【美少女】なんか知らんのだが部屋にウマ耳ウマ尻尾の美少女が現れたんやが【降臨】 作:カフェイン中毒
「……なに、これ?」
「何ってトレーナー、ミスティだよ?」
「うんごめん、聞き方が悪かったね。なんでミスティがひっくり返って仰向けで脚をピンと伸ばしてるのかって聞きたいの」
「テレビで外国の人が馬にこれやらせてたからミスティもできるかなって」
「そっかあ……」
うららかな春、何時ものように放牧場に足を運んだ男はトウカイテイオーがミスティストリームをひっくり返しているところだった。背中でうまい事バランスをとるミスティストリームはとりあえずやってみたけどナニコレ?という顔をしており男が呼びかけるとすぐさま起き上がって男に甘えだした。
レースを引退し母になったミスティストリームではあるが人懐っこさも何も変わらず、相変わらず甘えん坊である。そして、周りの引退馬たちも男がやってきたことに反応して集まりだした。群れのボスであるミスティストリームを頂点としたURAの牧場は規模を拡大し、現在では引退馬を受け入れて飼養しているのである。
男がそれを始めた理由はもともと、引退馬を飼いたいと思っていたことに加え、いつまでもミスティストリームとその家族だけでは寂しいかもしれないと思ったということ、そして競走馬の負の部分を知ったウマ娘たちから少しでも力になりたいというお願いを聞いたからである。
「ミスティのおかげでみーんな穏やかになったなあ。リクなんて来たときは俺のこと蹴ろうとしたんだぞ?覚えてるか?ん?」
リクと呼ばれた尾花栗毛の騙馬は聞こえませーん、と言わんばかりに男から顔を背けるがミスティストリームがブルッと鳴いた途端男の後ろに隠れた。どうやらミスティストリームは男を蹴ろうとしたことをいまだに怒っているらしい。トウカイテイオーはそうだよーとぷくっと頬を膨らませてリクに抗議をする。
ミスティストリームとウマ娘に相対すると気性難の馬でもあっという間に人を信頼するようになる、というのは言い過ぎだが噛んだり、蹴ったりといった危険な行動をすることはなくなる。特に振れ幅が大きいのは先ほどのリクことリクローという馬で、来たときは威嚇を繰り返し熟練の厩務員でも手を焼いていたらしい。まあ絆された結果今は鼻をつまんでも怒らない馬に変わったが。
「にしてもなんで一発芸なんてミスティに教えようとしたんだ?」
「えーだってホースセラピーやるんでしょ?だったらインパクト大事じゃん!」
「自分がインパクトの塊だろ」
「ふふん!そうさボクは無敵のトウカイテイオー!」
「はいはい」
胸を張ってドヤ顔しつつ褒めろ!と暗に言っているトウカイテイオーを男はぐしゃぐしゃと頭を撫でて褒める。むふー、という満足げな顔をしていたトウカイテイオーに思わず笑顔になった男だったが、つんと背中を突かれて振り返るとそこには鹿毛、葦毛、栗毛、白毛といった引退馬たちが私も私もとアピールしていた。そしてさり気に最前列にいるのはゴングドラムとミスティストリーム夫妻である。男は両手を広げて馬たちを思いっきり可愛がってやるのだった。
「じゃ、始めていきます。よろしくお願いしますね~」
「「「「「よろしくお願いします!」」」」」
数日後、男とインストラクター、ついでになぜかいる豊騎、龍巳という超ベテランのジョッキー二人、なんでいるとかは聞いてはいけない。元相棒と愛馬に会いに来ているだけである。さて、男がなぜホースセラピーをしようと思い至ったのかであるが、まずは社会福祉が一つ、そして動物への福祉、というか引退馬の新しい役割としてセラピーホースはどうかと考えたからである。そして第二にURAの収入源の拡充である。今や大組織になりつつあるURAではあるが株式会社化してはおらず株式という形で資金調達ができない。
で、現在のURAの収入はウマ娘関係が6割、3割がミスティストリームなどの競走馬関連、そして残りを男の財布が埋めている。男はここから自分の収入を抜いてウマ娘と馬で組織が回る様にしたいと考えているのだ。というのもいつ何が起こるか分からない以上、男がいなくなったとしても回る様にしなければならない。もちろんいなくなるつもりはさらさらないが保険を掛けるのが社会というものだ。
さて、男とウマ娘たちの前にいるのはハンディキャップや精神的に傷ついた小学生から高校生ほどの子供たち。大きな声で挨拶をしてくれた子や俯いて声を出せなかった子、親や保護者に付き添われながらも目の前にある光景には興味が沸いているらしい。
というのも今彼らの目の前にはこれから一緒に過ごす馬たちがずらりと並んでいるのである。全て引退馬でレースを走ったサラブレッドたち、引退し穏やかに過ごしているおかげかそれぞれ優しい性格に変わっていった馬たちだ。葦毛の牝馬「グレイシャール」の手綱を持つのはメジロマックイーン、ゴールドシップ。リクローと一緒にいるのはタイキシャトル、メイショウドトウ、鹿毛の「マロンリップ」はトウカイテイオーとダイワスカーレット、黒鹿毛の「トライスパロウ」はナイスネイチャとマチカネタンホイザがそれぞれ担当厩務員とインストラクターを伴って一緒に待っている。
そしてミスティストリームとゴングドラムは豊騎とサイレンススズカ、ウオッカ、スマートファルコン、レイジングドラムとトワイライトテイルは龍巳とテイエムオペラオー、ファインモーション、ツインターボが一緒だ。イグナイトドラムはまだ幼いのでアグネスデジタルと一緒に放牧場で遊んでいる。ひと段落したら連れてくる予定だ。
「それじゃあ、好きなお馬さんのところへ行ってくださいね。ウマ娘とインストラクターがそこで説明をしますので!」
「あの……あっちの方は……?」
「はい?ミスティストリームですか?全然かまいませんよ。ほら、待ってますよ?」
「え?だって凄いお馬さんなんですよね?テレビでよく……」
「ええ、まあ。人のことが大好きな馬なので、よかったら構ってあげて……我慢できなくてこっちに来ちゃったかあ」
「わわっ……かわいい……」
子供たちが気に入った馬に集まっていくが、保護者達がミスティストリームの功績を知っているのか気後れしてしまい誰も近づこうとしなかった。いじめで不登校になってしまったらしい中学生くらいの女の子がミスティストリームの事を尋ねてきたので、腰を折り優しく答えてやる。そうしていると自分に興味を持ってもらえたことを察知したミスティストリームがウキウキルンルンステップで彼女の前にやってきた。ウオッカはその様子に苦笑しているが女の子は恐る恐る手を伸ばし、ミスティストリームを撫でる。ミスティストリームは目の前で頭を下げた後は決して動かず女の子から触られるのを待っていたので、女の子の両親はいいのか、と思いつつもミスティストリームを相手にすることに決めたようだ。
ウオッカが近くに行き、挨拶を交わす。既に馬装を済ませているミスティストリームは現役の頃のような強い立ち振る舞いをしていたが、ゆっくり豊騎と一緒にやってきたゴングドラムが隣に並ぶとただの人懐こい馬にしか見えない。少しだけ触れ合ったら乗ってみましょうか、と豊騎が言って、ゴングドラムに頬を摺り寄せられた女の子は紅色にほっぺを染めて頷くのだった。
ツインターボはレイジングドラムと一緒に馬をおっかなビックリ触ってみたり、インストラクターに乗せてもらって引いて歩いてもらったり、乗る自信のない子は自分で手綱を引いて馬と歩いてみたりしている参加者たちをうんうんと訳知り顔で見ていた。参加者と馬の数はちょうどトントンなので余らないはずではあるがツインターボとレイジングドラムは余っていた。というのはこちらに来ない子が一人いるからだ。
ツインターボの目線の先にあるのは車椅子に座り目の前にある馬やウマ娘に目もくれることなく分厚い本を読んでいる少年だ。付き添いらしい母親も困った顔で行ってみない?と説得しているようだが少年はつっけんどんに「いい」とだけ言っている。ツインターボにはわからないが、どうやら少年は自発的に来たわけではなく親に連れてこられたらしい。だが、そこで放っておかないのがツインターボである。彼女はレイジングドラムにジェスチャーで待ての指示を出して男の子に近づいていった。レイジングドラムは座り込み、じっと静観することにしたらしい。
「ねね、来ないの?みんな、仲良くしたいって思ってる、ほら」
「……行かないよ。それに、仲良くしたいとも思わない。ほっておいて」
「どうして?馬が嫌いなのか?だったらターボが好きにしてやるぞ!」
「別に嫌いじゃない。それに僕は乗ることも引くこともできないんだ。見てても面白くない、それだけ」
それだけ言って男の子はツインターボから視線を外して本に目線を落とした。車いすに座っている少年の足には分厚いギプスがはまっている。事前のヒアリングで聞いた話では、サッカー少年だったが、事故で脚に大怪我をしてしまい、歩けるかどうかも分からなくなった。それからふさぎ込んで学校にも行かなくなってしまい、人は無理でも動物と交流して少しでも気晴らしになれたら、という母親の願いも少年にはどうやら逆効果だったらしい。
申し訳なさそうに頭を下げる母親を見たツインターボはうーんうーんと腕を組んで考える。本来なら男に任せるべきなのだろうがターボは男にどんと胸を叩いてターボに任せろと言って意気揚々ときた手前それは憚られた。だがそれは意外なところで解決のアイデアが湧いてきたもので、ツインターボの耳がピンと立った。彼女はすぐさまピュイッと指笛を吹く。するとスックとレイジングドラムが立ち上がった。
少年も急になった指笛に本から顔を上げる。ツインターボは少年に見てて!と声を掛けるとレイジングドラムに向けて手招きする。するとレイジングドラムは速足でこちらにやってきて止まり、ツインターボは今度は押すように手を動かした。するとレイジングドラムはそのままバック走、今度は指をぐるっと回すとその場でレイジングドラムはターン。大きく手を回すと少年とツインターボの周りをぐるっと一周する。
「うわぁ……」
ツインターボの手と指の動きで様々な動作をするレイジングドラムに少年は思わず凄い、と言いかけてしまうが、つっけんどんにしたのが気恥ずかしくて慌ててそれを飲み込んだ。レイジングドラムは父譲りの体の大きさを誇っているのでその大きな馬体が時にはかっこよく、時にはコミカルな動きをするのに少年は釘付けになる。それを確認したツインターボはニシシ、と笑って少年の手を取る。自分と同い年か少し上の少女に手を握られた少年はぎょっとして目を見張るがツインターボが少年の腕をとって動かした。
レイジングドラムがそのコマンドに反応してその場で2回転ターンする。次はバック走、速足、駆け足、並足と自分の手があの大きな馬を動かしてるのが分かると少年は何とも言えない高揚感に身を包まれるような心地がした。
「別に、乗る必要も引いて歩く必要もないんだ。馬は生き物なんだから、ターボやお前がこうやって気持ちを伝えたら動いてくれる。別に今日は乗馬に来たんじゃないんだろうし、本よりも楽しいことをターボとしよ!」
「……う、うん。俺、中村栄太……お姉ちゃんは?」
「ターボはツインターボ!じゃ、エータ!遊ぼう!レイ!おいで!」
そう言ってツインターボはレイジングドラムを呼び寄せる。やっと撫でてもらえる!とテンションが振り切れたレイジングドラムがルンルンウキウキとやってくる。栄太の母親に頬を摺り寄せ、そのあとに栄太の車いすの前にやってきて頭を差し出す、現役の馬特有の筋肉が付きまくったムキムキの馬体を見た栄太は一瞬怯むが差し出された頭を恐る恐る撫でる。頭頂部、目の下、耳のあたり、そして鼻に差し掛かったところでくすぐったかったのかぶしゅん!と盛大にくしゃみされた。こんな大きくてかっこいいのにそんな間抜けなくしゃみをするのがおかしくってクスクスと栄太は笑うのだった。
「ふーん、エータはサッカーが好きなんだ。ターボはね、走るのが好き!」
「みれば分かるよ。でも、いつ治るか分からないんだ俺の足。だから、もう一度……サッカーできるかわかんない」
「治る!ターボが保証する!」
「……どうして、そんな」
「だって、エータ諦めてないもん!エータまたサッカーしたいってさっき言った!なら、治る!」
「はは、なにそれ」
「あれ?ターボなんかおかしなこと言った?」
ひとしきり触れ合い母親におろしてもらって芝の上に座る栄太とツインターボ、座ったレイジングドラムを背もたれにしてツインターボに話を聞いてもらった栄太はここに来る前に有った鬱屈とした気持ちがなくなっているように思えた。自分のギプスに包まれた足の重さに辟易して全部どうでもいいと思ってたはずなのに、目の前の少女のカラッとした笑顔が全部吹き飛ばしてくれたような気がしたのだ。
ダカッと音がする。その方向に顔を向けると高校生の少年がマックイーンとゴールドシップに併走されるグレイシャールに乗って軽く速足をしているところであった。ツインターボは何も言わずそれを見つめる栄太の視線が自分の足に向かったのをみて、グッと立ち上がり栄太に背を向けて屈む。
「ターボ姉ちゃん、なに?」
「レイには乗れないなら、ターボがエータを連れてってあげる!諦めなければどこへだっていける、ターフだって、サッカーのフィールドだって!」
そう言ってツインターボは栄太を軽々と強引におんぶして駆けだす。足に負担がかからないように揺れないように、それでいて速く。レイジングドラムが立ち上がりついて併走する。ウマ娘の本来の速さは出てなくても自分が走るよりもっとずっと速い。隣で大きな馬体を揺らしてついてくるレイジングドラムの流れるような走り、自分をおぶる少女の華奢なのに力強い手と小さいのに大きく感じる背中、少しだけ高い景色も。見たことないものだった、感じたこともないものだった。いつの間にか、大声で笑っている栄太を見た彼の母親は、そっと目尻を拭うのだった。
おまけ第三弾(いつまで続くかわかんないシリーズ)
さて、今回はイッチ世界線URAの業務拡充の話でした。別名をツインターボに性癖をねじ切られて粉々にされる少年の話。この後少年がコートに舞い戻ったのは言うに及びませんね。
初めて未実装ウマ娘に焦点を当てようと頑張りましたが難しいもんです。ではではまた投稿するかどうかは別にして会えたら会いましょう!さいなら!
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