丸藤翔のやり直し   作:交響魔人

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サイバー流と、裏サイバー流。それぞれの活動。

 分派の伝承者…。サイバー流と袂を分かった分派である裏サイバー流は、サイバー流の『継承者』という名前をそのまま使う事を嫌い、『伝承者』とした。

 浦塞 恭子。黒髪でおかっぱ頭、角度を変えればやや赤みがかかって見える黒い瞳の少女は、分派の集会を開催していた。

 

 

「やーやー。よく集まってくれたね。」

「浦塞様ッ!我ら分派に勧誘したい人材がおります!許可を頂いても?」

「黒庭、君がそう望むのならここに連れてきてくれても良かったけれど…。」

「丸藤翔、オシリスレッドの1年生です」

「…本家の継承者の弟だね。」

「そ、そうだったのですか!」

 

 

 明かされる事実に、分派の門下生はざわめく。

 

 

「なんてことだ」

「待て。継承者の弟が分派に入ったとなれば本家に揺さぶりをかけられるのでは?」

「危険すぎる。こちらの内情を横流しされたらどうする。」

 

 

「黒庭、君には彼がどう見えた?どう感じた?忌憚なく述べて欲しいね」

「はっ!受験番号は低く、実技試験では先攻にも関わらずドローしようとするなど、優秀では無いと思っていましたが…。月一試験では91点とオシリスレッドでは最高点をたたき出し、オベリスクブルーの女子、秋津に勝利。最近では本家の東雲を倒し、そして…俺も不覚を取りました」

 

 

「えっ?!黒庭が負けた?」

 

「なんでオシリスレッドなんだ?」

「あれだ、解答欄を一つずつずらしていたとかじゃあないか?」

「でも、実技で先攻ドローしようとするって…。ルール分っていないだろ」

「それだと筆記で91点取れる理由が分からない。」

 

 

 

 浦塞は軽く手を上げる。すると分派の門下生は一斉に静まり返る。

 

 

「疑念はあるけれど、緊張していたとかそういう所だろう。近々ラーイエローに昇格すると私は思うけれど、分派に入れるべき人材では無いね。」

「…はい」

 

 

 

「さて。今回参加をしてくれたという話だけれど…君から行こうかな!」

「は、はいっ!」

 

 

 緊張しているオシリスレッドの一年生、揚羽少年に対し、微笑む浦塞。緊張をほぐすべく、優しく声をかける。

 

 

「どうかな、裏サイバー流は。以前のデッキと比べて」

「ぜ、全然違います!分派に入ってよかったです!」

 

 

 頷く浦塞に、分派の門下生が尋ねる。

 

 

「あの、元々彼はどんなデッキを?」

「ん?そうだね…私が言っていいかな?」

「い、いえ。僕は【寄生虫パラサイド】デッキを使っていました。リバースすることで、相手のデッキに表側表示で入り、相手がドローした時に特殊召喚して1000ポイントのダメージを与えるカードですが…。アカデミアでは通用しませんでした…。穿孔虫の効果は、地元では強制効果と思っていたから強制転移で穿孔虫を送りつけて戦闘ダメージをわざと受ければ皆、デッキの一番上に寄生虫パラサイドを置いてくれて、そのおかげで虫除けバリア-とのコンボが決まったのですが…」

「残念なことに、あれは任意効果なんだよね。なんであの効果でOKを出したのか…。」

 

 分派の門下生が手を挙げて質問をする。

 

「恐れながら、浦塞様が【寄生虫パラサイド】を作るならどのように…」

「うーん…DNA改造手術と虫除けバリア-で攻撃をロックする方が手っ取り早い。」

 

 

「い、威嚇する咆哮や和睦の使者を使っていました!」

「うんうん。リバーステーマならその手の防御札だよね。その手のカードは」

「はい、今の裏サイバー流デッキにも入れています。」

「よし、当面は防御主体で行くといいよ。カードが揃ってきたら色々試せばいい。」

 

 

 

 

 浦塞は、別の門下生に目を向ける。

 

 

「君はどうかな?」

 

 ふてぶてしい面構えのラーイエローの一年生、蛭川(ひるかわ)はニヤニヤしながら口を開く。

 

「ちと不満だな。もっと強いのかと思っていたんだが…。下級モンスターの打点の低さはどうにかならないか?」

「…まぁ、本家と比べるとやや打点に欠ける点は否めないね。」

 

 

 伝承者に直接声をかけて貰っているにも関わらず、非礼な態度に分派の門下生がいきり立つ。

 

 

「失礼だぞ!」

「ああ?先に入っていたというだけでお説教か!」

 

 

 

「…分派のデッキが気に入らないなら、やめて貰って構わないよ。去る者は追わず来る者は拒まず…。それが私達分派。」

「ああ、そうかい。だったらもう辞める。」

「そう。」

 

 

 スッと手を差し出す浦塞。

 

「やめるのであれば、サイバー・ダーク・ホーン、エッジ、キール、仮面竜、ドル・ドラ、ボマー・ドラゴン、おろかな埋葬、魔のデッキ破壊ウイルス。それと分派バージョンのデュエルディスクのカスタムパーツ。これらは返してもらうよ。それは君の次に来た門下生に渡すから」

「嫌だね。これはもう俺の物だ」

「攻撃力が低いのが気に入らないんじゃ無かったの?」

「俺が入ったのは、ドラゴン族を貰えると言うからだ。こいつらは手間賃代わりに頂く。取り返したいというなら、アンティ・ルールだ。俺が勝ったら分派秘伝のカードを貰う。まぁ、どうせ大した攻撃力じゃあないんだろうがな!」

 

 

 一触即発の空気が漂う。

 

 

 だが、浦塞はひょいと肩を竦めると、鷹揚に告げる。

 

 

「いいよ。勝手にすればいい」

「何?」

「今回の件は、私自身良い勉強になったからね。そもそも一時的とはいえ籍を置いた事でカードを渡したのに、それを取り上げるというのはカードが可哀そうだ。だけど、所属を変える以上、カスタムパーツは置いていって貰うよ。」

「チッ、腰抜けめ」

 

 

 そう吐き捨てると蛭川はカスタムパーツを投げ捨て、床に唾を吐いた後に去っていく。

 

 

「浦塞様、私が片付けておきます」

「いいよ、私がやる。良い、本当に良い勉強になった…。私自身、もっと精進しないとね。」

 

 

 ゴム手袋を嵌め、ティッシュで唾をふき取り、水拭きから乾拭きする浦塞。

 

 

「さて。分校からそれぞれ報告があったよ。ノース校では橘一角という生徒が加入を表明。イースト校では問題児がアモンを打ち破り、分派の強さを轟かせた。ウェスト校ではオブライエンという生徒を追い詰めた事で一目置かれるようになった…。しかし、サウス校でジムという生徒に完敗を喫してしまい、勧誘は難航している。」

 

 

 本校及び日本での勧誘に集中している表サイバー流と違い、分派は分校の生徒を取り込む事で多国籍風の組織を作ろうとしていた。

 比較的温厚な浦塞だが、分派の問題児については流石に擁護しきれない。相手を煽り倒す性格はどうにかならないものかと矯正しようとはしたのだが、徒労に終わった。

 

 

 

 その後、分派の門下生でも特に一年生に注目しながら口を開く。

 

 

「アカデミア一年目は、よく聞いておいてね。近々、クロノス教諭が『今までアカデミアで使ったことがないモンスター』でデッキを組むよう言ってくる。魔法・罠カードまで縛りは無いけれど、不慣れな即席デッキでどこまで戦えるか、という事を見られる。」

 

 

「あのぅ、それってどういう意図があるんですか?」

「それはね。プロデュエリストになるにはスポンサーが必要だけど、スポンサーは往々にしてお金持ちの家が多い。そしてそういう家には蝶よ花よと大切に育てられ、苦労を知らない人が居る。彼らにとって親と契約したプロデュエリストというのは、自分が思いついたコンボを実現してくれる玩具でしか無いんだよね」

「えええ…」

 

「そういう無茶ぶりに応えるための一環として、こういう講義がある。でも大丈夫!私達分派には、偉大な先輩たちがこの手の授業のために残しておいてくれたカードがある。これを使って組んでいいけれど…勝手に持ち出してトレードしたり、売ったりはしないように。これは分派の『資産』だから、次の世代に引き継いでいく物。」

 

 

「はい!」

「よし、集会は終わり。何か聞きたいことはあるかな?私に答えられる事であれば答えるけれど」

 

 

「では、浦塞先輩」

「なにかな?」

「…オシリスレッド寮の先輩が、こう述べていました。デュエルモンスターズは不平等なゲームであると」

 

 

 あー、あの話かとなる浦塞。一方で分派でも一年生の者は首をかしげる。

 浦塞は、アカデミアに入学した時、分派の数を増やそうと彼に声をかけたことがあった。その時に言われた話だ。

 

 本人は、深刻な風に話していたが、その実『この真実に気づいた俺は凄いだろう!』という斜に構えた薄っぺらい考えが透けて見えたため、浦塞は勧誘しない事にした。

 翌日オシリスレッド生の間で、分派に対するネガティブキャンペーンが起きたが…ここまで発起人が誰かバレバレだと却って笑いさえこみ上げてしまった。

 

 

 

 

「不平等って、どういう事だ?」

「デッキを構成するカードにはそもそも差があり、デュエルは始まる前から決まっている。例えば…城之内克也が、海馬瀬人に勝てると思うか?と」

 

 

 勝負事の残酷さの一面を突き付ける意見に、黒庭は黙り込む。

 一方、浦塞は軽くため息をつく。

 

 

 

「勝てないから諦めるというなら、諦めればいい。でも城之内さんは格上の決闘者相手に果敢に挑み、足りない実力差をギャンブルカードのリスクを背負う事で補い…そうやって研鑽を積んだ結果、名を馳せる決闘者になった。確かに、膝をついた海馬瀬人とその前で高笑いをする城之内克也、というイメージは湧かないけれど…それは海馬瀬人が非凡な決闘者であり、彼もまた格上の武藤遊戯に挑み続けたから。オシリスレッド寮でそんなことを言うとなると、圧釜でしょ?」

「…はい。」

 

 一拍置いて、浦塞は告げる。

 

 

「君の【寄生虫パラサイド】デッキでは、アカデミアでは通用しなかったのかもしれない。でも、そこで諦めず君は分派に入る事で強くなろうとした。その意思があるなら、君は前に進んでいける。オベリスクブルーの生徒でレアカードを奪おうとする連中は、分派に入った者には手出ししないし、手出ししたなら私達は奪い返す。いい?」

 

 

 不安が晴れた揚羽は頷く。

 それを見て微笑む浦塞。

 

 

「各自、好きに過ごしていいよ。」

 

 

「浦塞様、新作サンドイッチの具を用意してあります。こちらへ」

「それは楽しみ。」

 

 

 分派の門下生達は銘々動き始める。

 食事をする者、即席デッキ用に用意されているというカードリストを眺めてデッキ構築をシミュレーションする者…。

 友人を誘って釣りにでかける者。

 

 そんな中、初参加の門下生が黒庭に話しかける。

 

「…裏サイバー流って、割と緩いんですね」

「そうだな。表の連中と違って俺達分派は頭数が少ない。それ故に結束が固いが、プライベートまで干渉しない。」

「表サイバー流は、分派の事を悪く言っていましたけれど、そんな事は無いですね」

「むしろ、数が多い分、かなりギスギスしているぞ。政治的、資金的な手腕に長けた奴が居れば別だが…そんな奴は連中に居ない。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同時刻、表サイバー流の集会。

 サイバー流で学んでいたが、この集会に丸藤翔は参加していない。

 どうしても前世の事を思い浮かべてしまうからだ。

 

 そもそも、この世界線でも表サイバー流の門下生は数が多いため、参加していなくても特に何も言われない。

 

 

 

「さて、集会の前に…。制裁デュエルをするだぎゃ。先日、バイトでありながら途中でバックレた二人。源(みなもと)、平(たいら)。まとめて相手をしてやるだぎゃ」

 

 

 サイバー流の門下生にして、オベリスクブルーの男子二年生。汚田(おだ)は腕組みをして告げる。

 

 

「ま、まとめて相手?!」

「どういう事?」

「こういうルールだぎゃ。まず、俺が先攻。次に源、次に俺、その次に平、その次に俺、という方法だぎゃ」

 

 

 

「ま、待ってください!汚田先輩!それではライフの差があまりにも不利では?」

「黙っているだぎゃ。良い機会だぎゃ。サイバー流にはカイザー亮以外にも人材がいるという事を証明してやるだぎゃ」

 

 

 

 

「「「デュエルッ!!」」」

 

汚田 ライフ4000

手5 フィールド 

   魔法・罠 

源 ライフ4000

手5 フィールド 

   魔法・罠 

平 ライフ4000

手5 フィールド 

   魔法・罠 

 

 

「先攻は俺だぎゃ。俺はサイバー・ドラゴン・ツヴァイを召喚!カードを4枚伏せてターンエンドだぎゃ」

 

 

 

 

汚田 ライフ4000

手0 フィールド サイバー・ドラゴン・ツヴァイ

   魔法・罠 伏せ4

源 ライフ4000

手5 フィールド 

   魔法・罠 

平 ライフ4000

手5 フィールド 

   魔法・罠 

 

 

「私のターン!私は」

 

 メインフェイズに入ろうとする後輩にたいし、呆れた声色で指摘する汚田。

 

「後攻なんだからドローするだぎゃ。当然、俺への攻撃も可能だぎゃ。」

「そ、そう。ドロー!来たっ!手札のカウンター罠、デストラクション・ジャマーを捨てて速攻魔法、ツインツイスターを発動!伏せカードを2枚破壊!」

 

 

 相方が発動したカードに、はしゃぐ平。

 

 

「やった!これで破門は」

「カウンター罠、魔宮の賄賂を発動するだぎゃ!ツインツイスターを無効にして1枚ドローさせるだぎゃ」

「っつ、ドロー!」

「ここで永続罠、便乗を発動するだぎゃ。ドローフェイズ以外でドローすると、こっちは二枚ドロー出来るだぎゃ」

「だ、だったら魔法カード、融合を発動!手札のサイバー・ドラゴン、サイバー・バリア・ドラゴン、サイバー・レーザー・ドラゴンを融合!キメラテック・ランページ・ドラゴンを融合召喚!効果発動!」

「カウンター罠、無償交換を発動するだぎゃ。モンスター効果を無効にして破壊。まぁ、そっちは1枚ドロー出来るだぎゃ」

「っつ、ドロー!」

「便乗で2枚ドローするだぎゃ」

 

「魔法カード、融合回収を発動!墓地からサイバー・ドラゴンと融合を手札に戻し、サイバー・ドラゴンを特殊召喚!バトル!サイバー・ドラゴンでツヴァイを攻撃!」

「罠発動、奇跡の軌跡!サイバー・ドラゴン・ツヴァイの攻撃力を1000ポイント上げるだぎゃ。まぁ、1枚ドロー出来るだぎゃ」

「そんなっ!」

「ああ、戦闘ダメージは0になるだぎゃ。さて、便乗で2枚ドローするだぎゃ。」

 

「永続魔法、未来融合フューチャーフュージョンを発動して、ターンエンド…」

 

 

 

汚田 ライフ4000

手4 フィールド サイバー・ドラゴン・ツヴァイ

   魔法・罠 便乗 

源 ライフ4000

手2 フィールド 

   魔法・罠 未来融合フューチャーフュージョン(0)

平 ライフ4000

手5 フィールド 

   魔法・罠 

 

 

 

「あれが、汚田先輩のデュエル…。カイザー亮とはまた違うな」

「魔宮の賄賂や無償交換と言った相手にドローさせるカウンター罠を使いつつ、便乗で手札を増やす、いうなれば【パーミッションサイバー】デッキよ。」

「回すのは難しそうだけど、コンボが決まったら相手はもう抜け出せないな…」

 

 

 今年入った他の門下生に、東雲が説明する。

 

 

 

「俺のターン、ドローだぎゃ。サイバー・ドラゴン・ドライを通常召喚。手札の魔法カード、融合を公開してツヴァイの効果発動だぎゃ。ターン終了時までカード名をサイバー・ドラゴンとして扱うだぎゃ。融合を発動。場のサイバー・ドラゴン2体を融合。キメラテック・ランページ・ドラゴンを融合召喚するだぎゃ。効果発動、未来融合を破壊だぎゃ。」

「そんなっ!」

「ここで、キメラテック・ランページ・ドラゴンの効果発動!デッキから超電磁タートルとA-アサルト・コアを墓地に送って、攻撃回数を二回増やすだぎゃ。バトル、キメラテック・ランページ・ドラゴンでダイレクトアタック!」

「いやああああああっ!」ライフ4000から1900、1900から0

 

 

「み、源!」

「さて。一時休戦を発動。互いに1枚ドローするだぎゃ。便乗で2枚ドローするだぎゃ。カードを4枚伏せて、ターンエンドだぎゃ」

 

 

 

 

 

汚田 ライフ4000

手1 フィールド キメラテック・ランページ・ドラゴン 

   魔法・罠 便乗 伏せ4

平 ライフ4000

手6 フィールド 

   魔法・罠 

 

 

 

「わ、私のターン、ドロー!魔法カード、手札抹殺を発動!手札をすべて捨てて、捨てた枚数分ドロー!」

「こちらも手札を入れ替えるだぎゃ。皆既日蝕の書を捨てて1枚ドロー。捨て札は…突進、サイバー・ドラゴン・コア、アーマード・サイバーン、プロト・サイバー・ドラゴン、サイバー・エスパー、サイバー・フェニックス…便乗で2枚ドローするだぎゃ。」

 

 

「相手の場にのみモンスターが存在することで、墓地のサイバー・ドラゴン・コアの効果発動!墓地から除外してデッキからサイバー・ドラゴンを特殊召喚!ここで、手札のサイバー・ドラゴン・フィーアの効果発動!サイバー・ドラゴンの召喚・特殊召喚に成功した時、手札から特殊召喚できる!」

「サイバー・ドラゴンが2体…。」

 

「魔法カード、融合を発動!場のサイバー・ドラゴン2体を融合!サイバー・ツイン・ドラゴンを融合召喚!一時休戦でダメージは無いけれど、バトル!サイバー・ツイン・ドラゴンで、キメラテック・ランページ・ドラゴンを攻撃!」

「リバースカードオープン!収縮を発動だぎゃ!これで、サイバー・ツイン・ドラゴンの元々の攻撃力は半分になるだぎゃ!」

 

 返り討ちに合う、サイバー・ツイン・ドラゴン

 

 

「か、カードを2枚伏せて…た、ターン、エンド…」

 

 

 

 

 

汚田 ライフ4000

手3 フィールド キメラテック・ランページ・ドラゴン 

   魔法・罠 便乗 伏せ3

平 ライフ4000

手2 フィールド 

   魔法・罠 伏せ2

 

 

「俺のターン、ドローだぎゃ。キメラテック・ランページ・ドラゴンの効果発動だぎゃ。デッキからB-バスター・ドレイク、C-クラッシュ・ワイバーンを墓地に送って、攻撃回数を二回増やすだぎゃ。キメラテック・ランページ・ドラゴンでダイレクトアタック!」

「り、リバースカードオープン!リビングデッドの呼び声、墓地から」

「カウンター罠、魔宮の賄賂だぎゃ!リビングデッドの呼び声の発動と効果を無効にして破壊!」

「い、一枚ドロー…」

「便乗で2枚ドロー!さぁ、これで終わりだぎゃ!」

「いやああああああっ!」ライフ4000から1900、1900から0

 

 

 

 ライフが尽きて、へたり込む女子生徒二人に対し、汚田はにらみつける。

 

 

「これで破門だぎゃ。」

「ま、待ってください!チャンスを」

「デッキを確認させるだぎゃ!」

 

 怒鳴りつけられ、女子生徒達はデッキを差し出す。

 

 

「…支給された時から、デッキ調整をしたぎゃ?」

「そ、それは…。その…」

 

 

 言葉に詰まる平と、沈黙する源。それが答えだった。

 

 

「渡されたデッキを数か月、そのまま使い続けるとは向上心が感じられないだぎゃ!他の門下生は、偉大魔獣ガーゼットを採用してサイバー・ドラゴンをリリースして攻撃力4200とか、死霊騎士デスカリバーナイトや異次元の女戦士と言った下級アタッカーを採用するとか、最終突撃命令やスキルドレインとデメリットアタッカーを併用するとか工夫しているのに…!サイバー流のデッキを返してもらうだぎゃ。とっととでていくだぎゃ!」

 

 

 傷心した源と平が去って行った後も、汚田の怒りは収まらない。

 

 

 

「全く、今年の一年生は何をやっているだぎゃ。覗きをした性犯罪者予備軍のレッド寮生を差別するのはいいとしても…そのオシリスレッドに負ける門下生…。本当、情けないだぎゃ。」

 

 

 汚田は威圧的に門下生を睨む。

 先日、オシリスレッドに負けた東雲は居心地悪そうにする。

 

 

「そう言うな、汚田。」

「カイザー亮、そう仰られても…。これでは先が思いやられるだぎゃ。」

 

 

 丸藤亮はため息をつきたい気持ちをぐっとこらえる。

 サイバー流の門下生の数は増えた。かつてはサイバー・ドラゴンとサイバー・レーザー・ドラゴンやサイバーバリア・ドラゴンを支給していたのだが、

 徐々にサイバー・ツイン・ドラゴン、キメラテック・オーバー・ドラゴン、キメラテック・ランページ・ドラゴンと強力な融合モンスターも支給するようになってから数は増えた。

 だが、同時に質の低下を招いてしまっている。

 

 

 

 何とかしたいが丸藤亮自身、スポンサー契約したいという話が次々とやってきて、角を立てないように断らねばならない為、その対処に奔走している。

 角を立てると、その企業が他のサイバー流の門下生とスポンサー契約を交わしてくれなくなるからだ。

 

 

 ゆえに代理として、二年生で一番デュエルの腕が立つ汚田に任せる事になったのだが…。

 そういえば、翔はまた不参加か…。いや、俺が口出しすることではない。

 

 丸藤亮は考えをめぐらす。

 

 

 

 

 

 

 数日後。

 

『今まで使ったことがないモンスター』でデッキを組むように。魔法・罠カードは問わない。』

 

 という実技の授業が行われると聞いて、翔は即席デッキの構築にとりかかる。

 

 手持ちのカードを前にして、翔の頭にあるデッキが思い浮かんだ。思うところはあるデッキだが、即興デッキとしては一番回しやすいデッキだ。

 

 

 

 

 

 

 僕の相手は、ラーイエローの生徒っス。江利糸っていう人ッス。

 確か、サイレント・マジシャンを主軸に置いた魔力カウンター使いッス。

 

 

「オシリスレッドが相手かよ。まぁ消化試合だ、さっさと終わらせてやる!」

 

 アカデミアは授業の一環としているのだが、生徒の中にはこのように「適当に終わらせてやり過ごす」という考えを持つ者が少なからず存在する。

 一般の生徒はメインデッキと別にデッキを組めるほどカードプールが潤沢ではない、というのも一因であるが。

 

 

 

「「デュエルッ!!」」

 

翔 ライフ4000

手5 場 

江利糸 ライフ4000

手5 場 

 

 

 

「俺の先攻!俺は永続魔法、ミイラの呼び声を発動!俺の場にモンスターがいない時、手札のアンデット族を特殊召喚できる!」

「な、何が来るッス?」

「現れろ、ゴースト王-パンプキング-!さらに俺はモンスターをセットする」

 

 一気にモンスターが二体ッスか。

 

 

「カードを一枚伏せる、ターンエンドだ」

 

 

翔 ライフ4000

手5 場 

江利糸 ライフ4000

手1 場 ゴースト王-パンプキング- セットモンスター ミイラの呼び声 伏せ1

 

 

 

「僕のターン、ドロー!」

 

 よし、来たッス。

 

「良いカードを引いたみたいだな。罠発動!攪乱作戦!」

「ええっ?!」

「さぁ、手札を全てデッキに戻してシャッフルしろ。その後、戻した枚数分ドローしろ!」

 

 確か、サイレント・マジシャンLv4とのコンボ用に使っているカードっス。

 うっ、まぁ…これはこれで良い手札ッス。

 

 

 

「僕はモンスターをセット、カードを2枚伏せてターンエンド!」

 

 

 

翔 ライフ4000

手3 場 セットモンスター 伏せ2

江利糸 ライフ4000

 

 

 

「俺のターン、ドロー!俺はセットしていた闇晦ましの城を反転召喚!これにより、場のアンデット族モンスターの攻撃力と守備力は200ポイントアップ!」

「パンプキングが2000に!」

「さらに、パンプキングは場に闇晦ましの城があれば、攻撃力と守備力が100ポイントアップする。よって攻撃力は2100!バトルだ、行け、ゴースト王-パンプキング!セットモンスターを攻撃!」

「こいつは巨大ネズミっス、効果発動っス!」

 

 僕はデッキから、因縁深いモンスターを取り出すッス。

 

 

「レスキューキャットを、特殊召喚!」

「そんな雑魚に何ができる!」

 

 うん、シンクロ召喚が出てくるまでは僕もそう思っていたッス。

 

 

「罠発動!和睦の使者!このターン、僕のモンスターは戦闘では破壊されないッス!」

「へっ、そんな役立たずの雑魚猫に何ができる!俺はこれでターンエンド!」

 

 レスキューキャットを雑魚呼ばわりっスか…。かつての僕なら同意していたッス。

 

 

翔 ライフ4000

手3 場 レスキューキャット 伏せ1

江利糸 ライフ4000

手2 場 ゴースト王-パンプキング- 闇晦ましの城 ミイラの呼び声 

 

 

「僕のターン、ドロー!僕はレスキューキャットの効果発動!このカードを墓地に送り、デッキからレベル3以下の獣族モンスターを2体、特殊召喚!」

「ははは!だけどエンドフェイズに破壊されるぞ!」

「みつこぶラクーダを2体、特殊召喚するッス!そして、三体目のみつこぶラクーダを召喚!」

「そんな雑魚に何ができる!」

 

 

「みつこぶラクーダの効果発動!このモンスターが3体揃った時、そのうち2体をリリースすることで、三枚ドローするッス!」

「手札を増やした所で、通常召喚は行った!どうすることも出来まい!」

 

 

 レスキューキャットの効果は1ターンに1度で、しかも効果も無効になるッス。でも、手はあるッス。

 

「カードを1枚伏せてターンエンド!」

 

 

 

翔 ライフ4000

手5 場 みつこぶラクーダ 伏せ2

江利糸 ライフ4000

手2 場 ゴースト王-パンプキング- 闇晦ましの城 ミイラの呼び声 

 

「俺のターン、ドロー!スタンバイフェイズだ、ゴースト王の攻撃力と守備力が自身の効果で100ポイント、闇晦ましの城の効果で200ポイントアップする!よって2400!」

「罠発動!地霊術‐「鉄」!場の地属性モンスターをリリースして、墓地からLV4以下の地属性モンスターを特殊召喚するッス。場のみつこぶラクーダをリリース、蘇れ、レスキューキャット!」

「そんな雑魚を盾にして何が出来る!」

「罠発動!威嚇する咆哮!このターン、攻撃はさせないッス!」

「ちっ、闇晦ましの城を守備表示に変更。ターンエンドだ」

 

 

翔 ライフ4000

手5 場 レスキューキャット

江利糸 ライフ4000

手3 場 ゴースト王-パンプキング- 闇晦ましの城 ミイラの呼び声 

 

 

「僕のターン、ドロー!レスキューキャットを墓地に送り、デッキからイリュージョン・シープとラッコアラを特殊召喚!魔法カード、融合を発動!場のイリュージョン・シープとラッコアラを融合!現れろ、コアラッコアラ!」

「攻撃力2800だと!」

 

「魔法カード、貪欲な壺を発動!墓地のみつこぶラクーダ3枚と巨大ネズミとラッコアラをデッキに戻して、2枚ドロー!よし、コアラッコアラの効果発動っス、手札の獣族モンスター、素早いモモンガと異次元の狂獣を墓地に送り、送った枚数分相手モンスターを破壊するッス!」

「何ぃ!だが、まだライフは残る!」

「さらに融合回収を発動!墓地のイリュージョン・シープと融合を手札に戻すッス。そして融合を発動!手札の幻獣王ガゼルと、イリュージョン・シープを融合!現れろ!有翼幻獣キマイラッ!」

「ば、馬鹿なぁああ!」

 

 

「いっけー!コアラッコアラ!有翼幻獣キマイラ!」

「うわあああああああっ!」ライフ4000から1200、1200から0

 

 

 

 

 

 か、勝てたッス。

 猫崎俊二のデュエルを見ていて、レスキューキャットの有用性に気づけたから何とかなったッス。

 まだシンクロ召喚は出来ないけれど、みつこぶラクーダで手札を補充して、コアラッコアラでビートダウンを行うという流れが出来たッス。

 

 

 

 

 

「ねぇ、丸藤って元々【獣族】使いなの?」

「違うッス。ただ、レスキューキャットの可能性に気づいただけッス」

 

 

 

 

「見事だった、翔。レスキューキャットにこれほどの可能性があったとは驚きだ」

「み、三沢君にそう言ってもらえるなんて…。でも、僕はビークロイドデッキの方が性に合うッス。」

 

 

 

 

 

 

 同時刻。

 別の場所にて、見物していた浦塞は門下生に話しかける。

 

 

「丸藤翔は試験の時、何デッキを使っていた?」

「ビークロイドという機械族です。」

「…の割には、獣族を使いこなしているね。」

「元々、獣族使いだったのかもしれません。調べましょうか?」

 

「…いや、別にいい。どうにも、獣族デッキに対してやや思う所があるように見うけられた。苦しそう、とでもいえばいいか。」

「知り合いに【獣族】の使い手が居たが、喧嘩別れしたとか…」

「その可能性はあるね。」

 




ようやく、便乗軸のパーミッションサイバー流を出せました。誰ですか、カウンター罠がリスペクトに反すると最初に言い出した作者は。
書き終えて思いましたが…「サイバー流に入った後、与えられたデッキを数か月近くそのまま使い続けている」というのは、向上心が無いと思われてもやむなしですかね?


「アカデミアに入学してから使っていない種族」でデッキを組め、という授業は面白いと思います。普段使わない種族に触れるのは良い刺激になるかと。
思うところはあれど、翔君はレスキューキャットを使いました。あとこの授業での十代はF・G・D軸のドラゴン族を使いました。


次回は、龍牙実習生が登場します。
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