ラブライブ!サンシャイン!! 3期   作:黒死牟

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今回もよろしくお願い致します。


第3話 二筋の涙

結論から言うと

私達の新しい活動場所は、浦の星の校庭に決まった

本当は屋上を使いたかったが、管理の関係で中には入れないので、校庭なら好きに使っても大丈夫ということだった

 

千歌ちゃんが急に鞠莉ちゃんに電話をかけ始めるもんだからびっくりだ

鞠莉ちゃんは今、イタリアに留学中だ

 

ちなみに、イタリアと日本の時差は8時間あるらしい

今ちょうど午後1時を回ったところだから、向こうは午前5時…

よく電話に出てくれたと思う

 

しかも、電話越しにだが思いっきり"シャイニー"というお決まりの台詞も飛んでくるもんだからさらにびっくりだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後

 

千歌「今日は作戦会議をします!」

 

唐突に始まる

もう慣れっこだが、千歌のこういうみんなを引っ張る力がこれまで何度も危機を救ってきた

 

 

今、Aqoursのメンバーと月をいれた7人で、千歌ちゃんの部屋にて作戦会議をしているところだ

 

議題は

千歌「ずばり!屋上での練習時間を勝ち取るためには!」

 

はいっ!と元気な声でルビィに白羽の矢を向ける

ルビィはいきなりの使命にたじろぎ、ピギィ!と声を漏らした

 

ルビィ「え、えーと、、やっぱり話し合いかな?」

花丸「練習時間の問題を解決すれば、それで解決ずら」

 

善子「くっくっく……このヨハネの力があれば、魔力で他の部活なんて、」

善子の話を遮りながら花丸が口を開く

花丸「たしか、吹奏楽部に善子ちゃんの知り合いがいたずらね?」

 

善子「やっぱり、話し合いは大切ね、、」

例のごとくたじたじである

 

梨子「ダンス部以外の部活動はなんて言ってるんだろうね?」

 

月「他の部活動は問題ないみたいだよ」

 

曜「じゃあ、なんでダンス部だけ?」

メンバー全員が興味に満ちた目で月を見る

その目力に、月は若干息を飲んだ

 

月「ダンス部というか、光莉だね、、彼女、人一倍責任感が強いんだ」

ゆっくりと目を閉じ、何かを思い出すように天井を見上げた

 

月「何にでも一生懸命、責任感も強い、、だから他のダンス部員の為にも、あんな態度を取ったのかな…」

 

月は何かを拭い取るように、制服の袖で目を擦った

摩擦によって目尻が赤くなっている

 

ルビィ「でも、月ちゃんだけじゃなくて、私たちも頑張らないといけないね、!」

 

善子「そうね、私たちの力を見せつけてやりましょう…!」

お決まりのポーズを取り、クックックと微笑む

 

花丸「同意、ずら!」

 

結果、光莉との話し合いの席を設け、そこで決着をつけるということになった

 

しかし、まともに話を聞いてくれるかは、甚だ不安である

そのためにも、Aqoursの活動の意義をしっかりと伝える必要がある

行き着く先は、練習という小さな事の積み重ねなのだ

 

0から1へ、1からその先へ

 

この思いを胸に、6人となったAqoursは新たな試練に向けて歩を進めていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前に広がる水平線

どこまで続いているのだろうか

 

誰かが地球は丸いと言った時、それを信じなかった人の考えがわかる気がする

彼方まで続く海は、まるで終わりの見えないマラソンの道のように思えた

 

?「……ー!」

 

これまで、ラブライブという大きな目標に向かって走り続けてきた

その結果として、浦の星女学院の名をラブライブの歴史に刻んだ

 

新しい場所で、みんなと楽しく活動する未来しか見えていなかった

一緒に学校に行って、Aqoursの活動をして、帰りは仲見世に寄り道してお茶をして、、、

 

?「…ーん!」

 

理想と現実は違う

どれだけ近づけるかはその人次第、

 

でも、前を向いて進むしかないんだ

今までもそうやって頑張ってきたんだから

 

 

0から1へ、1からその先へ…

 

もっともっと頑張らなくちゃ

私がしっかりしないと、

 

梨子「千歌ちゃーん!」

 

千歌「はぇ?」

 

気づくと、私は海に腰の位置まで浸かっていた

まだ4月だから、じんわりと冷たい海水が身体に染み込んでくる

 

私の家は目の前が海だ

いつも悩み事があるとつい砂浜へ来てしまう

最近、来る回数が増えたかな

 

 

数分前

梨子は千歌の家から戻ると、自室へ入り、ベットに深く腰掛けた

 

梨子「はぁ…」

(千歌ちゃん、元気に振舞ってはいたけれど…)

 

彼女は昔から、悩み事を心の奥底へ押し込んでしまう所がある

1番印象に残っているのは、東京へイベントに呼ばれた時だ

 

あの時、私たちは誰からの応援も受け取ることが出来なかった

あの時の「0」という文字は、今でも鮮明に覚えている

 

それと、千歌ちゃんの顔

 

自分だって悔しい、悲しいはずなのに無理やり笑顔を作って…元気なふりをして…

 

ふと窓際に目を向ける

砂浜に向かって波が広がっている

窓を開けると潮風の匂いが鼻腔をつき、私の心を少しだけ穏やかにしてくれた

 

いつもと変わらない景色、、、

(ん?誰か砂浜にいる)

あの髪色は千歌ちゃんだ

 

千歌ちゃんは悩み事があると、よく海を見に出てくる

決まって、悲しげな顔を水平線に向ける姿が脳裏に焼き付いている

 

明るく振舞ってはいたけれど、やっぱり悔しいよね

私も悔しいよ

 

その時、千歌ちゃんはおもむろに歩を進めていき、そのまま海の中へ入っていく

膝まで浸かることはよくあるが、今日に限っては歩を止めることなく、どんどん海水に浸かっていく

 

梨子「嘘、まだ4月だよ…?」

いつか千歌ちゃんが呟いた言葉が口に出た

 

考えるより先に体が動く

私は部屋を飛び出し、砂浜へ急いだ

 

この時間帯は満潮だ

あまり深いところにいくと危険なのは知っている

 

梨子「千歌ちゃん!」

聞こえていないようだ

 

歩は止まらず、更に海水に浸かっていく

 

梨子「千歌ちゃーーん!」

まだ止まらない

 

もう腰のところまで海水が来ている

 

梨子「千歌ちゃーん!!」

ようやく振り向いてくれた

その顔はポカンとしていて、何も考えていない雰囲気を醸し出していた

 

 

私はバシャバシャと海水をかき分け、千歌ちゃんの元へ急ぐ

彼女はまだポカンとしたままだ

 

追いつくと、手を握り締める

体温が下がっていて思った以上に冷たかった

 

梨子「はぁはぁ、なにしてるの!?」

 

千歌「…ごめんね」

 

唐突な言葉に、今度は私が口をぽかんと開けてしまった

千歌は梨子の両手を握り締め、優しくほほ笑みかける

 

千歌「私、もっと頑張るから、頑張って頑張って、、みんなに認めて貰えるように絶対なるから、だから、、大丈夫」

 

いつもと変わらない笑顔

ただ1つ違うのは、彼女の瞳から一筋の涙が溢れている事だ

 

千歌の涙は次第に大粒の涙に変わる

自分で泣いているのを自覚していないのか、出てくる涙を見て不思議そうな顔をしている

 

千歌「あれ、あれ?私…なんで、、」

 

梨子「千歌ちゃん、大丈夫?」

私は千歌ちゃんの頬から涙を拭いながら言った

目尻と頬は少し赤くなっている

 

千歌「大丈夫だよ!全然!」

言い終わる前に、梨子は千歌の身体を抱き寄せる

彼女の瞳にも一筋の涙があった

 

梨子「嘘、なんで強がるの?泣いていいんだよ、悲しい時に泣いて何が悪いの?」

 

梨子の言葉が心に響いたのか、千歌は声を上げて泣き始めた

千歌「悔しい、悔しい、、悔しいよ…!」

 

梨子「千歌ちゃんのバカ、、なんでも1人で背負い込まないでって、約束したじゃん…」

 

明るさを増しながら水平線に沈んでいく夕日

大気から徐々に暖かさを奪っていく

冷たさを増す海水に、2人の涙が吸い込まれていった

 

 

精静高校 屋上

夕日が沈みかけ、真っ赤に染った光が屋上を照らす

ラジカセからリズムのよいヒップホップ調の曲が流れ、ダンス部員達が切れ味よく踊る

流れ出た汗が、コンクリート造りの地面に吸い込まれる

 

ダンス部は全部で10人在籍している

その実力は全国大会を3連覇する程だ

 

その中で、1人だけ腕組みをしながら前で練習を真剣に見つめる生徒がいた

ダンス部 部長 夢島光莉だ

 

彼女の目線は鋭く、軽やかに踊る部員達を隅から隅までチェックしている

 

曲が終わると、光莉はパンパンと手を叩き、終了の合図を送る

その顔には満足した要素など一欠片もなく、どちらかというと呆れたような表情だ

 

光莉「全っっつ然ダメ、来週大会なの分かってる?動きが鈍くてキレもない、ダイナミック差も欠けてる、こんなんじゃ予選も突破出来ない」

 

肩で息をするダンス部員達は、悲観な顔つきで光莉を見上げる

その中の1人が、震える唇を噛み締めながら口を開いた

 

「夢島部長…なぜ、、そんなに辛い言葉ばかりかけるのですか…?私達は、、純粋にダンスを楽しむために活動しているんですよね、、?」

 

その言葉を聞くや否や、光莉はその生徒を睨みつける

あまりにも冷たい視線に身震いしたほどだ

 

光莉「辛い言葉?そんなのあなた達が真面目に踊らないからでしょ?このくらいで根を上げてる場合じゃないの、わかるわよね?」

 

「そ、そんな、!私達は一生懸命やってます、、!」

 

光莉は助けを求めるような部員達の視線を一瞥すると、軽くため息をついた

光莉「そんな気持ち、微塵も感じられない、私達は勝たなきゃいけないの!この高校の名前に掛けて…そのためなら、、、」

 

我を忘れて怒鳴る光莉、その言葉を聞いた部員の1人が肩を落とし、光莉に一礼すると静かにその場所から去っていった

その姿に、ダンス部を辞める意思が固まっていることは誰の目にも理解できた

 

そして、1人、また1人と部員達は屋上から立ち去る

 

その姿を、光莉は毅然とした態度で見送る

「夢島部長、、私達は…勝つためだけに活動していたのですか?失望しました」

最後の1人が屋上を後にし、ついに光莉が1人残った

 

光莉「なんで、なんでなんでなんで、、!」

(私は勝たなきゃならない…勝たないといけないのに、、!)

 

光莉はフェンスを掴み、頭を打ち付ける

ガシャンという耳障りな音が周囲に響き、冷たくなっていく空気に吸い込まれていく

 

何回頭を打ち付けただろうか

痛みを感じない

それよりも、心が締め付けられるように痛い

 

光莉「私は…やっぱりだめなのかな…あの人のようには、、なれないのかな……」

 

光莉はフェンスに項垂れ、その場に座り込む

彼女の瞳からは、幾筋もの涙が溢れていた

 

涙は地面に落ちると、暗く染った街の色を取り込み、更に暗い色に色付いていった

 

to be continued…




回覧ありがとうございました。
次回もよろしくお願い致します。
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