生臭い風が吹き抜けて鬱蒼とした木々を軽く揺らす。わずかな月明かりは深い霧に飲み込まれ、街を灰色にしていた。まもなくクリスマスを迎えようとする季節なのに、この田舎町では誰も祝いの飾り付けを急がないどころか、子供一人として街を歩いていなかった。
ここの住民は何か──そう──
そのとき、バチンと音を立てて二人の男が現れた。男たちはお互いの存在を認知すると反射的にローブから杖を抜き、互いに向けた。
「ああ、スネイプ」
男は杖を下ろしながらも、冷たい声で挨拶した。だが、スネイプと呼ばれた土気色の顔をした男は杖を下ろさなかった。
「名を名乗れ」
スネイプは男に負けず劣らず冷たい声で言った。男は両腕を上げて何も持っていないことを示した。
「ソーフィン・ロウル、純血で聖28族の血を引いている。ホグワーツのスリザリン出身で、談話室は地下にある」
「『日刊予言者新聞』でも言えそうなことですな」
スネイプは鼻で笑ったが、杖を下ろした。ロウルはひどく気分を害した様子で舌打ちした。黒いフードの隙間から月明りに照らされて、ロウルの生傷だらけの厳めしい顔が見えた。
「ご挨拶だな、スネイプ。何か君の気に触るようなことをやったのかね?」
「君の企てたマッド-アイ・ムーディの襲撃が失敗したせいで、我輩は計画をいくつか変更せざるを得なかったのでね。聞くところによると、エバン・ロジェールを失ったのに、マッド-アイの爪を取ってくるのがやっとと聞いたが?」
にべもない口調でスネイプは言った。ロウルはぐいっと前にでると、スネイプを睨め付けた。
「教えてやろう、スネイプ。奴は鼻も失って、しばらく前線に出られないはずだ。きみのようにこそこそと諜報活動をするよりよっぽど役に立っている……」
「ならば闇の帝王にそれを報告することですな。できないのなら持って帰ってきたムーディの爪でも煎じて飲めばいい……我輩が君の無能を治す薬を煎じてやってもよい」
ロウルはもう一度スネイプを睨んだ。だが、スネイプが相変わらず持っている杖を見て顔を背けた。それから忌々し気に寂れた町を見た。
「ひどい街だ……古いうえに陰気臭いことこの上ない」
「おや、あの方のご趣向に文句を申されるとは偉くなったものですな」
スネイプは冷たい声で言い放った。
「私はあの方の趣向を貶めたつもりはない!」
ロウルは顔を赤くして怒ったが、手元は忙しなく杖を叩いていた。
「私はあの方が、あー、マグルが多いこの街に来ることがふさわしくないと思っているのだ」
「ならば口を慎むことですな。あの方は大変ご立腹だ」
スネイプはそう言い残すと、つかつかと歩き始めた。ロウルはスネイプの背中を睨んだが、特に言い返すこともなく黙って後ろをついていった。
二人はしばらく黙って歩き続けたが、半ば崩れかかった廃屋の前ではたと立ち止まった。スネイプは杖を取り出すと、ひびの入ったレンガを軽く三回叩いた。すると、レンガが震え、次にクネクネと揺れた。やがてさっきまでレンガがあった場所にはぽっかりと穴が開いて広がっていき、大きな門が現れた。門扉の蝶番は蛇の装飾が施されていた。蛇はあたかも生きているかのように、シューっと息を吐くような素振りを見せた。スネイプは目を逸らさずにじっと蛇を見つめた。
やがて自動的に門は開かれた。意匠を凝らされた庭園に刈り込まれた芝と静かに渦巻く小さな泉、そして古くみすぼらしい街に似合わぬ瀟洒な館が眼前に広がっていた。スネイプは少しためらったが、ぐいっと扉を開けた。玄関ホールには鎧や小鬼が作ったと思われる銅像並べられており、妙な迫力があった。だが、スネイプは一顧にせず、明かりがついている大広間の方へつかつかと歩いていく。ロウルも相変わらず憮然とした表情を浮かべていたが、スネイプの後ろについていった。
大広間の中にはすでに多くの死喰い人たちが、整然と並べられた大理石のテーブルに座って談笑していた。机には清潔な白いテーブルクロスが敷かれており、暖炉は燃え盛っていた。そしてテーブルを取り囲むように青い白い顔を浮かべた肖像画が壁一面に貼られており、死喰い人の話にときおり表情を変えて反応していた。僅かな月明かりと燃え盛る暖炉以外に明かりはなく、部屋は薄暗かったが、誰もそのことを気にしているように見えなかった。
入ってきたスネイプとロウルを見て、死喰い人たちは一瞬談笑をやめ、値踏みするかのようにスネイプとロウルを見た。ロウルは手を振っている死喰い人の方に歩いて行った。
スネイプの視線は知り合いを探して泳いだが、諦めて近くの席に座った。スネイプが座ると、隣にいた魔女が嘲りの笑みを口元に浮かべてスネイプの方へ席を寄せた。
「スネイプ」
「これはこれは、ベラトリックス」
スネイプの嘲笑が口元に張り付いた。ベラトリックスとスネイプの間に一瞬火花が散った。
「お前の席はあの方に近い」
「ほう」
スネイプは気にせずにどっかりと椅子に腰掛けた。
「それで?」
「それで?」
ベラトリックスが大声で言うと、大広間中が静まり返った。何事もなかったかのように会話を続けているが、ちらちらとベラトリックスとスネイプの方を見ていた。
「貴様はこそこそと後ろに隠れ、スパイごっこに勤しんでいる……あの方のために前線で働かずに、ぬくぬくとな」
ベラトリックスは噛み付いたが、スネイプは相変わらず無表情を崩していなかった。
「我輩はあの方に忠実に仕えている……情報をもたらしているのだよ、ベラトリックス。猿のように杖を振ることがあの方に仕える唯一の手段ではない……」
「あの方のお気に入りだからと言って調子に乗るんじゃないよ、スネイプ」
ベラトリックスは凄んだ。
「あの方は最も忠実に仕えたものを評価される」
スネイプは抑揚のない口調で言った。
「ベラトリックス、そう教えてくれたのはきみだが?」
「汚らわしい半純血の分際でご主人様の忠誠を語るな」
吐き捨てるような声でベラトリックスは言い放った。スネイプは眉をひそめると、ねっとりとした目でベラトリックスを見た。
「ああ……きみの一族は素晴らしい……我輩はもちろん純血だが(ここでベラトリックスが皮肉げに笑った)きみの一族ほど優秀ではない。だが、誇らしくもわが一族は裏切り者を出したことがない」
スネイプは皮肉たっぷりに言うと、『日刊予言者新聞』を机の上に投げ出した。『日刊予言者新聞』の片隅には、ハンサムな男がベラトリックス(とスネイプ)を睨みつけていた。
「きみの素晴らしい従弟であるシリウス・ブラックが騎士団に入ったと聞いたが……我が一族からは残念にして、そんな者は出てこなかったが……」
スネイプは皮肉を言うと唇をめくりあげて薄く笑った。スネイプの近くに座っていた何人かの死喰い人が忍び笑いを漏らした。
「あいつは一族ではない」
ベラトリックスが唸るように言った。スネイプは皮肉げな笑みを崩さなかった。
「きみのその表情は我輩のよく知っている傲慢で生意気なシリウス・ブラックにそっくりだが……」
「よくも──よくも!」
ベラトリックスの端正な顔立ちは崩れ、歯を剝き出しにして唸り、杖を引き抜いた。スネイプも油断なく杖を構えた。
その時だ。大広間が真っ暗になったかと思えば、扉が開いて黒いローブを着た人が入ってきた。現れた人物に髪はなく、蛇のような顔には鼻孔がすっと通り、細い縦線が入っているような目は赤い。そして、その赤い目はスネイプとベラトリックスを捉えていた。
「喧嘩か?」
ヴォルデモート卿は静かな声で問いかけた。ベラトリックスは先ほどまでの剥き出しにした闘志は陶酔の表情へと変わった。
「滅相もございません、ご主人様──これはただの戯れです」
ベラトリックスは恭しく言うと、ヴォルデモートの手を取ってキスをした。ヴォルデモートは誰も座っていない上質な椅子に腰掛けた。蛇のナギニがヴォルデモートの手か離れ、滑るようにテーブルの下を通っていった。何人かの死喰い人は気になったのか、チロチロと赤い舌を出しているナギニを不気味そうな目で見た。
「ベラ、これへ」
右手でヴォルデモートがベラトリックスを席へと誘った。ベラトリックスは感激した表情で椅子に座った。スネイプは少し迷ったあとに、空いていたノットの隣の席に座った。全員が座ったことを確認すると、ヴォルデモートは近くに座っていた死喰い人に命令した。
「杯を持ってこい」
命令された死喰い人は震える手で杯をヴォルデモートに差し出した。ヴォルデモートは杯をぐっと飲み干すと、周囲を見渡した。
「よう来た、我が忠実な下僕たちよ」
蛇のような赤い目が舐めるように一堂に会した死喰い人を見た。テーブルの末端に座っていた死喰い人たちはあまりの視線の鋭さに目を合わせることもできず、俯いた。
「みな健康で、魔力も失われておらぬ……全くだ。しかしながら、嘆かわしいことよ、これだけの純血が揃ってなお、魔法省はまだ陥落しておらぬ……」
ヴォルデモートの語気には怒りが含められていた。
「俺様は自問する。どうして若く才気に満ち溢れた死喰い人が誰一人として成果を出さない?」
「ご主人様」
耐えきれないとばかりにドロホフが手を挙げた。ドロホフは早く自分の成果を見せたいとばかりに身を乗り出した。
「私は──これを成し遂げるために大変な苦労をしましたが──ギデオン・プルウェットとフェービアン・プルウェットの殺害に成功しました」
これには感心したように手を叩く死喰い人も何人かいた。隣に座っていたセルウィンはドロホフの背中を強く叩いた。だが、ヴォルデモートは瞬きすらせずに杯をまた手にした。
「手緩い」
ヴォルデモートは杯を傾けながら言った。
「闇祓いや抵抗勢力の一人や二人を殺したとて、今更奴らは止まらぬ……むしろ、俺様には殊更にそれを殊更に成果と言い換える貴様の実力に不信感が湧くわ……」
「お言葉ですが、わが君」
ドロホフはヴォルデモートに気に入られようと躍起になっていた。
「あの二人は魔法生物規制管理部の重要人物です。奴らが死んだことによって、我が軍と闇の生物の提携は前進しました」
「甘いわ」
ヴォルデモートは途中でドロホフの発言を打ち切った。
「ニュート・スキャマンダーがすぐに仲裁に入りおって魔法生物規制管理部の混乱は解けおったわ。確かに二、三匹の蜘蛛が入るくらいには魔法省の力が削がれたが……貴様の言葉を借りれば前進だ、ドロホフ」
皮肉たっぷりにヴォルデモートは言うと、杯を一気に傾けた。(飲み干したように見えても、気がつけばなみなみと注がれていた)
「しかし、俺様の障害には遥かに遠い……」
ヴォルデモートはここで言葉を切った。そして赤い目で周囲を見渡した。
「アルバス・ダンブルドアはどうだ?」
水を打ったように死喰い人が静まり返った。座り心地が悪そうに何人かの死喰い人はもぞもぞとしたし、ベラトリックスですら目線を逸らした。
「マグルとの共存を掲げ、血を裏切る者の代表をしているアルバス・ダンブルドア。魔法省も今や奴なしには動けはしない……しかし貴様らは老いぼれダンブルドアと戦うどころか、こそこそと尻尾を巻いてできるだけ出会わないように立ち回っている……そうだ貴様に言っている、ルシウス」
ヴォルデモートはルシウスへと視線を移した。ルシウスは怯えた表情でヴォルデモートを見た。
「私は忠実に仕えております……わが君。魔法法執行部の情報を伝え、先日は重要人物の一人であるマーリン・マッキノンを取り除くことに成功したはずです……」
「しかし、貴様の助けがなくともな」
事もなくヴォルデモートは答えると、ひょいっと杖を振った。ルシウスはまるで椅子に追い出されたかのように転げ落ち、床に這いつくばっていた。
「貴様はこそこそと逃げ隠れして自分の手を汚さないようにするのがうまい……臆病風に吹かれたレギュラスのように逃げたいのか? それとも妻のようにこの場から逃げ出して、生まれたばかりの子供の世話をしたいと思っているのか?」
「滅相もございません、わが君」
ルシウスは喘ぎながら答えたが、元より青白い顔はますます蒼白になっていった。
「ルシウス、この嘘つきめ」
ヴォルデモートは楽しんでいるかのように低い声で笑うと、白く細い指でナギニの頭を軽く撫でた。今や、誰もが伏し目がちであった。ヴォルデモートはもう一度死喰い人たちを睨むと、スネイプの方へ視線を移した。
「さて、セブルス……貴様はヴォルデモート卿にどんな情報をもたらそうとしているのだ?」
ヴォルデモートの赤い目がスネイプを射抜いた。スネイプの土気色の顔色に、わずかな朱が差した。
「わが君。私は──私は、ホッグズ・ヘッドでカサンドラ・トレローニの曾孫の予言を聞きました」
スネイプはささやくような声で言った。空洞のように暗い目にはほのかに光が宿り、声に熱がこもった。
「予言」
ヴォルデモートは静かな声でスネイプの言葉を繰り返し、口の中で転がすように言った。スネイプは何も言わず、闇の帝王が話し始めるのを待った。
「続けよ」
スネイプは黒く着古したロープの袖で額を拭った。そして、意を決したように口を開いた。
「あなた様を打ち破る力を持ったものが近づいてきている──そして、その者は七月末、あなた様に三度抗った者の間に生まれると」
大広間が静まり返った。誰もが信じられないという表情を浮かべてその場に固まっている。この屋敷はかなり寒いのにもかかわらず、スネイプの額には玉のような脂汗が浮かんでいた。
「十分だ」
ヴォルデモートの声には何の感情も入っていなかった。蛇のように赤い目が走り、スネイプをなぞる。スネイプは黒く油っこい長髪を投げ出し、頭を垂れていた。痛いほどの沈黙──そして、ベラトリックスが立ち上がってスネイプに杖を向けた。だが、ヴォルデモートが右腕をあげてベラトリックスを制した。
「よい、ベラ。セブルスは嘘をついてはおらぬ」
ベラトリックスは稲妻に撃たれたかのような表情を浮かべて座り直した。ヴォルデモートはおもむろに立ち上がると、まだ跪いているスネイプの方へ手を差し伸べた。
「セブルス、座るがいい」
スネイプはキスでもせんばかりに感激した表情でヴォルデモートの手を恭しく取ると、椅子へ座り直した。
「そして飲むがいい……よい気付けとなる……」
ヴォルデモートは持っていた杯をスネイプに渡した。スネイプは震えている手で受け取ると、血のように赤いワインをぐいっと飲み干した。そして、横にいるベラトリックスと変わらぬ陶酔した目でヴォルデモートの挙動を見つめていた。
ヴォルデモートがゆるりと杖を振ると、一枚の羊皮紙が飛んできた。ヴォルデモートがもう一度杖を振ると、羊皮紙は震えて大きくなり、しまいには壁一面ほどの大きさとなった。誰も何も喋らなかった。固唾を飲んで、ヴォルデモートが羊皮紙に文字を刻んでいくのを見守っていた。あらゆる魔法使いの名前が羊皮紙に刻まれていった。そして、そのほとんどが蛇のような焼印によって次々に消えていった。
「これはこれは」
ヴォルデモートの口元が嘲笑で歪んだ。近くに座っていた死喰い人は興奮した様子で身を乗り出した。
「わが君──わが君、見つかったので?」
「そうだ、ヤックスリー。俺様から幸運にも三度逃れたものは二人いる……哀れなことよ、二人とも死が多少先延ばしされるにすぎない……」
羊皮紙に刻まれている名前は今や二つだけになった。死喰い人たちは半ば興奮、半ば恐怖の気持ちでその羊皮紙をじっと見てヴォルデモートの次なる言葉を待った。
「一人はフランク・ロングボトム。純血の誇りを忘れ、血を裏切った愚かな者よ……こいつもいずれ死を迎える運命に過ぎない……」
じゅっと焦げるような音と共にフランク・ロングボトムの字に焼印が刻まれ、消える。そして残った名前はついに一つとなった。
「ジェームズ・ポッター」
ヴォルデモートが静かにその名前を読み上げた。
「もう一人は、ジェームズ・ポッター……ダンブルドアと仲がいいだけでなく、『穢れた血』と結婚した」
ヴォルデモートの語気が強くなった。同時に羊皮紙が一気に燃え盛り、灰となった。
「これより我々はポッター家を滅ぼすことを最大の目的とする……この醜悪な一族を、魔法界から一人残らず消し去るのだ」
ヴォルデモートの演説の後に大広間が歓声で包まれた。先ほどまでの沈黙はどこへやら、誰もが地団駄を踏んで喜んでいた。蛇は急な喧騒が気に入らなかったのか、シューっと息を吐いた。
だが、そんな喧騒の中でスネイプは蒼白な表情で何も言わず立ち尽くしていた。信じられないとばかりに自分の手を見つめると、すぐにヴォルデモートの方へと駆け寄った。
「わが君──このたびは、大変おめでたく──」
「そうだ、スネイプ。喜べ、貴様の出した情報はかなり有益だ」
「そうでしょうとも。貴方様の障害となるジェームズ・ポッターとその息子は死あるのみです」
スネイプは大きく頷きながらも、まるで何かを考えているかのようにせわしなく指は動いていた。
「しかしながら、リリー・ポッターは無関係です、わが君」
スネイプは口元に愛想笑いを浮かべ、今にも揉み手しかねない勢いだった。だが、ヴォルデモートは小さく首を傾げた。
「これは異なことを、セブルス。『穢れた血』は栄光ある我らの魔法界に不要だ、そう思わぬか」
「予言ではあの息子のことだけを指していました」
スネイプは喘ぐような口調で言っていた。今や愛想笑いは消え失せ、懇願するかのように手を擦り合わせていた。
「だからあの女性だけは──彼女だけは見逃してもらえないでしょうか」
「くどいぞ、セブルス」
「そうだ、黙れ。スネイプ」
ベラトリックスが頬を上気させて嬉々として言った。周囲にいる死喰い人も同調するかのように笑う。先ほどまでのような有頂天になっている騒ぎはどこへやら、今やスネイプに敵意を剥き出しにしていた。スネイプは跪くと、ヴォルデモートのローブの裾を掴んで跪いた。
「わが君──予言の子もその父親もどうなっても構いません──ただ、リリー・ポッターだけは……」
「クルーシオ! 苦しめ!」
ヴォルデモートがしなるように杖を振った。磔の呪文の痛みに耐えかねて、スネイプはその場でのたうち回る。ヴォルデモートの冷たい目はスネイプの暗い目を捉え、睨んでいた。
「ヴォルデモート卿は慈悲深い。一度は貴様の功績に免じて許すが、二度はないぞ」
ヴォルデモートはまた低い声で言うと、ゆるりと蛇の頭を撫でる。そして、黒い霧とともに蛇と一緒にどこへやら消えていった。スネイプはまだ打ちひしがれた表情でその場に転がっていた。ベラトリックスの嘲笑するかのような声や、ルシウスの心配するかのような声が聞こえた気がしたが、その意味まで汲み取ることはできなかった。
予言──息子──ダンブルドア──リリー・ポッターが危ない……。もはや大広間には自分以外の死喰い人は残っていなかった。スネイプはよろよろと立ち上がると、ローブについた汚れを払おうとしてまたよろめき、大理石のテーブルにしがみついた。そして、スネイプは何かを警戒するように辺りを見回し、『姿くらまし』した。
ギデオン・プルウェットとフェービアン・プルウェットの設定は裏付けもない想像です。どなたか詳細を知っている方がいれば是非教えてください。