夏休み……それは学生にとって最強の長期休みだ。
それは俺も同じ。だが一つだけ周りの連中とは違う点がある……それは……それは超美人な年上の女性と一緒にカードを見ることだ!
夏休みが入ってから1週間後のこと、咲から連絡があって指定された日にち・時間に港に集まれと言う事だったのでいつもの制服で港で待っていた。
今日は咲さんのお兄さんがしているカード会社の見学に行く日! カード会社ってまだ見学したことないからかなり楽しみなんだよな~。羨ましいだろ? 羨ましいだろ!
【カード会社に行くくらいでそんなに燥ぐのはあなたくらいよ】
「うるせ……ところでお前の体まだ見つからないのか」
【ええ……どこにあるのかしらね】
多分……あの兄妹に希望の闇の力を与えた黒幕が青いドレスの少女の体を持ってるんだろうけど……いったいどんな奴が黒幕なんだ……。
「優斗」
「あ、咲」
後ろから呼ばれ、振り返るといつものブルー寮の青い制服を着た咲が立っていた。
これから咲のお兄さんの会社に行くんだよな……かー! 楽しみだ! いったいどんなカードがあるんだ!? アニバーサリーで限定生産された幻のカードとかあるかな?
「じゃ、行きましょうか」
「行きましょうかってどこに船が」
「船? 船じゃないわよ」
その時、ヘリのプロペラ音が聞こえ、顔を上げてみるとヘリが俺達のはるか上で滞空しており、咲が携帯で一言二言話すとそのままゆっくりと降りてきて俺達よりも少し離れた所に無理やり着陸した。
む、無理やりすぎるだろ。ヘリってこんなところにも着地できんのかよ。
「さ、乗ってちょうだい」
そう言われ、ヘリに乗り、座席に座ってしっかりと体を固定するとゆっくりとヘリが上がっていき、アカデミアがある離島から離れていく。
「兄さんの会社には30分ほどで着くわ」
「そうですか……」
30分って短いようで結構長いんだよな……こんなヘリの中じゃ狭すぎてデュエルなんてできないけどまぁ、30分も咲と一緒に入れればそれだけでうれしいんだけどな。
その時、ヘリがガタッと大きく継続的に揺れ始めた。
「な、なんだ!?」
慌てて外を見るとさっきまで雲一つない快晴だった空が今じゃ闇に似た厚い暗雲に覆い隠されており、太陽すら遮断されている。
「何があったの!?」
「分かりません! 急にコントロールが利かなくなって!」
そのままヘリは大きく揺れ、その時に頭を強くぶつけてしまった俺はそのまま意識を失った。
「…………ん」
一瞬眩しい感じがし、重い瞼をゆっくりと開けると何やらカーテンのようなものが見えるとともに何か柔らかい感触がしたので慌てて起き上がってみるとそこはホテルの一室のように広い部屋で俺が今いる場所は大きなベッドの上だった。
……どうなってんだここは。ていうかここどこだよ。なあ、何か知らないか。
中にいる青いドレスの少女に話しかけるが一向に返事は帰ってこなかった。
……まぁ、いいか。
ベッドを降り、扉を少し開けて外を伺うと他の誰の姿も見えなかったので部屋から出るとどっかの貴族が住んでいそうな長い廊下に敷かれている赤い絨毯、壁には多くの人物画が置かれており、所々にこれまた高そうな花瓶が置かれている。
「本当になんなんだよ、ここは」
そんなことを呟きながら歩いていると大きな扉が目に入り、その扉の近くにまで行って耳をあてるとどうやら中は部屋になっているらしく、誰かの話声らしき音が聞こえ、ほんの少しだけ扉を開けると長いテーブルが見え、その近くに初老の男性がいてその近くに青いドレスを着た少女の姿が見えた。
「そんなところで見てないで入ってきなさい」
「…………」
そう言われ、部屋の中に入ると漆黒のドレスを着ている咲の姿が見えた。
「……あんたはいったい誰なんだ。なんで俺達を」
「まあ、座りなさい。希望の闇と絶望の光を宿す少年よ」
……つまりこいつも関係者ってわけか。
初老の男性と対面する形で椅子に座ると青いドレスの少女と目が合った。
「娘を連れてきてくれて感謝するよ」
「……娘?」
「私のことよ」
「……お、お前もしかして」
青いドレスの少女の声を聴き、ようやく俺の中にいたあの少女だと気付いた。
そうか……もう元の体に精神が戻ったってわけか。だから話しかけても返事が来なかったわけだ。
「ていうかなんで俺と咲がここに連れてこられたんですか!」
「……それがわしの願いでもある」
「願い?」
「……パズル家というのは知っているか」
…………そう言えば闇に囚われていた咲がそんなこと言っていたような……でもあれはただ単に闇に囚われていた時に言っていたことで合って何も関係ないんじゃ。
「パズル家とはその昔、莫大な富を持った家でな。その家族は幸せに暮らしていた……だが父親が希望の闇に囚われたことで家族は全員、父親から離れるように消えていった…………」
「……もしかして咲もその関係者ってことですか」
「魂だけじゃがな……生まれ変わりというやつじゃ。わしはこの数十年、ずっと探してきた……もう後先短いこの身としては娘の顔をもう一度見たかった」
……娘ってこのおっさんいったい何年生きてんだよ……これも希望の闇とか言う力の影響で寿命がなくなったとかなのか……。
「貴方が打倒したあの兄妹もパズル家の生まれ変わりだそうよ」
「……ってことは咲とこの子は姉妹の生まれ変わり……」
顔が似てない……のは当たり前か。生まれ変わりって言っても血が繋がってるわけじゃないんだ……。
「もうこれでわしは十分じゃ……娘の顔も見れた……あとはお前さんを消すだけじゃ」
そう言った瞬間、初老の男性の全身から闇が溢れ出し、包み込むと部屋全体を覆うように闇が放出され始め、俺の足元にも闇が流れてくる。
初老の男性だった存在は闇に包みこまれて大きさを増していき、ローブを深くかぶり、顔が見えない存在へと変化してしまった。
2人が男性から離れるように俺の後ろに逃げてくる。
『高槻優斗。貴様の戦いはずっと見ていたぞ……随分と邪魔をしてくれたな』
「こいつが闇の本体ってわけか」
「そうみたいね……とてつもない闇を感じるわ」
部屋は闇に飲み込まれ、形すら見えない。
『貴様さえ消せばこの世界は我ら希望の闇の物……さあ……最後のデュエルと行こうじゃないか』
そう言った瞬間、奴の腕に骨で作られたデュエルディスクが出現したかと思うと俺のディスクが勝手にデュエルモードに移行し、強制的に展開された。
……これが闇との最後の戦いか……えらい急展開じゃねえか。
「2人とも下がってろ」
「ええ」
「絶対に勝って、優斗」
『ではいくぞ』
「あぁ、最後のデュエルだ。お前との!」
「「デュエル!」」
『LP4000vs4000』
『先攻は我が貰おう。ドロー。フィールド魔法・カオスドローコロシアムを発動。互いのプレイヤーはモンスター一体をゲームから除外することでデッキから除外した枚数分だけカードをドローできる』
おいおい。ドロー加速どころかドロー超加速カードじゃねえだ。なんでいつもカオス系統のカードはこんなインチキ臭い効果ばかりなんだよ。
『我はカオス・ドロー・コロシアムの効果を発動し、手札全てのモンスターを除外し、カードを5枚ドローする』
い、一気に5体のモンスターを除外だと!? まさか異次元からの帰還で一気にモンスターを特殊召喚して攻め込んでくる気かよ!
『そして除外されたカオスナンバー1、2、3、4、5の効果発動! このカードがゲームから除外された時、フィールドに特殊召喚する!』
「い、いきなり5体のモンスターを特殊召喚かよ!」
奴の目の前の床に穴が5つぽっかりと空いたかと思えばそこからゆっくりと5体のモンスターが出現し、それぞれ2本の剣、楯と刀、弓矢、棍棒、斧、メリケンサックのようなものを装備したモンスターたちが一気に特殊召喚された。
『1・2・3・4・5ATK=1000』
『さらに我は儀式魔法・悪魔の生誕をコストとして全ての手札を墓地へ送って発動。ナンバー1~5を墓地へ送り、デッキからカオスナンバー6・トライヘキサを儀式召喚!』
奴の目の前に巨大な穴が出現したかと思えば5体のモンスターが全てその穴に吸い込まれていき、穴が閉じられたかと思うとどこかからか赤子の鳴き声が響いてくる。
な、なんだよこの薄気味悪いなき声は。
『悪魔の子よ。生誕せよ!』
直後、闇が爆ぜ、そこから真っ赤な髪を腰ほどまで伸ばした男性とも女性ともとれる風貌をしたモンスターが出現したかと思えばそのモンスターの全身に真っ赤に輝く眼球が出現する。
『ATK/DEF=5000』
「こ、攻守ともに5000……インチキモンスターめ」
『トライヘキサのモンスター効果発動! デッキ・手札からカオスと名の付くカードを全て除外することで除外したカードの効果を得る!』
奴のデッキからすさまじい勢いでカードが射出されていく。
お、おいおい! そんなことしたらデッキからカードをドローできなくてルールで敗北することになるぞ!
『除外したカオス・ノーデッキを発動。このカードが表側表示で存在する限り、我はデッキが0枚になったとしてもデュエルでは敗北しない』
「マジかよ……インチキ効果も大概にしろ!」
『創造されたカードの効果だ。受け入れろ。我はこれでターンエンド』