※この世界の季節ですが、今の日本と同じ春という設定にしています。書いてなくてごめんね!
歩き始めてからもうどれぐらいたっただろうか?少なくとも3時間は歩いている気がする。どこかの手が施された山道に出ることを信じて歩いてきたのだが、一向に景色が変わらない。どこを見ても緑、緑、緑。正直もう緑にはうんざりしていた。
「あといつまで歩き続ければいいねん・・・」
歩き続けてまだ数時間なのに、はっきりいってかなりキツい。肉体的に、ではなく精神的に、だが。
終わりが見えないって事も理由の一つだが、ここまで疲れる理由があった。それは、この森の不気味さだ。
ハッキリとは言えない、言葉に出来ないが、何かこう、このようになる前までは感じたことがなかった感覚を覚えるのだ。
それの影響かはよく分からないが、あまりにも静かすぎるのだ。
本来この季節は動物や虫達が活発に活動し始める時期だ。
しかし、ここに来てからは動物どころか、虫たちもほとんど見ない。
・・・一応それっぽい奴はいるが。
「・・・なんやねんコイツ・・・。気持ち悪ぃ・・・。」
それは、さっきからそこら辺を漂っている羽虫の様ななにかだ。
一見ハエのように見えるが、なにか俺の本能がそれを否定している。
勇気を出して近づいてじっくり見たり、叩き潰したりしてみたが、死体は残らず霧となって消えただけで、何もしてこなかったので害は無いと思う。それでもなにか、コイツを見ていたら生理的に受け付けない気持ち悪さを感じ、あまり近づかないようにしている。
そんな言い様のない気持ち悪さとあまりにも静かなこの場所に対する恐怖心を抱きながら歩き続けてきたので、精神的にかなりキテいるのだ。
・・・それでも。
「はよう家に帰らんと・・・・・・」
今日で何回目かも分からない言葉を吐き出しながら、それでもいち早くこの森から抜け、家へと帰れる方法を探す為に足を動かし続ける。
幸い最弱でもサーヴァントの一人だからか、肉体的疲労はまだ全然感じなかった。もしそうじゃなかったら心身共にやられ、もう歩くのをやめていたのかもしれない。
それに・・・
(サーヴァントやからかわからんけど、この身体は栄養や睡眠がいらないやしいねんな・・・)
もしかしたらこの発見が今日一番の成果かもしれない。いくら歩いても腹は空かないし、疲れても眠くはならない。
一応食事も睡眠も取れるらしいが、しなくても健康を保てるらしい。
今までの習慣としてそこらに落ちてた木の実などを食べたりしているが、満腹と言う満足感は感じれず、ただ虚しさだけが溢れる。
それに俺自身もまるで食事を取らなくて当たり前という考えがいつの間にか芽生えていて、習慣として食事は取ってしまうが、そんな俺をあまり理解できなくなったというジレンマもかなりキツイ。
(兎にも角にも早くここから出ないとな。)
もう休みたいと訴える精神を押さえ潰して、ただひたすら前へ、前へと足を進み続ける。
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あれから数時間はたった。
もう日は落ち、夜がやってくる。
「・・・もうダメや。ここで一晩過ごすか。」
まだまだ歩き続けたいが、これから夜が訪れる中でこの森を突き進むのはあまりに無謀だと考え、野宿の準備を始める。
そこら辺の枯れ木や枝、枯葉を集めて焚き火の用意をする。昔ボーイスカウトだった経験を活かして手際良く作ることが出来た。
後は火やけど・・・
「よっと・・・。」
マッチ程度の火を指先に灯し、薪に火を着ける。
探索中に気づいたが、どうやらこの体でも初歩的な魔術っぽいものだったら出来るらしい・・・ほんとに初歩だけど。
そうこうしてるうちに焚き火はいっそう燃え上がり、疲れていた心身(特に精神)が解されるような暖かさを感じる。
「・・・しかし、魔術ってもんはホンマ便利やな・・・。」
たった一日一人でいるだけなのに、何故か独り言が増えた気がする。いや、増えているな。たった一日、されど一日。俺はかなり人寂しさに飢えていた。
魔術に関しては、魔力がDランクはあるからか、初歩的な魔術は使えるみたいだった。とはいえ本当に初歩なので、こうやって火起こしにしか使えないが。
「・・・メシでも食うか。」
いくら食べなくてもいいと言っても、俺はこれからも食事は出来るだけ取っていくつもりだ。
・・・そうしないと本当の意味で人じゃなくなりそうだから。
道中見つけたリンゴの様な木からとったリンゴを少し炙り、焼きリンゴを作る。キノコもあったが、何を食べればいいのか分からないので止めた。この身体で行けると思うほど俺は無謀じゃない。
「・・・いただきます。」
いつも通り手を合わせる。手を合わせると、まだ俺は人間だと感じられ、少し嬉しくなる。そして焼きリンゴに齧り付く。
「・・・焼きすぎた。」
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メシも食い終わり、一息つく。
ただ、今日は疲れた。当たり前だ。朝目覚めたらゲームのキャラになっていて、それだけでもういっぱいいっぱいだったのに、家に帰るため、そこからこの終わりの見えない広大で不気味な森の中を一人、しかも人類の残り香も、見たことの無い気持ちの悪い生物だって見た。
もう俺の中ではこの言葉だけで埋まっている。それは
「帰りてぇな・・・」
ただこの一言に尽きる。
くどいかもしれないが、それだけ帰りたいんだ。
和人は大丈夫だろうか?もうあれからかなり時間がたってしまうが、ちゃんとご飯は食えてるだろうか?このように考え始めたらいくらでも出てくる。
(・・・これ以上考えるのはやめよう。)
無駄だから。
今は寝たい
この身体になってから睡眠は必要ない事はわかっているが、一応寝る事はできるらしい。
今はとにかく寝ていたい気分だった。
そうして焚き火の優しい暖かさに身を任せ、徐々に意識を夢の中へと落として行った。
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ブゥン・・・
「ッッッッッ!?」 ドカン!
今、この一撃を俺が避けれたのはきっと奇跡だろう。あるいはアンリマユの身体のおかげだろうか。紙一重で回避したその刹那、俺が持たれかけていた木は木っ端微塵に砕け飛んだ。辺り周辺に木片や木屑を撒き散らされた。何が起こったのか理解できなくて混乱していたが、その砂埃が晴れた先の光景を見て唖然とした。
それは見たことの無い生物だった。
全体的にまるで幼虫のような体型と半透明な体を持っており、頭部は異常な程に発達、または膨れ上がり、ソレの先端には相手を刻む為にありますと言わんばかりの歯が丸を囲うように生え揃っている。胴体部には人の顔が浮かんでおり、人間のような足が左右合わせて16本付いていた。
恐ろしい。おぞましい。
もう見たくもない。顔をそらそうともまるで磔にされているみたいに身体が動かない。
「ァア・・・」
唯一動かせた口からはかすれた、空気だけが出るような声だけがなった。
ヤツはそんな俺を見て、
「ギャギャギャ!!」
とにかく楽しそうな声を上げて喜んでいるように感じられた。まるで遊び盛りの子供の様に。
それでも俺は何も出来ない。何もしたくない。あんな恐ろしいやつがいると知っていたらこんな、こんな場所で野営なんかしなかった。そう、知ってたら・・・、何もしなかっただろう。諦めていただろう!!
だがこんなたらればで後悔してももう遅い。
そんなことを考えている内に。
フ・・・
バキッッッッ!!
「ガッッッ!!」
メキキィッと吹き飛ばされた先にあった木と衝突した。
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・・・
頭を打ったのか思考が纏まらない。
ヤツはもう気色悪い金切り声を上げながらこっちに近づいてくる。
もう身体を動かすのも億劫だ。いっその事ヤツに食われるのもいいかもしれない、と半ば諦めていた。
そんな時、ふと大事な、大事な唯一の家族である弟の顔を思い出した。天真爛漫で、決して生活が豊かではないのにいつも笑顔でいてくれる弟の顔を。何回も助けられたその笑顔を。
(もし・・・俺がここで死んでしまったら弟はどうなる?)
あの俺達を嫌がってタライ回しをし続けやがったあのクソ野郎達の誰かの元に言ってしまうのかもしれない。アイツらと一緒に暮らしても幸せになれるはずがない。
何より・・・
あいつを・・・もう泣かせたくない!
そう決意を決めたら身体がマトモに動くようになっていた。
もう目の前には化け物がいた。
俺はまだ死ぬ訳にはいかねぇ!ならば今するべきことはたった一つ!!
「こんなとこで・・・!死ねるかァァァ!!」
己を奮わせる為に大声でそう叫ぶといつの間にか右手には右歯噛咬(ザリチェ)、左手には左歯噛咬(タルウィ)が握られていた。
そのまま化け物の顔面を切りつけた。
悲鳴を上げる化け物。それを見て俺は、
「おいクソブサイク!!悪いが俺はまだ死ねねぇ!!やから・・・」
「いっちょ殺されますか!!」
そして俺はこの化け物を殺すことに決めた。