希死念慮   作:オコゲ

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呪霊

『オマエに弟が居ることは知っている、記憶を見たからな。どんな境遇かもだ。だが、悪いがこれは言わせてもらう。()()()()()()()だ。』

 

彼の言葉に俺は絶望する。弟の所に帰れない、そして会えない、何も出来ない。あぁ、そうだ、此処は夢だ。そうでなければこんな現実離れした事は起きない。・・・アレ、でもなんでそんな事が起きてるんだ?・・・まぁいいか。早く夢から覚めよう。

そうして俺は俺自身の首を閉めようとする。だが、咄嗟に彼に妨げられた。

 

『おい待て!!早まるな!!先ずはオレの話を聞いてくれ!!・・・頼む。』

(・・・巫山戯んな、なんでこんなことになってしまったんや。なんで、なんでなんでなんで、なんでや!!)

 

床の畳に滲みがつく。両の目から出る涙が止まらない。こんな理不尽な事をされた怒りや悲しみ、色々な感情が混ざって制御出来ない。したくない。

 

─・・・少し休め、今のオマエには休息が必要だ。

 

身体中の水分を絞り出すように、俺は感情を震わせ続けた。・・・こうすればマシになると分かっていたから。

 

 

 

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『あー、大丈夫か?』

「・・・もうええよ、・・・すまんかったな。」

 

あれから数時間は泣いただろうか、いや、もしかしたら数十分かもしれない。だが、心は先程より幾分晴れていた。

 

『別に気にすんな。・・・これからまた話していくが、その中にはまだ弟と会えるかもしれない事も話すつもりだ。』

「え、ほ、ホンマか!?」

『あァ、本当だ。だから希望を持て、・・・もう死のうとはすんなよ。』

 

俺は死のうとしていたのか、気が付かなかった。だがもうしない、この話の続きに希望があるのなら。

 

『そうか、なら次はこの世界に蔓延っている()()の話をするか。』

 

 

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「・・・呪霊ってなんや。」

あ〜、そうだな?呪霊ってのはいわば人の負の感情から生まれる、膿のような存在だな。』

『オマエも見ただろ?ハエのようなヤツとか、オマエが殺したイモムシとか、ああいうやつ。』

 

確かにいた。・・・そういえば、どちらも殺した時に跡形もなく消えていたな。

 

『それは、呪霊は負の感情が集まってできていているだけの存在、実体を持たないからだ。その呪霊を形作っている力の事を呪力(・・)というがまァ、オマエの記憶にあったふぇいとのまりょく代わりみたいなもんだ。』

 

─芋虫野郎が体に纏っていたものもそれだ。

 

とあの化け物についての謎が解けた俺だが、それと同時に聞きたいことが出来た。

 

「・・・俺もその力を扱うことは出来るんか?」

 

もし使えたら、少なくとも生存能力は上がるだろう。あんな化け物がそこらじゅうにいられたらたまったもんじゃないが、有り得ない話では無い。だからあの力さえ使えれば逃げることぐらいは出来るだろう。

 

『出来るぜ?てか使ってたじゃねぇか。火を起こすときによ。』

「ホンマか!?」

『ただまァ、オレはこの姿に変化する時に、蓄えていた呪力を殆ど使っちまったから、今は武器に呪力を流すくらいしか出来ねぇけどな?』

 

ケラケラと笑いながら言う彼に少し耳を疑う。それやったら使える意味が無いと意気消沈する。

 

『安心しろよ、確かに今のオレは右歯噛咬と左歯噛咬の強化ぐらいしか出来ねぇ。だが、呪力はあと3日くらいで全快するから安心しろ。それとコレも伝えておくが、もし呪力が完全に戻っても、術式反転(・・・・)は出来ねぇからな?』

「術式反転?なんやそれ?」

 

そう聞くと、コイツは面倒くさそうにして、

 

『あ〜そうかオマエは知らねぇか。・・・あーそうだな、術式反転ってのは、本来ソイツが持っている属性を反対にすることだ。オレの場合はオレ自身の状態をそのまま相手に【写り記す】、

投影術式(・・・・)ってヤツだな。右歯噛咬(ザリチェ)と左歯噛咬(タルウィ)を作れているのもコノ術式のお陰なんだぜ?感謝しろよ。』

 

ま、まあ取り敢えず炎だったら水とかの解釈で大丈夫やな?そう不安がっていると、

 

『だが反転術式だけはダメだ。』

 

と声に力を入れてそう言った。

 

『別に呪霊でも反転術式を使えるやつも少数だが存在する。だがオレはこれでもこの世全ての悪(アンリマユ)を背負ってる(呪霊)だ。・・・そんなオレが反転したらどうなると思う?』

 

一拍置いて、

 

()()()()。』

 

そう言った。

 

 

 

 

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「な、なんで消滅するんや?」

 

少し震えた声で俺はそう問う。たとえさっき会ったばかりだとしても、気が狂いそうになった俺を少しでも支えてくれた良い(呪霊)だ。それが俺の目の前で消滅すると言ったんだ、動揺するに決まっている。

 

『呪霊ってもんは人間の負の感情が集まってできている。』

 

─コレはさっき言ったろ?

 

『負の感情で出来ているっつっても、様々な種類の感情が集まってできているわけじゃねぇ。一体一体の呪霊によって集まる感情が違ぇんだ。例えば、オマエの記憶の中にあったトイレの花子さんっているだろ?ソイツを呪霊に置き換えて見るぜ?だったらこの花子さんはどんな感情が集まってできていると思う?』

「・・・そうか。もし、花子さんが呪霊だったら、人間がトイレで体験、又は想像して出た恐怖の感情が少しずつ蓄えれていって、やがて呪霊になるのか・・・。」

『だーいせーいかい!!』

 

満面の笑みで彼はそう答えた。

 

『そんで話は戻るが、オレはこの世全ての悪(アンリマユ)に対しての感情、いや象徴として存在している。そんなオレが反転して負のじゃねぇ、正の力を使うことはオレ自身の存在を否定することになる。それは即ち生きる事を諦める、そうだろ?』

 

─だからオレは反転術式が使えない。

 

 

 

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シンっと静まる空間の中、俺はどう反応すれば良いのかが分からなくなる。悲しむ、それとも同情する?そう考えていると突然、ケッケッケっと笑い声を上がる。

 

『まァ、オレはオレ自身を誇りに思ってるぜ?だってこの世全ての悪だぜ?全ての悪の根源だぜ?そんなのカッコよすぎるだろ!』

 

彼の言葉に思わず笑ってしまう。俺には彼が全ての悪の根源には思えなかったからだ。

 

『とりあえず呪霊に関してはこんなもんだ。・・・さて、こっからが本腰なんだが、弟について話していこうと思う。

「俺は、家に帰れるんかな・・・?弟を、和人を護れるんかな?」

 

そう、俺が一番気にしていた事。コレがどうか分からない限り、俺はまだ死ねない。死ぬ訳には行かないんだ。

 

そうすると彼は、少し悩んで様子になった。

 

『まァ、いける・・・、いけるがなぁ・・・。』

 

と渋りながらもそう答えた。

それを聞いて俺はいてもたってもいられず、

 

「ホンマか!一体どうすればいいんか!?」

 

と彼の肩を掴み、問い迫った。

 

すると彼は観念した様子でこう答えた。

 

『ここはな、オマエがいた世界とはそう変わらない、強いて言えば呪霊がいるかどうかの差だ。』

 

─たがな、

 

『ここは、オマエがいた年代より1600年程前の世界なんだよ。』

「・・・は?」

 

 

 




ふと、私は投影と言う言葉をググってみた。すると、

自己のとある衝動や資質を認めたくないとき(否認)、自分自身を守るため(防衛機制)それを認める代わりに、他の人間にその悪い面を押し付けてしまう(帰属させる)ような心の働きをいう(wiki引用)という意味を知り、コレは投影魔術とアンリマユの宝具が結びつくことができるのではないか!!と思い設定として描きました。

※あと、呪力は火以外にも、武器を投影する時とか宝具を使用する時に使用していますが、アンリマユは伝えるのを忘れています。おマヌケさんだぁ!!
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