龍結晶は地脈を流れる古龍の生体エネルギーがこの地に集まり、結晶化して地上に突き出たものである。
故にその結晶は莫大なエネルギーを秘めている。
結局、ミディールはクシャルダオラを喰らうことは叶わなかった。
死闘によって甚大なダメージを受けた彼は、残りの力を振り絞り空へと飛翔したクシャルダオラを追うことができなかったのだ。
無論、彼がそれだけで諦めるはずは無かった。距離を引き離されようと、彼はかの龍を見逃す理由には足りえない。
彼は諦めたのではない。知ってしまったのだ。
追い這いずった先にある、巨大な龍結晶。その下に潜む、ベールに包まれた微かな気配を。
彼はクシャルダオラを追うことを止め、巨大な龍結晶へ近づくと、そのアギトを開き貪り始めた。その様はまるでドドガマル。
本来、鉱石類を喰らうには適さない口を懸命に動かし、腹が膨れようと嘔吐しそうになろうとも止まらない。喰らい、噛み砕き、飲み込んでいく。
飲み込めず口の中いっぱいになって、ようやく彼は龍結晶から頭を離した。
腹は大きく膨れ、息もほとんど出来ない。その状態で、彼は龍結晶の地を後にした。目指すは瘴気の谷、たどり着くには険しい岩山を越えなければならない。
そうなれば、道中にて襲われることは必然であった。
「ガァァアアアッ!」
龍結晶の地からそう離れていない岩肌の地にて、彼は敵に発見された。その竜はリオレイア、しかしその鱗は従来の緑ではなく、桃色に光っていた。
桜花竜、リオレイア亜種。龍結晶の地にて育った強大な竜である。
龍結晶のエネルギーで育った彼女は、ミディールの…正確には彼の取り込んだ龍結晶に目を付けた。傷だらけの彼は狩りやすく、そして何よりのご馳走に見えるのだろう。唾液を流しながら、リオレイア亜種がミディールへと襲いかかった。
口から火炎弾を次々と吐き出し、ミディールの足元を爆破していく。反撃をしようにも、ダメージと腹の龍結晶によって身体が重いため思うように動けない。
負けじと後ろ脚で立ち上がろうとするミディール。しかし、身体の重さゆえか動きは遅く、その隙に彼の頭部へ火炎弾が直撃してしまった。
「ガボ…グク……」
少量吐き出した龍結晶を慌てて口へ戻すミディール。リオレイア亜種はそんな彼の背へ脚の爪を突き立てた。
ミディールが振り払おうと身を震わせるが、リオレイア亜種は彼の首に噛みつき地面へと押し付ける。たまらず口の中の龍結晶を吐き出したミディール。
リオレイア亜種は一度飛び上がり、ミディールの頭部と背を脚で掴むと地面へと叩き付けた。
「ゴ……ガフッガフッ…」
苦しそうに空気を吐き出すミディール。リオレイア亜種は飛翔すると、ミディールから少々離れた場所に着地。歩きながら徐々に距離を詰め始めた。
「ゴルルルル……」
「ゴアアアアアッ!!」
彼女はミディールを注意深く観察しながら周囲を回る。余裕の態度を見せる彼女へミディールが怒り、リオレイア亜種の方へ首を向け炎を溜め始めた。しかし、リオレイア亜種はその場で回転し尻尾をミディールの頭部へ打ち付けた。
「ゴァアアッッ」
大きく怯んだミディールへ、リオレイア亜種が突進する。腹に衝撃を受け、後ろへと倒れるミディール。リオレイア亜種は後ろへ飛び退くと同時に火炎弾を吐き、ミディールが地面に跡が残るほど後退した。
「ガ……ゴ…ゴブッ!?」
その時、ミディールに変化があった。身体を起こしたは良いものの、その場に力なくへたりこんでしまった。リオレイア亜種は口に炎を溜めながら警戒していると、ミディールが苦しげな声を上げ嘔吐し始めた。
中から出てくるのは大量の龍結晶。凄まじい勢いで溢れ出る結晶に怯んだのか、リオレイア亜種が口から炎を消し様子を伺う。
やがて嘔吐が収まり始め、数個の結晶を勢い良く吐き出したミディールは……頭部を大きく振り上げリオレイア亜種へと火炎を吐き出した。
「ガッアアッ!」
不意打ちに驚いたリオレイア亜種が大きく体勢を崩す。身軽となったミディールはすぐさま彼女に近づき、先程までの怒りをぶつけるように両前足を振り下ろし始めた。
まずは翼腕の骨を叩き折り、反撃で火炎弾を吐き出そうとした頭部を片前足で押さえ込む。そして首へ喰いつくと、脅威の力で咥え上げ投げ飛ばした。
突き出ていた岩に激突したリオレイア亜種がその場で痛みに悶えていると、今度はミディールがリオレイア亜種の腹部へと突進。リオレイア亜種を押し込み背後の岩をも破壊した。
「ガァァ……」
猛攻に耐えかねたリオレイア亜種。這う這うの体でその場から離れようとするが、それをミディールは決して許さない。リオレイア亜種の尻尾に噛み付くと、後ろ脚で立ち上がり持ち上げる。そして、両前足でリオレイア亜種を掴み全体重をかけて地面へと叩き付けた。
「ガ……」
か細い声を上げて動かなくなったリオレイア亜種。満足気に闇を吸収すると、ミディールは吐き出した龍結晶を再び喰らい始めた。その全てを腹に、そして口に収めると、瘴気の谷へと出発したのだった。
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