【美少女】なんか知らんのだが部屋にウマ耳ウマ尻尾の美少女が現れたんやが【降臨】   作:カフェイン中毒

61 / 64
スーパードクターとウマ娘 その2

 「あの柱は両端に土砂が蓄積し、その上瓦礫に埋もれて人間ではとてもじゃないが持ち上がらない。それを持ち上げ、あまつさえその起点になったのが子供……何をすればそんなことができる?答えろ」

 

 「ああ、なるほど。トレーナーくぅん、どうやら彼は少々早合点をしているみたいだね。話を進めたほうがよさそうだ」

 

 「分かった、タキオン。まず私たちが貴方を尋ねた理由ですが……祖父からこれと共に託されたのです。医者に困れば頼る様に、と」

 

 「これは……KAZUYAさんのメス!?間違いない、本物。だが、11番とは……?」

 

 すっと男が差し出したケースの中に入ったイニシャル入りのメスを見た医師は目を丸くする。一也と呼ばれていた青年も身を乗り出してそのメスを凝視している。やはりこのメスには何か深い意味があるのかもしれない、男にそれは見当もつかないが確かに目の前の医師はメッセージを受け取ったらしく先ほどより真剣みを増して質問してきた。

 

 「では、今回は御祖父様のことで?」

 

 「いえ、すでに祖父は他界しております」

 

 「……お悔やみ申し上げます」

 

 「いえいえ、なんせ死因は老衰です。ただ……今私の周りにいる4人含めて、優秀な医師が必要なのです。貴方が、祖父が言っていたドクターKと考えてもいいですか?」

 

 「ええ、私が今のドクターKです。このメスの持ち主は先代のドクターKでしょう」

 

 祖父から話されたドクターKという人物は、卓越した医療技術をもつスーパードクター、内科、外科、精神科まで何でもこなし、どんな瀕死の状態からでも人の命を救うことができる……流石に若干誇張が入っているのではと思っていたが、たった2時間で押しつぶされた人間の手術を終えているあたり眉唾ではないのかもしれない、と男は脳内で首肯する。

 

 「ではドクターK、単刀直入に申し上げます。この子たちのかかりつけ医になってほしい。そして健康診断とワクチン接種をお願いしたいのです」

 

 「何か事情があるのですね?」

 

 「ええ、みんな、帽子を」

 

 「あーやっとこのわずらわしさから解放される。トレーナーくんは話下手だねえ」

 

 「まーまー、きちんと理由はあるんだし、言いっこなしじゃない?」

 

 「これは……!?」

 

 ドクターKを含めた診療所の人間が驚愕に目を見開く。帽子を脱いだ少女たちの頭に、馬の耳が付いていたからだ。全員医療従事者、生きたモノかどうかは一目見れば分かってしまう。ぴくぴく、ふりふりと動いている耳は間違いなくホンモノ、そこで宮坂があっ!と声をあげた。

 

 「ウマ娘の人たち!?」

 

 「ウマ娘?宮坂さん何か知ってるの?」

 

 「知ってるも何も一也くん!ここ1年くらいで一気にニュースになってるの!新聞にも載ってるわ!」

 

 「俺もそのニュースは知っていたが……新しいアイドルプロジェクトのようなものだと思っていた。実際に目の前で見ると信じがたい。なるほど……俺を頼るわけだ」

 

 「ええ、なにせ彼女らを診察できる医師はこの日本にはいない。彼女らが私の元に現れてそれなりに経ちます、医者無しでやれるほどアスリートの世界は甘くない。ましてや彼女らはレースで時速60㎞で走る。今まで事故が起きなかったのは奇跡と言えます」

 

 男は卓上で片手でもう片手を包み、強く握りしめる。奇跡が続いているが、その奇跡が何時まで続くか分からない、続くわけがない。病気、怪我……あげれば不安はキリがない。彼女らがレースに打ち込む環境を完璧に整えるのが自分の役割ならば、喜んでどこにでも行こう。誰にだって頭を下げよう。それが、男の覚悟だった。

 

 「とりあえず次は私からだねえ。見ての通り、私たちウマ娘は人間ではない。年齢的には一番下のフラワーくんでさえ軽トラック程なら持ち上げることができる。ああ、私はアグネスタキオンだ。まあウマ娘について研究してるウマ娘だよ」

 

 「ハウディ!タイキシャトルデース!」

 

 「セイウンスカイだよ~。よろしく」

 

 「ニシノフラワーっていいます!」

 

 「私たちウマ娘は基本内臓も血液型も身体構造も人間と変わらない。大きく違うのは尾てい骨から尻尾が伸びていることと、耳の構造。さらに強いて言えば骨格の強さと筋肉の強靭さに神経伝達速度……まあ運動能力に関するものは軒並みヒトから逸脱していると考えたまえ。薬も人間と同じものが効く、ワクチンも同様だ」

 

 「何せ別世界の生き物です。この子たちがこれから先健やかに成長し、走り続けるためには……どうしても医者が必要だ。それも人間の全てを知っているような優秀な医師が」

 

 ドクターKはここで合点がいった。ただの医師ではダメ、それも表の医師に頼れば間違いなく学会で発表され、強引に検体として研究所送りにされることがあり得る。だから、裏と表を使い分けている自分を頼ってきたのだと。ぱさり、とアグネスタキオンが荷物から取り出したレポートを卓上に置いた。

 

 「ウマ娘と人の違いについて纏めたものだ。受けてくれるのならば君に預ける。ただ……いったんウマ娘の身体を見てから決めたほうがいいのではないかな?自分の手に負えるかどうかをね」

 

 「受けなかったら、貴方たちは如何するつもりですか?」

 

 「如何するも何も、私が健康チェックを担当する羽目になるだろうね。この世界で私ほどウマ娘の体に精通している者はいない。ただ、私は研究者であって医者じゃない」

 

 「それ以前にアスリートだ。君の負担を増やすような真似はしたくない」

 

 「プランBが沢山試せそうなのにねぇ」

 

 「そもそもプランAが失敗してないだろ。失敗させないしな、俺が」

 

 「……その言い方はずるいねえ」

 

 はぁ、とため息をついたアグネスタキオンがかぶりを振ってドクターKに向き直る。ドクターKはしばらく考え込んでから、やってみましょう。と返事をしてレポートに目を通し始める。健康診断の用意を、と宮坂と一也に声をかけると衝撃に呆けていた二人は慌てて処置室に駆け込んでいく。研究者を名乗るだけあり、読みやすく仔細にまとめられたレポートに感心するドクターKは目の前で笑っているウマ娘をみて、人間と何も変わらないと感じた。それならば、俺がやることも変わらないと一人そう決意するのだった。

 

 

 

 

 「とまあ、今の私の研究は損傷部位の明確化というワケでね、トレーナーくんには協力してもらってるのさ」

 

 「それは凄いですね!実現すれば診断がとても素早くできます!」

 

 「宮坂さん、お裁縫がご趣味なんですか?凄いです!私まだボタン付けと裾合わせくらいしかできなくて……」

 

 「いやいや十分だと思うよ?それに、レースで走ってるんだし、私なんかよりすごいすごい」

 

 「お医者さんに褒められてるよフラワー、よかったね」

 

 「えへへ」

 

 意外と馴染むのが早いなと男は湯飲みからお茶を飲みつつも研修医だという二人と和気あいあいと話しているウマ娘たちを見て考えをめぐらした。健康診断をしてみましょう、というドクターKの言葉に従い、4人のウマ娘たちはそれぞれ健康診断を受けた。なぜこの4人なのかはアグネスタキオンの指名も関係しており、最年少かつ最小柄なニシノフラワー、そして高等部で大柄なタイキシャトル、そして高等部で平均的身長の自分、そして中等部で平均的身長のセイウンスカイというデータ取りとしてデータを分散できるようなメンバー決めをしているのだ。

 

 最初にこちらに話しかけてきたのは一也という研修医、どうやらドクターKとは親戚筋に当たるらしい。アグネスタキオンの研究について詳しく聞きたいと話すとモルモットが増やせると目を光らせたアグネスタキオンは嬉々として研究内容を語りだす。人体を物理的に光らせる、というアプローチはひどく興味を引いたらしく一也はのめり込むようにアグネスタキオンの講義を聞いている。発光させられる前に止めないとまずいだろう。

 

 一方、宮坂という一也の友人らしい研修医は刺繡を趣味としているらしく、大人の女性に憧れるニシノフラワーにとってはそれが鮮烈に映ったようで、詳しく話を聞いている。偏見などはないようでそこは男としても一安心だった。

 

 「終了だ。どの数値も驚愕に値する。人間では決してありえないほどの運動能力、血中酸素濃度、そして肺活量……人間では異常値としてもウマ娘としては正常値なのか」

 

 「そうだね。レポートに添付した健康診断の数値は私がこちらに来る前の最新のものだ。それを基準に考えてくれたまえ」

 

 「なるほど、だとすれば全員健康と考えて差し支えない。ただ、なにぶん未知のデータだ。継続的にとらなければ判断は難しいな」

 

 「では、引き受けてくださると考えても?」

 

 「ああ、どのみち学会には出せないものだ。ウマ娘がこの世界に次々進出してくるのであれば話は変わるが、今は貴方の所だけでおさまってるのだろう?」

 

 「ええ、そうです。来るなら受け入れる所存ですが……」

 

 男のその言葉にドクターKは少し不思議に感じていた。少々時間がかかったのは健康診断のデータの考察のほかにウマ娘について今ある情報を精査していたからだ。掲示板に転がっている話は話半分としてとらえるとしても巨額を投じてレース場を整備し、身を削ってウマ娘たちの面倒を見る理由がない。普通に考えれば、行政に引き渡して終了だ、それがウマ娘たちにとっては幸せな結末にならないとしても。個人としては好ましい人物だが、動機が不明。ちぐはぐな男を前にしてドクターKにしては珍しく、好奇心がうずいた。

 

 「一つ尋ねたい。なぜあなたは身元不明の少女を……しかも種族が違う彼女らを受け入れているんだ?何を目的にしている?」

 

 「確かに、今の日本を考えるなら警察組織に引き渡して終わりにするのが普通ですよね。でもですね……」

 

 男は、ぽんぽん、と隣に座るタイキシャトルの頭を撫でる。撫でやすいように耳を寝かしているタイキシャトルは大変満足そうな顔をしており、幸せそうなその顔に男どころかドクターKや一也の顔も少し緩んだ。理由なんて男にとっては単純なのだ。最初は前世がどうとか難しい話をしていたが、今は単純、シンプル極まりない理屈。

 

 「そうして、この子たちは思いっきり走れますか?誰にも邪魔されず、怪我もせず、健康に、健やかに……走りたいだけ走ることができますか?」

 

 「……不可能だな。人権を認められるかも怪しい」

 

 「俺の前に初めて現れたウマ娘は自分たちのことをこう評しました。『私たちは、走るために生まれてきた』のだと。俺はね、あの子たちに夢を見てるんです。とてもとても魅力的な夢を。俺はこの子たちがありのまま過ごせるようにしてやりたい。しがらみや後ろ暗い部分にさらされることのないように全力を尽くす、それだけなんです」

 

 「……まるで愛の告白だ」

 

 「あっはっは!確かに!いいんです、それで!人生を捧げるには十分な理由だ。俺はこの子たちのトレーナー、この子たちと同じくらい大切なものなんて家族ぐらいですよ」

 

 情熱的にウマ娘について語る男にドクターKは何という人間だ、と舌を巻いた。過去に治療した戦争カメラマンの老人を思い出していた、彼と同じ……人生の使い道を完全に決めた人間の覚悟がそこにはあった。自分より一回り年若い青年、一也と同年代の男がここまでの覚悟を決められるものなのかと。一也でさえ、男に少し気圧されていた。

 

 「どうだい?私たちのトレーナーくんは素晴らしいだろう?」

 

 「ああ、感服した。是非ともウマ娘のかかりつけ医、任せていただきたい。一也、宮坂……忙しくなるぞ」

 

 「はい!よろしくお願いします!」

 

 「頑張ります!」

 

 「ありがとうございます。つきましては……金銭面の支援のことを決めたいのですが」

 

 男はこの診療所の異常性にうっすらとだが気づきつつあった。医療レベルがあってないのだ、技量だけの話ではない、最新レベルの医療技術がそこかしこにちりばめられている。JHAのお偉いさんと会合を重ねていくうちに身に着けた観察力がその異常性を見抜いていた。これほどのものなら研究もここで行ってるに違いない、ウマ娘たちを任せる以上金に糸目はつけるつもりはなかった。男が提案した法外な額の支援金の申し出にドクターKは驚きつつも、受け入れることにする。薬品庫にてKの執事をしている男、村井が行っている再生医療の研究には膨大な資金がいる。その使い道にこの男なら理解を示すだろうと確信したからだ。

 

 だが少し、ドクターKには気になることがあった。それはウマ娘ではなく……男本人である。男の話を聞くに彼は一人でウマ娘全員のトレーニングを考え、それに付き合った上で投資や株式その他で資金を稼ぎ、さらには組織の運営までこなしているという。最近ではそこに競走馬の育成が加わったとも聞く。明らかなオーバーワークだ、使命感と覚悟だけが男を動かしてる状態に近い。

 

 「一也、もう一人健康診断をするぞ。○○さん、受けて頂きます」

 

 「俺ですか?俺は去年受けてますけど……」

 

 「それは去年、つまりウマ娘が現れる前の話だ。今のあなたの体は過労の状態にあっても不思議ではない!貴方が第一にすることは自分の体の状態を知ることだ!受けて頂きます、いいですね?」

 

 「大!賛成!デース!トレーナーさん休んでる所全然見まセン!この際全部見てもらうべきデス!」

 

 「だね~、夜ずっと起きてるじゃんトレーナーさん」

 

 「はい!お部屋をのぞくとずっとお仕事してて、心配になっちゃいます!」

 

 「身から出た錆だねトレーナーくぅん。観念したまえ」

 

 「あー、うん。わかったわかった。お手数おかけしますが、よろしくお願いします」

 

 ウマ娘たちから喧々諤々と賛成の言葉が飛び、それに苦笑した男がドクターKに向かって頭を下げる。ドクターKはそれに頷いて診察室に男を通した。

 

 

 

 ちなみに男が受けた健康診断はどの数値もオールグリーンであり健康体その物。ドクターKは首を傾げつつも胸をなでおろした。なお、URAに置いてウマ娘のパワー過剰なスキンシップに身をさらされる男を見て真剣に進化した新人類ではないかと疑い始めるが、それは別のお話。

 




 どんどん人間離れしていくトレーナーくん。しょうがないね、ゴルシキックが全部悪い。

 というわけでK2邂逅編はこれにて終了、とりあえずあと1話は確定してますが、それ以降は不明です。やる気があるうちは多分平気。

 では感想評価よろしくお願いします。

K2編少し続けていい?

  • ええで
  • あかん
  • 掲示板やれ

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。