テセウスの魔法少女~あの娘のため世界のため、あの手この手で死を受け入れたがままならない~(旧:魔法少女『海蝕』)   作:描代れな

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またしばらく空くと思います。完結までは考えているので気長にお待ちください。


新しい道

「なっ」

「大事なこと聞いてもいい?」

 さっきまで私が取り押さえていたが、刹那の時間もなく取り押さえられていた。

 (どうなっている!?)

「君彼女に言ってたよね『お前との記憶を犠牲にした』って、なのになんで君は星薙愛惟のことを覚えてるの?」

 私は尽閼から愛惟と上官を助けるために、代理魔力変換で星薙愛惟の記憶を代償に魔力を得た。本来なら私に愛惟の記憶は存在しない。

 ──今もそうだ。

「星薙愛惟に関して2つだけ知っている」

「へぇそれって?」

 興味深かそうに笑顔絶やさず尋ねる彼女。

「……一つだけ教えておこう、あいつの異醒顕象で私が消えることができるはずだった」

「なんでそれは知ってるの?」

「さぁな、私が解放されたときその知識と、もう一つ、知っていただけだ」

「…………」

 顎に手を当て考える素振りを一瞬見せる深愛。

 これは私もわからない。尽閼から解放されたときに覚えていたこと、それは星薙愛惟の異醒顕象で、自分は尽閼ごと消滅することができる。

 それともう一つは──

「……もう一つは教えてくれないの?」

「個人的なことだ、あんたには関係ない」

 ──これは私だけが知っていればいい。

「ならもう一つ聞かせて、どうして星薙愛惟なの? 尽閼ごと消えたないなら、愛惟に頼らなくても良いでしょ。それこそ私と初めて会ったあのときに、私に殺されていれば良かった。星薙愛惟じゃなきゃだめな理由でもあるの?」

 当たり前の疑問だ、消えたいなら愛惟の能力に頼らなくてもいい。初めて深愛に会ったとき、尽閼の力を使わないで深愛に消されて入ればよかった。

 だがそうしなかった理由、私が愛惟を選んだ理由それは──

「────死ぬなら、あいつの手で死にたい」

 ただのエゴだ。

 愛惟の気持ちより自分の気持ちを優先する、今の醜い私にお似合いのエゴだ。

「……なるほどね。尽閼を装えば、愛惟は君を加賀美莉緒と思わない。加えて愛惟にも、莉緒は死んだと演じることで、莉緒を殺してしまったという罪悪感も消すことができる。自己中心的で倒錯的な愛情表現だね」

 何処までもこちらを見据えてくる、恐らく協会が彼女に手を焼いているのも、その頭の回転の速さもあるのだろう。

「だがそれも、もう叶わない」

 諦観に満ちた声が無意識に私の口から放たれる。

「──頼む、このまま殺してくれ」

 深愛へ懇願する。

 私がここまでこいつとある程度会話したのはこのため、いや私の想定を超えていた。愛惟の異醒顕象が変化など予想できるわけがない。

 愛惟の手で生を終えることはできなかった。深愛なら今の私を簡単に葬ることができるだろう。

 しかし返ってきた答えは思っていたものと違っていた。

「嫌だね」

「何?」

「言ったはずだよ──尽閼と約束があるって」

 今までにないほど、笑みを濃くする深愛。

 ──まさかこいつ!?!?

 私は魔纏弄を即座に発動させ、深愛から離れ、距離を取る。

「尽閼を呼び起こすつもりか!?!?」

 尽閼の復活。それだけは阻止しなければならない。

 もし尽閼が復活したならば、最悪世界が滅びる。

「私は約束を果たしたいだけだよ」

 私が離れても全く動じていない深愛。

「約束とはなんだ!!!!」

「君だって教えてくれないことあるんだから、お相子でしょ──だからこうしないかい

?」

 再度座席に腰を掛けた深愛は、手を宙に開き魔力を放出する。その動作に見覚えはあった。  

 契約の手順の1つだ。結ぶ者同士の魔力を組み合わせ互いに宣誓。それの前段階である。

「私と契約しよう──もし今尽閼が君の中から出てきたとしたら、愛惟はどうなると思う?」

 その一言で想起してしまった、尽閼が自分に行った仕打ちを。

 もし、愛惟が尽閼の手に落ちたら──

 もし、愛惟が私と同じようにその身を穢されたら──

 もし、愛惟があのときのようにただその身を蹂躙されたら──

 ──あの地獄を愛惟に向けさせてなるものか!!!!

 ぱちんっ。

 指を鳴らす音が深愛から響き、思考の渦から呼び起こされる。

「話を続けるね。君もわかってると思うけど、私以外、この島にいる人──いやそれだけじゃないね、この島周辺全員死ぬ。学生教師共に粒ぞろいが揃ってる星蓮想学園だけど、尽閼は無理──鏖殺されて終わりだ」

 尽閼の出現。それだけは阻止しなければならない。

 そのために私はあんな芝居を愛惟の前で行った。クソ野郎な真似までして。

「原因じゃなくて対処の方を考えようってことだよ。私は尽閼との約束を果たすために君には生きていてほしい。私と星薙愛惟以外で、尽閼を宿してる君を完全に滅ぼす存在は、まぁいないことはないけど、君コネがないでしょ」

 あっけからんという。しかしその通りだ。ここで彼女に断られたら他に尽閼に対処できる人物を私は知らない。

 今から探すにしても時間がかかる。それではその間に、尽閼が解き放たれる可能性がある。

 ならば1つだけ手段がある。それを行おうとするが、続く深愛の言葉に釘を刺された。

「──ここで協会の契約を破って私に対処させるために、尽閼の力を使ってもいいけど、その場合でも愛惟は死ぬよ」

「っ……!!」

 起こりを再び断たれる。

 私が行おうとしていたこと──それは尽閼の力の解放である。

 尽閼の力は封印されているが完全ではない。私が解放しようとすれば、解放できるのだ。

 しかしその場合、目の前の存在が私と協会との契約通り対処に出るだろう。

 それを狙っていたのだが、そうすると愛惟が死ぬという。

「あいつの能力を使えば大なり小なり周りに影響を与える──尽閼が出現したと言っても差し支えない程度にはね。島全土とは言わないけど、今学園に向かっているこの車から使えば、学園ぐらいは簡単に滅ぶ。以前君が使ったときは私が後処理したから大丈夫だったけど、もし今使ったら私は君の対処はするけど、後始末はしないよ。──愛惟が死んでもいいなら、使いなよ」

 ここにいる人々は、いや愛惟はさしずめ、尽閼の力を使わせないための人質であろうことが語られた。

 協会は、私と深く関りがある愛惟がこの学園に通っているから、私をこの学園に通うことを契約に入れたのだろう。もし尽閼の力を使えば、愛惟はその犠牲になる。

 それだけは絶対に避けなくては、愛惟だけは何があっても。

「わかった。契約の内容はどうする?」

「そんなに構えなくていいよ。私が求めるのは、この学園の保健医から適宜君は検査を受け、そのデータを私に流すこと.。今君の身体に何が起こってるのか、尽閼の状態はどうなっているのか、それが知りたい。ここの保健医と古い仲でね、君の情報を得るにはこれが一番色んな意味で私にとって都合がいいんだよ。それに今の君の状態を客観的に知る必要もある。もしかしたら尽閼が出現する度合いもわかるかもしれない」

「そこまでわかるのか!?」

 思わず声が跳ね上がる。

 確かに私の身体がどうなっているのか、客観的にはわからない。私が解放されてから船に乗るまでずっと独房に入れられており、尽閼の力を恐れて誰も私に接触しなかったからだ。

「私の中で世界一の名医だよ。造作もないだろうね彼女なら。それで、君からは尽閼が出現したとき、荒峰深愛による対処、及び星薙愛惟の最優先保護を私に求める。これでどうかな?」

 問題ない、ただこのまま学園に通えばいい。

 だがここで素直に提案に受け入れたくない。ここまで全てのペースを握られたからだ。私は深愛の目を見て告げる。

「追加していいか?何から何まで好きにされるのが我慢ならない」

「はは、君はそういうタイプだろうね。良いよ何?」

「──私の正体を愛惟に伝えるな」

 深愛と愛惟には私の知らない繋がりがある。私が莉緒だと知ると愛惟は、自惚れでなければ悲しむ。あいつには最後まで私の正体を知られたくない。

 それを聞くと深愛は深い笑みを浮かべた。

「良いだろう、それで契約を結ぼうか」

 

────…………

──……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────…………

──……

 車体が止まる。

「さて、着いたよここが保健室だよ」

 いきなり保健室に向かっているとは思わなかった。

 最初から全てこいつの手の上だということが改めて実感するが、表情には出さない。

 外に出ると目の前には白い家屋があった。保健室というよりはほとんど診療所に近い。上部の煙突からは煙が絶え間なくたなびき、家屋の周囲にはシャボン玉のような球体が浮かんでいる。

「中にさっき言った保健医がいる。用件はもう伝わっているだろうから安心して検査を受けてよ」

 いつ伝えたのか、そんな素振りは見せなかった。疑問であるが、私は早く自分の身体の現状について知りたい欲求が勝り、深愛に問うことはせず──歩を進める。

 




前話と今話が主人公上手く動かなかったというか、生き生きしてない感じがするので、今後の課題だなと。
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