ナノカレコード~顔無し手品師のうわさ~   作:唐揚ちきん

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第二話『かごめと鏡像の少年』②

 視界が黒一色に包まれている。

 透明度の高い黒が、さあっと私の身体を周りを駆け抜けていく。

 ううん。多分逆。私の身体がこの闇を駆け降りているんだ。

 時間にして十秒ほどで、私の足は硬い地面の感触を思い出した。

 

「ん……。あれ、ちゃんと地面がある……?」

 

 ローファーで何度も確かめるように地面を踏む。

 ホッと一安心して周囲を見回すと巨大な黄緑色の壁が視界の大半を覆っていた。

 

「何、これ……」

 

 薄っすらと発光する黄緑色の巨大な壁は天井近くでカーブしていて、半円状になっているようだった。

 近付いて目を凝らすと、黄緑色の六角形がいくつも重なり合うように作られている。

 流石に手で触れる気にはなれなかったけど、床や外側に見える壁は継ぎ接ぎの鏡のような景観から浮いて見えた。

 何となくだけど、この黄緑色の壁は最初からあったんじゃなく、後から付け足された違和感がある。

 私はその黄緑色の壁に沿って進み、あの野性味のある中沢さんの姿を探した。

 不安とほんの少しの後悔が滲んできた頃、ようやく彼の後ろ姿を見つけることができた。

 一枚の大きな姿見の前に向き合うように立っている。

 良かった。ちゃんと会えた。

 

「中沢さ……」

 

 だけど、姿見に映し出されていたものを見て私は固まった。

 そこに映っている人物は、反射した彼の姿じゃなかった。

 空色の髪をした黒いゴシックロリータ風の衣装を着た女の子。

 にこやかだけど、どこか空虚な印象の笑みを浮かべている。

 直前にいろはさんの微笑みを見た私には、その笑顔が空々しい理由が分かった。

 目が、笑っていないんだ……。

 口元は横に引いているのに、瞳だけはまったく細められていない。

 その紫色をした瞳が、前に居る彼じゃなく、私へと焦点を合わせるように動いた。

 

『あら。上の階に居たお客さんじゃない。アキラちゃんが連れて来てくれたの?』

 

「う……」

 

 アリクイに似たの生き物と出会った時よりも、私は恐怖を感じていた。

 何かもっと根本的に人とは違う何かが彼女の笑みから滲んでいるような、そんな錯覚があった。

 

「あん? かごめじゃねーか。オメー、帰ったんじゃねぇのかよ。何でこんな場所に来てんだ」

 

 野性味のある中沢さんに話し掛けられて、私はようやく硬直していく意識から解放された。

 だけど、タイミングを見逃したせいでどう切り出せばいいのか分からない。

 

「えっと、その……」

 

「んだよ! はっきり言えや!」

 

 もごもごと口を動かしていると、野性味のある中沢さんに怒られた。

 しょうがないので腹話術でアルちゃんに代弁してもらう。

 

「<かごめちゃんはね、君にお礼を言いに来たんだよ>」

 

「おう、そうか。律義だな、オメー」

 

 褒められた! ……じゃない。ちゃんと自分の言葉で言わなきゃだめだ。

 

「その、助けてくれて、ありがとうございました!」

 

 思い切り声を張って彼に伝える。

 

「おう。どういたしまして」

 

 思ったよりもあっさりとした返事に私は少し拍子抜けする。

 でも、それが逆にこの人らしいとも思えた。

 

「やっぱり、中沢さんは化け物なんかじゃないです」

 

『いいえ。アキラちゃんは化け物よ』

 

 私の言葉を否定して、話に割り込んで来たのは鏡に映る空色の髪の女の子だった。

 紫の瞳が蛇のように私を絡め取る。

 

『私が作った、私のための使い魔(バケモノ)。それがアキラちゃんなんだよ』

 

「あなたが作ったって……」

 

『初めましてだね。私は瀬奈(せな)みこと。この結界を作った魔女の切り離された半身。気軽に“みことちゃん”って呼んで』

 

 結界……? 魔女……?

 知らない単語ばかり出て来たけど、それが良い存在のようには聞こえない。

 でも、それより気になるのは。

 

「みこと、さん。中沢さんを作ったって言ってましたけど、どういうことですか?」

 

『うん? 言葉通りの意味だよ。必要だったんだぁ。あの邪魔な障壁を消してくれる力を持つ人が』

 

 忌々(いまいま)しそうに黄緑色の壁を一瞥(いちべつ)するみことさん。

 やっぱりあの壁は元々この場所に存在していたものじゃないんだ……。

 

『そうだ。障壁が消えた後、目的の部屋に行くための身体が欲しかったんだ。ねぇ、かごめちゃん、だっけ? あなた……その身体、私に()()()()()?』

 

「え……」

 

 甘く囁く声と一緒にみことさんの紫色の瞳が妖しく光った。

 同時に頭の中で霞がかかったように意識がぼやけてくる。

 私の身体……みことさんにあげちゃってもいいかな……?

 だって……欲しいって、言ってるんだから……。

 

「しっかりしろ。オメー、魔法掛けられてんぞ」

 

「ふぇ……!」

 

 トンと頭をチョップされ、私は夢見心地から現実に引き戻される。

 さっきまで私の頭を支配していた、霞が綺麗さっぱり消えるように追い出されていた。

 意識がはっきりしてくると、自分が今まで考えていたことの異常さが理解できた。

 

「私、今、自分の意思で身体をみことさんにあげようとしてたの……?」

 

「そういうセコい魔法なんだよ。こいつの“暗示の魔法”は」

 

『その、セコいって言い方はよくないわ、アキラちゃん。……ていうか、何で私の意思に逆らうことしてるの? あなた、私の使い魔なんだよね?』

 

 姿見の中でみことさんは、腰に手を当てて文句を言っている。

 お茶目な仕草だが、微笑ましさは感じない。

 人じゃない何かがおどけて人の真似をしているような、もしくは思ってもいないことを大袈裟に表現しているような、異質さだけがあった。

 

「確かに俺サマはオメーの使い魔だ。だがよ、俺サマが何をしたいかは俺サマが決める。言いなりになるってのはどうも性に合わねぇんだ」

 

『ええー、よっぽど元になった子が従順だったんだね。反転して、かなりのワガママになっちゃった。もっと時間を掛けて作ればよかったのかな? でも、複製する機会を逃すよりはいいよね、きっと』

 

「みこと。オメー、会話する気があるように見せかけて、実は発言が自己完結してんのな」

 

 呆れるでもなく、野性味のある中沢さんはむしろ感心したように言う。

 そういう意味では好き勝手に喋っているように見えて、ちゃんと会話をしてくれる野性味のある中沢さんと対照的だった。

 ……この“野性味のある中沢さん”っていう言い方もそろそろ変えた方がいい気がする。

 でも、内心であっても、彼を偽者とかコピーとはどうしても呼ぶ気にはなれなかった。

 

「<中沢さん、ちょっといいかな?>」

 

「何だよ、アル・チャン。急に改まって。俺サマとオメーの仲じゃねーか。何でも言えよ」

 

 ……どういう仲なんだろう? まだ出会って三十分も経ってないはずなのにアルちゃんとは親友同士みたいな関係になってるらしかった。

 この人の距離の詰め方は本気で見習いたいと思う。

 

「<かごめちゃんが中沢さんにあだ名を考えたみたいなんだけど、呼んでみてもいいかな?>」

 

「何だ、んなことかよ。構わねぇぜ。『ハンサムガイ』でも『イケメンキング』でも好きに呼べよ」

 

 とにかく、見た目を褒めてほしいみたいだった。

 そういう方向性のあだ名ではないんだけど、と思いながら、私は考えついたあだ名で呼んだ。

 

「『逆沢(ぎゃくざわ)さん』、って呼んでもいいですか? あっちの中沢さんとは真逆っぽい印象があったので。あ、でも、音としては『逆沢(さかざわ)さん』の方が元と近いかも……」

 

「真逆の“逆”で逆沢(ぎゃくざわ)か。べらぼーに良いあだ名じゃねーか。気に入ったぜ。サカザワだと微妙に語感が良くねぇし、普通に居そうだから、ギャクザワの方にするか」

 

 何だか予想していたよりもずっと喜んでくれたので、私もなんだか嬉しくなる。

 逆沢さんは何度か私が付けたあだ名を試すように呟き、満足そうに頷いた。

 

『ちょっと、アキラちゃんたち! 私を()け者にして二人だけで盛り上がらないでよ、もう。この場所の主人は私なんだから』

 

 むうっと頬を膨らませて、みことさんは怒り出す。

 でも、その怒った態度も本心からのものなのか判断できなかった。

 逆沢さんは片目を(つむ)って軽い調子で謝った。

 

「おう、わりぃわりぃ。んで何の話してたんだっけ?」

 

「ちゃんと聞いてて! 私たちで神浜を滅ぼそうって話だよ」

 

 神浜を滅ぼす……。

 あのアリクイ風の生き物が突き付けてきた誓約書の中にも書いてあったことだ。

 みことさんは本気でこの街を滅ぼそうとしているんだ。

 

「そんなことは、やっちゃ駄目だと思います……」

 

『どうして? 神浜は滅亡した方がいい最低の街よ。むしろ、皆、それを望んでいるの。私はそれを知ってる』

 

 みことさんは悪びれるどころか、自分がやろうとしていることが正しいと信じているみたいだった。

 むしろ、それが分からない私に憐れみの眼差しすら向けてくる。

 

「……私はそんな風には思えません」

 

『それはあなたが無知なだけ。知れば、あなたも私が正しいってことに気付くはずだよ』

 

「何を知っても、私はこの神浜が滅んでもいいなんて……そんな考えにはなったりしません」

 

 私のそう告げると、彼女は薄っすらと口の端を引いた。

 まるで私のその言葉を待ち構えていたように形の良い瞳を見開いて言い放つ。

 

『言ったね? じゃあ、約束して。もしこの街が、ううん……この世界が存在するに値しないものだって、そう思えたら、この誓約書に最後の一文字を書き込んでくれるって』

 

 ひらりと天井から一枚の紙切れが舞い落ちる。

 そこにはこう書き記されていた。

 

 

 

            【誓約しョ 】

 

          ワたシハ、神ハまヲ

 

         滅ぼスコとヲ、誓イま、ス

 

           なマエ:佐鳥かご 

 

 

 

「……さっきの誓約書っ!?」

 

 逆沢さんのおかげで最後まで署名せずに済んだ、神浜の滅びを誓う誓約書だ。

 ボールペンで書かれた震えた文字は間違いなく私の字だし、逆沢さんが踏み付けた靴の跡もしっかり残っている。

 

「なんだ、みこと。オメー、まだそんなモンをかごめに書かせる気かよ? 大体、こいつは魔力もねぇ一般人だぜ。そんな誓約させる意味あんのか?」

 

 逆沢さんの疑問はもっともだった。

 私はいろはさんたちのような魔法少女でもなければ、中沢さんのように不思議な力を持っている訳でもない。

 本当にただの無力な女の子だ。

 そんな私を誓約書まで使って従わせる理由がない。

 だけど、みことさんは人差し指をピンと張り、得意げに言う。

 

『確かに今のかごめちゃんは無力な一般人だね。でも、きっと、最終的には大きな力を持つ存在になるわ。私には分かるの。かごめちゃんは神浜を滅亡のためのキーパーソンになるって』

 

「ふーん。かごめ、オメー、滅亡のキーパーソンになるんか?」

 

 逆沢さんが私に話を投げて来たので、ぶんぶんと頭を横に振って否定する。

 

「な、なりません……」

 

「ならないってよ」

 

『なるわ』

 

「なるのか」

 

 ……何なんだろう、この雑な会話のやり取り。

 回答を受けた逆沢さんが、この話題について関心が無さ過ぎて、虚無みたいな中身のない会話になっている。

 これ見よがしに「ふわぁっ」と大きなあくびをして、口を押えた。

 

「結局、オメーら、意見割れてんだろ。みことは神浜を滅ぼす。かごめは神浜を滅ぼしたくない。ならよ、どっちの意見が正しいかはっきりさせようぜ」

 

『いいわよ。なら、神浜の歴史を見せてあげる。過去に何があったのか。どうして神浜は滅ぶべきなのか』

 

 みことさんが映っている鏡の後ろにある壁に一つの映像が投影される。

 それは対立するように立つ着物姿の二人の少女だった。

 

『これが知られざる神浜の物語。魔法少女がまだ戦神子(いくさみこ)と呼ばれていた戦国時代の……』

 

「アホかぁぁぁぁぁぁあああああ!!」

 

 唐突にみことさんの話を(さえぎ)った逆沢さんは、大絶叫と共に壁へ向けて、手のひらから創り出したトンファーを投げ付ける。

 一瞬にして、壁へ投影されていた映像に(ひび)が入り、粉々に砕け散るように消滅した。

 ……な、なんで?

 

『何するの、アキラちゃん! まだ話の途中だったじゃない!』

 

「アホか、オメー! 今のこの街をどうこうするって話で、何で戦国時代の話見せられなきゃなんねーんだよ! どんだけ前から話す気なんだよ! つーか、俺サマたちには、その映像がみことの作ったデマカセかどうかも判断付かねぇだろ! ツッコミさせんなよ、俺サマはボケで光るキャラなんだぞ!」

 

『アホだなんて、アキラちゃんはお口ワルワルだね。これは東西の対立を語る上で大事なところなのに〜』

 

「知るか。んな昔話から始められてもウゼーだけだろ! 息の長いコンテンツで新シリーズが始まる度に『初代から調べろ』って圧掛けてくる老害古参オタクかよ!」

 

 ガルルルと噛み付くような調子で(まく)し立てる逆沢さん。

 そこまで言われて、何の疑問も抱かずに映像へと集中しかけた私も彼の言葉に納得する。最後以外は。

 過去の神浜に何があったとしても、それで現代の神浜の評価まで波及させるのは違う気がする。たとえ、それが何かの始まりなのだとしても、私は今の神浜を見て判断したい。

 何より、その映像を見せているみことさんが信用できない以上、彼女が見せる情報の内容を信じるのは難しかった。

 

『じゃあ、どう決めるっていうの?』

 

「そりゃ決まってんだろ。今を生きるヤツらに聞いて回んだよ。本当にこの街が滅んだ方がいい場所なのかどうかをな」

 

 当然だとでも言うように、逆沢さんは鼻を鳴らして答えた。

 

「かごめの署名はその結果で決めろ。そんでいいよな?」

 

「え……それは」

 

 そう聞かれて、返事を言い(よど)んだ。

 もしも、それでこの街の滅亡を望む声が多かったら、私が神浜滅亡に加担することになってしまう。

 私の手で神浜を、この地に住む人たちを傷付けることになってしまったらって思うと……。

 

「何だ、その面は。自信がねぇってか? この街がクソじゃねーことを信じられねぇと」

 

「……そうです」

 

 言い方は荒っぽいけど、内容としては大体、その通りだった。

 

「んでもって、そんなクソな街のクソな住人を殺す片棒担いで、自分の手は汚したくないワケか」

 

「う……。そういう風に言われると私……」

 

 何だか身勝手なことを言っているように思えてくる。

 でも、私はこの神浜市には越してきたばかりでほとんど何も知らない。

 どんな人たちが住んでいて、どういう風に生きているのか。

 私はそれを知らない。

 

「じゃ、こうしようぜ。かごめは神浜のいいとこ探して、それをみことに認めさせろ。クソなところがあっても、それを超えるいいところがあるって、思わせてみろよ。みことはかごめの言い分に納得できたら、その誓約書は捨てろ」

 

 意外にも逆沢さんは私を責めることもなく、別の提案をみことさんにしてくれた。

 だけど、当然ながら、みことさんは難色を示す。

 

『えー。それじゃあ、私ばかり損じゃない。ぶーぶー』

 

「ほほう。つまり、みことはかごめに神浜のいいとこ紹介されたら、コロッと心変わりしちまうってことだな。滅亡がどうのとか偉そうに(のたま)っといて、揺らいじゃうワケだ」

 

 挑発するような物言いで逆沢さんが言い放つ。

 掴みどころがなかったみことさんでも、その台詞にはカチンと来たようで微笑を浮かべつつも、怒りを(にじ)ませた。

 

『…………へぇ。いいよ、分かった。アキラちゃんがそこまで必死に()()()()()なら、その安い挑発にも乗ってあげる。かごめちゃんにこの街がどれだけ絶望で満ちているのか、自分の目で知ってもらうことにするね』

 

「だ、そうだ。かごめ。その代わり、オメーもみことの言い分が正しいって感じたら、誓約書に署名してやれ」

 

「は、はい……それだったら、私も署名します」

 

 みことさんにこの街を滅ぼすべきじゃないって思わせれば、解決できる。

 神浜のことはほとんど知らないけど、それでも良いところが一つもない場所だとまでは思わない。

 話がまとまったところで、逆沢さんが進行役を買って出た。

 

「それじゃあ、この結界から出て、神浜市を見て回ろうぜ」

 

『ちょっと待ってよ。私、このままだと身動き取れないわ』

 

 みことさんがそう言って、手を広げた。

 言われてみれば、彼女は姿見に映った映像であり、自分でどこかへ移動できるようには見えない。

 だからこそ、私を操って、身体を奪おうとしたんだろう。

 

「下にキャスターでも付けろよ。コロコローって俺サマが押して運んでやるから」

 

『嫌よ、そんな格好悪い移動方法。ねぇ、かごめちゃん。ちょっと頭の中に私を入れてくれない? そうすれば、私はあなたと目や耳を共有できるし。ね、ね? いいでしょ?』

 

「ええ……」

 

 とんでもない申し出をされちゃった。

 みことさんを私の頭の中に入れる……。そのまま身体を乗っ取られそうで怖いから、断りたいところだけど、その展開になったら逆沢さんは何とかしてくれるはず。

 

「わ、わかりました……お手柔らかに」

 

『やった。じゃあ、失礼するね……』

 

 その言葉の後、姿見の中からみことさんの姿がパッと消えた。

 次の瞬間には、頭の中でみことさんの声が響く。

 

『うん。やっぱり、かごめちゃんの頭の中は快適だね。奇抜な芸術のことばかり考えてる誰かさんより、ずっとスッキリしてる』

 

 誰かと比べているような発言だけど、私以外の頭の中に居たことがあるんだろうか。

 とにかく、これで私はこの結界から出られるようでちょっとだけ安心する。

 

「その様子だと準備はできたみてぇだな。そんじゃ、改めて神浜巡りと行こうぜ。どっから見に行く?」

 

『そうねぇ。南凪区の鏡屋敷だとさっきの魔法少女たちと鉢合わせになっちゃう可能性があるし……ここは大東区の“まやかし町”に繋がってる結界から出よっか。あそこが一番この街の歪みを象徴する場所だから』

 

 こうして、私の滅びを決めるための取材は始まった。

 神浜は滅ぶべきなのか。そうでないのか。

 それを調べる審判の情報収集。

 

 これはその、“可否を決める記録(ナノカレコード)”の序文。

 

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