人間殴ルーラーとドチートと凡夫どもが逝くFF人理修復(夢想姉妹視点) 作:神代リナ
無事合流を果たした私たちカルデアの残党は、本部との通信を終え、敵の目を避けながら次の目的地、冬木の霊脈へと移動していた。
……特に、私は妹の姫華を背負っているから本当に接敵したくないものだ。早く、英霊召喚して自衛手段を確保したいところである。
ちなみに、カルデアの本部の方はオルガマリーが向こうにいないため、ロマニが暫定トップとして、職員の指揮をとっているらしい。
ほんとは、姫華も向こうで現地にレイシフトしたマスターのサポート役として働いているはずだったのだけど……まぁ、巻き込まれた以上仕方ないわね。
あと、マシュがサーヴァントみたいになっていたのはどうやら人とサーヴァントの融合実験の賜物だとか。
そういえば、マリスビリーがなんかそんな実験をしてることを前に言ってたような気がしなくもない。
そして、やっぱりコフィンに入っていた魔術師達はダメだったらしい……なんとかコールドスリープで生かしてるらしいけど……。
つまり、少なくともこの特異点は、私たちのみでなんとか修正するしかないって訳だ。
……大丈夫かしら?
だって、今いるメンツって……若干戦力外感のある私たち姉妹(まぁ、一応私の方は適当な魔術やら膝蹴りくらいなら使えるけど)、お世辞にもそこまで強いとは言えない伊勢村君、強いけど中々癖のある伊音君、魔術師としてはスペック高いけどマスター適性0のオルガマリー、そしてそもそもほぼ一般人の藤丸君に立香ちゃん……ヤバい、確実に。
ま、まぁ、サーヴァントの召喚さえ出来れば……うん。
「姉さん……不味くないですか? 戦力的に……苦戦は回避不能……」
背中からそんな声が聞こえる。
「えぇ……でも、こんなところでは死ねない……もう二度と……」
理不尽なんかに幸せを奪われたくない。
そうだよね、姫華、お父さん、お母さん。
「そう……ですね。ごめんなさい、私がレイシフトに巻き込まれなければ、姉さんは……」
「大丈夫よ、お姉ちゃんは強いから。貴女は絶対に守ってみせる」
さて、私たち姉妹が会話している間、伊勢村君が藤丸君と立香ちゃんに魔術について基本的なことを教えていた。
「なあ、藤丸たち。一個聞いときたいんだが、お前ら魔術についてどの程度理解してるんだ?」
「……殆ど全く」
「ハリポタどまりです」
「オーケー、なんも知らないんだな? ならここはいっちょ目的地に着くまでに、俺らで最低限押さえておきたい魔術講座でもやって、先輩風を吹かせるとしよう。何から知りたい?」
「そもそも魔術や魔術師って何ですか?」
「本当に私たちも魔術使えるんですか?」
いや、にしても魔術の知識はハリポタ止まりって……よりにもよってなんでそんな一般人を巻き込んでいたのよ、カルデアは。
「これは使う魔術の種類に関わらずそう呼ばれる。その中でも"魔術を使って、根源と呼ばれる何かへの探求を行う者"の事を魔術師と呼ぶ。まあ、こっちは主に西洋魔術師達の話だけど」
「まず魔術を使える人間、魔術使いは"魔術回路"と呼ばれる疑似神経を持ち、それを使って生命力を魔力に変換して、魔術を発動。それにより世界に干渉できる者のことを指す」
「これは使う魔術の種類に関わらずそう呼ばれる。その中でも魔術を使って、根源と呼ばれる何かへの探求を行う者の事を魔術師と呼ぶ。まあ、こっちは主に西洋魔術師達の話だけど」
伊勢村君がこっちをチラッと見る。
……続きを説明しろってことだろう。
「良い、2人とも? このカルデアでは、魔術師はサーヴァント、かつてこの世にいた英雄たちを使い魔にしたものを使役して戦うことを前提にしているの。で、このサーヴァントを維持するには術者の魔力が必要となる……だから、あなた達もマスター候補である以上最低限の魔術回路はある。つまり、魔術は使えなくはないわね」
「カルデアのマスター適正はバックアップ込みの数値なので、マスター適正と普通の魔術師になれる素養がイコールではないのですが、所長、先輩方の魔術回路は……」
こちらの会話が耳に届いていたらしく、少し先を伊音君と並んで歩いていたオルガマリーが振り返りながら答えた。
……てか伊音君、お酒飲んでない?
気のせい?
「2人とも最低値、と言うより最低限のそれね。レイシフト適正はそれに反比例して、この中の誰よりも高いから採用したわ」
「回路量も質も十分なはずなのに、レイシフト適正もマスター適正も絶無の誰かとは真逆ですね」
「それは私の事を言ってるのかしら?」
……はぁ、オルガマリーと伊勢村君の相性はダメそうね。
今後が不安だわ。
「他に誰かいまして?」
「アンタ、カルデアに戻ったら覚えておきなさいよ!?」
「わぁ……すげえ怒ってる……」
「所長って、どのくらい偉いんですか?」
立香ちゃんがそう伊勢村君に聞く。
ま、魔術界に全く知らないのも無理はない。
……ロードだのプライドだのを知らないっていうのは普通に羨ましいわね。それだけで、寿命が30年は伸びる。
「西洋魔術界の早慶上智こと、時計塔の学部長の跡取り娘。魔術と科学を融合させた施設をおっ建てるようなアホな家とは言え、
「犬みたいに言わないでくれるかしら!?」
……そんな事を考えていたら、伊勢村君がとんでもない爆弾発言をしていた。
犬扱いはまずいでしょ……犬扱いは。
ほーら、案の定オルガマリー怒ってるし。
「伊勢村先輩、あんな怒らせちゃって大丈夫なんですか?」
「良くないねぇ……伊勢村君、言い過ぎ。一応、頭下げときなさいな」
流石に、私が伊勢村君に注意をする。
しかし、彼は不服らしい。
「所長の真横で酒かっ食らってる伊音さんよかマシでしょ」
……いやまぁ、そうだけどさぁ。
てか、やっぱり気のせいじゃなかった。また飲んでるよ、彼。
話を全く聞いてなかったのだろう、急に自分の名前を出せれて驚きでもしたのか伊音君が振り返る。
一応、口パクで伊音君になんでもないことを伝える。
……喋らなかった理由?
オルガマリーの八つ当たりの標的にされたくなかったからに決まってる。
私と伊勢村君、そして本人以外は、伊音君が任務中に酒を飲んでいたことを知らなかったらしく、ひどく驚いていた。
時計塔時代からこんなもんだよ、彼。
「アンタは任務を真面目にやる気があるの!? もー! なんでこんな奴らばっかり……」
オルガマリーはご立腹だ。
今まぁ、そうなるのも無理はないが。
……私、まだマシな部類だと思うのだけど、同類にされてない?
「まぁ、落ち着いて、オルガマリー。あなたがしっかりしないと纏まらないんじゃない?」
流石にオルガマリーが可哀想に思えて来たので、そう声をかける。
「……はぁ、貴女も私のストレス源の一つなのだけど」
「私は不可抗力だから」
「とはいえ、なんでAチーム並みの戦力になり得る貴女が使えないのよ……」
これ以上話すと、私に矛先が向きかねないのでそっと伊勢村君の方に行く。
「魔術って、魔法とは違うんですか?」
ちょうど、藤丸君がそう尋ねているところだった。
それは私の得意分野だ。
私は伊勢村君に目配せをして、説明を変わってもらう。
「そこは、私が説明するわ。簡単に言ってしまえば、人類の文明の力で再現出来るのは魔術、出来ないのが魔法ね。魔術師の中でも、魔法を使える魔法使いにまでなれるのは本当に極々一部なの。それほど、凄いものなの、魔法っていうのは」
「なるほど……ちなみに澪さんは魔法、使えるんですか?」
「残念ながら、使えないわ。使えたら、今頃この特異点修復は終わってるでしょうね」
ただ、もしかしたら姫華なら……使えるようになれるかもしれないわね。
ご先祖様の血が濃いらしいし。
その後、伊勢村君がさらに補足をしてくれたが、それがきっかけでまたオルガマリーとの言い争いが始まる。
もはや、恒例行事だ。
しかし、その言い争いもすぐに終わる。
そう、目的地に着いたのだ。
冬木の霊脈。
ここでなら、マシュの盾を触媒に英霊召喚が出来る。
「はい、ここです。この盾を設置すれば準備完了です!」
「オーケー。じゃ、ここで一つ大魔術でも見せて先輩の威厳を保つとしますか」
「ま、引けるサーヴァントは指定出来ないから威厳失墜もあり得るけどね」
私は、そう冗談めかして言う。
「......えぇ、サーヴァントの使役とか面倒なのだが」
相変わらずだなー、伊音君は……
「そりゃこればっかりはしなきゃダメでしょ、英霊召喚。まさかマシュちゃんだけに戦わせるつもりっすか?」
そう、伊勢村君の言う通りだ。
そろそろ、マシュだけでは切り抜けられなくなってくるはずだ。
だから、ここで良いサーヴァントを引き当てる必要がある。
……あの剣、持って来れば良かった。
そうすれば、確定で大英雄が確定で引けたのに。
まぁ、すぎたことを言っても仕方ない。
「オルガマリー」
「何よ?」
「姫華を預かってくれない? 英霊召喚はシビアって言うでしょ?」
「……そうね。分かったわ」
「ありがと」
私は、姫華をオルガマリーに預けると、盾の前に令呪の刻まれた右手を掲げる。
そして、口を開く。
「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。
祖には大魔術師、
降り立つ風には壁を。
四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」
盾の上に光の魔法陣が浮かび上がり、
さらにその上に円を描く様に浮いた光の弾が回転を始める。
「
回転する光が三段に分かれ、金色の輝きを帯び始めた。
今まで感じたことのない濃い魔力が収束されていくのが分かる。
これが英霊召喚……実際にするのは初めてね。
「────―
汝の身は我が下に! 我が命運は汝の剣に! 聖杯の寄るべに従い、人理の轍より応えよ !
誓いを此処に! 我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者!
汝星見の言霊を纏う七天! 糾し、降し、裁き給え。人理の守り手よ……!」
視界が白い閃光で塗り潰される。
そして、それが収まり、視界が戻る。
目の前には、御伽噺によく出てくる悪い魔女のような女性が立っていた。
「……サーヴァント、キャスター。妖精妃モルガン、ブリテン島の化身、召喚に応じ参上した」
その女性はそう言う。
あぁ……彼女はきっと強い。
あのマーリンとどっこいの能力を持つ強力なサーヴァントだろう。
だけど……。
「問おう、おまえが私のマスターか」
何処か、儚く、可哀想な少女のようにも思えた。
今回、澪が召喚したのは汎人類史のモルガンです。