このすば ハード?モード 番外編   作:ひなたさん

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このファン時空は時系列が謎なので、このストーリーも謎時空でお送りします。


ファンタスティックデイズ いち

「ああ、あんなこともあったな。まるで転生してきたのが昨日のことのようだ」

 

「カズマ、何を笑ってるんですか?」

 

「ちょっと昔を思い出してたんだ。アクアと出会った時のことをな……」

 

「思い出を懐かしむのいいことだが、今はやるべきではないと思うぞ?」

 

「お前らがどう動くのか待ってる俺が言うのもなんだけど、俺もそう思う」

 

 カズマ達御一行のやり取りを眺めていたが、いい加減口を出したくなった。

 

「ヒカルもそう言うけど、今こそ懐かしむべき時だろ? 大事なものは失って初めてわかるん……」

 

 

「ちょっと待ってよ!」

 

 

 カズマ達御一行と言ったが、そのやり取りに参加してなかった一人がようやく口を挟んできた。

 

「まだ失ってないでしょ!? まだ生きてるし、いい加減助けて欲しいんですけど!」

 

 邪神こと駄女神。

 いや、女神アクアが必死に声を掛けてくる。

 現状、とても女神とは思えない姿だが。

 

「生暖かいの! ぬるぬるなの! このままじゃ飲み込まれちゃうのに何でみんなのんびりしてるの!?」

 

 アクアが海で溺れるかのようにジャイアントトードの口に飲み込まれそうになったり這い出たりを繰り返していた。

 

「アクア、大丈夫だ。お前がいなくても俺は強く生きていくよ」

 

「あきらめないでよ! もっと頑張ってよカズマさーん! ていうか! あんたも今日手伝いに来たなら早く助けなさいよ!」

 

 アクアが非難めいた目で俺を見ながらそう言ってくる。

 

「俺は結構倒したし、この三人があまりにも落ち着いてるから何かの意味があるのかなって」

 

「意味があるわけないでしょ! このアンポンタン!」

 

 アンポンタンにアンポンタンって言われた。

 

「そもそもアクアの自業自得じゃないですか。アクアが調子に乗って魔法でモンスターを誘き寄せるから今の状況になったのです」

 

「だってだって! 一ヶ所に集めてめぐみんに片付けてもらえばすぐ終わるじゃないのよ!」

 

「カエルのぬるぬる塗れだなんて、アクアだけずるいぞ!」

 

「いくらでも変わってあげるから、早く助けあああああああ! カジュマさあああああん!!」

 

 もがくのが限界になったアクアが今まで以上に必死に叫び、カズマがため息をつきながら『ちゅんちゅん丸』を引き抜いた。

 

 

 

 

 カズマ達が莫大な借金を返し終わったかと思えば、またもや借金を背負った。

 夏休みの最終日にならないと宿題をやる気にならない学生みたいに追い込まれないと生きていけないのか、それともそういう運命なのかは知らないが、カズマ達はとある事件でまた借金に追われる生活に戻った。

 今回のクエストの手伝いをしたのはカズマにまともな前衛が欲しいと頼み込まれたからだ。

 最近は俺達もヒマだったり、バラバラに過ごしたりするようになっていたし、たまには転生者の先輩らしいことをしておくのも悪くない。

 そう思った俺はこうして大量発生したジャイアントトードの討伐クエストに同行したわけだ。

 手伝いはするけど、カズマ達の為にもならないので全部倒したりとか、先程アクアが飲み込まれかけてても率先して助けるとかはしないようにした。

 助けなかったもう一つの理由はカズマ達三人が妙に落ち着いていたからでもあるが。

 

 

 アクアから助けなかったことに関しての文句を言われながら帰ったその日の約一週間後。

 

『三人組踊り子ユニット《アクセルハーツ》です!』

 

 アクセルの街にある小劇場の煌びやかな舞台で三人組の女の子達がポーズを取りながら高らかに名乗る。

 

「では早速一曲目聞いてください! 『ブライトショー』!」

 

 この世界では聞きなれない軽快な音楽が流れ始めて舞台の三人が踊りながら歌い始める。

 踊り子というのは日本で言うアイドルみたいなものなのだろう。

 観客達だけでなく、ヒナやゆんゆん、それにトリスターノまで舞台にいる三人に目を奪われていた。

 カズマ達がこの『アクセルハーツ』と出会ったのがきっかけで俺達も舞台にお呼ばれした。

 

 

 この三人こそがある意味カズマ達がまた借金を背負う原因であり、この街だけでなく国中を巻き込んだ大騒動の中心になることは、今は誰も知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

 『アクセルハーツ』はカズマがプロデュースするようになってから有名になった。

 カズマがそれで金を稼いだかと思ったが、更に上乗せで借金を背負ったことは……まあ、いいとして『アクセルハーツ』の人気は高い。

 アクセルハーツのメンバーと触れ合える数少ない機会である握手会に参加する為に必要な握手券を巡って喧嘩が起こるのも珍しくないほどだった。

 そしてもちろん俺達のパーティーメンバーもハマっていた。

 俺やトリスターノはそこまででもないが、ゆんゆんやヒナはイベントがある時は毎回参加するぐらいのファンだった。

 

「〜♪ 〜〜♪」

 

 朝食後の皿洗いの時のゆんゆんの鼻歌はだいたいアクセルハーツの曲だし、ヒナが陰でアクセルハーツの真似をしているのかは正直よくわからないがロボットダンスをしているのはよく見る光景だった。

 

「さあ、クエストに行こう!」

 

「そうね! 行きましょう!」

 

「……」

「……」

 

 ヒナとゆんゆんが必死に俺達にクエストに誘ってきている。

 トリスターノは苦笑し、俺は当然呆れていた。

 

「お前ら小遣い無くなっただろ」

 

「「うっ……」」

 

「使い過ぎるなって何回も言っただろ」

 

「だって新曲が……」

「だって新衣装が……」

 

 いつもとは立場が逆転しているせいで変な感覚がする。

 この二人はアクセルハーツの大ファンで毎回毎回イベントやらに参加するせいですぐに小遣いが無くなり、その小遣いの為にもクエストに誘ってきたのだろう。

 俺達の共有財産を管理している二人が俺達の金に手を出さないだけいいかもしれないが、それはともかくとして。

 

「クエストは一緒に行くけど、次のイベントはやめときなさい」

 

「「ええっ!?」」

 

「ええっ、じゃない。お前らはもうちょっとこう我慢とかを覚えなさい」

 

 二人が猛抗議してくるが、聞く気はない。

 こいつらがもし日本に生まれてたらアイドルの追っかけとかやってたかもしれない。

 

「うーん、リーダーがこんな事を言うなんて不思議な光景ですね。明日はカタナでも降るかもしれません」

 

「やかましい」

 

 二人が俺に掴みかかってくるのを頭に手を置いて二人を止めつつ、トリスターノにそう言った。

 俺だって変に感じてるさ。

 

「二人がこんなに熱中してるんですし、少しぐらいいいんじゃないですか?」

 

「そうだよ、流石トリタン!」

 

「おいおい、お前もそっち側か? もう家の中もアクセルハーツに侵食されて来てるんだぞ?」

 

「あー……それは……」

 

 マグカップに皿にTシャツにタオル、その他にもいろいろとアクセルハーツのプロデューサーであるカズマが考案した商品が家の何処かを見渡したら視界に入るような状態だ。

 

「お金は使わないと経済は回らないのよ?」

 

「それ俺のセリフだろ。ここぞとばかりに使うな」

 

 お前らが使った金はカズマの借金返済に使われるんだよ馬鹿野郎。

 

「そうだよ! ヒカルもそう言ってたじゃん! それにヒカルみたいにクレクレ言ってないでしょ!」

 

「まあ、確かにちゃんとクエストで得たお金を使おうとしてますね」

 

 俺が言い返してやろうとしていたら、トリスターノがそう返した。

 トリスターノのセリフにウンウンと頷いている二人。

 まさかトリスターノまでイベントに行きたいんじゃないだろうな。

 

「とにかくお前らはイベントに行き過ぎだし、お金も使いすぎだ。金を稼げるどうこうの問題じゃない。アクセルハーツのイベントに行くのはいいけど、二回に一回ぐらいにしなさい」

 

 不満はあるが、俺の言う通りだということも理解してるのか二人とも膨れっ面になるだけで何も言い返して来なくなった。

 まったく、しょうがないな。

 

「よし、じゃあクエストに行くか」

 

「……もういいよ。次のイベントには行けないんだし……」

 

 膨れっ面のヒナが拗ねてそう言ってきた。

 

「別にそのまた次のイベントで使えばいいだろうが。なんだ? 行かないのか?」

 

「ヒカルの言う通りよ。色々考え直すことにして行かないことにするわ……」

 

 ゆんゆんも肩を落として落ち込みムードだ。

 そこまでテンション下がるか。

 

「そうかい。トリスターノ、クエスト行こうぜ」

 

「二人でですか?」

 

「ああ、こいつらは行かないらしいしな。俺達は次のイベントに備えて良さげなクエスト受けてこようぜ」

 

「……ふふ、そうですね」

 

 トリスターノは優しげに笑い、二人は驚いた顔で俺を見ていた。

 

「二人が行かないなら俺達がその分楽しまないとな」

 

「ええ、今日のクエストで稼ぐとしますか」

 

「準備は結構かかるか?」

 

「いつでも行ける様に日々準備はしてあります。十分ほどいただければ」

 

「よし、じゃあ……」

 

「ちょ、ちょっと待って! ヒ、ヒカルはその、次々回のイベント行くの……?」

 

「行くけど?」

 

 ゆんゆんが聞いてきたので肯定すると、ゆんゆんはワナワナと震え出した。

 

「ず、ずるいよ! 僕達は行かないって決めたのに!」

 

「お前達は行かないって決めたけど、俺達は行くって決めたんだよ。なあ、トリスターノ?」

 

「ええ、今から楽しみですね」

 

 俺達のやり取りを見て、頬を膨らませるヒナ。

 

「ああ、残念だ。優秀な魔法使いや前衛も後衛も出来るプリーストがいればクエストも楽だったんだが二人が行かないならしょうがな……」

 

「僕達も行くよ!」

「私達も行くわ!」

 

 俺のセリフを遮って二人が食いつくようにそう言ってきた。

 

「ヒカルがそう言うなら仕方ないわ! ええ、仕方ない!」

 

「そうだね! しょうがないからついて行ってあげるよ!」

 

「はいはい、よろしく」

 

 チョロい奴らだ。

 俺の言葉を受けて、元気に二人は自分達の部屋に戻っていった。

 多分クエストの準備をしに行ったのだろう。

 

「流石リーダーです」

 

「トリスターノも準備してきてくれ」

 

「御意」

 

 恭しく礼をした後、自身の部屋に向かっていった。

 さて、俺も準備するか。

 

 

 

 

 準備を済ませた俺達がギルドに行くとカズマ達がいた。

 それと

 

「ア、アクセルハーツのシエロさん……っ!」

 

 ヒナとゆんゆんは目をキラキラさせて、シエロに挨拶しに行った。

 シエロはアクセルハーツの一人で癖っ毛のショートカット、それとボクっ娘だ。

 この後すぐ知ることになるが、シエロはアークプリーストらしく、誰かさんとかなりキャラ被りしているが、見た目やスタイル的に女性だとはっきりわかるので丸被りというわけではない。

 丸被りというわけではない(大事なことなので)。

 二人の食いつくような挨拶にシエロは苦笑しつつも挨拶を返していた。

 流石アイドル、もとい踊り子だ。

 それを見たカズマが俺達を見て、駆け寄ってきた。

 

「ヒカル、頼む! ヒカル達も手伝ってくれないか!?」

 

「いきなりなんだ?」

 

 懇願するように言ってくるカズマに事情を聞くと、高難易度のクエストを受けるという。

 高難易度クエストの内容は初心者殺しというモンスターの群れ、そしてそれらを統率している中級者殺しと呼ばれる初心者殺しより上位のモンスターの討伐だ。

 

「マジの高難易度じゃないか」

 

「ああ、そうだよ。正直受けたくないけど、借金もあるし、少しでも手元に残るクエストをやりたいんだ」

 

 カズマがヤバいことに自ら首を突っ込むのに違和感を感じたが、そういうことなら納得だ。

 

「俺達四人が入ったら取り分が減るんじゃないか?」

 

「どう考えても失敗するよりマシだろ。クエストの内容が内容だけに報酬はかなり高い。そっちも損は無いと思うぞ」

 

「本当にそうか?」

 

「……な、無いとお、思う……ぞ?」

 

 俺がカズマの仲間のアクア達を見ながら聞くと、カズマは目を逸らした。

 カズマ達は確かに魔王軍の幹部を討伐するほどの実力はあるが、それと同時にかなりの問題児達であることはよく知っている。

 この前のカエル討伐の時のように何度か一緒にクエストを受けたことがあるからだ。

 というかこの街にある程度滞在している冒険者なら知ってることか。

 

「……もう少し難易度を落とした方がいいんじゃないか?」

 

「俺もそうしたくて掲示板を何度も見てるけど、他のクエストは報酬もかなり落ちるんだよ。俺達の事情もそうだけど、シエロも他のメンバーにサプライズプレゼントがしたいって言ってるしさ」

 

「なるほどな。ちょっと俺の仲間達に聞いて……」

 

 クエストの難易度を考えて受けたくない気持ちが強かった俺は近くに来ていたシエロに気付くのに遅れて体がぶつかった。

 

「あ、悪い」

 

「ぃ……」

 

「まずい、ヒカル下がれ!」

 

「あ?」

 

「いやあああああああああ!!」

 

 ブン! 

 

「っっぶねえ!」

 

 カズマの大声での注意に若干気を取られたが、なんとかシエロのアッパーを避けることが出来た。

 風切り音がするほどの拳の振り。

 避けることは出来たが、アゴにカスっていた。

 

「……ボ、ボクの拳が当たらないなんて……!?」

 

「他に言うことあるだろ! 大丈夫か、よく避けたな!?」

 

「え、あ! すみません!」

 

 シエロがペコリと頭を下げてくる。

 いいよ、と言って手を振るとシエロはまた頭を下げてきた。

 もし当たっていたらKOされていただろう。

 それほどのアッパーだった。

 

「シエロさん、見事なアッパーでした! でもヒカルに当てるなら大ぶりではない攻撃の方がいいと思います!」

 

「な、なるほど!」

 

「なるほど、じゃねえよこの野郎! お前もなにアドバイスしてんだ!」

 

 ヒナがシエロに駆け寄ってアホなアドバイスをしたと思ったら、シエロもアホな返しをするので流石にツッコミを入れざるをえなかった。

 

「す、すみません!」

「だって良いアッパーだったし……」

 

「良いアッパーなのは認めるけど、攻撃したのを注意しろ脳筋ボクサー」

 

「あ、あのう、本当にすみません。大丈夫ですか?」

 

「ああ、大丈夫だよ。俺もぶつかって悪かった」

 

 実際シエロにぶつかってしまった自分も悪い。

 シエロは男性恐怖症で、男性に触ってしまうと手が出てしまう。

 その男性恐怖症を治す為にも踊り子をやってるとかなんとか。

 

「いえ、そんな。あの、ついでにお聞きしたいんですけど、よく避けましたね? いつもなら絶対に当てる間合いだったんですけど……」

 

 かなり自信があるらしい。

 拳を振ったことより、当たらなかったことに対して驚いていたしな。

 

「ヒカルはぐうたらな人間ではありますが、様々な武術の心得があるんです」

 

「あとお前がすぐ殴って来るから、避けるのが上手くなったんだよ、ありがとなこの野郎」

 

「どういたしまして」

 

「わかりやすく言ったと思ったんだけど、皮肉ってわからなかったか?」

 

 ヒナは聞こえてないフリをして、シエロはなるほどと呟いていた後、何かに気付いたような表情になり、シエロは俺に再び声をかけてきた。

 

「あの、殴りかかってしまった上に突然こんな事を言うのもおかしいと思ってはいるのですが、私に協力していただけませんか?」

 

「え? ああ、クエストのことだろ? 今俺のパーティーに確認……」

 

「僕達もクエストに参加します!」

「私達もクエストに参加します!」

 

 ヒナとゆんゆんが身を乗り出すように食い気味に宣言した。

 トリスターノは苦笑し、俺は頭を抱えるまではいかないが、頭を押さえた。

 

「えっと、よろしくな。ヒカル」

 

「あー、うん。よろしく」

 

 カズマが言いづらそうに話しかけてきたのを頭を押さえながら適当に返した。

 

「あ、あの、もちろんクエストのことも協力していただきたいのですが、今お願いしたのは別のことなんです」

 

 先程のカズマ以上に言いづらそうにしていたが、はっきりと言葉にしてきた。

 俺が首を傾げると、シエロは意を決したように大声で言ってきた。

 

「ボクの男性恐怖症を治すのに協力してください!」

 




本編がなかなか書けないので、前に消したやつを投稿してみました。

このファン二周年おめでとうございます。
二周年記念イベントのストーリー良かったし、この流れでファンタスティックデイズの方も少し触れていきたいという意味も込めての投稿です。
ファンタスティックデイズの二話目はすでに前に投稿したやつがあるけど、三話目はどうするか悩んでます。
最初にちょろっと書いたのはもう一部ラストに入ってしまうパターンですけど、ちょっと早すぎる気もして。
もう少し日常的なお話であったり、ハード?モード本編ではなかなか出来ない原作キャラやファンタスティックデイズキャラとの交流も出来る感じのも書いていきたい、書いたいけ……たらいいなうん。
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