ラブライブ!サンシャイン!! 3期   作:黒死牟

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今回もよろしくお願い致します。


第4話 思い出

4年前 夏

 

透き通るように晴れ渡る空

その中央には真っ赤な太陽が煌々と輝いている

 

蝉の鳴き声がけたましく鳴り響く

昔の俳人が、岩に染入ると表現したのが今ではよく分かる気がした

 

私、夢島光莉はバス停の前で待ち合わせをしている

日陰には入っているが、ジリジリと照りつける日差しが地面に差し込み、輻射熱となって自分の身体に染み込むのを感じる

 

光莉「あっっっつ〜〜い!」

思わず心の声が漏れる

 

その時、待ち合わせをしていた人物が到着した

その人物は両手で光莉の目を隠すと、お決まりのように

?「だぁ〜れだ?」

と尋ねる

 

この明るい声、無邪気な遊び心

間違いなく私の幼馴染だと確信した

 

光莉「月!」

私は目隠しを振り払いながら後ろを振り向く

そこには私の期待する人物

 

月「せいかーい!」

ニシシと微笑みながらこちらを覗き込む

愛嬌の溢れる表情に、私は一瞬見とれてしまった

 

月「待った?」

 

光莉「ぜんぜん!今来た所だよ」

 

月は光莉の身体をまじまじと見つめる

白いワンピースにじんわりと汗が滲み、額にも数滴の汗

おまけに少し顔が紅潮していた

 

月(また気を使って…きっと30分は待ってたかな)

約束の時間には遅れていない

光莉はかなりちゃんとした性格なのだ

これも、彼女の良心の現れであろう

 

長い付き合いだ

ここで待った待ってないの談義を始めるとそれだけで一日が終わってしまう

 

私は心の中で光莉に謝り、償いのつもりでとびっきりの笑顔を向けた

 

彼女の手を引き、歩き出す

光莉は「痛いってば」と言っているが、表情は満更でもなさそうだ

 

月「ところで、今日はどこに行くんだっけ?」

光莉は逆をつかれたように躓いた

 

光莉「分かってないのに引っ張ったの?」

 

月「え〜っと、、制服ショップ巡りだっけ…?」

 

光莉「それは先週と先々週やったじゃん!」

 

月は部が悪そうに舌を出し、申し訳なさそうな顔をした

月「ごめんごめん、で、どこだっけ?」

 

光莉「月、私ね、最近興味が出てきたものがあるんだ!」

 

光莉はそう言うと徐にある雑誌を取り出す

その雑誌のあるページを開き、目を輝かせながらこちらへ向ける

 

光莉「これだよ、これ!……………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月「光莉…!」

気がつくと、自分のベットの上だった

 

心臓の鼓動は早く、額と髪の毛が汗でじんわりと濡れている

肩で息をして呼吸を落ち着かせる

時計を確認すると、午前4時だった

 

月「あんな時もあったんだ、私と光莉」

ずっと続くと思っていた日常

しかし、現実は上手くいかないもの

 

今の私は、何か得体の知れないものに身体を包まれているような感覚がある

その何かは私の体温を奪い、心にごわついたものをまとまり付けてくる

 

それも全て、あの日から

 

すっと目を瞑る

思い出したくない、振り返りたくないことは誰にでもあるだろう

でも、それに対して向き合わなければ心のわだかまりは消えない

私にまとわりついている感情にも、いつか真正面から対峙しなければならない時がくる

 

あの時の光莉に戻って欲しい

あの時の笑顔が見たい

あの時の私達に帰りたい

 

あの時の……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後 浦の星女学院 校庭

青々と茂る山、ふと鼻腔をつく潮風の香り

眼下に広がるみかん畑

 

私達は懐かしい思いを感じながらストレッチをしている

 

曜「でも、やっぱり不思議な感覚だね」

 

梨子「浦女で練習することが?」

曜は首を縦に振る

曜「うん、それに、校庭って普段ソフトボール部とかサッカー部が使ってたし、こんなに広々と使えるのって初めてかも」

 

善子「でも、体育の時だってこんな感じだったわよ?」

ルビィ「クラスの人数少なかったもんね」

 

千歌「志満姉や美渡姉が通ってた時は普通に大人数だったのになー」

 

花丸「時の流れ…ってやつずらね?」

花丸の掛詞に周囲から笑いが漏れた

 

その時、走りながら校門を潜ってくる人物に気づく

精静高校の体育ジャージに身を包み、右手にはラジカセ、左手にはスポーツドリンクの入ったバスケットを持っている

 

その人物は小走りでこちらに向かってくる

 

月「ごめーーん!生徒会の会議が長引いちゃって、、」

荷物を置き、申し訳なさそうに手を合わせる

 

千歌「月ちゃんも大変だね、、辛かったら私達のマネージャーお休みしてもいいんだよ?」

 

月「ぜんぜん!僕はAqoursの1ファンだから、近くで練習見学できるのはむしろご褒美だよ」

そう言うと懐からビデオカメラを取り出し、決めポーズをとる

 

千歌「そういえば、今日光莉さん休みだったよね?月ちゃん何か知ってる?」

 

梨子「風邪って言ってなかった?」

 

月「実は、僕もよくわからないんだ」

首を傾げ、両手を腰に当てて考える姿勢をとる

 

善子「わからない?クラスメイトなのに?」

 

月「確かに先生は風邪だって言ってたけど……」

 

善子「なによ、勿体ぶらないで教えて?」

 

月は腕を後ろに組み、少し気難しい顔になりながらも口を開いた

月「実はね、、ここに来る前バスに乗るでしょ?その時、駅の近くで光莉を見かけたんだ」

 

曜「昼から元気になって、出かけたとか?」

月は首を横に振る

 

月「ううん、それはないと思うな、、光莉のお母さん、結構厳しいから、体調が悪かったら外には出さないはずだよ」

 

ルビィ「じゃあ、何してたのかな?」

 

月「わからない、でも、、」

 

千歌「でも?」

 

月「僕には、、何かを決心した表情に見えた…かな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1時間前

 

部屋のカーテンを締め切る

部屋全体は薄暗く、隙間から覗く太陽光が私の肌を焼き付けた

 

夢島光莉は部屋の隅で丸くなり、自分の膝に顔を埋めている

 

今日、私は初めて仮病で学校を休んだ

けど、不思議と罪悪感は感じない

 

なんでだろう

 

そんな感情も、私からは無くなっちゃったのかな

 

私には、憧れの人がいる

その人はいつも笑顔、みんなから信頼されていて、生徒会長にもなった

私の大切な幼馴染で親友、渡辺月だ

 

私達は、小さい頃からよく遊んでいた

海に行ったり、子どもながらにオシャレを楽しんだり

 

1度、お母さんの化粧品を勝手に使って、2人で怒られたっけ

そんな思い出も、今となってはただの記憶に過ぎない

 

彼女は誰からも信頼されている

私は、、昔から負けず嫌いだ

そのせいで、1番大切なものを失った…

 

 

先日の後輩の言葉が脳裏に蘇る

 

「私達は…勝つためだけに活動していたのですか?失望しました」

 

その通り、その通りなんだよ

 

なぜ私は勝ちにこだわってしまうんだろう?

勝つことって、いけないことなのかな?

周りのみんなを、嫌な気持ちにさせてしまうのかな?

 

私は負けず嫌いではあるが、勝ちにこだわり始めたのは高校3年生になってからだ

引退する先輩に言われた言葉

 

「あなたなら大丈夫、私達以上の成績を残せる」

 

それから、今まで以上に練習に打ち込んだ

当然、部員達に負担がかかっていたこともわかっていた

 

わかっていたのに……

私は、、最低

リーダーの資格なんてない

 

月ならどうしてた?

もっと前向きな言葉をかけられた?

 

月みたいに、みんなから信頼される存在になりたかった

私は彼女を尊敬していた、、

けど、その裏で本当は妬んでたんだと思う

 

私は月みたいにはなれない

そんなにできた人間じゃない

 

ふと机の下に目がいった

そこには、埃を被ったアルバムが何冊か杜撰に置かれてある

 

徐に立ち上がり、アルバムを手に取る

私と月の子どもの頃の写真だ

 

思い出が詰まった大切なアルバム

でも、私は胸を張って彼女の隣には……もう立てない

 

彼女の幼馴染なんて言えた義理じゃない

その時、ある写真に目が止まる

 

中学生の時かな?

私は普段絶対着ないような、キラキラした衣装に身を包み、月と並んで立っている

 

まるで、アイドルみたいに

 

この頃、あるグループの影響で、スクールアイドルは空前のブームになっていた

 

前年、ラブライブに優勝したグループがアメリカでライブを大成功させたこともあり、初めてドーム大会が決定した旨が記事になっていたことを思い出す

 

 

私の脳裏に、当時の記憶が鮮明に浮かび上がる

 

私は待ち合わせをしている時、月にある雑誌を見せた

光莉「これだよ、これ!スクールアイドル!」

自慢げににっこりと微笑む

 

月「スクール…アイドル?」

 

光莉「そう!学校でアイドル活動をするんだ!」

月は新しい単語に若干戸惑うが、直ぐに笑顔に戻り、目をキラキラと輝かせる

 

月「いいじゃん!光莉ダンス上手だし!あ、でも歌は練習が必要だね」

 

光莉「やっぱり?ちくしょ〜〜、カラオケ70点台じゃやっぱり厳しいよね」

 

月「じゃあ、今日は2人でカラオケバトルだ!」

 

光莉「お、いいね〜!絶対負けないから!」

 

月「望むところだ!」

2人の少女は楽しそうに街中へ消えていく

その背中は、未来への希望と期待で満ち溢れていた

 

 

しかし

現実はそう上手くはいかない

 

「あなたがアイドル?笑わせないで」

 

「人前でまともに笑顔も作れないのに?」

 

「普通にダンス上手いんだからそっちで頑張ればいいじゃん」

 

「顔もスタイルもいいんだから、モデルの方が向いてるよ」

 

高校1年の春、私の周りにいた人はそんな言葉を私にかけた

そう、やっぱり私はアイドルなんて向いてない

できっこない、もう考えたくない…!

 

私は月に全てを話した

みんなから色々なことを言われたこと

スクールアイドルをするかどうか、悩んでいること

 

月「そんな…なんでそんなことを……ひどい」

 

光莉「ねぇ、月…私、そんなに笑顔作れない?ぶっきらぼうに見える?」

私は涙ながらに訴える

 

月「そんなことないよ、確かに少しつっけんどんな所はあるけど、でも、私は光莉の笑顔、大好きだよ」

 

光莉「そう…かな、?私、何を信じたらいいかわからない…」

 

月「でも、ダンスの腕前は一流だから、たしかにダンス部で頑張ればいい成績を残せるかも」

 

月なりに、励まそうと思ったんだろう

そんなの、私もわかってる

でも、、私の壊れかけた心を粉砕するには十分だった

 

光莉「本気で言ってる…?部活って、楽しく活動するものじゃないの?成績が残ればいいの?」

 

月「いや、そうじゃくて…」

私は月の言葉を遮る

光莉「月も他のみんなと同じなの?成績が全てなの?私、私、、もう誰も信じられない…!」

 

私は呼び止める月の手を振り払う

宛もなく走った

 

後ろを振り返る

月はいない

 

その時、私は悟った

この世で1番大切なものを、自分で壊してしまった

取り返しはつかない

 

誰もいない空間が、私の心の虚無を物語っていた

 

 

 

 

 

私はアルバムを閉じた

もう見たくないと思った

 

浦の星と統合になると聞いて、少し喜んでいた自分がいた

本当は、間近で練習を見学したかった

アドバイスも聞きたかった

 

私は、また壊した

人との繋がりを

自分の意に反してまで

 

自分の最低さにどうしようもなく項垂れる

 

光莉はアルバムを持ったまま立ち上がり、ゴミ箱の前に立つ

手が震える

今自分が持っているものが何倍にも重く感じた

 

手放さなきゃ

これを見返すと、帰りたくなる

あの頃、楽しかったあの頃に

でも、もう二度と戻ることは無い

 

ズドン、という鈍い音がして重いものが落ちる音がする

ビニールのゴミ箱がガサッと耳障りな音を立てた

 

私は決心した

彼女の傍から離れなければ

もう私に、彼女の近くに存在する権利はない

 

部屋を出る、行先は決まっていた

 

to be continued.




回覧ありがとうございました。
次回もよろしくお願いします。
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