【美少女】なんか知らんのだが部屋にウマ耳ウマ尻尾の美少女が現れたんやが【降臨】 作:カフェイン中毒
「あー、その……ツバキちゃん?大丈夫ですか?」
「はっ!い、いえ、大丈夫ですわ。今少し新しい価値観の扉が開く音がしまして」
「それ開いたら悩みが余計複雑になるから閉じときなさいよ」
「あーらリリエルじゃない!」
「その漫画みたいな登場は!753さん!」
「漫画みたいな登場っていうな!つーか夜姫、アンタ何縮こまってんのよ」
「だ、だってお前……めちゃくちゃ推しにそっくりな奴が目の前にいて冷静になれるのかよ……!」
「……無理ねってアンタの推しって薄幸改心系的敵幹部(作中で死ぬ)じゃないのよ。どこにいんの?」
「ほわ~?テレビで拝見したことがありますわ~。たしか……ナゴサンさま……?」
「違うわよ!ナゴミよナゴミ!誰が仮面ライダーイクサよ!」
ウマ娘たちの見解を聞いた翼貴は新しい扉を開きかけたものの今抱えてる悩みが余計に複雑になると判断した美花莉によって阻止される。ウマ娘たちとしても求めてる答えとは違うものをお出ししてしまったのでそれ自体に異論はなかった。
コスプレストリート、略してコススト……当然ながら漫研部やウマ娘だけではなくほかのコスプレを楽しみにしている人間たちもいる。そしてその中には、現代のコスプレの覇者……通称コスプレ四天王と言われるものもいた。
頭の真ん中から左右で別れたツートンカラーの髪をした女性、753とまるで喪服のようなスーツと三日月のように吊り上がった口、そばかすが特徴的な星月夜姫の二人だ。その二人とは以前漫研部とアレソレあったので挨拶がてらやってきた二人は、見慣れない4人に眉をあげる。
テレビに出るほど、というかプロのコスプレイヤーとしてテレビにも出演する753のことは、ウマ娘たちも見覚えがあった。メジロブライトに名前を別方面で間違えられて憤慨した753はそれぞれ自分を見る4人の少女たちにどこか見覚えがあることに気づいた。
「……夜姫、あんたウマ娘誰推しだったかしら」
「ハルウララ」
「即答ね。あー、そこのあなた?帽子取れる?」
「わたし?いーよ!はいっ!」
「グワーーッ!」
「あの夜姫さんがニンジャめいた悲鳴を……!」
「とてもよくわかります」
「いやあんた多分推される側でしょ」
もうバレテーラだしどうにでもなれ状態のアグネスデジタルは753から帽子をとるように言われて明後日の方向のちょうちょを眺めていたハルウララが帽子をとるのをまったく止めなかった。
自称社畜である夜姫は、753が最初に言っていたように確かに薄幸改心敵幹部(死ぬのが好きじゃないのにみんななぜか死んでいく)が好きではあるが、そればかり摂取しているとそれはそれで心が荒む。というか現時点でキャラが死んだら喪服で出社して遺影をデスク上に飾るくらいには入れ込んでいるのだ。
なので、摂取しても心が荒まず、むしろ元気がもらえるようなものもたしなんでいる。世の中バランスが大事なのだ。そこで見つけたのがウマ娘たちだった。二次元と現実の違いはあるにせよ、まるで二次元から飛び出してきたような獣耳と尻尾をはやした少女がレースで走り、ライブで歌うその姿は夜姫を見事に沼に引きずり込んだ。
自らとは全く真逆、だからこそ夜姫は推した。特に見ているといつの間にか笑顔になるウマ娘がいた。それがハルウララだった。天真爛漫、純真無垢……その言葉が形になったウマ娘。走るのはダート、雨の中でぬかるんで汚れようと、たとえウマ娘たちのレースで敗北しようと常に笑顔で楽しそうなのが夜姫にぶっ刺さったのだ。
「うーわマジでウマ娘じゃない。よかったわね夜姫~?推しが目の前にいるわよ~」
「ウララちゃんや。そちらの方君のファンだって」
「ヒュッ……な、ななな……」
「こんにちは!おねーさん、ウララのこと応援してくれてるの!?握手でいい!?それともサイン!?写真撮る!?」
ぷぷぷと口元に手を当てた753とそれに便乗してにやつくトランセンドにけしかけられたハルウララはポニーテールを揺らし、尻尾の動きを隠せないほど大きく振りながら桜色の瞳を太陽のように輝かせて夜姫に詰め寄っていった。
もともと知らない人にもついていってしまいそうなほど警戒心が薄く人懐っこい性格をしているハルウララだが、自らのファンを見つけるとそれはもう尻尾を振り回して絡みに行く習性がある。サイン、握手、ハグ、お姫様抱っこに至るまでいろんな意味でサービス過多になってしまうこともしばしばだ。
そしてそれにさらされてたまらないのは夜姫である、二つの意味で。元来陰の者として生きてきた夜姫にとっては陽の極致ともいえるハルウララを見て目が潰されそうだし、推しを目の前にしたオタクとしてもいっぱいいっぱいだった。魂が口からまろびでそうになっている。
ちなみに夜姫としては一家に一台欲しいでお馴染みリリサを持っていこうとしていたわけであるがもはやそれどころではない。気の毒そうなアグネスデジタルと面白そうなトランセンドには何も言えなかったが。メジロブライトがやんわりとハルウララを引き離すことで何とかなった。
「あの~、そろそろ更衣室へ……」
「あ、あたしたち更衣室の順番あとなんでお先にどうぞ。楽しみにしてますよ~」
そんな感じで漫研御一行と四天王二人を更衣室に送り出したウマ娘と荷物を受け取りに更衣室近くまで行った奥村と今回は不参加の阿部まりなは別れた。まゆらは場所取りということでウマ娘たちと一緒である。
「んぎゃぎゃぎゃいっ!」
「わっ!?鼻血ですわ!?申し訳ありませんが今手持ちがこれしかなくて……」
「お、お気遣いなく……やばい我慢がきかんかもしれん……」
美花莉級の美少女の集まりであるウマ娘を前にしてまゆりの鼻から
「そうなのか……!こんな風になってるのか……!」
「いやじゃない?ハルウララちゃん、この人漫画のことになるとどうもねぇ」
「んー、触らなかったらいーよ!キングちゃんに触らしちゃダメよって言われてるし」
「耳と尻尾はデリケートゾーンなんだよね。敏感ってわけ。大きな声とかやめてね?脳みそに直で響くから」
だからコーやってメンコつけてんのさ、と帽子をとったトランセンドが自らの耳を動かしつつハルウララのメンコに包まれた耳を指さした。もはや隠す気がなくなっているので歩く人たちがウマ娘だ、と声をあげるが遠巻きに見守るだけで済んでいる。
「やほほーい。なーんでウマ娘ちゃんたちがこっちいんの~?ぬるぽ」
「……ほわ~?エリカさん、こんにちはですわ~。ええ、実はコスプレをすることになりまして~」
「さすがに知らないかってねえ待ってそれ君らのトレーナーから聞いてないんだが?」
「あー、トレーナーさんがさすがに納期が急すぎるし別の仕事頼んでるからって別の業者にオーダーをですね」
「まったまったまったエリカ、お前ウマ娘と知り合いなのか?」
「お、誰かと思ったらまゆらちゃんじゃーん。そうだよ、ウマ娘……というかURAの公式衣装はほとんど私の会社がやってるのさ!」
「ってことはお前がスレの……」
「服飾屋さんでーす」
いえーいぶいぶいとダブルピースをしているのはコスプレ四天王の一角、コンビでコスプレをしている淡雪エリカの衣装&撮影担当のエリカだった。そして、ウマ娘本スレでは服飾屋と呼ばれてる女、つまりはバリキャリでしゃちょーである。
「いやーここでリリエルが出るって聞いたからさ。ちょいと見に来たんだ、ユキちゃんとね。ああそうそう、リリエルにこれわたしといてー。ウマ娘ちゃんたちは私とこっち」
「あ、ああわかった。どうするんだ?」
「あのクソボケトレーナーには後で一言言ってやるとしても既存の服がウマ娘ちゃんたちに合うかどうかは別だからね。サービスサービスってことで着つけてあげるのさー」
「だーから一言話しといたほうがいいって言っておいたんですよトレーナーさん……まあそろそろ私たちも更衣室に行くので失礼しますね~」
エリカに連れられたウマ娘たちがその場から去っていくのを渡された紙切れを見て呆然と見送るまゆりは意外なつながりがあるものだと戦々恐々とするのだった。
奥村正宗は悩んでいた。イベントのしょっぱなにウマ娘に会うということもそうだったが、それ以上の今回のコスストでは新入部員である華翼貴の悩み……オタクになりたい、その本質である何もかもを投げ捨てて本気で好きと言える趣味を見つけたいという願いが、頓挫しかけていた。
天使空挺隊のキャラクター、バキエルにコスプレした彼女は……自らと他を比べてやはり自分がどうしてここでコスプレをしているかがわからないと漏らした。奥村は必死にそれを否定する語句を頭の中で組み立てる。
論破をしたいのではない。翼貴にこのイベントを、ここにあるそれに気づいてほしいが故の行動。翼貴にあるのは現実の壁。何をしていても侵食してくる現実だ。その鎖が彼女を捉えて離さない。
「失礼いたしますわ~。お隣、よろしくて?」
「メジロブライトさん……?」
「はぁい、メジロブライトですわ~。皆さんとはぐれてしまいまして、それでお二人をお見掛けしたものですから~。翼貴様、少々私のお話を聞いてくださっても?」
「……はい」
奥村が声を出そうとした瞬間を遮ったのは、別れたウマ娘の一人……ゆったりとした印象が残るメジロブライトだった。そして彼女が着ている服は……いわゆる大正ロマンと言われる部類のコスプレだ。
編み上げブーツ、メジロのグリーンを基調とした袴に和服、いわゆる和洋折衷の服装である。片手に小道具である番傘を立てかけ、ゆったりと姿勢よく翼貴の隣に座りこみ口を開く。
「翼貴様は、どうして自分がここでコスプレをしているのかがわからないとおっしゃっていましたが、それは違いますわ。きっとあなたは、目の前が曇って見えてらっしゃらないだけ」
「……逃避したからと言って人生の問題から逃げられるわけではありません。いつかは、趣味にも生産性が必要になります。仕事をせずには生きていけませんから」
「翼貴様はきっと、趣味には生産性、価値がなければならないと思い込んでいらっしゃるのですね~。翼貴様、生産性も、価値も……あとからついてくるものですわ」
「あとから……?」
「そうですわ~。例えば翼貴様がいましてらっしゃるコスプレ。753様はそれをお仕事にしてらっしゃいます。ですが果たして最初からあの方はコスプレをお仕事にしてらしたのでしょうか?」
それは違う、と直感的に翼貴は思った。プロのコスプレイヤーというのは現状マニアックなタレントに近い扱い。最初からそれを狙ってコスプレを始めたとは到底思えない。メジロブライトは続ける。漫画家の方、小説家の方、芸術家の方……と創作をする職業をあげていく。
「そして私たちウマ娘も……趣味あるいは本能を仕事にしております。いつかは引退いたしますが、先ほどお話しした通り……価値があるから私たちは走るのではありません~」
「じゃあ、なんで……」
「
メジロブライトの言葉を引き継いだのは奥村だった。直感的に思う、ここから俺の仕事であると。メジロブライトに目でお礼を言いながらも奥村は続ける。生産性、あるいは価値、それに付随するしがらみを取っ払えば趣味に必要なのはそれだけだ。
「君の言うすべては君じゃない誰かの体験だ!誰かの言葉だ!確かにその人たちはその趣味を仕事にして体験を君に伝えたかもしれない!だけど、彼らも最初はそこから始めたんだ!」
「ぶ、部長……」
「生産性?価値?そんなもんを吹き飛ばすような狂気があったんだ!だからそうなった!今ここにいるのは君だろツバキ!誰かの体験を参考にするのはいい!だけどそれを君自身にするな!君が体験した物事の意味は自由に君が決めるんだ!」
「自由に……」
「俺みたいなオタクになりたいなら!今を頭真っ白にしてとことんまで楽しんでみせろ!君ならそれができるはずだ!」
「っ………………!や、やってやりますわよっ!!!」
売り言葉に買い言葉に近いやり取りを頬に手を当てて微笑みながらメジロブライトはきちんと伝わりましたわ~と頷く。領域に入ったウマ娘のように燃ゆる瞳をした翼貴は背中の羽に絡みついていた鎖を外しながらずんずんと外へ歩いていく。メジロブライトはそれを微笑んで追いかけるのだった。
「んぎゃぎゃぎゃいっ!」
「先生、本日2度目です」
「先輩も鼻血を……!?」
「くっ……強敵ねウマ娘……!」
とりあえず場が落ち着いて何とかなったのだが落ち着いたら落ち着いたでまた大変である。2次元特攻に弱い奥村とまゆりは目の前の天使空挺隊と大正ロマンのウマ娘を見て見事にダメージを受けていた。
それぞれのイメージカラーと柄の和服に袴を着て編み上げブーツを履いたウマ娘はわざと蹄鉄の音を鳴らしながら番傘を差してぐるっとストリートを一周して先ほど戻ってきたところである。
吹っ切れた翼貴はそれはもうすごかった、なにせ囲みの数ならウマ娘たちよりも多かったくらいである。良く練られたポージングの種類と息の合いっぷりは思わずウマ娘の方がうなるほどだったからだ。
「夜姫~?夜姫~?もどってきなさーい?」
「夜姫ちゃんだいじょうぶ~?」
ハルウララにお姫様抱っこされた夜姫は魂が抜けかけてるがそれもそれでよしである。一枚、と奥村に撮ってもらってついでにウマ娘たちは連絡先を交換し、良ければとレジェンドレースのチケットを贈った。
「暇になったらでいいからURAに遊びに来てよー。勝負服、見たいっしょ?」
「いいんですか!?ぜひお願いしたいくらいです!」
トレちゃんならきっと許してくれるっしょとトランセンドはコスプレイヤーたちをURAに誘う。せっかく増えた友達と、もっと愛を語りたかったから。
以上!ウマ娘と2.5次元の誘惑の話でした。またどっかで今度は平和な話書きたいですね!でも次回はまた別の、というか掲示板書きます。禁断症状でそうです!
ではまた次回に。感想評価よろしくお願いいたします。
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