『だ、大丈夫。大丈夫よ、■■。私が、私が守るから』
『ねーちゃ……』
『訪い人の末裔よ、今神の身元にお送りします、安心して身を委ねてください』
得体のしれない人達に囲まれて、震えて抱き合う二人。そしてねーちゃんに突き飛ばされた。
『走りなさい、■■!』
私は、走る。でも、逃げられるはずなんてなくて。あっさりと捕まって。
祭壇の上、二人囚われ、刃が煌めいた。
「ふっ!!」
慌てて起き上がる。ぜえぜえと息を吐く。なんだこれ。なんだこれ。
見慣れない天井にびっくりして、ひぇっとなってしまう。嘘、また攫われた?
不安に思って周囲を見ると、ベッドわきの椅子に亜香里ちゃんが座って眠っていた。
俺は全力疾走したあとのような心臓が静まるのをひたすら待った。
俺は虎杖悠仁。オカ研に所属する、ごく普通の腐男子である。
携帯がなっていたのを見て、見ると着信が凄いことになっていた。
「亜香里ちゃんと爺ちゃん……うっげ3日も寝てたの?」
業を煮やして突撃して病院につれてきてくれたんだろう。
亜香里ちゃんは剣道部の女傑である。
俺が漫研に入ったとき、俺以外の全員が体調を崩すというオカルトチックなことが起こり、俺は友達をなくした。もとから、何故か絡まれまくる体質を持っていたから、そんな友達はいなかったけれど……どんな時でも一緒にいてくれたのが亜香里ちゃんで、剣道も教えてくれる。俺にとっては本当に灯火のような人である。
今思えば、亜香里ちゃんはねーちゃんに似てたんだ。勉強も運動も出来るパーフェクトガールのねーちゃんに。
「亜香里ちゃん」
「ん、悠仁。良かったぁ! 心配したよぉ。ほんっと心配かけるわね、あんた」
「ごめんな、亜香里ちゃん」
「ほら、おじいさんも心配してたから早く挨拶に行きなさい」
「うん」
それから退院の手続きをして、身支度をする。
それから数日後。じいちゃんが亡くなって。唯一受け入れてくれたオカ研の部長からめーるが送られてきた。呪物の写真である。これから開封するそうだ。
「ぴぃっ」
宿儺の指で虎杖悠仁、呪術廻戦案件じゃないですか、嫌だー!!!
漫研出身現在なんちゃってオカ研には無理な案件ですよ!
しかも亜香里ちゃんがその場に俺の代理としているらしい。マジふざけんな。
俺は現場へと急いだ。
「あ、亜香里ちゃん! これはやばい、これはやばいって。逃げようぜ!!」
俺が学校に飛び込んで亜香里ちゃん達を探すと、先輩発見。後ろから先輩を呪霊がパックンチョした。
「ぴゃああああああああああああああああああああ!!!」
今宿儺に殺されるか!? 大量殺人犯になるか!?
「でも生きていたいいいいぃ!! 先輩! あの指どこ!?」
「こ、これ!」
「それが原因! 貸して!!!」
私は宿儺の指をぱっくんちょした。ま、まずぅ!
「やれやれ、騒がしいな……。ふう、新たなる体を得たか」
宿儺様は軽く腕を一閃、先輩を助けた。
「うわあああああああああああああ!!」
「い、虎杖が!? 何あの化け物?」
「騒がしいな……殺すか」
「あ、あんたおばけね。悠仁を返して! あいつは私の弟分なの!」
ねーちゃ!!! じゃなかった亜香里ちゃん!!
「ねーちゃ……貴様。姉か。貴様の弟を思う気持ちに免じて今回は許す。が、二度と遊び半分で呪いに近づく真似はするなよ。すでにここは呪いが溢れている。すべて倒してくる」
「あ、ありがとう。あなたは……」
「両面宿儺だ」
ふわああ。宿儺が優しい。
呪いを退治する最中、伏黒くんを拾った。イケメンである。胸がトゥンクした。
呪いを倒すと、体を戻してくれた。
「あ、ありがとう、宿儺様!」
「「「両面宿儺様、ありがとうございます」」」
俺がお礼すると、三人も深々とお礼をする。伏黒は気絶したままだから保健室に寝かせて、と。先輩たちを返し、俺と亜香里ちゃんは息をついた。
「これで何事もなく日常に戻れないかな」
「それは無理だね」
「誰!」
声をかけられて、びくっとなって肩を跳ね上げる。
亜香里ちゃんは慌てて竹刀を構えた。
「イケメン!!」
この立ってるだけで格好いいスタイリッシュ目隠しイケメンは五条悟!!
主人公は三次元になってわからなくても目隠しイケメンだけはわかる。本物だひゃっふぅ!
「あっは♡ ありがとね。完全に混ざっちゃってるね」
「亜香里ちゃん、この人は多分、大丈夫。両面宿儺様の対処に来たんだと思う」
「そのとおり! 僕は五条 悟。最強の呪術師だよ。状況を話してもらえるかな?」
言われて、俺達は一生懸命状況を話した。両面宿儺様はツンデレヒーローなのです。
「うーん、おかしいな。呪いの王がそんな優しいはずはないんだけど。まーいいや。来てもらうよ」
俺は気絶させられた。
あとはまあ、原作通りである。
ねーちゃ。ねーちゃ。
ねーちゃはパーフェクトガールだった。スポーツ万能文武両道、ちょっと冷たくて人を寄せ付けない所があったけど、俺にはとても優しかった。
ねーちゃ。ねーちゃ。なんで忘れてたんだろう。ねーちゃ。
『なんだ?』
優しい声を掛けられる。引っ張り込まれる感覚。
目の前に宿儺がいて、でも宿儺には胸があって、血溜まりの部屋には前世の俺の写真がいっぱい飾ってあって。俺は宿儺に抱きしめられていた。ふにょんした。
「心配した、■■」
「ねーちゃああああああああああ!」
俺はねーちゃの胸に顔を埋めて泣きじゃくった。
「ごめんね、ごめんね、ねーちゃああああああああああ!」
「俺もあのときは守れずすまなかった」
ねーちゃ……うっうっ それはそれとして胸柔らかい。もみもみもみもみもみ。
「女性の胸を揉むのはやめよ。もう男なのだから」
「はーい。うわ。俺も女……じゃないか。ちんこ付いてるし。ふたなりふたなり」
「勃ってるではないか……。私も貴様も、随分と半端な生まれ変わりをしたものだ」
ねーちゃは頭を押さえる。どこにも出せないだめな妹でごめん。
「あっ そうだ! 俺、この世界知ってる! ねーちゃの役に立てる」
この世界について説明をすると、ねーちゃは頭を抑えた。
「既にだいぶ変わっているではないか……」
「ねーちゃ?」
「よいよい。頑張ったな、妹よ。そうすると、ようはその羂索? を倒した後に逃亡すればよいのだな。呪術師の真似事をすれば資金稼ぎもできそうだ」
「うん、そう!」
「しかし、俺が憑依してしまったのだとしたら、それこそ本来の宿儺が戻る可能性もある。そこも対策を考えねばな……」
「ねーちゃ」
「大丈夫。俺が今度こそ、お前を守る。姉の力は偉大と知れ」
「ねーちゃ!」
「そうと決まれば特訓だ。せめて呪力で身を守れるようにせねばな」
「ねーちゃ……」
それから、特訓が始まった。
ねーちゃと入れ替わった途端、五条 悟が飛び込んできた。
「悠仁!?」
「何?」
「今、宿儺に体奪われなかった!?」
「いつでも入れ替われるよう特訓しようと思って」
「はぁ……話聞いてた? そんな事したら駄目なの。宿儺は危険なんだよ」
「ごめんなさい」
「いいかい? 両面宿儺は呪いの王だし、君は秘匿死刑一歩手前なんだから。気をつけないと駄目だよ」
「うん」
「それにしても、そんな簡単に代われるわけ?」
「コツは掴んだ」
「そう。じゃあ、今度見ている時にやってもらおうかな」
「頑張る」
私はコクリと頷いた。イケメンが見ているなら失敗はできないよね。
ねーちゃは私の中で、そっとため息を吐いた。