時空を超える猫になったと思ったら時層が違った 作:猫or人間
突然知らない場所にやってきたことの恐怖からか、一向に泣き止まないセシルをあやす。
しばらくすると、何者かの気配を感じてとっさに草むらの陰に隠れる。
「人間の赤ん坊……?なんだってこんなとこに?」
現れたのは魔獣族の男。
ストーリー的に、彼が後の魔獣王ギルドナなのだろう。
セシルの持つ完成版ジオ・プリズマの力を見たのち、更なる人の気配を察知したギルドナはその場を離れていく。
そして、彼が離れてから更なる人影が現れるまでの刹那の時間でソレは起こった。
セシルの身体から発せられる光がひときわ強くなったかと思うと、身体がエデンの姿に変化していた。
その際、頭を殴られたかのような痛みがあったが、うずくまっていくうちに消えていく。
――――原作ではキロスが人間になった際に、猫として生きた記憶を失っていたが、どういうわけか俺は記憶を保持したままのようだ。
懸念要素の一つがあっさりと覆されているという事実が、すでに取り返しのつかないミスをやらかしているのかもしれないという不安を掻き立てる。
そんな不安をよそに、やってきたのはおじいさん。
今から十六年の間、親代わりになって面倒を見てくれる人だ。
「妙な声が聞こえると思ったら、泣いておったのはこの子か。一体、どこから来たんじゃ?この赤子はおまえの妹か?」
「…………」
「おぎゃー、おぎゃー」
「よしよし、もう心配いらぬぞ」
その場で身寄りのない俺たちを村につれていくことを決めたらしいおじいさんは、セシルを片手で抱え、もう片方の手で俺の手を握って村までの道を歩くこととなった。
おじいさん……バルオキー村の村長に拾われ、俺はアルドとして、セシルはフィーネとして村での日常を謳歌して十五年。
人の言葉をマスターした俺を衝撃の出来事が襲う。
まだ原作に突入する時期ではないが、原作を踏襲するという決意を揺るがす大問題が発生してしまったのだ。
聖騎士アナベルが錬杖兵器を生み出し、それが魔獣軍を圧倒したというニュース。
何かがおかしいと思いながらも、まだ原作が開始していないゆえのものだと思っていたが、その数か月後に聖騎士アナベルが魔獣王に実質勝利し、その剣を王に献上したという情報が村に回ってきたとき、察してしまった。
この世界、リリースから9番目の外伝、魔剣士ディアドラに関する物語の二つ目で出てくる、正規の世界線とはとは別の平行世界……異時層だったらしい。
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始まりの騎士と祈りの魔剣。
魔剣士ディアドラが過去の自分に魔剣を託す輪廻が生じる前……魔剣の譲渡が行われず、姉であるアナベルを失い、自分がアナベルとして生きることを誓った、一番最初のディアドラの世界―――異時層。
正規世界のディアドラが、平行世界の一種ともいえる異時層の自分と相まみえる外伝である。
そして、俺が転生した先が正規世界ではなく異時層だったということは、原作なんて取り返しがつかないくらい乖離してしまう。
ギルドナは赤子のころにジオ・プリズマの力を見せたフィーネをさらうことなく、ヴァレスとの戦闘も起きないため未来に行くイベントも起こらない。
オーガベインが数年前に村に流れ着いたことから、原作通りに進んでいるものだと油断していたせいもあってショックも大きく、二、三日ほど頭を抱えていたが、さすがにフィーネやじいちゃんを心配させるわけにもいかず、自分の心を無理やり奮い立たせた。
とはいえ、実際どうするか。
時の暗闇に閉じ込められたエデンを救うためには、未来世界での人脈作り、過去世界でのクロノスとの再会が必須である。
だが、このままでは未来世界にすら行けるか怪しい。
未来世界に行くことが出来なければ、過去に行く手段もない。
ファントムに強制的に飛ばされるか、合成鬼竜でタイムジャンプするか、もしくは時の狭間のワープを使うことでしか過去には行けないからだ。
────いや。
たとえ何をどうすればいいか分からなくても、行動しなければ何も始まらない。
自分が生きるためだけではなく、エデンを救い出すと誓ったのだから。
手探り状態だとしても、まずは現代のこの世界を冒険して手がかりを見つけ出していくしかない。
俺がすべきなのは、
未来世界での巨大時震の阻止
過去世界でのクロノス・四大精霊の1柱であるサラマンダーとのコネクション
時の暗闇からのエデンの救出
これら全てを達成するためには仲間が不可欠だ。
俺一人でどうにかなる問題じゃない。
まずは、その第一歩だ。
月影の森、その最深部。
ここなら、多少何があっても問題ない。
「……オーガベイン。聞こえているなら応えてくれ。まだ時が来ていないのかもしれないけど────もうそんなに悠長にしていられないんだ!!」
────一拍、置いて。
オーガベインが、反応した。
禍々しいオーラを吐き出しながら、鞘から飛び出す魔剣。
オーガ族の復讐の怨念が聖剣の形を変えて生まれた魔剣・オーガベインが、目の前に突き刺さる。
原作においてはアルドが一度の戦闘で勝利して以来、時空に関する問題に遭遇した時に助言をくれたりするツンデレの相棒だ。
隙を見せたら体を乗っ取ったりすることはあるが、アルドは仲間たちと力を合わせてこれを捩じ伏せていた。
そんな魔剣を前に、一人で相対する。
『
「……?ああ、そうだ。人間に滅ぼされたオーガ族の怨念から生まれた魔剣よ」
『……それを知りながら妾らを解放するとは、愚かな人間よ。』
ちょっと違和感があったが、気の所為だろう。
アルドは最初、オーガベインがどういった出自をたどって出来た魔剣なのかを知らなかったが故に、フィーネの友となった魔族2人に伝えられるまでは"助けるため"の力を得るだけのために魔剣を振ったが、俺は前世の記憶から既に知っている。
素人の嘘が通用する相手ではないし、原作も踏襲する必要が無いのであれば嘘を吐くメリットがない。
「時の暗闇に閉じ込められたエデンを救うために、お前の力を貸してくれ」
『何故協力せねばならぬ……と言いたいところだが、妾らを解放したことからチャンスはやろう。妾らを扱いたくば、その力を以て妾らを上回ってみせろ!それが出来たならば、協力してやろう』
オーガベインの協力を得るには、戦闘で打ち勝つしかない。
負ければ身体が乗っ取られて、人間を滅ぼすことに従事することになるだろうが……そうなったとしても、この世界であれば聖騎士になったディアドラが打倒してくれるだろう。
なんの経験も積んでいないが、これを乗り越えられなかったらエデンを救い出すなど夢のまた夢だ。
勝算がゼロに近くてもやるしかない。
「ああ、いくぞオーガベイン!」
『来るが良い、アルド!!』
オーガベインが浮かび上がり、剣からオーガの姿へと変化する。
棘のついた金棒、人間の二回り以上大きな強靭な肉体、そして、醜悪なか、お……?
否だった。
前世で見た立ち絵とは似ても似つかない。
傍から見ても強靭な肉体ではあるが、筋肉マッチョというよりはスリムな身体。
頭部から角が生えてはいるが、その顔は醜悪ではなく、オーガというよりは第二部の古代で出会うことになるタイタン族に近い皴もない整った顔立ち。
極めつけに、放漫な胸部とそれを覆う装甲。
金棒という武器と黄色をベースとした防具を身に着けていること以外、原作の面影もない姿であり、性別はどう見ても女性だった。
「オーガベイン、お前、女だったのか!?」
「性別がこの戦いに関係あるのか、アルド?さあ、かかってくるがよい!其方に妾らを御せるものならばな!」
そして、俺の命運を分ける戦いが始まった。
やっちまったぜ(オーガベイン性別改変)
この時層では元から女という設定なので性転換タグは入れませんでした。
代わりに性別改変タグをつけてます。