冴えないヒロイン達が幸せになり冴えたヒロイン達になるハナシ 作:ゆーーーー
それを目標に書いていきます
忙しくて遅れてしまう場合はすみません。気長にお待ち頂けると幸いです
新入生が入学してきた日の放課後俺は学校から出てバイトに行こうとすると昔馴染みの後輩に呼び止められた。
“そこにいるはずの無い後輩”の呼び掛けにバイト先へと急がねばならない俺の足が思わず止まってしまった。
「まさか……波島出海ちゃん!?」
「はい!倫也先輩を追ってやって来ました!」
満面の笑みでこんな所で“追って来た”は不味くないかい!?
「え〜と…転校以来だっけ?積もる話はあるかもしれないけど。バイトあるから急いでるんだ。話はまた今度ね。」
「はい。ではまた明日、学校で。」満面の笑みで手を振っていた。
☆
「って事があったんだよ。」俺はその日の夜、詩羽とのオンライン勉強会の際に最愛の彼女に報告がてら何も無い事を弁明する機会を設けられていた。
と言うのも俺が1年生の可愛い後輩と話をしているのを詩羽の友達が見ていたようでどう言った内容かは詳細が分からないけど詩羽の元へ報告が入ったようである。
「その後輩ちゃんと倫也がどういう知り合いなのかは今は和えて聞かないことにするわ不倫理君。」
「ちょっ、その呼び方…完全に何かあったと想像しているじゃないですか。何も無いんですって。小学校の頃にオタク趣味を進めたことで師匠と当時言われていただけですよ。」
「なるほど。何も無いと。でも男と女である以上これから何かある可能性はあるじゃない?私はそこを聞いているのが分からないかな?不倫理君。」
ダメだ。こうなると弁明の余地は無いのかもしれないな。何も無い事を今後の関係で見せていくしか無いのかもしれない。
「大丈夫ですよ。今後も何もこれからもそういう関係になる事はありませんから。ほとんど交流もないと思いますし。俺には詩羽しかいないしね。」
「あら、関わらないなんて寂しい事言うじゃない。いいのよ私は別に。その方がネタには困らないし。」
「これから書くであろう小説のネタの話だよね!?なんか含みある言い方しないでください!?」
「あら不倫理君なのに倫理的な事守ろうとするの偉いじゃない。」
何か意味ありげな笑いが聞こえたと思ったら詩羽がとんでもない事を言い出した。
「私にも紹介して欲しいなぁ。その後輩ちゃん。」
「分かった。気は重いけど…これは俺の罪でもあるし。」
「罪……?」
最後に詩羽が訝しげに呟いた。
☆
「やぁ、倫也君。久しぶりだね。まさか君の方から会いに来てくれるなんて思わなかったよ。」
軽薄な笑みを浮かべ軽口を浮かべるこいつは久し振りに会っても嫌味ったらしかった。
「あれ?伊織?俺は出海ちゃんを紹介したかっただけでお前に会うつもりなんて無かったんだが。」
「誰なの?はっ!まさか倫也くんとお友達の!?」
少し“お友達”の発音に違和感を感じたけど気のせいかな?一瞬と、じゃなくてほって聞こえたような。
いやいや気のせいだよな?あえて突っ込まない方がよさそうだ。
広げたら面倒なことになりそう。
「詩羽の察した通りだよ。昔からの友達だったんだけど出海ちゃんが家の事情で引っ越しちゃってね。」
どうやら出海ちゃんを呼んで彼女に紹介しようと思っていたのだが伊織は俺に会えると聞いて着いてきたみたいだ。
「やだなぁ。倫也君。今僕は出海のプロデュースをしてるんだ。敬愛なる霞詩子先生をご紹介させて頂けるとなるとビジネスチャンスの匂いを感じて僕がその機会を逃すはずないじゃないか。」
そう。この男は俺みたいなオタク趣味全開で自分で費やすのを尻目にそこに稼ぎ所を見付けた為に昔俺に近付いただけだった。
それで言い争いになって引越し前に仲違いしたのだけど…。
「同人ゴロとして成り上がっただけじゃないか。俺は伊織みたいな真似は認めない。」
「そう敵視しないでよ倫也君。昔とは違って今はちゃんと稼いでいるよ。」
「信用できないな。」伊織が有望な絵師達を囲って荒稼ぎしていた過去を思い出す。
こいつの金儲け至上主義の一方的なスパルタで絵を描く事を辞めてしまった人も多いというのに。
小学生や中学生の単純な思い付きから生まれたものだった。
今やバイトとは言え広報を担当してる俺としては見逃せないとこである。
「私は不死川書店に所属してるから個人で営業とか仕事をする事はできないわ。内容によるけど具体的な話があっても一旦話だけ持ち帰らせて相談させてもらうし。面倒だからビジネスの話ならお断りよ。」
詩羽は大人な対応ができている。これなら俺が必要以上にいがんでも仕方ないか。
「そういう事だ伊織。力になれなくてゴメンな。」
「もう!お兄ちゃんったらすぐ仕事の話にするんだから。」
それまで黙って俺たちのやり取りを見ていた出海ちゃんがようやく口を開いた。
「相変わらず兄には苦労してるみたいだね。出海ちゃんも。」
この兄と長年付き合っているとなると同情の気持ちも湧いてくる。ご愁傷さま、そういう気持ちで出海ちゃんを見ると台詞とは正反対の表情をした出海ちゃんがそこにはいた。
「でも、それでこそ伊織なんだよね〜。」
「え……」
俺は思わず長年そう呼んでいるのが当たり前かのような出海ちゃんの伊織へのその呼び捨てがあまりにも自然に聞こえて衝撃を受けた。
俺のその驚きが表情に出ていたのか出海ちゃんが慌てて言った。
「あわわ、今のは忘れてください先輩。」
チラッと出海ちゃんは伊織を見た。
いつものスカした表情で「別に怒ってないよ。」と出海ちゃんに微笑みかけた。
そして俺を見て付け加えた。
「倫也君なら分かってくれるさ。」
俺を射抜くように見てそう言った。
そのやり取りを見た詩羽は何かを察したのか「降りてきてたわ。そういう事だったのね。」
と呟き狂ったようにノートにペンを走らせていた。
……今度の新作、兄に恋する妹が出てくるのかな?
それにしても出海ちゃんと伊織って付き合ってる?兄妹で?
まさか!引越し先で、あるいはこっちに戻ってくる期間の間に兄妹仲がよくなっただけさ。
変な勘ぐりは止めておこう。
☆☆☆
「それであなたはあの妹さんと今後どういう接し方をしていくつもり?」
「......っ!?」
それは伊織と出海ちゃんと4人で会った日の夜のいつものオンライン勉強会中に最中詩羽に唐突に投げかけられた疑問だった。
俺は言葉につまる。いつかはされると思っていたがなんの脈絡もない時に質問されて。
答えも用意していなかったから答えにつまる。
それまで積分の難解な式の計算方法やら幕末の日本のここは試験に出やすいやらそういった会話が繰り広げられていた中突然にだったし。
いつか聞かれるとは思っていた。けど答えが出ていなかったので聞こえなかったフリをして勉強を続ける。
「おーい、難聴系主人公君は聞こえないフリを貫くのかな?」
「え?ゴメン。計算に夢中で気付かなかった。で、何だっけ?」
俺はあくまで聞こえないフリを貫く。
「不倫理君の不倫相手が実はお兄ちゃんにお熱だったって話。どうするの?フラれたお相手さん。」
「不倫相手だなんてそんな。俺の潔白は証明されたでしょ?俺は普通に先輩で出海ちゃんはヲタク趣味の教え子なだけだよ。」
聞こえないフリなんて手段が通じる相手じゃなかったのであっさり引き下がる。だが事実は事実として伝える。言葉のニュアンス的に本気で浮気や不倫だと思ってるとは思えなかったし。
2人との接し方の距離感に困っているので取り敢えず遠回しに我関せずなスタンスを表明していこうと思う。
「あら、さすが倫理君。兄妹の恋愛なんて世間が許さないから腫れ物は見てみぬフリと言うことかしら。師匠と慕われておきながら酷いわね。」
さっきまで不倫疑惑をかけて責めてたのに途端にこれ。やっぱり本気では無いようだ。いつものように俺をイジる詩羽の笑顔が浮かんでくる。
確かに見てみぬフリはできない間柄ではあるんだよな。伊織とは昔確執があって付き合いは無くなっていて会う義理は無いにしろ。
出海ちゃんの事となるとそうでない…のかもしれないけど。
「あれは出海ちゃんの選んだ道だし。外野の俺達がとやかく言うことじゃないかと。その為に紹介されたんだろうし。それに俺達の勝手な推測しているだけでホントにただ仲の良い兄妹なのかもしれないしね。」
「あら、ラノベ業界じゃ兄妹愛なんて昔トレンドになったのよ。どの出版社も今や手を出している、と言っても過言でないジャンルのひとつよ。」
「それは架空の話であって。実際に兄と妹で付き合ったなんて事になったら風当たりが。」
「だからこそ周りが見守ってあげないと。その為に私達に紹介してくれたのよ。行くべきよ!」
有無を言わせず反論の余地を与えないよう結論を突き付けてくる詩羽。今そのラノベ業界で恋愛モノを書かせたら右に出る者はいない、と世間では言われている霞詩子先生はあの兄妹にご執心のようだ。
余っ程興味が湧いたのかな?あの兄妹に。
「俺はそっとしておいた方がいいと思うけど。いきたいの?詩羽は。」
「当然じゃない。どうしたの?厚かましいくらいに色んな事に首を突っ込んで今や創作活動に身を置くあなたらしくない。」
どの世界線の話だろうか。俺そんなに厚かましかったかな?嫌、自分でそうじゃないって思ってても他の人が見るとそうじゃないのかも。でも今回に限ってはそうでは無い。と思える行動をしたい。
「それでも、だよ。あの2人には触れるべきじゃない。」
「なんでよ。いつものあなたなら……」
何かを言い淀んだ詩羽はそれ以上俺に何かを追求することは無かった。
☆☆☆
あれから1ヶ月。詩羽は波島兄妹に取材と称し色々話を聞いているようだ。
俺は受験勉強や学校とバイトを両立しながらたまにバンドの練習に顔を出している。
この前の模試の結果が思ったより伸びてなかったので勉強に重点を置いた為合わせての練習は久しぶりになる。
休憩中にちょこちょこギターは触っていたが。
作者作曲に関してはピンと来ない。
結局今期流行ってるアニメの曲を弾いてみたり好きなアニソンを弾いてみたりに終始している。
「勿論勉強が忙しくてそっちよりも、って事もあるんだけどね。」
「あら、誰に言い訳しているつもりかしら?」
すかさずオンライン勉強会をしている詩羽からツッコミが入る。
「詩羽はどう作品作りしてる?」
「そうね。私はスイッチが入ったらどんどん文章が生んでくるって感じかしら。」
「スイッチかぁ。なかなか入らないんだよねぇ。」
「そうね。きっかけは絶対に必要だと思うわね。私の場合はモデルにした子をじっくり観察する事で降りてくることもあるわ。」
「降りてくる。カッコいいですね!俺も降りて来て欲しいものですよ。モデルかぁ。」
「勿論私の場合は小説だしあなたの場合は歌だし。勝手は違うと思うからそっちの世界の悩みはそっちの世界に聞くのが1番だと思うわよ。」
「そうですよね。ありがとうございます。」
メンバーに相談しながらそろそろ作ってみたいな。先輩とクリエイターの苦しみだけじゃなくて喜びも味わいたい。
☆☆☆
夏休みで時間もあったし久しぶりにメンバーと合わせ練習をした後に歌を作りたいと相談した。
取り敢えずは歌詞だけ書いてみるということになりジャンルを恋愛の歌という事に決まって解散した。
「詩羽との恋愛の心情とか書いてみようかな。」
色々試行錯誤しながら駅に向かって歩いていると見知らぬ男と手を繋ぎながら仲良く歩く美智留を赤で信号待ちしている交差点の向こう側で発見した。
「え!?美智留?」従姉妹のデート(?)現場を見付けて事実かどうか、本人かどうか確認したいと思い信号が青に変わって直ぐに走って向かいの交差点を渡った。
既に雑踏に紛れて2人の姿を見つける事は出来なかった。
そろそろこの話も完結に向かっていってるのでそろそろ続編に向けての構想も組み立てていきます
次回作はネームを書いていこうと思ってるので色々試行錯誤中です。