BLEACH ユーハバッハ打倒RTA【オリ斬魄刀ぶっぱチャート】 作:更川有希
今回は、勇音ちゃんパートもとい前回までの振り返りです。拙い文章ですが、暖かい目と心で読んで頂けると幸いです。
それはともかく、「世の中は結局顔と金じゃけェ、よう覚えとけの」と言っていたジジイがいたのを思い出しましたので初投稿です。
私は、生まれて初めての恋をしている。
その日は、いつもと変わらない日だった。繰り返される日々の中の、瞬きをする間のような、そんな"変わらない日"だった。
いつものように、四番隊副隊長として患者の手当てをする。処置が終わったら、いつものように、報告書を書く。そして、いつものように、私と他の四番隊隊士たちから集めた報告書を卯ノ花隊長へと提出する。
そうだと、思っていたのですが‥…─
「虎徹副隊長!早朝に申し訳ありません、重体の患者です!よろしければ急ぎ手当てをお願い致します!」
「分かりました」
担架で乗せられてきたのは少年でした。どこにでもいるような、黒髪の少年。背丈は小さめなのか、担架にすっぽりと収まっています。彼は僅かながらに意識はあるのか、腕で顔を抑えていました。彼の全身は酷いものでした。死覇装は全身が破れ、その線をなぞるように切創と擦過傷が広がっていたのです。
体のあちこちに咬傷の跡があり、相当量の出血が確認出来ることから、彼にとってどれだけ苦しい戦いであったのかは、語らずとも分かりました。
これは、恐らく時間がかかるだろうと死覇装の袖をまくり、一歩踏み出し──
──そして、腕の隙間から苦しながらにこちらを見つめる彼を見て、──
───私は、一目惚れしてしまいました。
それからのことは、あまりよく覚えていません。でも、一つだけ覚えていることがあります。それは、何があっても彼を「救わなければならない」という決意です。彼の名前も知りません。会ったことも、会話をしたことすらありません。勿論、彼以外の隊士の時もそういった信念をもって治療をしていました。
けれど、その時の私は、彼の役に立ちたいと思う一心で治療をしていました。
気付いた時には、もうお昼を回っていました。とりあえずの処置はしましたが、いつ容態が悪化するか分かりません。休憩無しで治療を続けていた私は少し休憩を挟み、再び救護室へと足を急ぎました。
部屋に入った私は‥…私の心は、間違ってはいないことを確信しました。
ベッドから起き上がり、大きく開かれた翡翠色の瞳で窓の外を見つめている彼に、再びときめきを感じたからです。
その後、初めて交わした彼との会話は、私の記憶から一生消えることはないでしょう。
「皆は‥…俺以外の隊士達は、ここに来ましたか?」
そう。あのとき隊士が担架で運んできたのは彼一人だけです。
「いいえ‥…」
「‥…そうですか」
重たく、冷たい沈黙が流れます。
口火を切ったのは、彼でした。
「ええと、十番隊の浮竹幸寿朗です。僕‥いや、私を治療して下さったのは、貴女ですか?」
「申し遅れました。四番隊副隊長の虎徹勇音と言います。貴方の治療をしたのは私です。なにか、体に不調はありませんか?」
思ったよりも若い声にびっくりしました。私よりも年下だと 思ってはいましたが、想定よりももっと幼い‥…もしかすると、新入隊士なのかもしれません。
「治療、ありがとうございます、虎徹副隊長。体調は大丈夫です。‥…えと、あと、その‥…すみません。少しの間、一人にしてもらってもいいですか?ちょっと考えたいことがあると言いますか、整理したいと言うか‥…」
彼は、絞り出すような小さな声で、呟くように私に言いました。
‥…ですが
「宜しければですが‥…そのお話、聞かせて頂けませんか?」
「え‥…」
「人には話辛いことかもしれません。ですが、一人で抱え込むことによって、問題が解決するとは限りません。どうか、私にお話して下さいませんか」
我ながら、詭弁だと思いました。彼の心は彼のものです。赤の他人である私が、土足で踏み入れていい領域ではありません。そもそも、彼はそんな道理を通す必要はありません。
しかし、彼は話して下さいました。
霊術院を卒業し、隊に所属し初めての任務だったこと。
任務自体はすぐに終わったこと。
帰り道、巨大な虚の襲撃によって、隊が半壊したこと。
部隊長が殺され、隊全体が混乱に陥ったこと。
仲間を庇いながら、自身が盾になって虚と戦ったこと。
気付いたら、この場所で目覚めたこと。
‥…おおよそ、私が考えていた通りの結果でした。
私は、何も言えません。だって、今こうして彼の心をかき乱しているのは他ならない私自身だからです。私は、聞くことしか出来ません。
だから、彼と約束をしたんです。
「次も必ず、ここへ帰ってくること」と。一緒に戦う、隣に立つ人としてではなく、彼の帰りを待つ人として。どんな怪我でも、戻ってきたなら私が治すからと、そう約束しました。
そんな約束を、子供のように指切りをしてまでして‥…俯く彼に、私は普段以上に笑顔で、まるで道化のように振る舞いました。私のわがままで、彼の心の枷になってしまわないように。
彼は、微笑みを返してくれました。
私にとっての、彼の初めての笑顔でした。彼は微笑んだ後‥…照れているのか、すぐに顔を逸らしてしまいましたが、そういうところが可愛いらしいなと思いました。
それが、彼との初めての出会いでした。
‥…その日の夜は、年甲斐もなく何をやってるんだろうと自己嫌悪したり、いきなり話しかけた挙げ句、勝手に変な約束までして変な人だと思われたかな、とか、普段こんなに隊士の、それも男性とお話しなんてしないから、顔が変になってないかな、とか‥…一番は、そんな私の様子を彼は気付いてなければいいけど‥…なんて考えてしまって、眠れに眠れませんでした。
彼‥…幸寿朗君は、あれからも任務を続けているそうです。十番隊の期待の新人として様々な任務で活躍していて、傷ついた時には、私のところへちゃんと治療と報告を兼ねて来てくれるようになりました。
少しずつですが、プライベートで会うことが増えた気がします。いえ、『します』というより『しています』の方が近いです。大体、そういった時は私が暴走してしまって勢いで予定を立てますし、なんなら彼の任務のスケジュールを私が確認しています。
最近流行りの団子屋の話をしたら、そのまま勢いにまかせて行くことになったり‥…趣味でしている生け花を彼に見せたら大絶賛されたり‥…。
あとは、私の嫌いな食べ物がかまぼこだと知られてしまったり‥…。そうして私が暴走してしまった日は自己嫌悪で気分が滅入りますが‥…いざ幸寿朗君を見ると、そんな気持ちは吹き飛んでしまいます。
幸寿朗君は優しい方なので、どんな提案をしても嬉しそうに頷いてくれます。
文句なんて一つも言ったことはありません。
なんなら、彼と会うたびに「虎徹さんといるとなんだか嬉しい気持ちになります」と言ってくれて、笑ってくれるのです。それで、ときには、その、て、手を繋いだり‥…。そんな笑顔が、何気ない"男"としての仕草の一つ一つが‥…私を狂わせていくのです。
幸寿朗君を想う気持ちは、会うたびに、会話をするたびに大きく膨れあがっています。今はまだ、副隊長としての立場や自制心があるためこの程度で済んでいますが‥…。
しかし、彼が文字通り私の隣にいることになれば‥…私は、私では無くなってしまうかもしれません。
幸寿朗君はあれから、心の中での折り合いをしっかり付け、亡くなってしまった隊士達のためにも必ず生きてみせるといつにも増して精力的に任務を続けています。
彼はまだ始解は出来ていないと言っていましたが、斬拳走鬼の拳以外は霊術院でも優秀な成績だと聞いています。霊圧はすでに副隊長クラスはあるとのことで、今尸魂界で最も注目されている若手なのだとか。
その武勇は私は勿論、複数の隊長や副隊長にまで伝わっている程です。彼が褒められたり、認められているのを見たり聞いたりしていると、まるで私のことながらに嬉しいと思ってしまいます。
しかし、幸寿朗君のそういった実力や恵まれた容姿が目を引くのか、最近の女性隊士の話題は幸寿朗君で持ちきりなのは‥…ちょっとだけ、胸が苦しくなります。
そういえば‥…名字からしてもしやと思っていたのですが、やはり浮竹十四朗隊長のご家族、それも浮竹隊長の甥にあたるとのことでした。
私の妹である清音も浮竹隊長を慕っていますし、(清音の場合は単なる敬愛かもしれませんが)虎徹家の女性は浮竹家の男性に魅力を感じる血筋なのかもしれませんね。‥…なんて。考えすぎですかね。
そんなことを思いながら今日分の仕事をしていると、彼が治療と報告を兼ねて私のところへやってきました。いつも来てくれる時は微笑みがあるのですが、今日は無表情です。
なんと任務で大虚を倒したのだとか。しかし、その小部隊は幸寿朗君一人を残して全滅‥‥。
私は笑顔で彼に言いました。「帰ってきてくれてありがとう」と。
それから、指切りをしました。「また、ここへ必ず帰ってくること」と。
今日は、幸寿朗君が任務で負った傷を癒しに来て、一緒にお話までしてくれました。一緒に指切りをしたあの日から、任務から帰ってくる度に私に会いに来てくれます。時間にもよりますが、幸寿朗君からお話をしてくれることも増えてきました。
少し前までの幸寿朗君は人見知りで、口下手のようなところがあるのか‥…あまり自分から話しかけることは無かったのですが、今ではよく会話をよくするようになりました。口調や喋り方も柔らかいものとなり、最近ではこの時間が一番のお気に入りです。
幸寿朗君は甘いものには目がないようで、どら焼や羊羮を置いておくといつの間にやら無くなっている程です。
今日なんかは、口いっぱいにどら焼を頬張る幸寿朗君を見れて幸せでしたし、幸寿朗君の口の横についた食べくずを私が「ついてますよ?」なんて言って指でつまんで食べちゃったりして‥…!
このようなことは、本来はしたないことなのですが‥…瀞霊廷通信で読んでいる恋愛小説で書いてあった、恋仲の男女のようなことを思い出してしまい、ついついやってしまいました。私自身も、本当にするとは思っていませんでしたが‥…。
でも、何故か穏やか気持ちになったのを覚えています。幸寿朗君の可愛いところを、また一つ見つけられたことが嬉しかったのでしょうか。
‥…今だから落ち着いて思い出せますが、その瞬間は体全体がまるで沸騰してしまうほど熱くなっていましたが、幸寿朗君は気付いていたのでしょうか。
幸寿朗君がしばらく顔を見せにきてくれません。
しかし、それもそのはず、今や彼は十番隊の三席なのです。大虚に出会い、そして生きて帰ってきただけでなく斬魄刀の始解無しで討伐までこなしたという大挙を成し遂げたのですから。
あとは、始解さえ出来れば副隊長は確実でしょう。
‥…幸寿朗君は、目にも止まらない早さで出世をしています。
勿論、それに見合った実力があるから、というのは分かってはいますが‥…。もう少し、幸寿朗君は‥…私の、こう、なんというか、どことなく弟のような感じで居て欲しいというか‥…。
幸寿朗君の、同年代と比べて小さめの背や、日常において口数が少ないところや、中性的な美しい顔から見せる儚げな表情が‥…こう、なんとも‥…。
もしも、本当に私の弟だったならと妄想してしまいます。
こんな想像をしてしまうのは私のワガママなのでしょうか?
いえ、考える間もなく私のワガママであり願望だというのはその通りなのですが‥…はぁ。ここ最近は、怪我を負っても負わなくとも任務の帰りに会いに来てくれていたのですが。一体どうしたのでしょう。
「早く会いたいな‥…幸寿朗君‥…」
「あらあら。勇音にも、春が訪れましたねぇ」
「た、たた、隊長!?なぜそこに!!?何時からいらしていたのですか!?!?」
気付けば、辺りはすっかり暗くなっている。一体いつまで、彼のことを考えていたのだろう‥…!?
それよりも、隊長がなぜここにいらっしゃるのか‥…?
「いつも決まった時に報告書を持ってくる勇音が、今日はひどく遅いので様子を見に来たのです。そうしたら、なんだか一人で楽しそうにしていたので‥…観察をしていました」
「‥…、、?!! そうでした!すみません、隊長!」
「明日にまとめて‥…でいいですよ。その様子だと、今日の分もまだなのでしょう?」
「はい‥…。」
「ついでに、勇音には『色々』と聞きたいことがあるので明日は早めに報告書を持ってきて貰えると助かりますね」
「はい‥…‥…。」
翌日、幸寿朗君と初めて出会った日から今日に至るまでの全てを話す羽目になってしまいました。隊長の笑顔の前には屈するしか。ごめんね、幸寿朗君‥…。
その日、任務が終わり次第四番隊宿舎へ来ると約束していた幸寿朗君は、来ませんでした。
代わりに、次の日、─────
「隊長。彼の治療は、私一人でさせてください。‥…約束なんです」
「‥…いいでしょう」
幸寿朗君の傷も、服も、体も‥…。髪の毛一本ですら卯ノ花隊長には触らせません。治療を例え断られたとしても、私一人でするつもりでしたから。
絶対に、彼を救ってみせます。
何日か経った後‥…治療自体は終わり、命に関わるような大きな怪我は無くなりました。とはいえ、体自体は弱っているので本調子ではないはずですが、無鉄砲に任務を受け続けている幸寿朗君が心配でなりません。しかし、大事にならなかったことは喜ばしいことだと思っています。
それと、今日はもう一つ喜ばしいことがあります。なんと、幸寿朗君が十番隊の副隊長へ昇進したのです!
幸寿朗君と私は地位は、もうほとんど変わりません。階級では同じ、変わっているところでは、私の方が任期年数が少し長いですが、隊士としての実力で言えば圧倒的に幸寿朗君が上です。
それはつまり‥…今まで私と幸寿朗君の間にあった『壁』が無くなったことを意味します。
なので‥…
「虎徹さん‥…あの、距離が近いのですが?」
「いえ。もう私たちは"同じ"副隊長です。私と幸寿朗君を妨げるものは、もう何もありません。ですので、『勇音』とお呼び下さい」
私の家で、昇進祝いを兼ねてパーティーを開きました。理由は‥…私の全てを、幸寿朗君へ捧げるため。
今日という日を、どれだけ待ち望んだことか‥…。
「あの、虎徹さん‥…」
「『勇音』ですよ。幸寿朗君」
「虎徹さ」
「『勇音』です。」
「えっと、‥…‥…勇音さん」
「『勇音』」
「じゃあ、その‥…勇音。この状況はどういうこと?さっきまで僕の昇進記念で楽しく一緒にパーティーしてたじゃない?」
「だからですよ。もうパーティーは終わったんです。」
「‥…えぇっと」
もう、我慢の限界です。
「待って待って近いですよ勇音さん」
最初に誘ってきたのは幸寿朗君なんですよ?
「ちょっと、これ以上は‥…あっ、そこは‥…っ」
私は悪くありません。幸寿朗君が悪いんです。だから‥…
「んんっ!?ちょ、ま、待って」
「待ちませんよ、幸寿朗君」
食べちゃっても、いいですよね‥…?
「ずっと、ずっと、ずーっと‥…一目見た時から、貴方が好きです。幸寿朗君」
いただきます♡
ごちそうさまでした♡