決めたじゃねえか! 何事も諦めねえって! 咲さんと約束したじゃねえか……必ずアカデミアを……みんなを救うって!

「うおおぉぉ!」

 もう片方の手を伸ばし、近くのパネルを強くつかんで腕の筋力を使い、どうにかして残り4枚のパネルの上に立ち、奴を見ると驚きに満ちた表情をしていた。

「馬鹿な…………何故、貴様は生きている! あの時確実に」

「……幸せを手に入れるって言ってたよな」

「……それがなんだ」

「お前の事情なんて知らねえよ……お前ら兄妹に何があったのかも…………別に幸せを求めること自体に否定する気なんてサラサラねえよ……でもそんな闇の力を使って追い求めることだけは否定する!」

「黙れ! 闇こそが希望だ! 光など夢や希望しか与えぬ! 夢や希望などは幻だ!」

「その幻を現実にするために俺たちは生きて前に進んでるんだろうが!」

 そう叫ぶと奴は少したじろいだ様子を浮かべるがすぐに平静を取り戻し、俺の方を睨み付けてくるが俺も負けじと奴を睨み付ける。

「貴様には分からんさ! 闇にしか頼れぬ状況もあると言う事がな! 俺はターンエンド!」

「お前が…………お前が闇に頼って幸せを追い求めるってんだったら俺は……俺はそれを否定してお前を倒す! 闇にしか頼れない状況なんていくらでも覆せるってことを見せてやるよ! 俺のターン! ドロー!」

 今、俺の2体の切り札は完全に何もすることができない……ただ効果を受け付けないだけでそこにいるっていうことまでは消せてない! それなら連鎖龍の怒りや壺は使えるはずだ!

「俺は手札から魔法カード・連鎖龍の壺を発動し、カードを2枚ドロー!」

 っ! よしっ! 和睦の使者が来た! これで1ターンは耐え凌ぐことができる!

「俺は手札より死者蘇生を発動! 墓地よりシルバービーストを復活! 俺は手札全てを伏せてターンエンド!」

「この状況で諦めぬというのか!」

「あぁ諦めねえよ! まだ俺のライフは尽きちゃいねえ!」

「ならばそのライフを消し去ってやる! 俺のターン! ドロー! カオス・インフィニティー・ドラゴンでチェイン・ホーリーを攻撃!」

 奴のドラゴンが大きく口を開けて巨大な闇の球体を生成していく。

 まだ終わらねえ!

「罠発動! 和睦の使者! さらにそれにチェーンしてチェーンヒーリング、チェーンブラスト、積み上げる幸福を発動! 積み上げる幸福により2枚ドローし、チェーンブラストにより、500のダメージ! さらにチェーンヒーリングにより俺のライフを 500回復させる! さらに和睦の使者によりダメージは0だ!」

『LP900vs1000』

「ちっ。小賢しい真似を! メインフェイズ2に入り、魔法カード・カオスの呪いを発動! カオス・インフィニティー・ドラゴンの効果を受けている相手モンスター1体につき300ポイント貴様にダメージを与える!」

「うわぁぁ!」

 上空から小さな闇の球体が俺に降り注ぎ、4枚あったパネルのうち半分の2枚のパネルがマグマに落ち、一瞬にして溶けてしまった。

 俺のライフは残り100……あるんだ。俺のデッキには!

「俺はターンエンド。さあ、その状況で何ができるか見せてもらおうか。俺からすれば貴様が闇の支配下にはいれば助かると思うがな」

「はぁ? そんなもん死んでもごめんだ。俺のターン! ドロー!」

 シルバーディフェンダー! ドローソースは大歓迎だ!

「俺は連鎖ーシルバーディフェンダーを守備表示で召喚し、その効果によりカードを1枚ドローできる!」

 だが召喚するとともに奴の場にカオストークンが2体、出現する。

 カオストークンなんて今はどうだっていい! 引き当てるんだ…………あのカードを……咲さんの思いが込められたあのカードを! アカデミアを……咲さんを救うために!

「な、なんだ」

 その瞬間、俺のデッキトップのカードから眩いほどの輝きが放たれ、薄暗くなってきていたあたりを明るく照らし出す。

「ドロー!」

 カードを引き、空に向けた瞬間、カードを持っている俺の手から闇の鎖と光の鎖が解き放たれるとミサンガを編んでいるカラフルな糸の様に互いに巻き付いていき、その鎖は闇に覆われている空を突き抜けた瞬間、そこに大きな穴が開き、そこから太陽の光が差し込んでくる。

「いつまで寝ているつもりだ! チェイン・カオス、ホーリー! 起き抜けの一発だ! 俺は手札から魔法カード・連鎖融合を発動! フィールドの連鎖光龍・チェイン・ホーリードラゴンと! 連鎖邪龍・チェイン・カオス・ドラゴンを素材とし、融合召喚を行う!」

 咲さんの想いが籠ったカードを発動した瞬間、漆黒の闇に包まれていた2体のドラゴンから光と闇が溢れ出し、覆っていて闇を一気に吹き飛ばすと互いに方向をあげながらぽっかりと穴が開いた暗雲へと飛んでいく。

「馬鹿なっ! 希望の闇と絶望の光が1つになるなど! あり得ん! そんなことはあり得ん!」

「あり得るんだよ! 希望の闇と絶望の光は2つで1セット! その2つがあってこそ人は完成する! さあ、見てろよ! 希望の闇と絶望の光が合わさりし時、2つの力を持ちしドラゴンが降臨し、人に希望を、人に絶望を与える! この世を平定せよ!」

 光の龍と闇の龍が1つになった瞬間、凄まじい輝きが放たれてアカデミア上空を覆い尽くしていた暗雲を一瞬にして蹴散らし、再びアカデミアの大地に光を取り戻すと同時に体から漆黒の鎖が無数に解き放たれ、地面に突き刺さった瞬間、まるで吸い上げられるように大地から闇の力が浮かび上がり、太陽を背にしているドラゴンのもとへと吸収されていく。

 闇が全て吸収された直後、今度は光輝く鎖が無数に解き放たれて地面に突き刺さるとアカデミアの大地に絶望の光が注入されていき、あちこちから光が溢れ出し、アカデミアがある島全体が光り輝きだす。

「馬鹿な……闇が……闇が消えていく!」

「生誕せよ! 連鎖魔光龍・カオス・ホーリー・チェインドラゴン!」

『ATK3500 DEF3000』

 カオス・ホーリーが上空からゆっくりと降り立ち、ようやくその姿の全容を俺達に晒す。

 金色と漆黒の黒のツーカラーの瞳、背中から生える漆黒の翼、上半身にはゆるく光り輝く鎖が巻き付いており、下半身はギチギチに漆黒の鎖が巻き付いている。

 今までの2体とは大きく違う翼を持った龍…………。

 俺のディスクには紫色の色をした枠縁のカードがセットされており、絵柄はキラキラ光っており、モンスターの名前の所は金色に輝いている。

「光と……闇が一体化したドラゴンだと…………バカな……何故……何故、相反するもの同士が融合し、1つの存在になるのだ! あり得ん……そんなこと絶対にあり得ん!」

「あり得るさ……お前の中でも実際になってるじゃねえか」

「そんなことはない! 俺の中には希望の闇しかない! 絶望の光などありはしない!」

「じゃあ……じゃあお前が追い求めていた幸せってやつも闇の一部だって言うのかよ!」

「っっ!」

「お前が追い求めていたのはずっと欲しかった幸せなんだろ!? それは闇なんかじゃない! それはお前の中にある光だ! お前は闇の力でその光をとろうとしているんだ! でも闇だけじゃその光は取れねえぞ……闇の力だけを使ってたとえ光の一歩手前に来ても闇に染まりあがったお前の手じゃ取れない! お前は希望の闇しか頼れない状況があったかもしれない……でもその闇に全てを囚われたんだ……だからお前は幸せという光をとれない」

「ふざけるな! もう目の前にあるんだ! 俺が追い求めたものが!」

「いいや取れねえよ! お前が俺に負けることで! 連鎖魔光龍の効果発動! このカードの効果は素材となったモンスターの効果となる! 俺は墓地の5体の連鎖モンスターを除外!」

 5体の連鎖モンスターを墓地から取り除くと連鎖魔光龍から光り輝く鎖が解き放たれてカオス・インフィニティー・ドラゴンに突き刺さる。

「さらにコピーしたチェイン・カオスの効果により、この効果で除外した連鎖モンスターの数×300ポイント攻撃力がアップする!」

 5つの光の球体が連鎖魔光龍に取り込まれた瞬間、眩い光が放たれ、攻撃力が上昇するとともに辺りに咆哮が放たれる。

『連鎖魔光龍ATK3500⇒5000⇒6500』

『インフィニティーATK3700⇒2200』

「こ、攻撃力6500だと!?」

「今こそこの一撃で闇の連鎖を断つ! バトル! 連鎖魔光龍・カオス・ホーリー・チェインドラゴンでカオス・インフィニティー・ドラゴンに攻撃!」

 漆黒の鎖と光輝く鎖が解き放たれ、大きく開かれた口元からカオス・インフィニティー・ドラゴンまでの道のりを指し示すように筒状に絡みつく。

「行けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! カオス・ホーリー・ブラストォォォォォォォォォォォォ!」

 直後、大きく開かれた口から光と闇が1つになった破壊光線が放たれ、相手が放ってきた球体とぶつかり合うが一瞬にして相手が放った球体が消滅し、破壊光線が一瞬にしてカオス・インフィニティー・ドラゴンを包み込み、大爆発を上げた!

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

『LP 100vs0』

 奴のライフが尽きた瞬間、全ての足場がマグマの中へと落ちていき、足場を失った奴が真っ逆さまに落ちていくが復活した俺の足場から身を乗り出し、奴の足首を掴むと奴のディスクが腕から外れ、マグマの中に落ちていき、一瞬にしてマグマの中へと消えた。

「な、何故助ける!」

「お前の妹が悲しむだろうが!」

「っっ!」

「兄貴が死んであいつだけ1人生きてること思ったらさ……目の前で死のうとしているお前を救いたくなるだろうが。それにお前、アカデミアの奴ら全員生かしてるんだろ」

 そう言うと奴は俺から視線を逸らす。

「幸せをつかみたきゃ生きろよ! んなところで死んだら幸せどころか大切なものまで失うだろうがよ! ぐおらぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 奴の手首を両手でつかみながら足場の上に立ち、全力で引き揚げ、何とか奴が死ぬ前に助け出すことが出来た。

「生きろよ……もうお前は闇の力なんか使わなくたって歩いていけるだろ」

「兄様!」

 そんな声が後ろから聞こえ、振り返ると黒いドレスを着た少女が涙を目に浮かべながらこっちに向かって走ってきて黒いコートを着た男の胸に飛び込んだ。

 …………。

【許していいのかしら】

 青いドレスの少女の声が頭の中で響く。

 ……誰も傷つけてないだろ。それにもうあの2人の中に闇の力は感じないし、アカデミアの皆も無事に帰ってきてるみたいだから今回は許そうと思う。

【甘いわね。傷つけてないから許すなんて】

 ……うるせぇ。甘いと言われようがなんと言われようが俺はあいつらを許す……。

「なあ、そう言えばお前らの闇の力はいったい誰から受け取ったんだ」

「あぁ。俺達は…………誰から貰ったんだ」

「……思い出せませんわ」

 ……くそっ! 記憶消去か……結局、黒幕は分からずじまいか。

 ひとまず俺は先生と一緒に下山し、アカデミア校舎の近くに行くとブルー寮の証である青いコートを着た集団が辺りをキョロキョロと見渡しながら不思議そうな顔をしていた。

 縫うように間を通りながら聞き耳を立てているとどうやらみんなの記憶にもあいつらと同じようにその時の記憶はないらしく、修学旅行行ったっけ? みたいなことを話していた。

 とりあえず集団をミッシェル先生に任せて少し離れたところまで歩いてきた時に急に体が重くなり、フラフラと自分でもわかるくらいに足取りが覚束なくなってきた。

「流石に…………ちょっと力使いすぎたかな」

 とりあえず寮まで歩いて行こうとふと、顔を上げた時、目の前に1人の女子生徒が立っていた。

 腰ほどの長さの綺麗な黒髪に膝丈のスカート、そして細くて綺麗な足に美少女と言われるほどの整った顔。

 ずっと……あの時からずっと会いたいと思っていた人が今まさに俺の目の前にいた。

「…………咲さん」

「高槻君……ねえ、あなた何か知らない? 確か修学旅行に行こうとした時に」

 咲さんがそこまで言ったところで俺はそれを遮るように2度と離すまいと力強く抱きしめた。

「ちょちょっと高槻君!? い、いったい」

「良かった」

「え?」

「…………ちゃんと……助けることが出来た…………お帰り、咲」

「っっっっ! え、えっと…………た、ただいま。優斗」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ふふふふ。流石は希望の闇と絶望の光の2つを選んだ高槻優斗。君のおかげで世界は救われたよ…………一応はだけど…………少しの間、ゆっくりと休んで…………観測者の名において私は君をずっと追いかけるよ」




ちゃちゃっとこの作品も終わらせたいのですが……まだあと2つくらいストーリーがあるんですよねぇ……はぁ。念のため言っておきますがエタリません!
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