「……見つけた。ベビーマジシャンの使い道」
翌日の朝、俺は授業が行われる教室でベビーマジシャンのカードを見ながらそう呟いた。
ちなみに教室は大学の講義室のように大人数の生徒が一気に受けれるように机が配置されており、
教室の広さもかなりのもので200人は入るんじゃないかと思うくらいだ。
あるカードとベビーマジシャンの効果を使えば切り札をデッキから特殊召喚できる……しかも、
そのままフィニッシュに持っていくことだって可能だ。
一晩考え続けた甲斐があったぜ!
「あ、あの~。隣良いかな?」
「あ、どうぞ」
声を掛けられ、そちらのほうを見てみるとブルー寮の制服を着た女の子が奇妙なものでも、
見るかのような目で俺を見ながら突っ立っていた。
席を一つ、ズレるとその生徒が俺の隣に座り、途端に周りから何やらヒソヒソと声が聞こえてきた。
「あ、ベビーマジシャン」
隣に座った女の子は俺が持っていたベビーマジシャンのカードを見るや否や、
顔をこちらに近づけてきて小さな声でそう言ってきた。
「ん? あぁ、昨日当たったんだよ」
「うん。私も当たったけどすぐに捨てちゃった」
「……え、えっとそれはカード置き場に?」
「ううん。ゴミ箱だよ」
さも、当然といった様子で隣の子は俺にそう言ってくるが俺からすればたとえ使えないとしても、
大事に取っておくもの。それなのにゴミ箱に直行かよ……カードの扱い方はその人それぞれだけど、
流石にカードをそのままゴミ箱に直行させるのはいかがなものか。
「考えたりしないの? こいつはどうやったら使えるのかとか」
「ううん。だって先生が言ってたんだもん。使えないカードは邪魔になるだけだって」
あぁ、そうか。この子、デュエルアカデミアの小等部からエスカレーター式でここまで、
上がってきた生徒か……だとしても、そんなことを教える教師っておかしいだろ。
この世界に無価値なカードはない……俺はそう両親に教えられた。
まあ、両親はものは大切にしなさいっていう意味で俺に教えたんだろうけど、
そう教えられた俺は今でも買ったパックに入っているカードは全て一か所に集めて、
今でも大事に保管している。
その総数は凄まじいことになってきているけどどんなカードと組み合わせたら、
凄いコンボができるんだ、とか考えるのもデュエルモンスターズの面白さだと思うんだけどな。
「…………じゃあ、一つ覚えておいた方がいい。邪魔なカードなんて存在しない。
たとえ攻守ゼロで通常モンスターでもな」
そう言っても女の子は頭に?を浮かべた状態で俺の方を見てくる。
「ねえ、君ってどんなデッキなの?」
「連鎖デッキだよ」
「連鎖……珍しいデッキを使ってるんだね」
「君は?」
「私は無茶苦茶デッキ。特にこれって言うようなテーマは付けてないかな」
無茶苦茶デッキ……それだけを聞けば弱いと思うかもしれないけどこれが案外行けたりする。
変なところで妙に強いモンスターが出てきたりするから対策とかがしにくい……逆に、
突然のハプニングにはまったく反応できないんだけどさ。おれも昔は無茶苦茶だったな~。
死のデッキ破壊ウイルス入れてるのに闇モンスター入れてなかったりとか、
ホルスの黒炎竜をレベル4だけ入れていたりとか。
その時、チャイムが鳴り、周りで立っていた生徒たちも一斉に座り始め、
全員が座ったところで教室の扉が開いて教員らしき女性が入ってきた。
…………なんでデュエルアカデミアの女性教員はみんな美人なんだ。
教室に入ってきた人は綺麗な金色の髪を腰にあたりで一か所に括っており、
教員用の制服を着ていてもスタイルがいいのが分かる。
それにスカートから見えている足も細いし……きれいだな~。
「入学おめでとう。これから君たちは授業を通じてデュエリストとして高みへ向かっていく」
でも、その美しさに比べて……冷たい感じというか何も感じないというか。
教壇に立った女性教師はただひたすら淡々とこれからの授業の進め方や成績評価、
そしてその他もろもろの注意事項を喋っていく。
「最後に私の授業程度でついてこれない生徒がいれば辞めることをお勧めする。
ではこれより、授業オリエンテーションとして近くにいる人と二人一組になってくれ」
そう言われ、隣を振り向くと相手も同時に振りむいていたらしく、俺と目がばっちりあった。
「組もうか」
「うん」
その二言だけで会話が終了し、周りの生徒がペアを組むのをただぼーっと待っていた。
にしても……ベビーマジシャン早く使いてぇ。確か授業以外の時間だったら、
自由に誰とでもやっていいんだったよな。この後、誰かに申し込もうか……いや、
森先輩に頼むのもありかも知れない。
「組み終わったみたいだな。ではこれより、組んだ相手とインスタントデュエルを行ってもらう」
インスタントデュエル……その名のとおり簡易的なデュエルで初期ライフは半分、
デッキ枚数も半分で行われるデュエルですぐに決着がつくことからインスタントデュエル。
「これから諸君にインスタントデュエル専用のデッキを取って行ってもらう。
中にはハズレデッキもあるから気をつけるように。あと互いの了承を得れば、
自分のカードとデッキのカードを交換してもかまわない。説明は以上だ。取りに来てくれ」
その直後、一斉に生徒たちが立ち上がって我先にとデッキが置かれている教壇へと走って行き、
デッキ内容を確認して持っていく。
隣の子も遅れかけたがすぐさま列に合流するが俺だけが遅れてしまい、
最後に残ったデッキを取ってしまった。
「…………」
「ほ、ほら。残り物には福があるって言うじゃん」
「それで福があったことある?」
ジーッとみてくる子に俺は苦し紛れの言い訳のようなものを言うが一瞬にして論破され、
俺は何も言えなくなってしまった。
確かに最後に残った奴を選んで良い物が当たった経験が一切ない。
とりあえずデッキ内容を確認すると……先生が言っていたハズレデッキだった。
なんせ高コストなモンスターが異常に多すぎる。ほとんどがレベル5以上のモンスター。
魔法、罠カードもこのデッキでは微妙な…………んん?
モンスターカードを確認しているとふと、ある一体のモンスターカードが目に入り、
その効果を読んでいるとこれまたいいことを思いついてしまった。
ベビーマジシャンの効果でデッキに入っている罠を墓地へ送って……良いな。でも、
相手がドラゴン族デッキじゃないと一ターンで俺の負けが決定するな。
「なあ、ベビーマジシャン入れても良いか?」
「うん、良いよ」
許可を取り、ベビーマジシャンと高コストモンスターと交換し、
互いに向き合って、長机に寄り添う体勢になった。
「制限時間は50分だ。それでは始めてくれ」
「よろしく」
「うん、よろしくね。じゃあ、私のターン。ドロー」
あちこちから声が聞こえ、インスタントデュエルが開始された。
「私は手札から魔法カード、
黒龍の雛と
手札からレッドアイズブラックドラゴンを特殊召喚。ターンエンド」
相手はドラゴンデッキか……だったらなおさら、このデッキはあたりだな。
「俺のターン。ドロー。俺はベビーマジシャンを表側守備表示で召喚し、効果発動。
デッキから罠カードを1枚墓地へ送る。そして墓地へ送られたグレイブ・フォースの効果発動。その効果で俺はデッキから、バスターブレイダーを特殊召喚。
バスターブレイダーは相手の墓地及び、
フィールド上にいるドラゴン族一体につき500ポイント上がる。
よって攻撃力は4100。バスターブレイダーで仮面龍を攻撃」
『LP 0vs2000』
「……ウ、ウソ。1ターンキル」
「言ったろ。邪魔なカードなんて存在しない。ベビーマジシャンでも墓地で、
発動する効果持ちのカードを送れば先行1ターン目でフィールドに、
強力なモンスターを並べることだってできるんだ」
女の子は何を言えばいいのか分からない状態になっているのか顔に戸惑いの色を隠せないまま、黙々と机に並べていたカードを直し、前の教壇にデッキを置きに行った。
…………いや、まあインスタントデュエルだからベビーマジシャンが手札に来たけど、
これ普通のデュエルだっらら手札事故でこっちが1キルされてたわ。
俺がデッキを直しに行くころにはあちらこちらで勝敗が決まっている様子だった。
十分も経つころにはほとんどのところで終わり、デッキも返され始めた。
でも……インスタントデュエルなんかやっていったい何を確かめるんだ。
先生が返却されたデッキの個数を確認し、すべてが返ってきたことを確認したのか、
教壇に立って俺達の方を見てきた。
「終わったようだな。私がインスタントデュエルをやらせたのは現時点での他人の実力を見てもらうためだ。この中にはデュエルアカデミア小等部から、
上がってきている子もいるだろうがだからといって強いわけではない。
実際に外部入学者がハズレデッキで勝ったりもしている。現時点での実力には、
大きな差があるだろうが、その差に胡坐をかかないように。
私の授業はこれで終わりだ。残り時間で自己紹介でもし合っているといい」
そう言い、先生は自分の名前も言わずにそのままスタスタと教室から去って行った。
それから周りの奴らが近くにいる人と自己紹介をしあったり、
エスカレータ式で同じように上がってきた友人たちとだべったりしはじめた。
「ねえねえ」
「ん、なに?」
後ろから声を掛けられたから振り返ってみると、
数人の女子生徒が一か所に集まって俺に話しかけてきた。
うんうん。やはり、まずは学生生活に欠かせない友人という基盤を作らないとな。
「君、アカデミア史上初のレッド寮なんでしょ? レッド寮ってオンボロなんだってね」
「ブルー寮と比べればそうかもしれないけど結構、落ち着くぜ?
ちなみに俺の名前は高槻優斗。君たちは?」
「私は高司優。こっちが山本舞、んでこっちが岩橋美奈」
えっと、左の腰くらいまであるロングの髪の人が高司さんで、
肩くらいまでの長さの髪の子が山本さん。ポニーテールで髪を結んでいる子が岩橋さん。
「でも、優斗君不運だったよね」
「なんで?」
「だってレッド寮って言い方はあれだけど落ちこぼれ寮なんでしょ?
将来とかに結構響くと思うからなるべく早く、上がった方がいいよ」
一応、入学してからも寮のグレードアップは可能。
高等学校の内容での非常に優秀な成績もしくはデュエルモンスターズでの優秀な成績をとれば、イエロー寮などに上がることは一応、制度としてはある。
でも、その非常に優秀な成績が高すぎて正直、届く気がしない。
「大丈夫だって。なんとかなるさ」
「楽観的だよ~」
高司さんの言う通り、俺は昔から楽観的だとよく言われるけどそんな感じで、
デュエルアカデミアの受験も乗り切ったし、まあ、今回も大丈夫だろう。
それにデュエルアカデミアに来た理由はもっと学びたいからで、
俺としてはプロとかに行く気も今はさらさらない。
そんなことを喋っていると始業を知らせるチャイムが教室に鳴り響き、
一斉に生徒たちが座り始め、チャイムが鳴ってから、また新しい先生が入ってきた。
「疲れた~」
ようやく今日のすべての授業が終了し、俺は机に突っ伏した。
あれから国語、数学、物理と高等学校の内容の授業が連続で続き、
デュエル大好きな俺としては非常に重苦しい内容だったけど何とか乗り切った。
やっぱり、デュエルアカデミアってレベル高すぎるだろ。英語は話す言葉、書いている言葉、全部英語だし、物理も文字なんてほぼないし、数学なんか矢印とか数式しかなかった。
しかも周りの連中はそれに余裕の表情でついていっている。
「お疲れ様。じゃあ、アリーナに移動してくれ」
「へ? アリーナ?」
思わず、思ったことが口から出てしまったのだが静まり返っていた教室内で口から出たので、思いのほか教室全体に反響し、皆どころか先生まで俺の方を向いてきた。
「なんだ。予定表を見ていないのか」
「す、すみません」
「まあ良い。これからデュエル講座だ」
それを聞いた途端に今までの疲労が一気に吹き飛んで行った気がした。
ようやくデュエルアカデミアでデュエルモンスターズのことが学べるのか!
教室から出ていくみんなを追いかけて俺も森先輩に案内されたアリーナへと向かった。
その道中、いくつも視線をぶつけられてきたけど俺はそれを無視してアリーナへと向かい、
入口から中に入ると観客席ではなく、中央に設置されているフィールドに出た。
なんで違う入り口から入ったんだと思えばここに来るためか。
そのフィールドの中央には一時限目でインスタントデュエルを行わせた女性教諭が、
腕にディスクを装着した状態で立っていた。
「今日は初回ということなのでクラス分けを行う。私ひとりではこの人数は見切れない。
よって3グループほどに分けるがその分け方は非常に簡単だ……全員、私とデュエルをしてもらう」
先生がそう言った瞬間、周りの連中が急にざわめきはじめた。
「なあ、山本さん。なんでみんなざわついてんの」
「知らないの? あの先生……ミシェル・ハワードって言う先生なんだけど、
プロリーグで一回しかデュエルしてないんだけどその一回でチャンピオンを倒したって言う噂だよ。
でも、何故かプロにならずにアカデミアの教師になったんだけど」
ほほぅ。つまり超強いってわけだ……でもなんでアカデミアの教員やってるんだ?
ここの教員やるよりもリーグの方がはるかに給料いいのに。
「まずは出席番号一番。来い」
「は、はい!」
こうしてグループ分けを行うデュエルが開始された。
とりあえず今の目標は思い浮かべているお話を全部書くこと!