テセウスの魔法少女~あの娘のため世界のため、あの手この手で死を受け入れたがままならない~(旧:魔法少女『海蝕』)   作:描代れな

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待っていた少女の一撃

 大鎌がじりじりとヴェンダルへと切り込む。

 元より魔力を使った武器を作るのは、魔法というよりは魔法少女の十八番。

「出力が足りんか」

 右手から出た水の散弾、ウォーターバレットが星薙愛惟へと迫る。

 魔力──それはこの世界において特異的な能力源の1つである。扱える人間にとって先天的に使える力であり、用途は多岐に渡る。

 ──そして魔力を持つ者のほとんどは異能(アウター)に目覚める。

 莉緒が放ったウォーターバレットは魔法である。

 魔法──既定の魔法群によってまとめられている魔力を動力源として扱った現象である。

「はっ!!」

 現れたのは光の盾魔法──スクーレ。

 彼女の周囲を飛び回り、ウォーターバレットを防ぐ。

 ほとんどがスクーレに阻まれ当たらなかった。しかし、彼女の後ろへ飛んで行った水が一つにまとまり、愛惟へと照準を合わせ、飛んで行った。

 狙いは最初から死角からの一撃。

 細長く先端が鋭利な一撃となった水の弾丸が、たとえ水とはいえ当てればたたではすまない速度で、愛惟の後ろ首へと被弾した。

 ──ぱしゃ。 

 明らかに弾丸が当たった音とは異なる、まるで水に手を浸したような、軽く当たった音が響く。

 思っていた感触と違う手ごたえの尽閼に、新しい魔法が愛惟から放たれる。光り輝く光線──レイラが尽閼に迫る。

「──っ!!」

 すぐさまフロディオンで身を守る体制に入る。

 しかし放たれたそれは、ただでさえ早い一撃であるのに急激に速度を上げ、フロディオンが構築するより早く、尽閼へと迫った。真正面からレイラをくらい後方へ吹き飛ばされる。

 埠頭から離れ、島の内陸の木々を倒しながら吹き飛んだ。

「ちっ!!!!」

 吹き飛ばされた直後にフロディオンが形成され、衝撃を緩和することには成功した。

 

 休む間もなく、頭上から眩い光が降り注ぎ、自身の影が地に映る。

 ──そこには大きく白い翼を2枚広げ、宙に浮く愛惟がいた。

 愛惟の異能──「天使」。

 翼の数発動できる能力。1つは「治癒」。ある程度の怪我ならばすぐに完治させることができる。そしてもう1つは「速度操作」。物や魔法限定で移動速度を変化させることができる。先ほどのウォーターバレットもこの能力で勢いを殺し、ほぼただの水へと変化させた。

 愛惟は右手を伸ばし、尽閼へと向ける。

 光でできた鈍器のような塊──レーダンが尽閼に向けて落ちてきた。

 これも先のような加速により一瞬で頭上まで迫り──尽閼へ直撃した。

 それと同時に爆発が起こり、砂ぼこりが舞い上がる。

 愛惟は地面へと降り立ち、尽閼がいた場所を凝視していた。

 その顔に安堵はなく、油断はない。

 ──砂埃が青い閃光と共弾け飛ぶ。

 青いオーラを立ち登らせて無傷で、尽閼が佇んでいた。体表から立ち上るそれは、尽閼の身体を守る様に覆っていた。

 ──速度で追いつけないなら、最初から防いでいればいい。

 そう考えた尽閼はある魔導を発動した。

 青く揺らめくオーラ──身体強化魔導『魔纏弄』。

 身体に流れている魔力を全身に巡らせることで身体能力の強化を図る。魔導の一種。

 魔導──魔法の中に無属性の魔法群が存在し、その一つを極めると、魔法ではなく魔導へ至る。いわば無属性魔法に限った奥義とも呼べるものである。

 尽閼はその膨大な魔力を体内から放出して愛惟の一撃を耐えた。

 

「それっ……」

「どうした? 私の実態を忘れたか? 魔導集合体なんだ、あれの魔力を扱えさせすれば造作もない」 

 尽閼はSSクラスの魔獣であり、魔導集合体。魔導を行使するのは不思議ではない。

 尽閼は愛惟に向けて再度、嫌味ったらしく告げる。

「愛しい人の身体だってのに容赦ないんだな。やっぱり1年とちょっとで心変わりでもしたかぁ???」

「──違う!!莉緒の声でそんなこと言わないで!!!!」

 悲しく叫ぶ愛惟。

 駆け出し再び、大鎌を構えながら尽閼へ急接近する。

 尽閼も水でできた大鎌を作成し、携え、切り結ぶ。

「莉緒を返して!!!!」

「返すも何も死んだんだよ!! 現実見やがれ星薙愛惟ぃ!!!!」

 切りつけ、かわされ、切り返され、刃先で受ける。

「そんな筈ない!!!! じゃあなんでお前の中に莉緒の光が見えるのよ!!!!」

「──!?」

 愛惟を弾き飛ばし距離を取る。

 初めて尽閼の顔が驚愕した。

「お前……わかんのか?」

「ええ、最初からずっと。お前と一緒に、莉緒の光が見えるわ」

 ──どうやらまだ気付いていないようだ。

「確かに私は加賀美莉緒でもあるからなぁ。もしかしたら、お前の言う私の光を消せば、加賀美莉緒が戻ってくるかもなぁ。……まぁ悪足?きはあの女と同じく続けてくれ」

 愛惟を見据え、告げる尽閼。

 莉緒の最後の奮闘を貶され怒りを覚える愛惟。

「お前を消し去る!!!! そして莉緒を取り戻す!!!!」

「往生際が悪ぃなぁ!!!!」

 三度、愛惟が飛び掛かる。

 ヴェンダルが鎌の一撃を受け止めた──そのとき。

 尽閼を守るように展開していたヴェンダルは一撃を受け止めたまま、大鎌と接しているところを起点に愛惟の頭上を通り──急速に愛惟を中心に縮小した。

「くっ!!」

 大鎌を手放す愛惟。

 そして、完全に捕まるのを防ぐため両手を胸の前で交差させた。

「──はぁっ!!」

 差した腕を乱暴に押し開き、リングを振り払う。

 ──瞬間、尽閼はその隙をつき、水の大鎌を振り上げ、下ろした。

 相手の正面は無防備であるため当たる──と思われた。

 寸前のところで、手を放していたはずの愛惟の大鎌が勢いよく現れ、尽閼の大鎌を受け止め、弾け飛ばした。

 無属性魔法付与──自立起動操作。

 愛惟は光の魂喰らいと同時にそれを自分の大鎌に発動していた。操作しなければ扱えない物体や魔法をある程度動かすことができる付与魔法。

 ──さらに発動する。

 気配を悟った尽閼は、手持ち無沙汰になった腕で自分の視界を防ぐ。

 光属性付与魔法──フライン。

 魔力を流せば閃光を放つ魔法。

 光の大鎌が閃光を放ち、一瞬視界が途切れる。

 

「っ──しぶといなぁっ!!!!──!?!?」

 尽閼は腕で閃光を回避したが、一瞬、愛惟を視界から消してしまった。そして愛惟を再び視界に収めた。

 愛惟は既に、大鎌を横殴りで振り切ることができるよう、腕を引き延ばし、腰を落として構えている。

 ──手には何も持っていない。

 先ほど手放していたから当然だ。しかし、ただのフリ──ではないことは明白。

 ──愛惟の手へ、弾いた大鎌が降りる。

 手にした瞬間、大鎌は刃先の輝きを残し、姿を消した。

 刃先には今までと違う気配が溢れる。

 

 光属性魔法──光の魔喰らい。

 尽閼は魔獣である。そして今愛惟が使った魔法は、対魔獣用の魔法と言っても良い。

 ──相手の魔力に干渉する魔法。

 それが光の魂喰らいの効果。

 愛惟の腕が、実体のない鎌を携え、横へ薙ぐ。

「ぐっっ……」

 身体的変化はない。しかし、魔纏弄を突破し、身体の内側を横から切断された感覚が尽閼を襲う。

 魔力を切る、それはまるで向きだしの神経を引きちぎられた感覚であった。

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