人間殴ルーラーとドチートと凡夫どもが逝くFF人理修復(夢想姉妹視点)   作:神代リナ

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ほんへ書いてたんで遅くなりましたすみません


第四話 神殺しの槍

 バーサーカーを撃破した後、休憩や目がやられた伊勢村君の治療をするために穂村原学園の教室へとやって来た。

 スケルトンなどの雑魚敵とは時々遭遇したが、サーヴァントのような強敵は見当たらなかった。

 

 さて、ささっと治療しちゃいましょう。

 床に座っている伊勢村君の目の部分を私は手で触れる。

 

「我らの穢れを清めたまえ……っと。はい、治療終わったよ」

 

「感謝しますレディ・ミオ」

 

 神道系治癒魔術を行使して彼の目を治療すると、パーシヴァルが礼を言う。

 治癒魔術は、私の最も得意な魔術の一つだ。

 これからも、バンバン頼って貰って構わない。

 

「マスター、その魔術は極東独自のものですか? 生前、私が見たことない系統のようですが」

 

「そうそう。神道って言う極東の島国の日本独自の宗教の系統だね」

 

 どうやら神道系魔術に興味深々なモルガンの質問に答えながら、教室の端っこの方をチラッと見ると。

 

「なんで、貴方はこうも制御の効かない魔術を」

 

 オルガマリーが、伊音君に説教をしていた。

 アレ、かれこれ10分以上続いてるんだけど。

 まぁ……巻き込まれるのも面倒くさいし、とりあえず放っておこう。

 伊音君の前に私も宝石の件で色々言われたし。

 

「姉さん、周辺を索敵して来ましたが少なくとも学園の近くに敵はいないかと」

 

「ん、ありがとう。貴女もしばらく休んでて」

 

「分かりました」

 

 周辺の索敵をしていた姫華が、帰って来た。

 近くに敵がいないのは何よりだ。

 ただ、気は抜けない。

 アーチャークラスのような長距離攻撃を可能とするサーヴァントの存在があるからだ。

 

「そこの瞬間湯沸かし器が数合わせに拉致って来たんすよ」

 

「誰が瞬間湯沸かし器ですって!?」

 

「ほら、もう沸騰した」

 

 ……あらあら。

 まーた、伊勢村君とオルガマリーが言い合ってる。

 どうやら、伊勢村君は一般人である藤丸'sを連れて来たのが気に食わないらしい。

 正直、分からない事はない。

 彼らのような一般人を無理にこんな地獄(魔術世界)に連れてきたってのは少し、いやかなり腹立たしい。

 だが、今は仕事中だ。

 その怒りは少し隅に追いやらねばなるまい。

 

「ちょ、ちょっと先輩!」

 

「そろそろやめましょうよそれ!」

 

「マスター、あまりレディを怒らすのは感心しませんよ?」

 

 お、私が宥める前に、彼のサーヴァント(パーシヴァル)彼の後輩(マシュ)が言ってくれた。

 これで、一安心だ。

 

「相変わらず賑やかな方々ですね」

 

「そこが良いとこなんだよ、モルガン。堅苦しいよりずっとマシ」

 

「姉さん……」

 

 そうそう。

 うち(夢想家)の一族会議とか地獄みたいな堅苦しさだしね。

 あーいうのは好きじゃないかなー。

 あぁ、もちろん夢想家自体が嫌いな訳じゃないんだけどね。

 

「はいはい。それで"起源"の話だったな。"起源"ってのは、あらゆる物の最も深い部分に根付いてる本能……いや、より正確に言えば何かからの絶対命令。その人間の絶対に抗えない宿命みたいなもんだ」

 

 ……起源、か。

 私は……私の起源は。

 いや、別に()()()を後悔はしていない。

 それで大事な人が守れたのだから。

 ただ……。

 

「じゃあ、澪さんのはなんだろう?」

 

「へ?」

 

 ありゃ、思わず考え込んでて話を聞いていなかった。

 

「いや、澪さんの起源って何だろうなーと気になっちゃって」

 

 と、何の含みもない笑顔を私に向けながら、立香ちゃんがそう聞く。

 私の起源は……。

 

「あぁ、私の起源は守護よ。あんまり面白いものじゃないでしょ」

 

「えぇ、澪さんは起源破壊とかかと思ったんですけどね」

 

「こら、女の子にそんな事を言っちゃだめでしょ」

 

 賑やかに騒ぎ出す藤丸's。

 にしても、起源破壊か。

 ……本当の起源に近いかも。

 

《嘘つきですね、マスター》

 

 そう、何処か楽しそうに念話で言うモルガン。

 それに答えて、私も。

 

《えぇ、私だって女の子だもん。隠し事の一つや二つくらいあるものでしょ》

 

 と、悪い笑顔を浮かべて言う。

 そんな事を話していると、いつの間にか黒板の前に立ったオルガマリーが両手を叩く。

 

「その話は今でなくていいわ。それよりまずは、残る敵サーヴァントについて話しましょう。さっき伊音が倒したバーサーカーを超えそうなのはセイバーくらいでしょうけど、確認しておくべきよ」

 

 そう言ってオルガマリーはキャスターを目で促すと、

 彼は少しづつ語り始めた。

 

「まずはサーヴァントの種類とかから話してやらねえと、そっちの二人が付いていけないんじゃねえか?」

 

 そう言って藤丸たちを指さす。

 

「そうだな。じゃあさっきの魔術講座の続きと行こうか。今回の議題は、聖杯戦争」

 

 そう言うとオルガマリーは黒板に"聖杯戦争"と書く。

 

「まずは概要から。そもそも聖杯戦争ってのは、7騎の英霊を殺し合わせ、くべられた魂の力を使い、どんな願いもかなえられる聖杯を使えるようにする儀式のこと。まあ、詰まるとこ、英霊と魔術師のタッグ戦自由形だ」

 

 伊勢村君がそこまで行った所で、マシュが説明を引き継ぐ。

 

「まず英霊ですが、私のようなケースは極めて異例で、本来は令呪と呼ばれる聖痕を得たマスターが、先ほど先輩方がサー・パーシヴァルたちを呼び出したように、儀式を用いて英霊を召喚します」

 

 オルガマリーが黒板に令呪と書き足す。

 

「令呪って、それぞれ形が違うんですね」

 

 と藤丸君が言う。

 令呪の形には魔術系統がどうやら関わっているらしいとかなんとか。

 まぁ、正直この情報は私もどこで聞いたか分からないレベルの眉唾モノだから言うのはやめとこ。

 不確実な情報は、チームのためにもならない。

 

「伊勢村先輩のが翼に……三日月? 澪先輩は、4枚の天使の羽……伊音先輩が……あれ令呪は? 」

 

 そう。

 伊音君の令呪は、手の甲にない。

 ま、別にだからなんだという話だ。

 必ず手に令呪が現れるという訳ではないのだから。

 現に、私の……は、……に。

 

「楽譜だ」

 

 伊音君は、機嫌の悪そうな声でそれだけ答える。

 

「いろんな形有って面白いだろ? ホントかどうか分かんないけど、令呪の形が非対称で有ればあるほど人間として壊れてる、なんて話もあるな」

 

 さて、次は私の番かな。

 この感じだと、次は……令呪の基本的な効果とかを話せばいいだろう。

 

「令呪は、基本的に聖杯から各マスターに三角配られるの。そして、令呪にはサーヴァントの絶対命令権としての機能が備えられてるの。命令の内容次第だったら、簡単な奇跡……瞬間移動程度なら起こせるから聖杯戦争における切り札にもなりうるね。ちなみに、カルデア式の令呪は冬木のものの劣化コピー版みたいなものだからそこまで強い効果はないよ」

 

 私の説明が終わると、オルガマリーが何か黒板に書き足しながら言う

 

「次に召喚される英霊たちにはついて。彼らにはそれぞれ特性があります」

 

「特性?」

 

「ランサーとかバーサーカーとか言ってたあれですか?」

 

「ええ。まず最優の剣の英霊、セイバークラス。次に俊敏さが売りの槍の英霊、ランサークラス。そして長距離攻撃を本領とするアーチャークラス。これらは三騎士とよばれるクラスで、基本的には最初は聖杯戦争のシステムを作った御三家と呼ばれる家の魔術師の為に用意されたような物です」

 

「出来レースってことですか?」

 

「まあ、御三家からしてみれば、文字通り噛ませ犬が最低でも5騎は必な訳だしね」

 

 そんな伊勢村君の言葉に付け足すように私も口を開く。

 

「令呪なんかも御三家に優先的に配られるしね」

 

 それを聞いて、なんか狡いな、と呟く藤丸君。

 そもそも、聖杯戦争のシステム自体が御三家によって作られたし……紳士的なフェアな精神を持つ魔術師なんてほとんどいないだろう。

 

「残る4騎に話を戻します。馬や戦車などの乗り物にのった逸話が昇華されたライダー。魔術行使に長けたキャスター。闇に潜み、暗殺を本分とするアサシン。さっき戦った……戦った? 狂化属性を付与することで総合スペックを底上げしたバーサーカー。これが通常4クラスです」

 

「話だけ聞くとそんな弱い風に見えませんけど……」

 

「まあそうだな。ライダークラスはさておき、キャスタークラスは、伊音さんみたいな例外を除き、マスターと役割がダブっちまうから、意見が一致しないとマスターが殺される場合がある。次にアサシンクラスだが、立ち回りによっては終盤まで残れるが、結局最後に残った一番強いのとサシでやり合う羽目になるから勝ち目は薄い。で、最後にバーサーカーだが、さっき実物を見てもらった通り、燃費最悪だからすぐにマスターの方がダウンして脱落する」

 

「な、なるほど……あれ? マシュのシールダーは?」

 

 お、立香ちゃん鋭いね。

 まぁそれは、エクストラクラスってヤツで……。

 

「私のクラスはエクストラクラスト呼ばれる番外のクラスなので、聖杯戦争で必ず登場するわけではないクラスです」

 

 ……本人が先に説明しちゃった。

 

「まあ、盾がどうこうって逸話はアイアスの盾とか、ヒルドルの盾とか有るけど、メインウェポンか? と言われると首を捻らざるを得ないからね。

 それに盾だけで十二分に戦える逸話がある英霊なら、間違いなく3騎士で呼んだ方が強いだろうしね」

 

「確かにそうですね」

 

「アイアスに……昼ドラ?」

 

「立香ちゃんは神話や歴史の補修も必要みたいね。そっちは俺でもできるか」

 

《はは、ボクが説明しようとしたこと全部言われちゃったなー》

 

「「「あ、そういえばロマニ(さん)いたね(な)」」」

 

《……それは、ちょっと酷くないかい、君たち》

 

 ……と、楽しい楽しい(?)聖杯戦争の講義をしていたらロマニから通信が入る。

 ヤバい。

 完全に存在を忘れてた。

 だって、霊脈の場所以外で通信してこなかったし。

 

「あ? コイツはお前らの仲間か?」

 

 と、ホログラムに写っているロマニを指差しながらキャスターが言う。

 

《はじめましてキャスターのサーヴァント。御身がどこの英霊かは存じませんが、我々は尊敬と畏怖をもって》

 

「ああ、そういう前口上は結構だ、聞き飽きた。てっとり早く用件だけ話せよ軟弱男。そういうの得意だろ?」

 

《う、そうですか。な、軟弱って……うん? みんな、気をつけるんだ! 高速でそっちに飛来する魔力反応を確認した!》

 

 まさかアーチャクラスのサーヴァントの宝具か……? 

 だとしたら、不味い。

 

「みんな、伏せて! モルガン、姫華、あと式部さん、それにキャスターは防護術式を! マシュは最後の防壁になって!」

 

 私は、みんな指示を出す。

 これでも、Bチームのリーダーにして、番外とはいえAチームの一員だ。

 私がしっかりしないと。

 

「「「分かりました!」」」

 

 私は、とりあえず無詠唱で簡易防御術式を展開する。

 他のみんなも、防御術式を展開出来るものは展開した。

 ……ただ、即席の防御魔術程度でサーヴァントの宝具を防げたら苦労しない。

 

 全ての魔術的防壁を食い破り、アーチャーのサーヴァントの宝具は私たちがいる教室に入ってきた……がマシュの盾でギリギリ着弾は防がれる。

 ……防御魔術で一応は威力を減らされてるはずなのに、マシュの盾への着弾により強い衝撃波を発生させ、一部の教室の壁が木端微塵に粉砕される。

 そして、先ほどまで壁だった瓦礫がいたるところに降り注ぐ。

 

「姫華ッ!」

 

 私は、姫華を抱き抱えて背を丸くする。

 この子を守るために。

 

「キャッ! ね、姉さん……!」

 

「大丈夫……大丈夫だから」

 

 クソッ! 本当なら、妹は安全なカルデア本部でオペレーターとして現地入りしたマスターたちを補佐する仕事についていたはずなのに……私を探してレイシフトに巻き込まれたせいで。

 

 腹立たしい。過去の自分が。

 たかだか自分の身体の体調不良程度で休んでいた私が。

 あの時、もし姫華の元に居たら……。

 

「な、なに!? なにが……何が! ま、また見えない! マシュちゃん! みんな無事か!? 」

 

「落ち着いてくださいマスター! 今度のはただの粉塵です!」

 

 ……どうやら、他のみんなも混乱しているらしい。もちろん、伊音君は除く。彼はどうせ大丈夫だろう。

 まだ、砂煙が舞っているから正確な状況は分からないけど。

 

 ……砂煙が落ち着いてようやく辺りの状態が見えるようになった。

 マシュの盾のおかげで、最悪の事態は防がれた。

 オルガマリーだけ衝撃波のせいか吹き飛ばされたが、式部さんがなんとかしてくれたようだ。

 

「あの野郎……円蔵山から撃ってきやがったか! 」

 

 というキャスター。

 なるほど、どうやらアーチャークラスのサーヴァントであってたらしい。

 

「てことは、今のがアーチャー!?」

 

「弓の威力じゃない!」

 

 驚く藤丸たちに、これが英霊の次元です。

 と、言うパーシヴァル。

 ……いつぞや、どこぞの当主と喧嘩(決闘)したことを思い出す。

 あの時並みに悲惨な状況だ。これが英霊の力ってヤツか。

 実際に見ると、資料で見たのより恐ろしい。

 

「総員退避! 市街地を迂回しながら進みます!」

 

 紫式部の下から這い出たオルガマリーが指示を飛ばす。

 

「恐らく待ち伏せされてるでしょうね。あと、特定地点を守っているらしいセイバーは除くとしても他のサーヴァントも警戒しないと。この攻撃はセイバー以外の残りのサーヴァント……ランサー、ライダー、アサシンにも見られているはずだから」

 

 私は、予測出来る範囲で現状を皆に伝える。

 

「何人いても殺すだけだ。さっさと行くぞ」

 

 んー、流石伊音君。

 めちゃくちゃ脳筋思考だ。

 

「そんなこと程度分かってます! ランサー! マシュ! 伊音! あなた達が先頭に立ちなさい! 澪! キャスターたちへの指揮はあなたに任せます!」

 

 さて、ここで私なりにアーチャーとの戦い方を考えてみよう。

 多分、実戦経験が豊富なのは私か伊音くんだろうからね。自分自身で考えるのも大事だ。

 

 まず、オルガマリーの言う退避案。

 ……うーん、私は若干反対だ。

 何故なら、アーチャーの補足可能範囲も攻撃能力も分からないから退避中に何処まで攻撃されるか分からないからだ。

 退避した先で、コッチが油断してる時に頭ぶち抜かれたら意味がない。

 

 次に……私たちのサーヴァントでここからアーチャーと交戦する案。

 無し、かなぁ。

 マシュと式部さんは論外だし、パーシヴァル卿は……宝具使えばワンチャン届くけどマスター(伊勢村くん)への負担が大きすぎる。モルガンは……まだちょっと信用しきれないし、能力も正直未知数なところもある。

 

 そして、最後の案は……ありかなぁ。最悪、私がくたばるだけ、姫華は死なない。

 

「了解っと。まったくオルガマリーも人使いが荒いなぁ。あぁ、そうだ。()()()()()()()()、提案が」

 

 あくまで、カルデア所長(上司)カルデアのマスター(部下)としてオルガマリーに話しかける。

 私の思いつく最後の案。

 そう、それは本来ならバカげた話ではある。

 だって……。

 

「何よ、こんな時に! ふざけたことだったら承知しないわよ!」

 

「いえいえ、単純な話ですよオルガマリー所長。……とりあえず、この学校の屋上に行きません?」

 

「……は? な、何言ってんのよあなた! 屋上になんて言ったらアーチャーの良い的よ?」

 

「そうですねぇ……ただ、逆に言えばこちらからアーチャーを狙撃出来るってことですよね」

 

 たかだか魔術師(人間風情)が……弓の英雄に喧嘩売ろうってんだから。

 

「「「……は?」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コン、コン、コン。

 そんな音を立てながら、私たちはアーチャーに見られないよう中腰で慎重に歩きながら屋上へと向かって行く。

 

「なぁ、白髪の嬢ちゃん」

 

「ん。どうしたの、キャスター?」

 

「考え直さねぇか? お前さんは、確かに現代の魔術師としてはかなり強い。だが……英霊相手にそれは通用しない」

 

「そうっすよ澪さん。伊音さんも今ガス欠ですし」

 

 ……ふーむ、キャスターに同意する人が多いな。

 まぁ、当たり前ではあるが。

 でも、なんとかなりそうな魔術を知ってるんだよね、私。

 特にあまり動かない戦闘態勢のアーチャークラスによく効くヤツを、ね。

 

「ねぇ、キャスター」

 

「あ? なんだ?」

 

「あなたが使っている魔術ってルーン魔術よね、それも原初の」

 

 道中で出会ったスケルトン相手にキャスターが使っていたのは、火のルーン魔術。

 そして、威力から考えるとあれは原初のルーン魔術だろう。

 

「おぉ、よく分かったな! その通りだ。で、それがどうした?」

 

「なら、北欧神話に出てくるヤドリギについても知ってるんじゃないかな?」

 

 と、私は少し微笑みながらそう言う。

 

「ヤドリギ? おい、嬢ちゃんまさか……!」

 

「み、ミオ! 貴女、神話の再現でもするつもり?」

 

「宿木? なんの?」

 

「ほう? ヤドリギか。ミスティルテインなんて持ってたっけ」

 

 上から順に、キャスター、オルガマリー、伊勢村君、伊音君の反応だ。

 個人差、かなり出てるね。

 

「いや、ミスティルテインは流石に持ってないよ。キャスターに分かりやすく例えとして出しただけで」

 

 そもそも、夢想家は北欧にほとんど縁がないし……それに異教とはいえ神を崇めてる私たちがそんな危なかっかしい神殺しのアイテムを持つわけには行けない。

 

「なんだ、ビックリさせんなよ……でも、なんだってヤドリギを例えにしたんだ?」

 

「私が今から使おうとしてる切り札は、似たような逸話を持つ槍の再現術式でね……神から遣わされた救世主の心臓を突き刺したって言う逸話なんだけど。パーシヴァルさんは知っている、というか持ってると思うんだけど」

 

「私が持っている……まさか、この槍のことですか⁈」

 

「……先代が開発した術式での劣化再現だけどね。これからアーチャーにぶち込む予定の魔術は、超長距離砲撃魔術偽典・決して癒えぬ呪いの槍(ロンギヌス)。コイツは、パーシヴァルの持ってる槍の一部を再現しつつちょっと改良した術式で、聖槍の呪いの側面を再現してるから、効果は決して癒えない傷をつけるって感じになってるの。ちなみに、治癒の効果は再現出来なかったらしいね」

 

 先代……というか初代夢想家当主は、あり得ないほど優秀な魔術師だった。

 ま、そもそも人間じゃなかったから能力が高いのは当然なんだけど。

 だが、初代様が何の種族かは未だにハッキリしていない。

 今のところ、妖精種であったという説が有力だが、中には天使ではないかという説もある。

 

「そんなとんでもないものを隠し持ってたなんてね……やっぱあなたの一族はデタラメね」

 

 オルガマリーが少々悔しそうにそう言う。

 西洋魔術師からしたら自分達の信仰基盤である宗教の聖典に出て来る聖槍が、混血とはいえ極東の魔術師によってコピーされていると知ったら死ぬほど悔しいだろう。

 ……なんか少しばかり申し訳ない。

 

「と、そんな事を言ってたら着いたね。姫華、貴女は視界を封じる影の結界を貼って。伊勢村君、姫華の結界が出来るまでの10秒くらいの間、姫華をマシュに防御してもらってもいい?」

 

「分かりました、姉さん」

 

 うん、もうすっかり元気だね。

 これなら、姫華もきちんと魔術を使えるだろう。

 

「委細承知。マシュちゃん。気合い入れて行こうぜ」

 

「はい! マスター! マシュ・キリエライト、気合入れて行きます!」

 

 よし、伊勢村君とマシュも大丈夫だね。

 あとは……っと。

 

「ありがとう。じゃあ、モルガンと式部さんそれとキャスターは、マシュに身体強化魔術強をかけてあげて。伊音君は……さっきのバーサーカー戦で疲れてるだろうし、ここで待機でいいかな? 」

 

「はいはい、頑張ってきて〜」

 

 伊音君はやる気のなさそうに手を振る。

 ……もしかして、彼まだ魔力残ってる?

 まぁ、いいや。

 

「他の人たちは、伊音君と同じでここに待機。オルガマリー所長、藤丸たちの事頼みましたよ」

 

「……分かってる。魔術世界に無理矢理飛び込ませた責任もあるしね、任せなさい」

 

「「所長が……デレた」」

 

「あなた達ねぇ……!」

 

 ……藤丸'sが茶化さなければいい雰囲気だったのに。

 まぁ、この様子なら問題ないだろう。

 オルガマリーだってアニムスフィア家の当主だ。逃げる時間を稼ぐぐらいは出来るだろう。

 

「じゃ、行くよ! 」

 

 私の掛け声を合図に、皆がそれぞれ行動を開始する。

 

 まず、マシュと姫華が真っ先に屋上へと飛び出して、中心部に行く。

 すると、アーチャーは素早く反応してマシュと姫華へと矢を飛ばす。

 しかし……。

 

「やあぁぁっ!」

 

 複数のキャスタークラスのサーヴァントから強化魔術をかけられて、一時的にステータスが急増しているマシュはそれらを力強く盾を振って弾き飛ばす。

 そして、後続の矢も同様に弾き飛ばしていく。

 

 ……うん、問題ないね。

 流石、シールダーのクラス。

 

 一方、頼れるディフェンダーであるマシュの真後ろにいる姫華は、しゃがみ込んで魔術を使って地面に青白く発光する文字を刻んでいる。

 

 アレは唯一神を冒涜し、大悪魔を賛美する禁句。

 聖堂教会や魔術協会では禁忌に指定されている黒魔術。

 まぁ、私たち夢想家が信仰しているのは唯一神じゃないから……アレを使うのはギリギリセーフ? 

 

 そして、文字を書き終えた姫華は、さも神に祈るように両手を組んで目を瞑りながら、魔術を発動させる最後の一言を口にする。

 

「──ーここに、全てを無に帰す不浄の灯火をもたらしたまえ」

 

 その一言を言い終わった瞬間、この屋上一帯がドーム状の影に覆われる。

 この影の効果は、相手から影の中が見えなくなる(なお、自分も外を見ることは出来ない)のと影への攻撃を全て吸収してくれるというものだ。

 ちなみに、展開可能時間は約20秒。

 

 ま、大魔術の展開準備時間を稼ぐには最適ってわけ。

 

 じゃ、私も行こうか。

 私は、屋上の中央に陣取る。

 

「姫華、マシュ、ありがとう。もう下がっていいよ」

 

「はい、分かりました」

 

「了解です……あの、澪さん」

 

「うん? どうしたのマシュ? 」

 

「澪さん、視界を封じられてますけど……敵サーヴァントに当てられるのでしょうか?」

 

「あぁ、大丈夫だよ。さっきまで矢が飛んできてた角度からアーチャーの居場所は分かってるし、ちゃんと覚えた」

 

「そう、ですか」

 

 姫華とマシュは、室内へと戻っていった。

 屋上に残るのは私だけ。

 もう、何も気にする事はない。

 

「はっ、最高ね」

 

 そう呟くと右手を伸ばし、指で銃の形を作る。

 

 深呼吸をする。

 

 コンディションは、問題なし。

 

 さぁ、詠唱開始。

 

「ここに、私は宣言する。私は、救世主の心臓を貫くもの」

 

 銃の先に大きな、赤黒い魔法陣が形成される。

 

「私は、人を呪うもの」

 

 先ほどの魔法陣の前に更に赤黒い魔法陣が形成される。

 

「私は、敵を確実に滅ぼすもの。……詠唱破棄」

 

 先ほどの魔法陣の前に更に赤黒い魔法陣が2つ形成される。

 

「故に……私は、立ち塞がる敵を確実に排除することをここに制約する」

 

 最後の赤黒い魔法陣が形成される。

 派手にぶっ放すとしましょうか! 

 魔法陣に莫大な魔力が集まり、解放されることを今か今かと待っている。

 

「……聖槍、再現。敵を貫け! 偽典・決して癒えぬ呪いの槍(ロンギヌス)!!」

 

 そう叫ぶと、ちょうど影が解除される。

 その数秒後、勢いよく赤黒い光線が魔法陣から射出され、それは円蔵山に着弾し、頂上ごと消し飛ばす。

 

「……チッ、耐えたか」

 

 だが、アーチャーはなんらかの手段により耐えたらしい。殺した手応えがない。それに。

 

《マスター、アーチャーは未だ生存しています。ただ、致命傷は負っています》

 

 モルガンもこう言ってるしね。間違いない。

 まぁただ、致命傷は負わせたらしい。

 なら、アーチャーの攻撃は止まるだろうからとりあえず最低限の任務目標はクリアだ。

 

「とりあえずは……及第点ってとこかねぇ」

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