原作知識から魔法を一切入れないデッキを組む、盤外戦術が通じないデュエルディスクを用意するという方法で突破する展開も良いですが…。不正に対して「事前に対策済み」という展開より「不正されても正々堂々と戦って勝つ」展開の方が個人的に好きです。
教頭室にて
「よく来てくれた、龍牙君。」
「土門先生。お久しぶりです。」
穏やかな紳士を装っているが、人を見下す腐った性根。
彼を知る決闘者達はその人間性から、『死霊伯爵』と下げずんでいた。
無論、土門もその腹黒さは知っていたが…。教員の派閥を増やすために呼んだ。
単純かつ短絡的な性格であり、欲望に忠実。
手駒として最適な素質を持っている。
色々話をした後、龍牙は目を細めて問う。
「ところで、カード収集を行っても?」
「いや、それは…。アンティ・ルールは禁じられている。」
「ですが、『分けてもらう』のは良いのでしょう?」
やれやれ、実習生として来て早々『これ』か。内心侮蔑しつつ、土門教頭は考える。
「デュエルエリートのオベリスクブルー男子から、譲ってもらうのは難しいだろうね。オシリスレッドであれば構わない。」
「しかし、そんな連中は大したレアカードも持っていないでしょう?デュエルした報酬が『闇の仮面』などという糞雑魚カードでは割に合いません。」
「…ラーイエローや、分派の生徒から譲ってもらいなさい。」
「分派は少し面倒ですね…。多少マシなカードを持っているのですが、一人倒してカードを奪っただけで『逆恨み』して取り返しに来る…まぁ、返り討ちにしていけばいいだけですか。」
「ああ、オベリスクブルーでも女子、特に彼女からは譲ってもらって構いませんよ」
土門が提示した資料には、秋津美香の写真があった。
デュエルリングにて。
龍牙は秋津をターゲットにデュエルを仕掛けていた。
「「デュエルッ!!」」
美香 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
龍牙 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
「私が先攻だ。手札からマジシャンズ・ヴァルキリアを召喚!魔法カード、テラ・フォーミングを発動!デッキからフィールド魔法、魔法族の里を手札に加える」
「魔法使い族デッキ?!」
「いかにも。デュエルモンスターズでは、特定のカードを封じられるというのはよくある展開だ。これからは、それに対する備えもプロを目指すなら求められる。フィールド魔法、魔法族の里を発動!さらに、二重召喚を発動!これにより、もう一度通常召喚が出来る!現れろ、二体目のマジシャンズ・ヴァルキリア!」
「ヴァルキリアロック…」
「カードを一枚伏せる。ターンエンド」
美香 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
龍牙 ライフ4000
手0 フィールド マジシャンズ・ヴァルキリア マジシャンズ・ヴァルキリア
魔法・罠 魔法族の里 伏せ1
「…私のターン、ドロー!私は、切り込み隊長を通常召喚!効果発動、手札の戦士族モンスターを特殊召喚!切り込み隊長を守備表示で特殊召喚!」
「ほう、切り込みロックか」
「カードを2枚伏せて、ターンエンド!」
「エンドフェイズに永続罠、王宮のお触れ!」
「?!」
美香 ライフ4000
手2 フィールド 切り込み隊長 切り込み隊長
魔法・罠 伏せ2
龍牙 ライフ4000
手0 フィールド マジシャンズ・ヴァルキリア マジシャンズ・ヴァルキリア
魔法・罠 魔法族の里 王宮のお触れ
「魔法と攻撃を封じ、その上罠まで封じられた…。でも」
「私のターン、ドロー!フフフ…。魔法カード、強欲で金満な壺!」
「?!何故、それを…」
「私はデュエルアカデミアの教員になろうという、教育実習生だぞ。カードに金は惜しまない。私はEXデッキのカードを6枚除外して、2枚ドロー!」
「……。」
なお、この強欲で金満な壺を元々所持していたのはバトルシティにて「今日からこの町はバトルシティ、デュエルモンスターズの戦場と化すのさ!」とサラリーマンに言っていた男である。
「魔法カード、地割れを発動!そうだな、守備表示の切り込み隊長を破壊しておく」
「っつ!」
「私はクルセイダー・オブ・エンディミオンを通常召喚!バトルだ、クルセイダー・オブ・エンディミオンで切り込み隊長を攻撃!」
「切り込み隊長!」ライフ4000から3300
「そして、二体のマジシャンズ・ヴァルキリアでダイレクトアタック!」
「ライフは、残る!」ライフ3300から1700、1700から100
「ターンエンド」
美香 ライフ100
手2 フィールド
魔法・罠 伏せ2
龍牙 ライフ4000
手0 フィールド マジシャンズ・ヴァルキリア マジシャンズ・ヴァルキリア クルセイダー・オブ・エンディミオン
魔法・罠 魔法族の里 王宮のお触れ
「私のターン、ドロー!」
「そう言えば、君は鋼鉄の魔導騎士-ギルティギア・フリードという融合モンスターを持っているらしいな」
「…それが、何か。」
「私はレアカードを収集することが趣味でね。強欲で金満な壺で除外するための融合モンスターは、分けてもらったカードで構築している。このまま私のライフを削れず負けるようなら、分けてもらうとしよう」
圧倒的に有利な立場になってから、アンティの条件を持ち出す龍牙。
その卑劣さに秋津は怒りを露にする。
「…相手の場のモンスターが2体以上多い為、手札から魔導ギガサイバーを特殊召喚!」
「攻撃力2200…。」
「さらにユニオンモンスター、アーマー・ブレイカーを通常召喚!このカードを、魔導ギガサイバーに装備する!私はこれでターンエンド!」
美香 ライフ100
手1 フィールド ギガサイバー
魔法・罠 伏せ2 アーマー・ブレイカー
龍牙 ライフ4000
手0 フィールド マジシャンズ・ヴァルキリア マジシャンズ・ヴァルキリア クルセイダー・オブ・エンディミオン
魔法・罠 魔法族の里 王宮のお触れ
「私のターン、ドロー!ふっ、魔法カード、マジック・ブラストを発動!私の場の魔法使い族モンスターの数×200ポイントのダメージを与える」
「きゃあああああっ!」ライフ0
傲慢な態度を隠そうともせず、歩み寄る龍牙。
「私の勝ちだ。鋼鉄の魔導騎士-ギルティギア・フリードは分けてもらう」
「お断りします。アンティデュエルはデュエル前に申告しておくべきですし、そもそもアンティデュエルは校則違反です。」
「アンティでは無い。分けてもらう。渡さないというなら…」
騒ぎを聞きつけた翔は、そこに割って入る。
「やめるッス。教師が生徒からカードを奪うんスか!」
「今は実技指導中だ!その邪魔をした罰は重いぞ、オシリスレッド!制裁してやる!」
そう言って龍牙はデュエルディスクを構える。
「デュエルなら、受けてたつッスよ!」
翔もまた、デュエルディスクを構える。
「「デュエルッ!!」」
翔 ライフ4000
手5 場
龍牙 ライフ4000
手5 場
「私の先攻!私は魔導戦士ブレイカーを召喚!通常召喚に成功したことで魔力カウンターが乗る!私はフィールド魔法、魔法族の里を発動!これにより、私の場に魔法使い族モンスターが存在し、相手の場に魔法使い族モンスターが存在しなければ、相手は魔法カードを発動できない!」
「里ロックッスね…」
別の世界線では相手の魔法カードだけ封じる電磁波に加えて自分のデュエルディスクには影響を及ぼさないというプロテクトをかけるという方法を使っていたが、
この世界線の龍牙はそんな便利なアイテムを持っていない。
「カードを2枚伏せて、ターンエンド!」
翔 ライフ4000
手5 場
龍牙 ライフ4000
手1 場 魔導戦士ブレイカー(1) 魔法族の里 伏せ2
「僕のターン、ドロー!モンスターをセット。ターンエンドっス」
翔 ライフ4000
手5 場 セットモンスター
龍牙 ライフ4000
手1 場 魔導戦士ブレイカー(1) 魔法族の里 伏せ2
「私のターン、ドロー!私はクルセイダー・オブ・エンディミオンを召喚!」
「デュアルモンスターっスね…。魔力カウンターを別のカードに乗せる事が出来て、乗せれば攻撃力が600ポイントアップ…」
「ブツブツと気色悪い…。知識は多少あっても、それではプロとして大成出来ないな。バトルだ、クルセイダー・オブ・エンディミオンでセットモンスターを攻撃!」
「セットモンスターは、トラックロイドッス!」
「ちいっ…!」ライフ4000から3900
反射ダメージを受けた龍牙は顔を醜く歪ませる。
「ターンエンド」
翔 ライフ4000
手5 場 トラックロイド
龍牙 ライフ3900
手1 場 魔導戦士ブレイカー(1) クルセイダー・オブ・エンディミオン 魔法族の里 伏せ2
「僕のターン、ドロー!サブマリンロイドを召喚。バトルっス!サブマリンロイドでダイレクトアタック!」
「リバースカードオープン!月の書!サブマリンロイドを裏側守備表示にする!」
「…ターンエンドっス」
翔 ライフ4000
手5 場 トラックロイド セットモンスター
龍牙 ライフ3900
手1 場 魔導戦士ブレイカー(1) クルセイダー・オブ・エンディミオン 魔法族の里 伏せ1
「私のターン、ドロー!クルセイダー・オブ・エンディミオンをデュアル召喚!これで効果が使える!バトルだ、クルセイダー・オブ・エンディミオンでセットしたサブマリンロイドを攻撃!」
「…破壊されるッス」
「ターンエンド」
翔 ライフ4000
手5 場 トラックロイド
龍牙 ライフ3900
手2 場 魔導戦士ブレイカー(1) クルセイダー・オブ・エンディミオン(デュアル) 魔法族の里 伏せ1
「僕のターン、ドロー!スチームロイドを召喚!バトルっス!クルセイダー・オブ・エンディミオンを攻撃するッス!ここでスチームロイドの効果発動!攻撃力が2300になるッス!」
「ちっ」ライフ3900から3500
「ターンエンドっス」
翔 ライフ4000
手5 場 トラックロイド スチームロイド
龍牙 ライフ3500
手2 場 魔導戦士ブレイカー(1) 魔法族の里 伏せ1
「私のターン、ドロー!バトルだ、魔導戦士ブレイカーで、スチームロイドを攻撃!攻撃を受けるとき、攻撃力が500ポイント下がるんだったな!」
「うううっ!」ライフ4000から3400
「ターンエンドだ」
翔 ライフ3400
手5 場 トラックロイド
龍牙 ライフ3500
手3 場 魔導戦士ブレイカー(1) 魔法族の里 伏せ1
「僕のターン、ドロー!僕はモンスターをセット、カードを二枚伏せてターンエンドっス!」
「エンドフェイズに永続罠、王宮のお触れを発動!罠カードは使わせない!」
翔 ライフ3400
手3 場 トラックロイド セットモンスター 伏せ2
龍牙 ライフ3500
手3 場 魔導戦士ブレイカー(1) 魔法族の里 王宮のお触れ
翔が一気に動いたことで、龍牙はセットモンスターをメタモルポットと予測する。
「私のターン、ドロー!私もカードを2枚伏せ、霊滅術師カイクウを召喚!バトルだ、魔導戦士ブレイカーでセットモンスターを攻撃!」
「セットモンスターはマシュマロンッス!戦闘では破壊されないッスよ!」
「なっ?!」ライフ3500から2500
思わぬ反撃を受け、龍牙は驚く。
「ターンエンドだ」
翔 ライフ3400
手3 場 トラックロイド マシュマロン 伏せ2
龍牙 ライフ2500
手1 場 魔導戦士ブレイカー(1) カイクウ 魔法族の里 王宮のお触れ 伏せ1
「僕のターン、ドロー!場の二体のモンスターをリリース!アーマロイドガイテンゴーをアドバンス召喚!ロイドをリリースしてアドバンス召喚した事で効果発動っス!場の魔法・罠カードを全て除外するッス!」
「二枚目の王宮のお触れと強欲で金満な壺が!」
表側表示で存在する魔法族の里、王宮のお触れが除外される。翔がブラフとして伏せていた六芒星の呪縛とワンダー・ガレージも除外される。
翔の目論見は、相手にメタモルポットを伏せていると思わせる事で場に魔法・罠カードを置かせ、それをアーマロイドガイテンゴーで除外する狙いがあった。
モンスター効果への対策カードがあったらうまくいかなかったが…。
「強欲で金満な壺を伏せた!?えっ、どうして?」
訳が分からない秋津。
「メタモルポットと予測したからだと思うッス」
「どうして?2枚ドローしたとしても、その後」
「強欲で金満な壺には、発動後カード効果でドロー出来ないというデメリットがあるッス。だから、メインフェイズ1で強欲で金満な壺を伏せてから攻撃した。そうッスよね?」
翔の解説に対し、青ざめる龍牙。
考えを的確に見抜かれたことで、龍牙は動揺する。
「バトル!僕はアーマロイドガイテンゴーで魔導戦士ブレイカーを攻撃!」
「があああっ!」ライフ2500から1700
「一枚カードを伏せてターンエンドッス」
翔 ライフ3400
手2 場 アーマロイドガイテンゴー 伏せ1
龍牙 ライフ1700
手1 場 カイクウ
「わ、私のターン。ドロー!よし、マジカル・コンダクターを召喚!魔法カード、地砕きを発動!これでアーマロイドガイテンゴーを破壊する」
「…マジカルコンダクターに、魔力カウンターが乗るッスね…」
「このターンで終わりだ!バトルだ、カイクウでアーマロイドガイテンゴーを攻撃!」
「リバースカードオープン!魔法の筒!」
「何だと!ぐぎゃあああああああ?!」ライフ0
心神喪失状態に陥る龍牙と、茫然とする秋津美香。
魔法と罠を封じられ、それでも切り返して勝利。
同年代のはずなのに、何故こうも差があるのか。
前世で地下デュエルを過ごしたことで、翔は『劣勢時でも弱みを見せない』という事を魂に刻み込んでいる。
相手の思考を読み、それを超える。本来あるべき、サイバー流の「リスペクトデュエル」の神髄。その末端に翔はすでに片足を突っ込んでいる。
一方、強力なレアカードという眼に見える力に縋り、魔法と罠を封殺し攻撃を妨害し、それでも勝てなければマジック・ブラストのバーンダメージに縋る龍牙は、決闘者としてあまりにも脆い。
30分後。職員室にて。
「何?!龍牙実習生がオシリスレッドに負けただと!」
「そのようですね。これでは正式採用など…」
「ま、待ってくれ!ぐううっ…」
土門教頭は、顔を真っ赤にして怒り狂う。手駒を増やすという目論見はあえなく失敗。
しかも、その元凶が丸藤翔という事を後に知り、さらに翔に対して敵意を募らせるのであった…。
漫画版にて、恐竜族やサイバー・ダイナソーを使っていた龍牙実習生ですが、魔法を封じる小細工に頼っていたことから拙作では【里ロック】にしました。
魔法封じに着目すれば他にもバリエーションが増やせそうです。ただ、サイレントソードマンやホルスの黒炎竜が龍牙のキャラにあっているかと言われると疑問符は付きますが。
次回は、翔の前世における地下デュエル回をお届けします。
とはいえ、今までの連中と違ってかなりの「大物」です。