冴えないヒロイン達が幸せになり冴えたヒロイン達になるハナシ   作:ゆーーーー

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長らく放置してすいません。
日常生活忙しく執筆が止まっていました。
まだまだ忙しい時が多く筆遅になってしまいますが完結に向けて話を進めたいと思います。

想定以上に原作からかけ離れていますが原作ファンの皆さんご容赦ください。



八章 創作の醍醐味を知る事の第1歩を歩みだした日があるとすれば今日に違いない

 

高校2年のとある日の夏休み。

美智留に誘われたきっかけで衝撃の出会いがあった日の余韻と東田大学に現役で通っている先輩の励ましもありかなり勉強が捗っている。

『高校2年の夏が受験の結果を左右するよ』なんていう一般論(?)の励ましもあったがそれを実践してきた先輩の生の言葉は自分で思っている以上の効果があった。

 

不死川書店のアルバイトでも東田大学出身の先輩もいるし様々なアドバイスや叱咤激励を受けながら使える時間を有効に使い着々と成績を伸ばしていると思いたい。

夏休みに受けた模試の結果を少し期待しつつも更なる向上に向けて勉強をしていきたい。

そんな中での詩羽とのオンライン勉強会と会って直接同じ空間で行う勉強会は何よりの癒しと励みになっている。

『最愛の彼女の為に』という思いは何より力になる。自分の想像以上の力が出ている気がする。

もしかしたら『自分の為に』って思うより『最愛の人の為に』って思う方が力が出るのかもしれない。

アキさんと葉月さんが聞いたら「リア充め。」って言われそうだけど。

俺ってリア充な実感無いけど。もっとイチャイチャきてるカップル山ほど居ると思うし俺と詩羽カップルは『リア充』として恨まれるようなカップルではなさそうな気がするな。寧ろ『あ、2人付き合ってたんだ。』と言われる事の方が多そうな気がするな。

そんな事を思いながら勉強を再会しようとした時に蓮君からメッセージが入る。

 

勉強どうよ〜?俺達の次のライブが決まったぜー!今月末良かったら来いよ。

 

ライブのお誘いのメッセージだった。俺はあの時の興奮を思い出しながら返信したかったがまずは詩羽に相談のメッセージを送る。

 

今月末また蓮君達のライブがあるみたいです。一緒に行きませんか?

 

流石に執筆活動と学校で忙しくしてる詩羽はそう何回もライブに行けないかな?そう思いながらもメッセージを送った。

メッセージを送ったので勉強を再会。楽しみが増えたのが功を奏したのか集中力が増して能率が上がった。

気が付いたら結構な時間が経っていることに気が付いたら。これがライブに行く事を決めた事による集中力ならこれからも定期的にライブは行きたい。

今まで学校・バイト・勉強の繰り返しの生活になっていたがそこに加えて新たなアクセントになりそうだ。

最初は嫌々だったがライブに誘ってくれた美智留には感謝しなくてはいけない。

寝る前にスマホを確認すると詩羽からメッセージが返ってきていた。

 

ゴメンなさい。執筆が佳境に入っていて時間が取れそうに無いの。でも誘ってくれてありがとう。

勉強会も暫くオンラインになっちゃうけど今度埋め合わせするから。

 

今修羅場を迎えてるみたいだ。昨日のオンライン勉強会ではそんな素振り見せていなかったけど詩羽の執筆活動を応援したいから仕方ないな。

応援のメッセージを打っとこう。

 

いえいえ。大丈夫ですよ。気にしないでください。

執筆活動頑張ってください。新刊楽しみにしています。

 

ライブの方は前回楽しめていたようだし美智留を誘っておこうかな。

メッセージで聞くと速攻でオッケーの返事が返ってきた。

従姉妹だしこれ浮気じゃないよね?

 

 

夏休み終盤のとある土曜日。

俺は初めて来た駅の近くの喫茶店でお茶しながら美智留を待っていた。

今日は蓮君達のライブを見る為にちょっと遠出をしていた。

今は単語帳を捲りながら美智留の合流を待つ。

スマホがチャットを知らせる通知音が鳴る。

美智留からだった。

 

準備に時間が掛かってるから待ち合わせ時間から30分くらい遅れる。

 

成程30分か。と再び単語帳を捲る。30分という時間はあっという間だったようであっという間に過ぎていた。

悪びれもせずに現れる美智留。

「今日は誘ってくれてありがとう。」

開口1番に感謝を口にしてくれたし許すとしよう。

「勉強してたらあっという間だったし大丈夫だよ。じゃ、行こうか。」

単語帳を鞄にしまい向かう準備をするとライブハウスの場所を聞かれたので答えるとちょっと休憩させて。と言われたので席を立ったが座り直す。

「こんな日でも勉強なんて熱心だね。」と美智留に言われた。褒められたのか皮肉なのか、どう返せばいいのか分からなかったが素直に受け取ろうとは思わなかった。

「美智留はこういう日じゃなくても勉強しないから留年が危ぶまれる立場にいるんだよ。」

前回留年危機の為に赤点回避の手伝いとして勉強会を開いたからこそ言える事を言っておいた。

それを聞いた美智留はあからさまに嫌な顔をしていたがそれくらい今回の事は堪えてもらわないと。

そうじゃないと肝心な時に力が出まい。

「だってさ〜。」不満げな顔をありありと見せていた。

だからだよ。と思ったが口には出さずその言葉は飲み込んだ。

「今度は危なくなる前に対処しなよ。そういう訓練の場なんだから。」せめてものアドバイスだ。ここで頑張ったら人生良くなるかは分からないが良くできるきっかけにはできるだろうし一言アドバイスするに留めた。

 

時間もライブの開場時間に近付きライブハウスに向かう事にした。

美智留が1度来たことがあるらしく案内してくれた。前回来たライブハウスは地下に降りていく所だったが今回は入口が1階にあり入るとロビーになっており受付のカウンターとドリンクを飲めるバーがあった。

ライブフロアが2階になっているようでドリンクを飲みながら寛いでる人がパラパラいる程度だった。

「今日はライブフロアとバーが別フロアなんだ。」

ポツリと言ったら美智留が「前回は同じとこにバーがあるとこだっけ?」と、聞かれ様々なタイプのライブハウスがある事を説明され知った。

美智留が色々説明してくれたってことはそれだけ色んなライブハウスに行ってるって事か、なんかいいな。

俺も色んなライブハウス巡れるかな?忙しいからちょこちょこ行くだけになりそうだ。いや、いずれ。この受検が終わったら!

そんな決意をしつつロビーでコインロッカーに荷物預けたり準備してからライブフロアに行くと今日も前回のように来ている人がザワついていて前回来た時のあのライブの衝撃を思い出して心臓がキュッとなった。

一気に心拍数が上がり体温が上がってきた。ワクワクなのか何だか高揚している。

前回の興奮を体が覚えている、そんな感じだった。

 

蓮君とアキさん、葉月さんがフロアで話しており見知らぬ人達と話しているとこだった。

蓮君達に挨拶をすると今日のメインで最後にライブするバンドのメンバーだと紹介してくれた。

蓮君達は今回はメインじゃ無かったが6組のバンドがある中で5組目に登場という事で最初はどんなバンドなんだろう?と考えながら話に加わり主に美智留が会話に参加していた。

俺はと言うとそう言えば、そういえば今日は蓮さん加藤恵さんを呼んでないんだ、と思っていた。

同じクラスの知り合いだし居たらいいなと思ったけどいなかったのは残念。

 

 

1〜4組目のバンドのライブが終わったが前回のicy tailや蓮君達のバンドのライブのように衝撃や感動が残るバンドはなかった。

何となく、何かが違うな。と感じてしまった。心にダイレクトに刺さるそんなバンドには今日は会わなかった。

次はいよいよ蓮君達のライブだ。これは楽しみだな。

いよいよ次という興奮が体の体温を上げていた。体が前回のライブの衝撃を覚えているようだ。

心拍数も上がり転換の時間が死ぬ程長く感じた。これまでの4組のバンドの転換の時間と同じ時間か?と疑問を覚えるくらい長く感じた。

 

いよいよ入場曲が掛かり蓮君達がステージに入った。始まる!

3人が楽器を構える。

入場曲が消えると同時に演奏がスタートした。

 

 

 

 

ライブが始まり終わるまであっという間だった。

 

俺は今日最後の転換の間にフロアに戻って来た蓮君達に音楽の創作について何となく聞いてみた。

 

するとアキさんが答えてくれた。

「興味があるならやってみた方が早いよ。どんだけ言葉にしても表現できない事だし。体験してみないと始まらないよ。」

いきなりの誘いだったがいきなりの事でどうしていいか分からない。

そもそもやってみるにしても仲間なんて集まらなそうだし。バンドなんてそうなかなか組む機会なんて無いだろう。

 

「ねえ、君って楽器やってるの?」後ろからいきなり声を掛けられた。

驚き慌てて振り向くと「あぁ、ごめんね。バンドを組むみたいな話をしてたから楽器やってるのかな?と思って。」

初対面で声を掛けられるなんてナンパか!?なんて思ったが俺は男だし相手も男だ。そんな事無いか。

いやいや、有り得なくも無いのか?多様性の世の中だしそういう人もいるのか?なんて色々考えていると言葉足らずだったかな?と更に言葉を重ねる。

「俺達メンバー探しててね。興味あるならどうかな?と思って。」

メンバー募集!?いやいや、『楽器やってるなら』って事だよな。俺そもそも楽器やって無いしお呼びでは無いよな?

そうしたらそれまで何も反応していなかった美智留が急に反応した。

「メンバー募集!?やればいいじゃん!倫也がやる気になったなら!楽器なら今から始めればいいんだし!募集パートは?」

俺以上に食い付いた。美智留が入るみたいな聞き方だ。バンドの掛け持ちって部活の掛け持ちみたいに出来るもんなのかな?美智留ならしそうだな。

 

「あ、初心者だったんだ。でもやる気ありそうだしそれでもいいかな。リンコードンティパスのファンなら合いそうだし。」

なんか聞き覚えがあるような無いような横文字を聞きつつも何となく聞き流していた。

募集パートの事も種類よく分からないし何となくで聞いていた。聞いたの美智留だし。

ドラムとベースとギターいる、って言ったかな。

「じゃあギターとかキーボードとか?」

美智留が聞き返してた。あまりに美智留が詳しく聞いていたのでやはり美智留が入るのかな?掛け持ちとかでする流れなのかな?

「丁度いいじゃん。ギターなら私教えられるし。ね、倫也。」

「いいね。バンド始めるのと共に始めるの賛成だよ。この際だ。始めてみないかい!」

この人もやけにグイグイ来るな。美智留も改めて

俺を見つめてくるし。何故こんなにグイグイ来るんだろう?美智留の場合は明確に『私と一緒にこっちへ来い』的なオーラを感じるが。

でも本当に初心者だし辞めといた方がいいんじゃ?

躊躇していると声を掛けてきた同じ歳くらいの人が更に畳み掛けてくる。

「こういうのはほら。勢いって言うじゃない。騙されたと思って。さあ!やろう!」

やらないか的な感じの誘い方辞めて欲しい。

これはどうした物か。

だがライブの熱で既に冷静な判断を出来ていなかったのかもしれない。

先程ライブを終えたばかりの葉月さんが「私もギター教えるから。」

みたいな後押しもあり勢いで首を縦に降ってしまった。

 

 

翌日美智留と葉月さんととある街の楽器ショップに来ていた。

取り敢えずはまずギターを買いに。

昨日勢いで首を縦に降ってしまったがいざ始めるとなると時間は足りるんだろうか?そう思いながらも昨日流れで約束してしまった為初心者用のギターを買いに来た。楽器に詳しくない俺は2人に聞きながら初心者用のエレキギターを購入。

その足で近くの喫茶店にいった。

昨日勧誘してくれた時は1人だったが今日は改めて3人で挨拶したいという事で今日来るのだそうだ。

怖い人じゃなければいいな。

そう考えてると昨日勧誘された人が声を掛けてきた。

「やぁ。待たせたね。」

俺がこの世界線で創作活動を共にする3人との出会いになるのだろうか?

そんな思いをしながらドキドキして3人に挨拶をする。

「初めまして。倫也です。昨日始めようと思った初心者ですがお願いします。」

初顔合わせだし礼儀正しく行っておこう。喫茶店に到着した3人にご挨拶。初めてだし色々緊張するな〜。

「初めまして倫也君。」

「この前初めてライブに来たばかり何だって?こっち側に来たくなったその衝動分かるわ〜。」

昨日紹介された人に加えて2人に初めましてのご挨拶をされて席に着いた。

想像してるより年上っぽいし癖がありそうな人達だ。初めての世界だし、そもそも初めましてだし緊張する。

 

「へぇ〜。美智留ちゃんの従兄弟なんだ。それでライブに誘われてハマっちゃったのか〜。」

「ライブ来て、ハマってそっから直ぐに自分でもやりたいと思うようになるの早いね〜。やるね。倫也君。」

世間話をしつつ俺がライブにハマってしまったきっかけを話した。

三者三様の反応だったが初心者の俺でも受け入れてくれてるっぽい?第一関門は取り敢えず突破したかな?

「えっと。そう言えば3人の名前って?」

取り敢えずまだ聞いてない3人の名前を聞いてみた。

「あ、そっか。自己紹介まだだったね。ごめんごめん。俺の名前は因幡小亮(いなば こすけ)。小亮だからバンドでは『すけはん』って登録だから気軽にすけはんって呼んでよ。」

俺をバンドに誘ってくれたのはすけはんか。なんか今思うと名前も聞かずにこの話乗った俺すげー!

って言うか話すと明るいなすけはん。最初会った時は怖い人だと思ったけど。

「俺の名前は出雲 太糸(いずも ふとし)。名前に糸入ってるからバンドでは『いと』って登録。気軽にいと呼んでね。」

この人は挨拶はしたけどあんまり話してないな。元々が無口な人なのかな?俺と一緒で初対面の人とだと緊張してるだけだったりして。

「僕の名前は美作 尚小(みまさか なお)。バンドでは『なおっち』で登録してるからなおっちって呼んで〜。」

お、この人はボクっ娘だ。凄い!あ、でも中性的な感じするけど女の子か分からないや。ボクっ子かな?なおっちか。男とも女とも推測できる名前だな。

 

「改めまして。安芸 倫也です。これから宜しくお願いします。」

改めて自己紹介したがなおっちに突っ込まれてしまった。

「ちょっと!硬い硬い。これから仲間と一緒にやって行くんだからもっと気さくに行こうよ。」

「え?でも年上ですよね?多分。さすがに気さくに行くのは…。」

「一緒にやってく仲間やん?あんまり硬くなりすぎると窮屈やん?楽しくやってこうや。」

と、年上だから流石にと思って敬語で行こうとしたが更にすけはんに突っ込まれてしまった。

2人から突っ込まれたから次はいとの番かな?と思って向き直るがここでも言葉を発する事は無かった。

後ろでなおっちに『何か言いな』という事でなのか腰あたりを後ろに手を回し叩いて首振りでジェスチャーをしていた。

「まぁ、初めての経験だし分からないこと多くて難しいだろうけど…自分のペースで慣れていけばいいから。」

あ、喋った。優しい声で喋る人だった。

「そうします。楽器すら触るの初めてなので色々と大変そうですけどね。」

「やりながら慣れてこっ!触ってれば上手くなるから。」

「触ってれば上手くなる、って良く聞きますね。それホント何ですか?」

初心者故の疑問な気がするが聞いてみた。

「それはホント。いつも上手くなるよ〜。勉強得意ならそれと感覚は一緒だと思うよ。」

なおっちから励ましのコメントを貰えた。

「早速なおっちの楽器屋でギター買いに行こか?」

すけはんからまさかの提案だった。これからか。考えもしたかった。

「都合的には大丈夫ですけど。値段的にいくら位なんですか?」

手持ちまあまああるけど、楽器って高そうなイメージあるな。

「2万くらいあったら初心者用のセットも含めて買えるかな?どう?足りそう?」

「それくらいなら全然。」

思ったよりはしない。普通に6桁行くのかと思ってた。より良い物となるとそうなっていくのかな?

どの世界にも上には上があるからな〜。

こうして俺は初めてのギターを手に入れ平日はオンラインでメンバーのすけはんに習うことになった。

 

土日で空いてる時は直前会って指導してくれる時間も用意してくれた。

すけはんはロックDJもやっていてバンドとしてだけでなくソロでライブに行ったりしていたので毎週指導という訳ではなく不定期に行われたので指導が無い時は貰った楽譜のバンドの既に出ている曲や有名な曲らしくすけはんが『このバンドの曲は参考になる』というのを練習曲としてピックアップしてくれそれを1人で練習していた。

3人はメンバーが増えるという事でギターがもう1人増えるということで既存曲をギターをもう1人追加した楽曲に編曲する作業にも取り組んでいるようだった。

4人の共有フォルダが作られオンライン上に徐々に楽曲のデモデータが追加されていた。

4人がそれぞれ作詞や作曲をしていき共有フォルダに入れてるのを確認して追加されている楽曲に歌詞や曲を作っていき新たな楽曲を完成させていくスタイルでやっているみたいだ。

3人は普段バイトをしつつバンド活動をしているようで一緒に会った時間に完成した曲を演奏してみて手直しを加えたりしているようだった。

この夏休みの間にメンバーの皆にかなり馴染む事ができた気がする。

 

夏休みが明けると学校行きながらバイトしながらの活動は時間的に難しい。

更に勉強の時間の確保が難しくなってきた。

9月に入って最初の土日。久しぶりに詩羽と勉強会で会っていた時にバッタリデート中の英梨々と上郷に会った。

池袋の喫茶店でいつものように詩羽に教えて貰いながら勉強していたら

「あれ?倫也じゃない?こんなとこで何してるの?ひょっとしてデート中だった?」

「そうね。ようやく新刊発売まで漕ぎ着けたから記念にデートしているのだけど。見れば分からないかしら。そんな貴女に忠告しておくとデート中に他の男に声をかけるのはどうかと思うわよ?お相手さんの心がザワついているでしょうから。」

詩羽が何故か俺に話し掛けてきた英梨々に毒を吐く。

「霞ヶ丘詩羽、そうね。色々言いたいところはあるけど。今日のところはここまでにしてあげるわ。

貴女との確執は別の世界線で決着をつける事にしましょう。」

英梨々がここがパラレルワールドであたかも別の世界が存在するような口調だったが上郷がわざとらしく英梨々の腕を組んで連れて行った。

英梨々は俺の彼女だ。そう誇示するように視線を俺に向けて喫茶店を去っていった。

付き合うまでは俺は教室で上郷と話をしていたのだがすっかり疎遠になってしまったな。

俺はふと思って詩羽に聞いてみた。

「そういえば英梨々って詩羽をフルネームで呼んでたっけ?」

「さあ?あの子に関して詳しくないし顔見知りという訳じゃないから呼び捨てにされる覚えは無いけれど。」

英梨々に対しての素っ気無い態度は『嫌い』と言うよりは『あまり知らない人』だから、って感じがした。

そりゃそうだよな?霞ヶ丘詩羽と澤村スペンサー英梨々の仲が良いなんて一体何処の世界線の話なんだ?

「さて!また集中しますか!」

大学に入れるかどうかそれを占うこの忙しい時期にバンドに新規加入したりを言い訳にはしたくない。

その分勉強に費やせる時間が減ったならより集中していく。

折角の久しぶりの詩羽とのデートこんな感じで大丈夫か?まぁいいか。詩羽も最終巻発刊に向けて執筆に集中したいだろうし。

 

 

翌日学校にて俺は上郷に謝られた。

「昨日はゴメンな。貴重な幼馴染との時間だったのに。」

謝られはしたけど社交辞令な感じがして気持ちが悪い。

「全然。こっちもデート中だったしそっちもデート中だったんだろ?俺と英梨々があそこで話すのなんか違うし。」

「だよな。倫也がそう思ってくれてて助かったぜ。」

「ところでお前っていつから英梨々と付き合ってたんだ?前に紹介はしたがまさか付き合っているとは。」

意外な組み合わせに驚いた。オタク友達として絵師の英梨々を紹介はしたがまさか付き合っているとは思わなかった。

「何となく流れで?」

曖昧な返答だったが恋愛って案外そんなものなのかもしれない。これはある意味真理なのでは!?

ロマンチックな告白とか実は創作の中だけのかけ離れた話で実はリアルな恋愛なんてこんな何気無い感じなのかも。これが小説なら終わってるけど。山も落ちも無くて盛り上がる要素が無くて読んでて味気無い。

 

 

「って友達と会話して。恋愛の曲を書きたいと思ってまして。」

「俺達あんまり恋愛の曲やってないんだよな〜。ガラじゃないと言うか。合わないなって気がして。」

夜オンライン会議中。今日はメンバー全員での会議になったので提案してみた。

「面白いんじゃない?それでこそ1人加えた意味があると思うし!」

「じゃ、歌詞書いてみます!初めてなんで書けたらチェックお願いします!」

許可が降りて俺は生まれて初めての作詞に挑戦する事に。

何気無い友達との会話だったけどヒントになったかもしれない。

「但し愛とか恋とか好きとかそういう直接的な言葉使わず書いてみて。」

付け足すように枷を追加された。恋愛の曲なのに直接的な表現を使わずにって難しくないか!?

 

「って事で生まれて初めて作詞に挑戦する事になりまして。」

バンドでのオンライン会議の後は詩羽とのオンライン勉強会。

勉強会開始前に詩羽に報告した。

「あら倫也も遂に創作をする側になるのね。ようこそこちら側へ。」

「いやいや。詩羽みたいにプロとしてじゃなくてアマチュアなんでまだそちら側という訳では。」

『こちら側』と詩羽に言われて慌てて否定した。

「でも曲ができたらライブで披露するんでしょ?それならアマもプロもないわ。お客様に提供する立場になることに変わりがないでしょ?」

「いやいや。まだ披露するか分かんないですし曲として完成するか分かんないですよ。」

「勉強大変そうだしね。でも応援してるわ。どんな形であろうと倫也が私と一緒に産みの苦しみを理解できる事を。」

「苦しみを出来ることを応援してるんですか!?どうせなら完成を応援してくださいよ。」

「まだ完成させたことも無いのにそれを応援してもらいたいなんて100年早いわよ。彼氏と言えどその発言は許せないわね。」

不穏な空気を感じて慌てて発言を撤回する。

「クリエイターの先輩として叱咤激励お願いします!」

「分野も違うし私がアドバイス出来るかなんて分からないけれど出来ることがありそうならいつでも相談にのるわよ。クリエイターとしての先輩として。」

詩羽が嬉しそうな感じがしたのは聞き間違いじゃないだろう。

俺は途方も無いクリエイターへの道にワクワクした。

 

俺のこれからの音楽活動がこれを機に盛り上がっていったのはまた別の話。

 

 

 

 

今日は週末だから久しぶりに詩羽とデート中。

この前はデート中に英梨々と出くわしたが今日は同じクラスの加藤恵とばったり出くわした。

「あれ?こんなところで偶然だね。」

「あー、そうだねー。安芸君こそこういうところ来るんだね〜。意外だったよ〜。」

棒読み感の強いフラットな口調で話していたが場違い感を指摘されているのが否めない。

迎えに座る詩羽がまた違う女の子と話してる。ってオーラで不満気な顔を向けてくるので同級生の女の子とは適当に挨拶だけして会話を打ち切った。

その後不機嫌を直してもらおうとあれこれしようとしたのだが「そんな時間あるなら問のひとつでも多く、英単語のひとつでも多く覚えなさい。」と言われて素直に勉強するのだった。

 

特に山もなく詩羽と順調に仲良くしながら勉強をしていった。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

模試で成績が上がり詩羽も一緒になって喜んでくれたり成績が下がれば落ち込む俺を励ましてくれた。

そして霞詩子先生としては新連載『純情ヘクトパスカル』をスタートさせていた。

パートナーが男みたいなペンネームだったが顔合わせしたら女の子で助かったとかなんとか。

本当は読者としてはその辺の裏事情なんかは聞かない方がいいし聞く機会なんて無いんだろうけど。

これは彼氏としての特権だろうか。

年が明ける前には早応大学に推薦で合格してからは俺への勉強と執筆活動に専念してくれた甲斐もあって俺は合格にグッと近付いた。

仕事が忙しいとかで卒業式を欠席してその夜に俺と2人だけの卒業式をした。

詩羽らしいな。卒業したのは俺の方だったのかもしれないが。何とは明言しないけどね。

 

 

入学式、別に親しい後輩が入ってくるわけでもなく部活等に属してる訳でもないので新入生が入ってくることに取り立てて期待やワクワクなど無かった。

新入生が入ってきた所で別に何か日常が変化するわけでは無い。

 

普通に平日が1日過ぎるだけだ。

図書室で残って勉強したがそろそろバイトの時間が迫っていた為そろそろ下校しようと校門を通り抜けた時そこで待っている女の子に話しかけられた。

 

 

 

「やっと会えました。先輩!」

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