テセウスの魔法少女~あの娘のため世界のため、あの手この手で死を受け入れたがままならない~(旧:魔法少女『海蝕』) 作:描代れな
感想良ければお願いします。執筆の励みになって嬉しいです。
ではまた、お願いします。
6/6書き直し箇所見つけたのでまた消えます。近いうち出せると思うのでよろしくお願いします。
──さぁ、お膳立てはこの程度良いだろう。
──私を憎め愛惟、私を加賀美莉緒と思うな。
──私を殺せ、愛惟。
────それで良い、「異醒顕象」を、「熾天使」を発動しろ。
異醒顕象──魔力のような能力源を持つ者が独自に至る、異能の終末点。
生涯その景色に至らないものが多い中で、愛惟は既にそれを13のときには開花していた。
天才という表し方ですら生ぬるい。異端中の異端である。
莉緒は待っていた、愛惟の異醒顕象──「熾天使」を。
愛惟の熾天使はあらゆる魔力を浄化する力である。魔力によって生きている魔獣には致命傷、尽閼とて例外ではない。
しかし、ではなぜあのとき尽閼を倒せなかったのか。尽閼の魔力が途方もなく大きかっ
からである。実際には尽閼には効いており、だからこそあそこまで善戦できた。
──だがそれでも尽閼には時間稼ぎにしかならなかった。
(今なら契約で尽閼の能力を封じている……完全に葬れる!!!!)
────莉緒の目的、それは愛惟の熾天使で自分ごと尽閼を消滅させること。
契約により、力の弱まった今の尽閼ならば愛惟の熾天使で葬れる。
(……すまない愛惟、私のワガママに付き合わせて)
執行のときを待つ莉緒。
──しかし思い描くようにはならなかった。
──光の神々しさの後に、全てを塗り尽くすような黒い光が愛惟に立ち上る。
目を見開き、愛惟を見つめる。
(なんだ……これは……)
最初は神々しい光が強かった。しかし今はほとんど黒い闇鈍とした光が勝っている。
魔力の奔流が愛惟を中心に、台風のようにまとわりつく。そしてまるで卵のように愛惟を覆った。下が少しだけ白いがほぼ全面黒い卵。
(力の高ぶりは異醒顕象だ……だがこれは──)
あまりにも禍々しい。
正体を逡巡していたそのとき。
「『
──優しさ溢れる声と怨嗟蠢く2重の声が、重なり合いながらぽつりと。
勢いよく殻を破り、空中に静止し浮遊する。
少数の白い鮮やかな翼と、多数の黒い歪な翼で覆われたそれは、ゆっくりと開き愛惟の姿が露になる。
根本的な容姿は変わっていない。
しかし目につくのはその翼。
6対12翼のそれは、一番下の1対は白く輝く大翼。
それ以外の5対は異形と呼んでも差し支えないほど、黒く不気味であった。
1枚1枚形と状態が違う翼は、確かに愛惟の背から紡がれている。
そして愛惟の左目。
黒い光が常時淡く、覆うようにたなびいている。
────堕天使。
莉緒はそう思わずにいられなかった。
(どういうことだ……異醒顕象の変化? そんなことありえるのか)
異醒顕象は異能の数ある発展形の終末点。本来1つしか成り得ないはずだ。
思考が逡巡している最中、声が落ちるように楚々と。
「────尽閼」
「……やっと理解したか」
動揺を悟られないよう、悲しそうな笑みを嘲笑うような笑みに変化させ、自分が莉緒だと気づかれないよう振る舞う。
水の大鎌を構え。
「第二ラウンドと行こうか星薙愛惟!!!!」
最後に獰猛な笑みを見せ、啖呵を切る。
──愛惟の異醒顕象は変化し実態は不明、その時点で莉緒の目的は既に頓挫している。
だが、自信の消滅ならば可能だ──深愛だ。
彼女ならば莉緒を消すことなど容易いだろう。
まずは深愛に会わねば、そのためにはここから離脱する必要があった。
再度、魔纏弄を巡らせ、愛惟に仕掛けようとした──。
「そこまでだ!!!!」
第三者、それも女性の声が響いた。
周囲を視線だけで見る。莉緒と愛惟の周りを多くの大人や生徒が取り囲んでいた。
「二人とも交戦の構えを解け!!!!」
最後に声の主へと視線を向けた。
最後に捉えたのは最初の一声で誰かわかっていたからだ。
涼元薫──私たちの上官だった女性だ。
なぜ彼女がここにと、思考の片隅によぎるが、目の前の愛惟から意識はそらさない。
──仮にも私と愛惟にとっては縁のある人物だ、というのに愛惟は少しも私から意識をそらしていない。周囲の人物にも。
──目の前に2つの影が急に現れた。
1人は愛惟、もう1人は深愛であった。
愛惟が既に振り下ろしている大鎌を指1本で、水の中から受け止めている。
目を見開く莉緒。認識する前に2人に近付かれた。
もし深愛が受け止めていなければ、莉緒は愛惟の一撃を受けていただろう。
愛惟も一撃を止められたのが予想外だったのか驚いている。
「──もう少し行く末を見たかったけど、案外駆けつけるのが早かったね薫」
フロディオンを弾き飛ばした深愛は、周りに聞こえる声量で気楽に声をかける。
「ま、今回はこの辺りにしとこっか!!」
「邪魔だぁ!!!!どけ──」
──ろ、そうは続かなかった。
重圧のような魔力の奔流が消え去り、愛惟の姿が元に戻った。
そして深愛は指を鳴らす──愛惟は急に意識を失い、深愛へと倒れ込む。
────なにやってんだてめぇ
愛惟にすら向けていなかった殺意を刹那、深愛に向ける。
身体は無意識に深愛に飛びかかる態勢を取るが──そこで終わる。
深愛が優しく愛惟を受け止めたからだ。同時に──
──莉緒の上半身に鎖が巻き付く。
魔導──五重チェイン。
魔力と異能を封じる魔導だ。存在すら巻き付かれるまで莉緒は感じなかった。
誰が発動したのか、それは目の前の女傑以外に考えられない。
「流石にあんだけ暴れたからね、少し大人しくしてもらうよ」
「……なぜ私の意識は奪わない? 私にはこの程度で十分だとでも?」
「うん、だって君──」
──私と話したいことあるでしょ。
(こいつ……やはりわざとか)
深愛をにらみつけていた目を、愛惟へと向ける。
「安心してこの娘には何もしないから、薫」
近くまで寄った薫へと愛惟を渡す。
「私はこっちとこれから話すから、この娘お願いね。後でこの娘の方にも向かうから、それまで保護しておいてね」
「……わかりました」
薫が莉緒へと目を向ける。どこか慈しむような、堪えるような表情で。
愛惟を抱きしめ下がる薫。
さて、と零す深愛。
「はーいそれじゃあ解散、子供の喧嘩にそんな大勢集まらないのみっともない。ほーらみんな戻った戻った」
「しかし!?!?」
周囲に集まったうちの1人が食い下がる。
「何か言われたら私がこの件預かったって言えばいいから、それとも何? 君の所属先は私と喧嘩したいのかな?」
「な……いや……」
「なんかあったら私のせいにしとけばいいから。はい撤収撤収」
見回しながら言う深愛。不満そうな表情や安堵したような表情が見えた。彼らもこの女性とあまり関わりたくないのだろう。
「じゃ、行こうか」
──加賀美莉緒ちゃん。