ナノカレコード~顔無し手品師のうわさ~   作:唐揚ちきん

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第十六話『中沢君と噂の守り人』④

 会える……! もうすぐ会えるんだ……!

 (はや)る気持ちを抑え、俺は走って七海さんの家へ向かう。

 紆余曲折(うよきょくせつ)あったが、万々歳で深月ちゃんに住所を教えてもらい、俺はようやくヌルオさんと会うことができた。

 ヌルオさんに会ったら、何から話そうか。

 それを考えるだけで頭がいっぱいになる。

 最初はまずは謝ろう。

 俺があの時、上条に顔を見られたことで動揺したから、ヌルオさんは勝利よりも俺の立場を守ることを優先してしてくれた。

 そのせいで大きな怪我を負わせてしまった。

 全部、俺の弱さが招いた結果だ。

 だから、その次はもう大丈夫だって言おう。

 正体がバレたって逃げ出さない。たとえ、上条と戦うことになっても構わない。

 もう一度ヌルオさんに協力させてほしい。

 また一緒にヌルオさんと戦わせてほしい。

 そう伝えたい。そう聞かせたい。

 だが、そんな俺の想いとは裏腹に、七海さんの家がまで通り道は異様に混雑していた。

 立ち並んでいる行列がどこまでも続き、通行を邪魔してきて、うまく進めない。

 何なんだ、この行列は……。

 よくよく見れば、『アイドル握手会』だとか『現在待ち時間』だとか書かれたプラカードを持った係員らしき人たちがそこかしこに居る。

 どうにも近くでアイドルの握手会が開かれているようだった。

 

「もう、何なんだよ……。と、通してください。通りたいだけなんです!」

 

「すいません。ここ、今、握手会のため封鎖状態になっているんです。申し訳ありませんが、別の道を通って頂けますか?」

 

 無理に通ろうとしたところ、係員に止められて追い返されてしまう。

 この道を通らなかったら、かなり回り道をする羽目になる。

 ここまで来て、それはあまりに惨い。

 まるでお預けを食らった犬のような気分で立ち竦んでしまった俺だったが、だからこそ、違和感に気付いた。

 アイドルの握手会に並んでいる人の首元に同じタトゥーのようなものがあった。

 それも一人ではない。全員が皆、同じようにタトゥーを入れている。

 アイドルのシンボルか何かを入れているとしたら、かなりロックでファンキーだ。

 だが、それにしては行列の人間は虚ろな目をしていた。

 タトゥーについて聞こうかと、係員の方にもう一度目を向ける。

 

「……っ!」

 

 行列の人たちと同じように虚ろな目で遠くを見つめていた。

 首元にも同様のタトゥーが付いている。

 これはおかしい。

 今までウワサや魔女を見てきた俺だから分かる緊迫感。

 何か普通じゃないことがこの場で起きている。

 早くこの場から逃げないと……そう思った時には既に手遅れだった。

 視界がぐにゃりと歪み、見渡せる景色が強制的に切り替わる。

 次に目に映った街並みは、ファンシーな世界になっていた。

 空は束ねられた薄ピンク色のカーテン、床は広がった布団と転がる枕で覆われている。

 ところどころに桃色のビーズの輪が虚空から垂れ下がっていた。

 印象としては天蓋付きのお姫様ベッドを広げて、伸ばしたような空間とでも言えばいいのだろうか。

 これはウワサの異空間? いや、この混沌とした感じは魔女の結界か?

 どちらにせよ、今の俺にはどうすることもできない。

 

「とりあえず、化け物に出会う前に隠れないと……」

 

 隠れられる場所を探そうと周囲を見渡す。

 何か巨大なものがじっとこちらを見ていた。

 ピンク色のデフォルメされたウサギの着ぐるみを大きくしたようなものがじいっと卵型の瞳で俺を眺めている。

 

「あ……」

 

 初っ端で見つかってしまった。

 あれがこの結界の主だ。あそこまで我が物顔で中心に居る存在が主でない訳がない。

 二頭身のウサギはのそのそとした緩慢な動作で俺の目の前にやって来る。

 俺を見下ろすその表情は無機質で、その巨体も相まって、恐怖しか感じなかった。

 

「ひぃ……こ、怖いぃぃ」

 

 こんなにも恐ろしいものだったのか。

 こんなにも恐ろしいものと今まで向き合っていたのか。

 ヌルオさんの中で見ていた光景とは違う、本物の恐怖。

 瞬きが止まらない。筋肉が震える。肌が(あわ)立つ。

 死が、あまりにも近過ぎる……。

 根源的な恐怖が逃げるという選択肢さえ奪い去り、その場で身体が硬直する。

 

『leksfjij;/j;arkgjluierjs;wiaef;ohawflhwri;hgi;alwrhrliーー!!』

 

 様子を見下ろしていた二頭身のウサギの魔女は、俺の反応を見た瞬間、突如激しい怒りを露わにした。

 ピンク色の皮膚が青黒く変色したかと思うと、デフォルメのきいた頭が中心からパックリと割れ、人間の骨盤が内側から露出する。

 もはやその姿はウサギの魔女ではなく、骨盤の魔女だった。

 長い両耳がより肥大化し、口のように開いた。その内側からギザギザした牙が飛び出すように生える。

 新たに生まれた二つの凶悪な口が、クワガタムシの(あご)のように俺を挟み込もうと迫った。

 

「う、うわぁぁぁぁっ!」

 

 挟まれたら最後、俺の身体は容易く、あの鋭い牙で食いちぎられる。

 考え得る限り、最悪の死に方が脳裏を()ぎる。

 死にたくない。死にたくない。死にたくない。

 なのに身体は動かない。動いてくれない。

 膝が笑って、内股で震えている。

 それでも辛うじて立っているのは脚の筋肉が未だに硬直しているからだ。

 死の絶望が俺を吞み込もうとしていたその時だった。

 どこからか飛来した一本の槍が、俺と骨盤の魔女の隙間に突き刺さる。

 それに反応し、一旦骨盤の魔女は動きを止めた。

 同時に俺の真横から白い何かが走り寄って来て、俺を抱え上げた。

 骨盤の魔女から距離を引き離す。

 見上げた俺の目の中で白いフードが加速の勢いで外れ、その奥のピンクの髪が解放された。

 

「もう大丈夫だよ、中沢君」

 

 魔法少女の姿の環さんが俺を抱えて微笑んだ。

 

「間一髪、ってところね」

 

 その隣に並ぶように七海さんが槍を構えて立っている。

 彼女もまた青い魔法少女の衣装を纏っていた。

 

「環さん……七海さん……」

 

 呆然と呟く俺に気遣うように環さんが言った。

 

「何が起きてるのか分からないよね。実は私たち、魔法少女なの」

 

「いきなりのことで頭が混乱しているはずよ。環さん、とりあえず、彼を安全な場所に移動させましょう」

 

 

 二人が魔法少女だということは、とうの昔に知っていた。

 呆然としてしまったのは、魔女への恐怖とそれに何もできない俺自身への失望だった。

 せめて、化け物と相対しても逃げるくらいのことはできると思っていた。

 俺にはそれだけの精神力があると信じていた。

 だが、実際は違った。

 幸運水のフクロウ程度とは規模の違う、巨大な化け物に足が竦んで何もすることができなかった。

 怖かった。どうしようもなく、怖かったのだ。

 腕の中で震える俺に気が付いた環さんは、抱えていた手で優しく背中を(さす)る。

 

「怖かったよね。私も初めて見た時は怖くて仕方なかったよ」

 

 慈愛に満ちた瞳で俺を見つめてくる。

 違う……違うんだよ。初めてじゃない。初めてじゃないんだ……。

 ずっと見てきたんだ。ずっと戦ってきたはずなんだ。

 それなのに俺は、こんなにも無力で見っともなく怯えてる……。

 ヌルオさんの中に居た時は、恐怖なんて微塵も感じてなかったのに。

 

「環さん。早く彼を結界の外へ連れて行ってあげて」

 

「はい……あ、でも、もう大丈夫かもしれません」

 

 七海さんの指示を受けた環さんは俺をこの空間から連れ出そうとして、上を見上げた何かに気が付く。

 耳から生えた二つの口から牙を光らせ、突進してくる骨盤の魔女。

 だが、その牙が俺たちに触れることはなかった。

 真上から降ってきた来た黒い姿の人影に踏み付けられるように、床へ叩き潰される。

 黒いシルクハットにテールコート。白い手袋に握られたステッキ。

 見覚えがあり過ぎる、その姿に俺の思考は固まった。

 ……嘘だ。そんなことあるはずがない。

 押し潰された骨盤の魔女に黒いステッキが突き立てられる。一瞬にして、魔女の巨体は跡形もなく消え失せた。

 それはもう手品(マジック)のように。

 彼を見て、七海さんが呆れたように肩を竦めた。

 

「後から現れて、いいとこ取りとは随分な身分ね。今回は来なくていいって言っておいたでしょう」

 

 彼女にそう呼ばれた手品師風の姿の少年は、落ちていたグリーフシードを拾うとシルクハットを改めて被り直した。

 

「そう? あまりにものんびりしてるものだったから、てっきりピクニックでもしてるのかと思ったよ」

 

 聞きなれた皮肉。だけど、その喉から聞こえる声音は俺の知らないもの。

 決して大きな声ではないのに澄み渡っていて、よく通る少年の声。

 

「……代わりに別のウサギを退治してあげましょうか?」

 

「あはは……。魔女に襲われそうになっていた人を助けてたんですよ。そう言わないでください、ヌルオさん」

 

 ヌルオ――。

 それは俺が会おうとしていた、恩人であり、共に戦う契約をした相棒の名前。

 彼は、俺が身体を貸すことで実体化して戦うことができるようになっていたはずだ。

 俺の身体は今、こうしてここにある。

 それなのに、彼はいつもの手品師の姿で俺の前に立っていた。

 

「ヌルオ、さん……?」

 

 呼びかけた声にヌルオさんは、こう答えた。

 

「……ああ、中沢君か。元気だった? 僕は見ての通りだけど」

 

 

 ***

 

 

 俺は七海さんの自宅、みかづき荘にお邪魔していた。

 結界が消えた後、俺とヌルオさんの関係に興味を持った七海さんが招待してくれたからだ。

 

「それにしても驚いたわ。貴方がまさか、彼の身体としてウワサと戦っていただなんて」

 

 案内された広いリビングルームには俺と家主の七海さん、環さん、そして黒ウサギの姿になったヌルオさんが背の低いガラスのリビングテーブルを囲んで座っている。

 ただし、ヌルオさんは直接テーブルの上に座っていた。

 高そうな缶のクッキーと湯気の上がる紅茶でお持て成ししてくれた。

 

「はは……。俺は別に戦ってなんていないです」

 

「でも、中沢君はヌルオさんに協力して、かえでちゃんや私たちを何度も助けてくれたよね?」

 

 苦笑いする俺に環さんがそう聞いてくる。

 その問いには素直に頷く気持ちにはなれなかった。

 

「俺はただ、ヌルオさんに身体を貸して、その内側で見てただけ。何にもしてないんです……本当に何にも」

 

 だから、俺は魔女と対峙(たいじ)した時、何も動けなかった。

 環さんたちが助けに入ってくれなかったら、きっと本当に死んでいた。

 ヌルオさんを見つめると、彼はそれに同調する。

 

「その通りだね。中沢君は何もしていない。だから、こうして僕が一人で戦えるようになった今、君はもう用済みだ」

 

 冷ややかな言葉に突き刺され、惨めな気持ちで(うつむ)く。

 俺は用済みか……。

 そうだよな。何もできないどころか、足を引っ張るだけの身体なんて誰だって要らない。

 俺はそれくらい役立たずだった。

 環さんがそれを(たしな)めるように言った。

 

「ヌルオさん、何もそんな言い方は……」

 

「いいんだ、環さん……。本当のことだから」

 

 本当に恥ずかしい。

 ヌルオさんと一緒に戦っていた気になっていた自分が。

 必要とされていただなんて思い上がっていた自分が。

 どうしようもなく、幼稚で愚かで、恥ずかしい。

 

「中沢君。君はもう、この一件には何の関わり合いもない一般人だ。もう二度と会いに来ないでくれる? 邪魔なだけだから」

 

「……うん。分かった。今まで迷惑かけたよな? 本当にごめん」

 

 茶菓子にも紅茶にも手を付けることなく、俺は下に敷いていたクッションから立ち上がる。

 最後に立ち上がって、俺は(こぼ)れ落ちそうな涙を(こら)え、ヌルオさんに大きく頭を下げた。

 

「それでも会えてよかった。無事だって分かって……本当に安心した。今まで何の取柄もない俺のわがままに付き合ってくれて、ありがとう……」

 

 それだけ言い切って、リビングから出ようと扉のドアノブを掴む。

 泣き出さないように右腕で目元を押さえていたせいで、うまく掴めず、手際悪くガチャガチャとドアノブを弄った後、リビングを飛び出した。

 目元を拭って廊下に出た俺は、玄関に速足で向かう。

 だが、途中で何かにぶつかった。

 

「いっつ……。こんな時まで情けなさ過ぎるだろ……」

 

 尻餅を突いて転んだ俺は、近くを見回すだが、今し方、激しくぶつかったはずの何かは見当たらない。

 何にぶつかったのかも分からなかったが、この場所に居る惨めさが勝ち、立ち上がってすぐに玄関を開けて逃げ出した。

 走って。

 走って。

 走って。

 それでも感情が収まらなくて走り続けた。

 息が切れて、立ち止まった時、近く見えたのは公園だった。

 あれだけ走ったのにまだ新西区から出ても居ない。

 それどころか、近所まで帰って来ている。

 

「ははは……」

 

 これが俺だ。

 何もかも投げ捨てたい気持ちなのに、気が付けば、自分の生活圏に逃げ戻って来ている。

 どこまでも普通で、中途半端で、どこまでも情けない。

 公園に入って、ベンチに座る。

 下を向いて顔を押さえた時、ようやく安心して涙を(こぼ)せた。

 鼻水まで垂れてきて、とても人前に出れないような酷い顔をしていることが容易に想像できる。

 

「うっ、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 急に泣き声を上げた俺に驚き、遊具で遊んでいた子供たちは一緒に居た親に抱き着いて、こちらを見ていた。

 顔を(ひそ)めて、小声で何か話した後、不快にそうに公園から出て行く。

 一人になった公園で遠慮なく、俺は泣き(わめ)いた。

 

「わああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁっ!!」

 

 感情が空っぽになるまで泣いた後、服の袖で顔を拭う。

 それでも涙は更に(こぼ)れてくる。

 叫ぶ気力もないのに、涙は枯れてくれない。

 

「……?」

 

 目元を拭っていた時、ベンチの上に(たた)まれたハンカチが落ちていたことに気付いた。

 さっきまでこんなものはなかったはずだ。

 手に取って開くと、ハンカチの間にメモが挟まれていた。

 

『これ、使ってください』

 

 シャーペンで書かれた女の子らしい丸っこい文字。

 すぐに周囲を見回したけれど、そこには人の姿はどこにもない。

 透明な人間でも居るなら別だが、そんなものは……。

 いや、居る。俺には見えない透明な少女。

 俺は虚空に話しかけた。

 

「二葉さん……なのか?」

 

 そう尋ねると、しばらくしてベンチにメモの切れ端が落ちていた。

 

『そうです。私は二葉さなです。今、あなたの隣に座ってます』

 

「どうして、君がここに居るんだ?」

 

 質問の少し後にメモの返事が返ってくる。

 

『さっき、みかづき荘でぶつかったのは私です。飛び出していったのが見えて、追いかけてきました』

 

「どうして?」

 

 俺に問いにまたしばらくして、メモの返答が来る。

 

『あなたが、私に似ていると思ったから』

 

「俺が? 俺は魔法少女でもないし、何の力もないんだぞ? 君の姿だって見ることもできない」

 

『似てるのは、多分。自信がなくて、自分が嫌いなところ。必要な人をいつもどこかで求めているところです』

 

 そのメモを見て、言葉を失くす。

 そうか。この子も俺と同じような想いを抱えていたんだ。

 透明になりたいと願うほどに追い詰められていたんだ。

 でも、やっぱり俺との彼女は違う。

 

「俺には力がない。資格がないんだ。必要とされる資格が……」

 

『資格って何ですか? それがないと大切な人と一緒に居られないんですか?』

 

「そうだよ! 魔法も何もない俺はヌルオさんと一緒に居られない! 足を引っ張るだけの役立たずなんて、邪魔だって言われて当然なんだ!」

 

 声を荒げて、見えない二葉さんに当たり散らす。

 どこまで俺は惨めで最低なんだ……。きっと彼女も呆れて、どこかに行ってしまうだろう。

 それでもメモの返事は続いた。

 

『あの人は本当に無意味なことは言いません。あなたが本当に邪魔ならそれすら口に出さないと思います。私は、家族に邪魔とすら言ってもらえなかったです。本当の邪魔者は視界にさえ入れてもらえません』

 

 文面を読んで彼女がどんな家庭で過ごしてきたのか、その片鱗を感じ取った。

 透明になることを望んだのは彼女じゃなかった。

 二葉さんは、望まされたのだ家族にそうなるように。

 

『ヌルオさんはあなたを守るために、わざと辛い言葉を投げたんだと思います。それはきっとあなたが大事だから』

 

「でも、俺はもう必要ないんだよ……」

 

『あの人は一人でも戦えます。でも、それはずっとじゃない。万全に戦えるのは一分程度だって言ってました』

 

「一分……」

 

 それでもヌルオさんにとっては充分過ぎる時間だ。

 本気で戦う彼に一分以上も粘れる存在が居るとは思えない。

 動揺して何もできない俺の身体を使うよりもずっと有利だろう。

 

「足手まといよりは上等だろ……」

 

『あなたはどうしたいですか?』

 

「俺が、どうしたいかって?」

 

『自分の居場所は、自分で選ばないといけないです。辛くて、逃げ出しそうになるけど、ちゃんと見つめないと、誰も見つめ返してくれません』

 

「その言葉は……」

 

 ヌルオさんが彼女にかけた台詞だ。

 俺も聞いた、俺も知っている彼の厳しく温かな言葉だ。

 

『私もときどき自分の心から目をそらしたくなります。でも、目をつぶるのはダメです。あなたの心を透明にしないであげてください』

 

 そのメモを見つめた俺の目から、また涙が零れてくる。

 けれど、今度の涙はとても温かく、心地の良いものだった。

 鼻声で俺は答える。

 

「二葉さん、ありがとう……」

 

『私もアイちゃんみたいに、ヌルオさんみたいに、あなたの心を見つめることができましたか?』

 

「できてるよ……。誰よりも俺の心を見てくれた……」

 

 返事はもう来なかった。でも、もう出すべき答えは俺の心に書いてある。

 彼女の顔が見られないのが残念でしょうがない。

 きっと優しく温かな笑顔を向けてくれている気がした。

 透明な魔法少女は、俺の心の色を教えてくれた。

 もう一度、ヌルオさんと会おう。

 本当の意味で彼と一緒に戦うために――。

 




中沢君を立ち直らせる流れが非常に難産でした。
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