冴えないヒロイン達が幸せになり冴えたヒロイン達になるハナシ 作:ゆーーーー
励みになっているので少しでも興味を持ってくれるように遅めの更新になりますが何とか続けていくので気長に続きを待ってくれると幸いです。
ゴールデンウィークが明けて学校が再開してから1週間。新社会人が最も退社していくタイミングで五月病が発症しやすいと言われている時期である。
俺のバイト先の不死川書店でもそれは例外では無かったらしい。バイトの俺1人じゃ社員の負担を減らす事が出来ずにその過酷な業務量に耐えきれずドロップアウトしてしまった社員が1人。そしてゴールデンウィーク明けなのに何故か連絡も無く無断欠勤し上司の右隣さんが連絡をしても一切繋がらないらしい。
まだ確定していないがこういう連絡も無くフェードアウトしていく社員が色んな会社で続出するそうだ。その度に「まったく、これだからゆとり世代は。」と愚痴をこぼすのが定番らしい。もうゆとり世代ではなくなって暫くたつし若い世代を「ゆとり世代」と一括りされたくないからゆとり世代の方々にも頑張って欲しい。
と、思いながら今日のバイトを終了し退勤して真っ直ぐ家に帰ってきてから直ぐにSkipで詩羽と連絡を繋ぎオンライン勉強会を開き現在休憩中で今日の仕事を振り返ったとこで今に至る。
俺は黙々と勉強を再開する。分からない所や疑問は聞いているが勉強が進み自己理解が深まってきていることから分かんなかった所や練習問題で間違えていた所等自分で調べている事が最近は多い。
Skipの向こうでは詩羽の執筆活動を物語るキーボードのタッチ音だけが部屋に響いている。
俺の予想では今『恋するメトロノーム』の最新刊の執筆が佳境を迎えてる所であるはず。
今回の巻に入る際は俺のバイトの面接の件を話し合ってくれていた時だから町田さんと念入りに打ち合わせをしていた事を思い出す。
ひょっとしたら終了が近いのでは?HPの発刊スケジュールを見ていると『(終)』の文字が表示されていないからまだ続くと信じてはいるけど今怒涛の展開が繰り返されているから終わらないと間延びしている感が出てしまいそうだがどうなのだろう!?
ちょっと聞いてみようかな?
「ペンの動きが止まっているようだけど。集中力切れた?」唐突に詩羽に勉強が進んでいない事が指摘された。お互いにやる事をやっているが通話を繋げている為気が付いた時はこういう感じで注意や声掛けが行われる事がある。これが離れていても2人で勉強している成果であるとも言える。
「詩羽に聞こうか悩んでる事があるんだけど。」
「集中力が切れる原因がそれなら聞いたらいいんじゃない?答えられるかは質問の内容にもよるけど好きな体…」なんかいつものように変な会話の内容になりそうだったから食い気味に質問してみる。
「恋するメトロノームって連鎖終了の話ってあったりする!?」
「……これは彼氏には話せない内容ね。と、言いたいところだけど。バイトとは言え不死川書店の社員やってるから伝わったかしら?」ちょっと沈黙があったが答えてくれそうだ。
「はい。何となくそろそろみたいな噂を聞きまして。」恐る恐る聞いてみる。
「そうね。そこまで聞いてるなら答えていいかしら。来月出る新刊のその次で完結する予定よ。」
「やっぱりそうなんですか。その次は何か書く予定何ですか?」覚悟はしていたがやはりショックを受ける。俺と詩羽を繋げてくれた作品が終了する。
バイト中の会話で何となく予想はついて信じないようにしていたがいざ作者からショックだ。
でも作者としての詩羽を一ファンとして応援したいし彼氏として、作者として支えていきたい。だから書くのは続けて欲しい。
「連載経験ありだし私が次の作品を書く意欲があるから続けていけそうよ。最も次回作が人気出なければ打ち切りになるけども。」
打ち切りになればまた面白い作品が書けなかった場合契約が解除になる可能性もあるはず。でも次回作は書けそうなら作者としての詩羽を、霞詩子をこれからも応援していけそうだ。
「次も恋愛系ですか?」
「勿論そのつもりで町田さんとは話してる。似たジャンルだったら恋するメトロノームを終わらせる意味が無くなっちゃうから違ったジャンルになると思うわ。」
「え?そうなんですか?てっきりまた似たジャンルにするのかと思っていましたが。」
「うふふ。倫也のお陰で人気出たし実は連載終了は反対されてたのよ?」嬉しそうに詩羽は話している。パソコンには紅潮しながら照れ笑いを浮かべる詩羽が映っている。その笑顔を見て俺も照れてしまう。
「じゃあなんで?」
「恋愛において何かあった場合、その恋愛は終わるのよ。色々な意味で。」
「何かあったら…終わる?それはどういう意味なんですか?」どこに向けての言葉なのか確認する為に思わず聞いてしまう。
「さぁ?作者として言える事は提示する事しか出来ないわ。それを受けて想像して答えを出す権利は受け手である読み手にしかないからお任せするわ。」
「え!?なんか怖いんですけど。それって俺に嫌気がさしたって事ですか!?それで“終わり”?」俺達の関係が終わりって意味を含むのか??まだまだ続けていける、って思ってるのは俺だけなのかな?
「そうねえ。私の恋人ったら色んな女の人に余所見してばかりだから。従姉妹紹介された、と思ったら今度はクラスメイト紹介されるし。」
「え?それは相談者として詩羽の方が適任だと思って。」
「別に言いわ。そのくらいは。そんなに周囲で女の子に恵まれてる倫也が私と付き合ってくれてる、私だけを見てくれているってそれだけで幸せだから。」
「ありがとうございます。なんかそうストレートに言われると照れますね。」
「もう。倫也から振ってきたのに何照れてるのよ。でも確かに小説でも私ってストレートに自分から愛情表現するって珍しいかも。」
「そうですよね。唯の霞詩子ファンだと聞けない事聞けて優越感生まれます。」
「私の事独占できるのは倫也だけよ?」
「って事はこのままでも大丈夫ですか?」
「そうね。私は特に不満は無いわ。恋愛小説を書いてる私が別に山があるような劇的な恋愛をしている必要性は無いわ。作者の起こった経験だけでしか書けない作家に価値は無いと私は思ってるしね。」
「そうなんですか。事実は小説より奇なりって言いますしそうでなくても現実は小説より山がある可能性ありそうですしね。」
「あら、私との恋愛に飛びっきりの山が欲しいならあげようかしたら?飛びっきりの別れ言葉を用意する事くらい出来るわよ?」
「さっき否定したのにいきなり怖い事言わないで下さいよ。そんな事言ったら実現しちゃいますよ?」
話した事は例え嘘でも、適当な事でも言葉にしたら実現してしまう可能性がある。言霊という昔から言われているように。
「そうね。それじゃ飛びっきりのプロポーズでも用意しようかしら。私の連載終了記念の食事会として倫也と2人きりで楽しんでそれから薬指に指輪をはめてあげる。」
「それは普通に嬉しいです。プロポーズって普通男からじゃ無いですか?」常識的には何となく男からするイメージがある。
「あら。普通がいいなら私じゃ無い方がいいかもしれないわよ?」
「充分ですよ。詩羽を独占できるなんて沢山いる霞詩子ファンにバレたら○されてもおかしくない案件ですよね。」
「あら。私のファンってそんなに治安悪いのかしら?でも独占できるのはどうかしら?」
「え?どういう事ですか?浮気宣言ですか?」
「ラノベ作家だからイラストレーターとただならぬ関係かもしれないわよ?」
「仕事の関係なら仕方ないですよ。多少の交流があるのは。」
「私達の仕事は滅多に会う事が無いから大丈夫だと思うけどね。でも世の浮気は仕事の関係から始まる関係が多いから気をつけた方がいいわよ。」
「気をつけます!ってなんの話ですか。これ。誰に対しての警告です?」
詩羽のノリに巻き込まれてきたので突っ込んでみた。ホントにこれ誰向けなのだろう?ラノベ作家だからハーレム系主人公に送る言葉なのだろうか?
「ところで、この前の恋愛相談の件ってどうなったのかしら。何か聞いてる?」
「え?まだ聞いてませんけど。特にそこまで仲のいい関係では無いですしこっちから聞くことも無いかと。」
「倫也にとって加藤恵ってそんな存在だったかしら?」
「ですね。何回か教科書忘れた時に一緒に見せあった事あるくらいですよ。」
「それってなかなかの関係じゃない?隣のクラスから借りてくれば済む話が隣に席くっつけて見せてもらうのって。倫也みたいに別のクラスに友達がいない超絶コミュ障君なら偶然隣の席の人に頼るしか無いけど。あの子はそういう感じの子では無さそうだったけど。」うーん。言われてみれば確かに別のクラスから遊びに来た女友達と話してる光景はよく見るぞ。
その子らから借りれば俺なんかと教科書見せ合わなくても良かったのでは無いだろうか?
俺は忘れた場合は頼らざるを得ないのは仕方ない。
彼女からのディスに取られそうなその推理は大体当たっていそうだ。
「何ででしょうね?実は前世では仲良かったのかもしれませんね。」
「いえ。前世では無く加藤恵と仲の良いパラレルワールドが存在するのよ。」
「パラレルワールド、別の世界線って事ですか?あ、今期タイムリープ物とか異世界系多いですよね。確か。霞詩子先生の次回作はまさかそういう系ですか?」唐突に別世界の話をされたものだから次はそういう系の話で来るのかな、とピンと来て聞いてみる。そうじゃないならビックリする。俺が加藤恵と仲良くする世界ってとんな世界なんだろ!?
「ちょっとその方向も考えつつ町田さんと打ち合わせしながら次回作も相談中よ。最もまだ今作はまだ完結して無いからその話はまだ詰めていないのだけど。」
「詰めていないにしてはスラスラ出てきたような。想定はあるという事ですか?」
「そうね。色々なパターンで話しているわ。でも今のパラレルワールドの話自体は私もどこから出てきたのか分からないのよ。」
「作家の想像は無限大なんですかね?漫画でも週刊連載マジックが生まれるとか聞いた事ありますし。」
「そうね。そういう事にしておきましょうか。」
「ですね。俺も詩羽以外と付き合う選択肢なんて想像出来ないですし。」
「そうね。それじゃこんな時間だし倫也は寝ておきなさい。夜更かしは勉強の敵なんでしょ?」
「そうですね。受験は短期記憶じゃなく長期記憶にしないと意味ないですから。寝て忘れた所を明日また復習する事にします。」
そうしてお休みの挨拶をし合って通話を切って今日も幸せな気持ちで眠りにつくのだった。
☆☆☆
『ライブの日決まった!夏休み!!土日だし来れるよね!?』
学校の定期試験が終わって復習を終え夏の模試に向けて勉強しているとこでそんなチャットが美智留から届いた。
すぐに詩羽に聞いたら『一緒に行きましょ。その日は次の日の昼くらいまで空けておくように。』
と返ってきた。これは、楽しみだ。美智留のバンドのライブも楽しみだがその後の予定が楽しみで仕方ないな。
翌日の授業中はニヤニヤが止まらなかった。
授業が終わり昼休みに終わったとこでいつものように話している。
「ね〜。恵?今日放課後暇?」
「今日なら全然いいけど〜。」
「私が作ったサークルが今ピンチでさ。助けに来て欲しいの〜。」
「サークル?私に出来ることならいいけど。流石にいきなりだと出来ることは限られるよ〜?」
「勿論。恵に苦労はさせないわ。とにかく今日だけ。お願い。」
この通り、と深々と恵の友達は頭を下げている。
「で、サークルって?」
「ダンスサークルに入ってるの。この前部活申請を学校側にしたんだけど人数足りなくて同好会扱いになったんだけど1人今日学校来れなくなって。監査の時にだけ頭数として来てくれるだけでいいから。」
更に深々と頭を下げる友達。でも休んでるだけなら人数合わせの要員いらなくね??
「え?でも休んでるだけなら私の頭数要員の幽霊部員いらないんじゃ?」
「あー、休んでるだけならね……」
「え!?辞めちゃったの??ひょっとして。」
「そうなんだよね〜。だからこの通り。お礼に何でもするから!」
あーあ。『何でも』って言っちゃった。これが俺なら恋するメトロノームの大人買いを勧めて売上に貢献する人増やそうと思ったが。加藤恵じゃそうはならないだろう。
何となく押しが弱そうだから安請け合いしそうな気がする。何となく。そう思ってると。
「じゃ今度仲良い子がライブやるって言ってたから一緒に行こ。高校生バンドしか出ないイベントって言ってたけど私怖くて。」
ん?その日って??美智留がやるライブの日でもあるよな。しかも高校生バンドばかり、って。
もしかして…一緒のライブ!?
え?まさか一緒の日にライブ行く事になる??
☆
「って事で。偶然加藤恵と一緒の日に同じライブ行く事になって。」
「あら。加藤恵がライブ行くなんて子じゃないと思ったけど。どうしてそうなったのかしら。本格的に倫也狙ってる?」
偶然の一致だからしょうがないけどなんか誤解生まれてる!?
「いやいや。なんでもこの前の相談の相手の幼馴染の人がバンドやっててそれでライブ誘われたらしいよ!?俺が狙ってる訳じゃないからね??」
「そう。そういう事。それってホントに偶然ね。」
と、言う事で偶然一緒に行く事になったのだった。
アンケート投票ありがとうございます。
波島出海ちゃんの登場まで時間あるのでそれまではどうなるかお楽しみに。