ナノカレコード~顔無し手品師のうわさ~   作:唐揚ちきん

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外伝 銀色の羽根

「魔法少女のみんな。かつて希望を抱き、いつか絶望を振り撒く魔法少女のみんな。よく聞いて。今回はみんなに良いお知らせと悪いお知らせをするわ」

 

 大聖堂の中で幼さのある澄んだ声音が響き渡る。

 集められた羽根たちへ演説を行っているのはマギウスの盟主、里見灯花。

 僕は彼女の斜め後ろに控え、その姿を静かに眺めていた。

 

「まずは悪い方のお知らせからね。白羽根・梓みふゆの造反行為。彼女はかつての仲間である七海やちよを始めとする魔法少女をフェントホープに引き入れ、マギウスの翼を乗っ取ろうと目論(もくろ)んだ。……そうよね? ()()、天音月夜、天音月咲」

 

 名指しされ、演壇へ上がる双子姉妹の白羽根の顔は青かった。

 特に姉の方の月夜さんの方は(うつむ)きがちで、震えている。

 とても人前に立ち、これから証言をしようという様子ではない。

 だが、里見灯花は意にも介さない。

 

「私は……」

 

 言葉に詰まる月夜さん。

 しかし、その後をすぐ月咲さんが言葉を継ぐ。

 

「ウチらは、梓みふゆが七海やちよと一緒に外から来た魔法少女を引き入れているところを見ました。侵入者を捕らえようとしたウチらを邪魔するところも。あの人は……あの人は……」

 

 意を決して語り出した彼女も、みふゆさんを叛逆者と罵ることへの躊躇(ためら)いが見て取れた。

 マギウスの翼において、みふゆさんに多少なりとも恩義を感じている魔法少女は少なくない。

 僕は、彼女たち姉妹がみふゆさんを個人的に慕っていたことも知っている。

 これは“絵踏み”だ。

 江戸幕府がキリストや聖母マリアの踏み絵を踏ませて、隠れた敬虔(けいけん)な信徒を見つけ出したように、梓みふゆへの(くみ)しかねない危険因子を炙り出すための儀式。

 証言という名の踏み絵を踏めれば良し、踏めなければ連行といったところだろう。

 ……悪趣味だが、合理的だ。

 更に大勢の前で行われることで、その中から彼女たちを助けようとする者が出れば一網打尽にできる。

 すぐ後ろにウワサと融合した由比鶴乃を控えさせているのがその証拠だ。

 

「どうしたのかにゃー? 二人とも証言の内容を忘れちゃったのかにゃー?」

 

 わざわざ月咲さんの横顔を覗き込み、里見灯花は可愛らしく尋ねる。

 二人は視線を足元に落として、射竦(いすく)められたように喉を震わせていた。

 この状況を楽しんでいるように見えるのは気のせいではない。

 もうこれ以上、(けん)に徹する気は微塵もなかった。

 僕は立ち上がり、月咲さんの肩に手を乗せ、後ろに引く。

 

「……恭介、君?」

 

 同時に前に出て、彼女の証言を無理やり引き継いだ。

 

「梓みふゆは許されざる反逆者です。彼女はマギウスの翼でクーデターを起こし、組織の掌握(しょうあく)を試みました。救いようのない極悪人です」

 

 声高にみふゆさんの悪辣さを論じ、在りもしない数々の罪科で糾弾していく。

 

「皆さんの中にも彼女に親切にされた方が居るでしょう。優しい言葉を掛けられた方が居るでしょう。しかし、それが梓みふゆの巧妙なやり方! 多忙なマギウスを差し置いて、信頼と尊敬を集め、自らに忠実な駒に仕立て上げようとしたのです!」

 

 自分で口に出した誹謗に吐き気を(もよお)した。

 しかし、それすら呑み込んで、更に中傷に塗れた論弁を振う。

 

「思い出してください。彼女の言葉を! それらはすべてあなた方の中の不満を煽り、マギウスへの忠誠を揺るがすための甘言。自分だけが味方のように思わせる洗脳。今になって考えれば、そうとしか考えられないものばかりだったのではないでしょうか?」

 

 里見灯花を一瞥(いちべつ)する。

 段取りにない僕の行動に僅かに驚いているようだが、無理に止めようとしないところを見るに、予定外でもマギウスの翼内の危険因子を排除できるなら問題ないようだ。

 それならこちらでシナリオを上書きさせてもらう。

 

「梓みふゆを信じたい。そう思う方は彼女たち白羽根の二人の様子を見てください。何故、彼女たちは梓みふゆが七海やちよと行動を共にしていた決定的な裏切りを目にしても糾弾ができないのでしょうか?」

 

 二人へ下に居る羽根たちの視線を集中させる。

 僕の乱入に動揺していた月夜さんと月咲さんの双子姉妹は、再び、衆人(しゅうじん)の目を向けられ、緊張に引き戻された。

 

「それこそが彼女たちが梓みふゆにマインドコントロールを受けていた証拠。梓みふゆは自身が持つ幻覚の魔法を利用し、彼女たちの心を完全に操っていたのです! 魔法少女が持つ固有の魔法はその魔法少女の願いが大きく反映されるというのは皆さんもご存じですよね? 果たして、幻覚という他者の目を(あざむ)くような魔法を得た彼女の願いは何だったのでしょうか?」

 

 身振り手振りで陥れるためだけの口上を語り続ける。

 僕は知っている。彼女の願いが“夢の中だけでも自由でありたい”という儚いものだったと。

 軟禁されて間もない頃、眠れずに夜を過ごした僕の元へ毎晩優しい夢を見せにきてくれた彼女に尋ねたのだ。

 願いごとの内容と、その願いに決めた経緯を。

 みふゆさんは隠すことなく、教えてくれた。

 水名区の旧家の出身で、幼い時から自由が無かったみふゆさんは、キュゥべえとの契約時に自由に生きたいと願おうとした。

 だが、ずっと親の言うとおりに生きてきたせいで自由を得てもどう使えばいいかも分からないと諦めた。

 代わりに願ったのが“せめて夢の中だけでも自由でありたい”というあまりにも些細で健気な願い。

 その結果、自分自身に幻覚をかける力。

 

『でも、恭介君の心を少しでもこの魔法で癒せるのだから、ワタシの願いも無駄ではなかったのかもしれません』

 

 そう言って笑いかけた彼女の顔は、決別した今でも忘れていない。

 その想いを胸の奥に抑え込み、批難の言葉を吐き出した。

 

「他者を惑わし、利用して優位に立ちたいという浅ましい欲望! その願いこそが梓みふゆという魔法少女が逆賊であるという何よりの証! そして、その邪悪な幻覚を打ち払ってくださったのが、ここに居るマギウス・里見灯花様に他なりません」

 

 片手を広げ、里見灯花の方を指し示す。

 誘導された視線は双子姉妹から、更に隣に立つ里見灯花へと移った。

 それを確認した後、月咲さんに目で合図を送り、演壇から立ち退くように指示する。

 彼女は何か言いたげな眼差しを向けたが、すぐに後ろへと下がって行った。

 

(たた)えましょう! そして、感謝しましょう! 幻覚に心を奪われかけた我らの目を覚ましてくれたマギウスに、今一度心からの信奉と忠誠を!」

 

 一拍を置いた後、マギウスを呼ぶ声が聖堂内で一つ、また一つと上がり始める。

 すぐにその声は伝播(でんぱ)し、拡大し、膨張していった。

 

『マギウス!』『マギウス!』『マギウス!』

 

 割れんばかりの羽根たちの声が大聖堂の中でこだまする。

 里見灯花はそれを少しの間眺めた後、てのひらを彼女たちの前に(かざ)し、黙らせる。

 動作のみで大衆の行動を制御する様には、カリスマ性を感じざるを得なかった。

 

「少し証言が長引いてしまったけれど、今度は良いお知らせを聞かせるわね。今回の件は、わたくしたちマギウスだけでは羽根たちへのケアが充分ではなかったことが原因の一つだったわ。だから、白羽根とマギウスを繋ぐ、新たな羽根を設けようと思ってるの。それが――“銀羽根”」

 

 里見灯花が僕の方へ視線を向けられると、指を一つ鳴らした。

 奥に控えていた黒羽根が何かを彼女へと恭しく、差し出す。

 それは銀色の糸で編まれたローブだった。

 

「灰羽根・上条恭介。叛逆者・梓みふゆの卑劣な魔の手からホテルフェントホープを守り抜き、彼女の一味である顔無し手品師を撃退した功績により、本日を()ってあなたを、マギウスに次ぐ階級、“銀羽根”とします。以後、マギウスに代わり、すべての白羽根の統括を一任します」

 

 公の場でさえ砕けた物言いの彼女が、格式張ってそう告げた。

 その発言こそが最大の栄誉であるかのようなパフォーマンスは、実に効果的ではあった。

 静まり返った壇上で銀色のローブが僕へ授与される。

 

「今のローブを捨てて、着てみせて」

 

 彼女の命令に応じて、僕は灰色のローブを脱ぎ去り、新たに銀色のローブを身に着けた。

 静謐(せいひつ)さがある銀色の生地には、印象よりも派手になり過ぎず、フードの縁には金の糸で上品な刺繍が施されている。

 肌に触れる質感は前に来ていたものよりも、しなやかで柔らかい。

 

「似合ってるわ。銀羽根・上条恭介」

 

 微笑む里見灯花の前で(ひざまず)いて、頭を下げた。

 

「恐悦至極に存じます。マギウス・里見灯花」

 

 手の甲を伸ばし、彼女は僕に尋ねる。

 

「あなたも、わたくしに心からの信奉と忠誠を誓ってくれる?」

 

 その手を取って、小さく華奢(きゃしゃ)な手の甲に口づけをした。

 壇上に立つ、残酷で無邪気で容赦のない指導者へ宣誓する。

 

「あなたが弱者のための魔法少女解放を目指す限り、僕はあなたの忠実なナイトとして信奉と忠誠を捧げます」

 

「そう……。嬉しいわ。わたくしたちのために身も心も尽くしてね」

 

 幼く可憐な顔立ちからは考えられないほど、妖艶(ようえん)な笑みを彼女は浮かべてみせた。

 忠実なる下僕の仮面の下で僕は誓う。

 ――もうこれ以上、彼女の好きにはさせない。

 羽根たちは彼女に都合のいい駒じゃない。感情ある女の子たちだ。

 どれだけ屈辱を受けようと、どれだけ心を踏み躙られようとも僕は魔法少女たちを守り続ける。

 

『銀羽根!』『銀羽根!』

 

『マギウス!』『マギウス!』

 

 騒然と響き渡る羽根たちの声を聞きながら、そう心から誓いを立てた。

 

 

 ***

 

 

 白羽根だけが集められた大部屋の中、ラウンドテーブルに並んで座る彼女の前に立ち、僕は改めて挨拶をする。

 

「さっきほど集会に参加していた人には必要ないけれど、中には所要で来られなかった人も居るから改めて自己紹介をさせてほしい。僕の名前は上条恭介。君たちの(まと)め役、“銀羽根”に任命された者だよ」

 

 白羽根の魔法少女たちは黙って、その名乗りを聞いていた。

 無駄話の一つもなく、傾注するその様には威圧感さえ覚える。

 一筋縄ではいかないだろう。

 彼女たちの中にもみふゆさんと仲の良かった子も居るはずだ。

 あのみふゆさんを貶めるためだけの演説に反感を抱いているに違いない。

 僕は、彼女たちから激しい批難を浴びることを覚悟して、尋ねた。

 

「何か質問がある人は居る?」

 

 すぐに一人の手が挙がる。

 僕が質疑応答の時間を設ける前から、言いたいことが決まっていた様子だ。

 小さく唾を呑み込み、挙手した彼女への質問を許可した。

 

「どうぞ、質問を」

 

「銀羽根様は……今、付き合ってる女の子って居るんですか?」

 

「…………えっ?」

 

 いくつか想定した質問とは大きく方向性の()れた問いに思わず、戸惑いの声が漏れた。

 続けて、その隣の白羽根が次々に口を開く。

 

「それ、気になってた」

 

「私も」

 

「……ええっ?」

 

 こんな無益な質問に興味を示すような世俗的な女の子ばかりだとは想像もしていなかった。

 悪意から、動揺させて溜飲(りゅういん)を下げに来たのかとも思ったが、それにしては全員真面目な顔をして僕を見ている。

 僕に交際中の女子が居るかどうかが、そこまで重要なことなのだろうか。

 何かの符丁(ふちょう)? それとも弱点となる交友関係を探っている?

 疑問しかないが、嘘を吐く理由もない。ここは正直に答えておく。

 

「居ない、けど」

 

「……しっ」

 

 机の下で小さなガッツポーズをする姿が散見された。

 果たして喜ばれる要素がどこにあったというのだろうか。まるで彼女たちの心中が把握できない。

 考えていても仕方ないので、次の質問へと移る。

 

「……他に質問がある人は?」

 

「はい。好きな女の子のタイプについて詳しく、聞かせてください」

 

 昔、さやかに勧められて見たドラマの中で、教育実習で女子高に訪れた主人公が質問攻めにされていたシーンが脳内で再生される。

 これは彼女たちなりのコミュニケーションであり、僕との距離の縮め方なのかもしれない。

 

『別にそれは君一人が背負うことじゃない』

 

 奴の言葉に従うのは(しゃく)だが、僕一人でできることは高が知れている。

 一人でも多くの黒羽根を守るには、その上に立つ彼女たちの協力が必要不可欠だ。

 ここは誠実に答えて行こう。

 

「素直な子かな。僕ははっきり物を言ってくれる人の方がタイプだよ」

 

「好きな髪形は?」

 

 続けざまに質問が飛んできた。

 もうあまり深く考えず、フィーリングで答えていく。

 

「特にないけど、短いよりは長い方が好みかな?」

 

「年上と年下、付き合うならどっち?」

 

「その二択なら年上だね。理由はさっきのタイプと同じで、遠慮される方が苦手だから。年上の方が気兼ねなく話してくれそう」

 

「ズバリ、ベストだと思う胸の大きさは?」

 

 自分でも何を話しているのだろうかと冷静になりつつあるが、どの質問にも誠実に答えていった。

 今の僕にできることは少しでも白羽根からの信頼を得て、トップダウンの組織運営から脱却することだ。

 横の繋がりを強化することで、マギウスの都合で処遇を決められる羽根たちを守れる。

 ヒートアップしていく質疑応答は約一時間にも及んだ。

 休憩を挟み、ラウンドテーブルの上に置かれたティーポットから紅茶を淹れて、皆で喉の渇きを(うるお)す。

 ある程度打ち解けて来たところで、僕は気になっていたことを彼女たちに聞いてみた。

 

「皆、梓みふゆのことをあれだけ中傷した僕に反感はないのかい?」

 

「いやいや、恭チャン様。流石に観鳥さんたちも馬鹿じゃないからさ。月咲チャンたち庇ってたの分かるよ」

 

 そう言ったのは観鳥(みどり)(りょう)

 長いサイドテールが特徴的な魔法少女だ。

 別に呼び方は自由でいいとは言ったが、僕直属の黒羽根が聞いたら憤死しそうなあだ名で呼んでいる。

 その隣に座る金髪のポニーテールの魔法少女、十咎(とがめ)ももこは肩肘をラウンドテーブルに乗せ、表情を(しず)めた。

 

「アタシは正直、聞いてて嫌だったな。でも、みふゆさんから恭介様がどういう子かってちょっと聞いてたし、本心じゃないだろうとは思ったけど」

 

「でも、恭介君がああ言ったのはウチらが何も言わなかったからで!」

 

 月咲さんがももこさんの反応に食って掛かる。

 

「分かってるって。だけど、聞いてて嫌なもんは嫌だったって言ってるだけでしょ。……ちゃんと話聞いてた?」

 

「何それ、ウチのこと馬鹿にしてんの!?」

 

 苛立っていたももこさんは月咲さんに棘のある言い回しで返した。

 それに対して、月咲さんも立腹する。

 喧嘩が始まりそうだったので、僕は仲裁に入った。

 

「待って。仲違いするために君らに集まってもらった訳じゃない。ももこさん、不快にさせてごめん。月咲さんもあまり気を負わないで。僕が勝手にやったことだから」

 

 姉の月夜さんにも妹の彼女を(いさ)めてほしかったが、月夜は申し訳なさそうに先ほどからテーブルの表面をじっと見つめたまま、無言だった。

 

「月夜さん……?」

 

「申し訳ないでございます! 本当は、本当は七海やちよたち侵入者を引き入れたのは私なのでございます……梓先輩は無実なのでございます!」

 

 不審に思って名前を呼ぶと、(せき)を切ったようにコメツキバッタのようにペコペコと彼女は頭を下げ始めた。

 それであの演壇の上であそこまで震えていたのか。元々、みふゆさんの行動とは思っていなかったが、月咲さん以上に怯えていた理由に納得がいった。

 だが、里見灯花のことだから、そんなことは百も承知の上だろう。

 あの場で処断しなかったということは、裏で追及されることもないはずだ。

 

「月夜さん。別に僕も本気でみふゆさんが裏切ったなんて思ってないよ?」

 

「へ? あうっ……」

 

 頭を上げ下げてる途中でブレーキが掛ったせいで、ゴンと良い音を立てて、ラウンドテーブルに額を打ち付ける。

 赤くなった額を両手で押さえながら、彼女は僕を見た。

 

「そうだったのでございますか!?」

 

「うん。そうだったんだ。実は……」

 

 その純粋な反応から、ずっと罪の意識で頭がいっぱいになり、今までの話など(ろく)に聞いていなかったのだろう。

 仕方なく、今話していた内容を事細かにもう一度説明した。

 緊張していた面持ちが徐々にほぐされ、安堵した様子で紅茶を(すす)る。

 

「はあ……これで心の重荷が取れたでございます。紅茶が美味しい……」

 

 うん……。それは流石にリラックスし過ぎだと思う。

 罪の意識を抱え続けろとは言わないが、もう少しみふゆさんに対して思うところがあってもいいのではないだろうか。

 何とも言えない雰囲気が部屋内に漂い始めたので、休憩を終わらせて、白羽根たち全員に言う。

 

「僕としての方針はたった一つだ。魔法少女の運命と向き合えない、すべての弱い魔法少女のために僕は戦う。そのために君たちにも協力してほしい」

 

 それだけは誰にも邪魔させない。

 顔無し手品師にも、みかづき荘の魔法少女たちにも、マギウスにさえも絶対に邪魔をさせる訳にはいかない。

 例え、誰が相手だろうとも譲る訳にはいかないのだ。

 

「観鳥さんは割に合ってると思える範囲内でなら賛成。他の皆は?」

 

「アタシも賛成だよ。むしろ、そういうのを期待して、ここに来たんだ」

 

「ウチは大賛成だよ! みふゆさんは居なくなっちゃったけど、恭介君なら安心できるし!」

 

「私も月咲ちゃんと同じ思いでございます」

 

『ねー』

 

 次々と賛同する声が上がっていった。

 (おおむ)ね、僕の方針は好意的に受け入れられ、ほっと胸を撫で下ろす。

 だが、本当に大変なのはこれからだ。

 部屋の窓から見える外の景色に目を向ける。

 コーヒーカップにメリーゴーランド。果てはジェットコースター。

 ウワサの遊園地、キレーションランド。

 この場所だけは守り抜かなければならない。

 ――来るなら、来い。顔無し手品師……中沢……。

 今度ばかりは容赦はしない。

 何があっても必ず……この手でお前たちを殺してみせる。

 

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