時空を超える猫になったと思ったら時層が違った 作:猫or人間
武器防具も揃い、レベルも相応にあげることが出来て準備が整ったため、そろそろ冒険を始めようと思う。
向かうは王都ユニガン方面。
最近、ラキシスを退けて騎士団長に就任した
ちなみに、メイが鍛え上げた武器防具はとても良質なものだった。
俺が素材として持っていったカレク湿原の素材と、店の在庫にあったセレナ海岸の素材で鍛えたもので、原作にはない素材の組み合わせで出来上がったソレらは、適正レベル24という本来依頼しようとしていたものよりもいい性能をした、メイの努力の結晶だ。
装備の適正レベルが自身のレベルよりも上になってしまったために旅に出る日が数十日遅くなったが、俺もフィーネも無事じいちゃんのスパルタ武者修行で武器に見合ったレベルに到達できた。
メイが名付けた俺の剣はグロウソード・防具はグロウバングル。
フィーネの杖はグロウスタッフ・防具はグロウリング。
戦闘においては固有な能力はこれといって存在しないが、これらの装備の真価は別にある。
これから先、旅で得た素材を用いて一緒に鍛えることで、
原作でも次元の狭間のノポウ・カンパニーで強化が可能であるレベル60装備はあるものの、それより低いレベルの装備を強化することは不可能だった。
これによって当面の間はこれらを使い続けることになるだろう。
顕現武器……アナザーエデン原作における特定のキャラの専用武器が手に入ったらどうなるかは不明だが。
冒険の旅を始めることをじいちゃんに話すと、実力的にもいい頃合いだと許可をもらえた。
グロウ装備を身に着けた俺とフィーネは、村のみんなにあいさつ回りをしつつ、最後に鍛冶屋に向かった。
「おう、アルドとフィーネじゃねえか。……その装備を身に着けてるってことは、ついに村を出るのか?」
「ああ、ようやくこの武器に見合う実力を身に着けたし、今からでも行くつもりです。とはいっても、とりあえずは港湾都市のリンデまで行ったら一度戻ってくるつもりですけど」
「私はお兄ちゃんが無茶しないように見張り役です!」
メイの親父さんは俺たちの装備を見て今回来た理由を大体把握したらしい。
少し世間話をした後、メイを呼びに行ってくれた。
「すまんが今起こしたから、もうしばらく時間がかかる。この時間を使ってお前たちにお願いしたいことがあるんだが……」
「何ですか?できる範囲であればしますけど」
「……まさか」
歯切れが悪そうな様子の親父さんのお願い……どういうわけかフィーネはどんなお願い事なのか想像できているようだ。
俺には正直心当たりは全くないので、次にどんな言葉が飛び出してくるのか戦々恐々である。
「……いや、そんな不安そうにしなくてもいいんだが。メイを、お前たちの冒険に同行させてやってほしいんだ」
「やっぱり……。ダメ!私とお兄ちゃんの二人だけでいいの!」
「ちょ、フィーネ?」
親父さんのお願いを聞いた瞬間、断固拒否して俺の腕を胸に抱くフィーネ。
俺的には、フィーネを連れていく時点で一人での気楽な旅はできそうにないし、鍛造依頼達成後から何故か急上昇しているメイの戦闘力的にも戦力強化につながるから問題はないのだが……。
いかんせん、判明してしまったフィーネの俺に対する独占欲が留まるところを知らない。
俺的には好かれることはうれしいからそれは別にいいのだが、人前でこうもべたべたくっつかれると精神的に来るものがあるので公の場でやられるのは勘弁してほしい。
どうにか俺の隣に立つフィーネを説得しようとする親父さんだが、全く意に介されていない状況である。
そんな状況下で、部屋の扉が開く。
「おまたせ、アルド!……って、どういう状況?」
この時、俺にはメイが救世主に見えたのだが……その判断が間違っていたらしい。
この後、事情を聞いたメイがフィーネと口論に発展し、何かを察した親父さんが適当な理由を使って部屋を出ていき、逃げるタイミングを逃した俺は裏切った親父さんを恨みながら暴言が飛び交う現場で過ごすことになった。
そして、結果はというと。
「ブラコンなフィーネにアルドを任せておけない!絶対についていくかんね!!」
「あ、ああ、じゃあよろしく……?」
「なんでそこで拒否しないの、お兄ちゃんの馬鹿ぁ!」
ということで、メイが仲間になったのだった。
#
じいちゃんのスパルタ修行でよく周回したカレク湿原を抜けると、巨大な城が鎮座している。
このミグレイナ大陸では唯一の人族の王……ミグランス王が城主であるミグランス城の城下町が、王都ユニガンである。
「よし、ユニガンに到着したぞ。とりあえず今日一日は王都内を観光しよう」
「いいの!?あたし、通り過ぎて今日のうちにリンデまで行っちゃうのかと思ってた!」
「やったー!お兄ちゃん、二人でお店見て回ろう!」
「え、フィーネ?」
メイが王都観光を喜ぶのを尻目に、フィーネは我先にといった速さで俺の腕を引っ張ってくる。
「ちょ、フィーネ!あたしだけ除け者にしようとすんな!」
「うるさい、お兄ちゃんの隣は私の特権なの!邪魔しないでよ!」
「ふ、二人とも落ち着けって!三人!三人で回ればいいだろ!?」
何か行動を起こすたびにこれである。
大体フィーネから口論が始まることから、少しは兄離れしてくれないかと説得したり、それが無理でも一緒に冒険をする仲間なのだから妥協や自重をしてくれないかと提案したりしてみたが、結果は芳しくない。
やむなく妥協案としてみんなで回ることを提案するも、口論は止まるどころか我儘なフィーネの言葉でさらに悪化していく。
――――俺の中で、何かがぷつんと切れた。
「いい加減にしろよ!?誰が誰ととか、そんなことで一日中喧嘩するのか、二人とも!!そんなに二人がいいのなら、フィーネとメイの二人で行けばいい。俺は一人で観光させてもらうからな!」
肩を怒らせて立ち去る俺を、二人が止める気配はなかった。
その夜。
王都を一人で満喫したのち、二人とは宿屋で合流した。
男女で二部屋に分かれようとしたが、空室が一つしかなく沈んだ表情の二人と一緒の部屋である。
滅茶苦茶気まずい。
止まらないケンカに嫌気がさしたとはいえ、怒りに任せて叱ってしまったことは反省せねばならない。
「その……おにい、ちゃん。さっきは、ごめんなさい……」
「あたしもごめん、アルド。あたしたちのことばっかで、アルドの気持ちを考えてなかった……」
どうにかしなければならない。
だが、どうにも話しかけることができないチキンな自分に内心腹を立てていると、二人が謝ってきた。
二人の方から歩み寄ってくれたのだ、ここで問題を解決して明日から心機一転で旅を続けていきたい。
「……いや、俺の方も悪かったよ。あんな風に、怒鳴ったりして」
「私、これからはもっと自重するから……我儘言わないようにするから、だから……嫌わないで……」
涙交じりの切実な思い。
あれだけ言っても俺の隣を譲らなかったフィーネが、ここまで弱気な姿勢を見せるのは初めてだった。
「あのあとフィーネ、アルドに嫌われたーって、ギャン泣きしちゃってさ……。二人で謝ろうってなったんだ。あたしも、フィーネと喧嘩するのをなるべく抑えるから、許してほしいかなー……なんて」
いつも快活で明るいメイが、不安そうに俺の顔をうかがっている。
いつもとは様子の違う一面を見せる二人に調子が狂うが、答えは決まっていた。
「許すよ。まあ、今日みたいなのが何度も起こるのは勘弁してほしいけど、怒鳴ったことは俺も悪かったし、お互いさまっていうことで良いんじゃないか?」
「ありがとう、アルド」
「うああああああん、良かったよぉ~」
ほっと一息つくメイと、謝罪を受け入れてくれたことにうれし泣きするフィーネ。
この日を境に、フィーネの異常なまでの俺への執着は、表面上では鳴りを潜めることとなる。
その代わりに妹としての立場を最大限使って甘えてくることが多くなるのは余談である。