引っ越しの為、大急ぎで荷物の準備をする翔。
ようやく、こことおさらばできる。これで、少しは前に進めた。
…と思っていたのだが。
「認めねぇぞ!イカサマしたんだろう!」
蛭川はオシリスレッドへの降格処分となったが、それを受け入れられず、翔の引っ越しを妨害するべく、レッド寮へやってきていた。
内村、安藤は学園を去って、地元の高校への編入を目指す道を選んだ。
「こうなったら、お前の荷物を」
「?!」
後ろから、大きな手が蛭川の肩を掴んだッス。
「弟に何の用だ?」
「?!ま、丸藤亮…」
「お兄さん…」
「引っ越しするんだろう。手伝いに来た」
「そんなっ、悪いッス」
「俺がしたいんだ…それで、これ以上騒ぐというなら、俺が相手になる」
学園でもトップクラスのカイザーと渡り合う気にはなれないらしく、蛭川は無様に逃げ出す。
その様子を、浦塞は見ていた。
「浦塞様、揚羽の荷物の積み込みが終わりました。」
「お疲れ様。ジュースを用意してあるから、皆で飲んで」
「ありがとうございます!」
翔の引っ越しは何とか一日で片付いた。
「…お兄さん、今日はどうもありがとう。」
「気にするな。本当に、強くなったな、翔。」
「それで、明日は休みだけど…。もし良かったら、この部屋に来てくれないかな?」
「??」
「一緒に、朝ご飯を食べたいんだ」
「構わない。何か持って行こうか?」
「いや、僕の方で用意するよ。」
翔が用意したのは、圧釜先輩がやっていたあんぱんを横半分に切って、餡のある方をオーブントースターで温めるという奴である。
そのためにアンパンを買いに来ていた。
「あれ、丸藤。アンパンをわざわざ買うのか?」
「うん。圧釜…がやっていておいしそうだったから。」
「自分だけトースターで焼いて、俺達にはしてくれなかったが…確かにアレは旨そうだ。よし、俺も黒庭さんを誘ってやってみるとしよう。」
休日の朝。やたら旨そうな匂いに誘われ、三沢は早く目が覚めた。
「…一体誰だろう?こんな朝早く…。丸藤、入ってもいいか?」
『構わないッス』
部屋に入った三沢は驚く。
「カイザー亮?!」
「…ラーイエローの三沢か。弟と朝食をとっているところだ。」
「そ、そうだったのか。邪魔したようだ…。」
だが、翔の手に握られている切れ目が入ったアンパン、そしてトースターからおおよその調理方法に思い至る三沢。
「三沢君、購買部のオーブントースターは5000DPで買えるッスよ」
「それは良い事を聞いた!」
この日以降、購買部でオーブントースターの注文、そして休日前にアンパンがやたら売れるようになるのだが、それはまた別の話である。
ラーイエロー寮の揚羽から、話があるとPDAに連絡が張った翔はそちらに向かう。
「浦塞先輩…。」
「よく来てくれたね。早速だけど、私とデュエルしない?」
「受けるッス!」
「ありがとう。それじゃあ、始めようか。」
「浦塞が、翔とデュエル?何のために…?」
お兄さんも見ているから、負けられないッス!
「「デュエルッ!!」」
翔 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
浦塞 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
「先攻、後攻はどうする?」
「では、後攻をもらうッス」
「分かった。では私のターン!手札から、ジェネラルデーモンを墓地に送り、効果発動!デッキからフィールド魔法、万魔殿-悪魔の巣窟を手札に加えて、発動!」
「で、デーモンデッキ?!」
「サイバー・ダークと出会う前に、使っていたデッキだよ。私は魔界発現世行きデスガイドを召喚!効果発動、デッキから効果を無効にしてレベル3の悪魔族を特殊召喚!クリッターを特殊召喚!」
「クリッター…。」
「魔法カード、トランスターンを発動!クリッターを墓地に送り、デッキからジェノサイドキングデーモンを特殊召喚!」
「そのモンスターは!」
「効果はよく知っているみたいだね?墓地に送られたクリッターの効果発動、デッキからデスルークデーモンを手札に加える。永続魔法、デーモンの宣告を発動!さらに永続魔法、天変地異を発動!互いにデッキを裏返してデュエルを進行する。」
「デッキを裏返しっスか…。」
互いのデッキトップがもろ分かりッス。
「ライフを500払って、永続魔法、デーモンの宣告の効果を発動!宣言するのは徴兵令!そしてデッキトップは徴兵令だから手札に加える。」ライフ4000から3500
「一枚カードを伏せて、ターンエンド!」
翔 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
デッキトップ:デーモンの斧
浦塞 ライフ3500
手1 フィールド ジェノサイドキングデーモン デスガイド
魔法・罠 万魔殿 デーモンの宣告 天変地異 伏せ1
デッキトップ:増援
「…僕のターン、ドロー!」
「デーモンの斧を引いたか…。おや。」
「うっ、次のドローがアーマロイドガイテンゴーっスか」
「確か、ロイドをリリースしてアドバンス召喚したら、場の魔法・罠カードを全て除外する効果、だったね。大切に使わせてもらうよ。罠発動!徴兵令!」
「っつ!」
「デッキトップは、当然アーマロイドガイテンゴー。私の場に特殊召喚する!」
「僕は、スチームロイドを召喚!さらに装備魔法、デーモンの斧を装備!これで攻撃力は2800!バトル!スチームロイドで、アーマロイドガイテンゴーを攻撃!ここでスチームロイドの効果発動!攻撃力が500ポイントアップするッス!」
「攻撃力3300。これじゃあ守り切れないね」ライフ3500から2900
「僕はカードを一枚伏せて、ターンエンド!」
翔 ライフ4000
手3 フィールド スチームロイド
魔法・罠 伏せ1 デーモンの斧
デッキトップ:ジェットロイド
浦塞 ライフ2900
手1 フィールド ジェノサイドキングデーモン デスガイド
魔法・罠 万魔殿 デーモンの宣告 天変地異
デッキトップ:増援
「私のターン、ドロー!魔法カード、増援を発動。デッキからLv4以下の戦士族モンスターを手札に加える。切り込み隊長を手札に加え、デッキをシャッフル。」
デュエルディスクからデッキを取り出すと、裏返してシャッフルする浦塞先輩。
「さて、天変地異の効果で再び裏側表示にするよ。ライフを500払い、デーモンの宣告の効果発動。デーモンソルジャーを手札に加える。」ライフ2900から2400
デッキトップが変わるッス。ってあれは!
「じ、迅雷の魔王-スカルデーモン!」
「アドバンス召喚できれば、スチームロイドを倒せるね。ジェノサイドキングデーモン、デスガイドを守備表示に変更してターンエンド!」
翔 ライフ4000
手3 フィールド スチームロイド
魔法・罠 伏せ1 デーモンの斧
デッキトップ:ジェットロイド
浦塞 ライフ2400
手3 フィールド ジェノサイドキングデーモン デスガイド
魔法・罠 万魔殿 デーモンの宣告 天変地異
デッキトップ:迅雷の魔王-スカルデーモン
「僕のターン、ドロー!僕はジャイロイドを召喚!バトル、ジャイロイドでデスガイドを攻撃!」
「…破壊される」
「スチームロイドで、ジェノサイドキングデーモンを攻撃!」
「破壊されるけれど、手札からデスルークデーモンの効果発動!キャスリング!」
手札からデスルークデーモンが出てきて、ジェノサイドキングデーモンの身代わりになるッス!
「浦塞。チェックメイト後のキャスリングは反則だぞ。」
「文句はインダストリアルイリュージョン社に頼むよ。デスルークデーモンを捨てて、蘇れ、ジェノサイドキングデーモン!」
お兄さんが突っ込みを入れるけれど、さらりと浦塞先輩は受け流すッス。
「ターンエンドっス。」
翔 ライフ4000
手3 フィールド スチームロイド ジャイロイド
魔法・罠 伏せ1 デーモンの斧
デッキトップ:ビークロイド・コネクションゾーン
浦塞 ライフ2400
手2 フィールド ジェノサイドキングデーモン
魔法・罠 万魔殿 デーモンの宣告 天変地異
デッキトップ:迅雷の魔王-スカルデーモン
「私のターン、ドロー!ジェノサイドキングデーモンをリリース、迅雷の魔王-スカルデーモンをアドバンス召喚!」
「で、出てきてしまったッス!」
「ライフを500払って、デーモンの宣告の効果発動。神秘の中華鍋を宣言。手札に加える」ライフ2400から1900
「バトル、迅雷の魔王-スカルデーモンで、スチームロイドを攻撃!」
「ううっ…。攻撃されたことで攻撃力が500ポイントダウン。でも罠発動!スーパーチャージ!ロイドが攻撃された事で、二枚ドローするッス!」
「一枚はビークロイド・コネクションゾーンだけど。重なったままでよく見えなかった。確認させてもらうよ。ああ。見えなかったそっちが悪い、というなら構わないけれど、どうする?」
「僕が二枚目に引き当てたのは、ドリルロイドッス…うっ」ライフ4000から3800
「確かに天変地異を発動している最中に、複数枚ドローして重なって見えなかった場合でも、相手に公開する義理はあっても義務はないけれど。見せない決闘者なんているのか?」
「一人だけ、心当たりがある。」
その言葉を聞いた揚羽君は思わずお兄さんを見つめるッス。
「奇遇だね、私も心当たりがある。ターンエンドだよ」
誰も名前を出さなかったけれど、圧釜の事ッスね。
翔 ライフ3800
手5 フィールド ジャイロイド
魔法・罠
デッキトップ:サイクロン
浦塞 ライフ1900
手3 フィールド 迅雷の魔王-スカルデーモン
魔法・罠 万魔殿 デーモンの宣告 天変地異
デッキトップ:アヌビスの裁き
「僕のターン、ドロー!速攻魔法、サイクロン!僕は永続魔法、天変地異を破壊するッス!」
「こっちを破壊?」
これで、デッキを裏側表示に戻せるッス!
「魔法カード、ビークロイド・コネクションゾーンを発動!手札のスチームロイド、ドリルロイド、サブマリンロイドを墓地に送り、スーパービークロイドジャンボドリルを融合召喚!バトル!ジャンボドリルで迅雷の魔王スカルデーモンを攻撃!」
「…」ライフ1900から1400
「ジャイロイドでダイレクトアタック!」
「…絶体絶命、って所だね」ライフ1400から400
「ターンエンドっス」
翔 ライフ3800
手1 フィールド ジャイロイド ジャンボドリル
魔法・罠
浦塞 ライフ400
手3 フィールド
魔法・罠 万魔殿 デーモンの宣告
「私のターン、ドロー!私は切り込み隊長を召喚。効果発動、手札からデーモンソルジャーを特殊召喚。」
「ここで展開してどうするつもりっスか?」
「速攻魔法、神秘の中華鍋を発動。切り込み隊長をリリースして、1200ポイント、ライフを回復」ライフ400から1600
「…諦めたんスか?」
「あいにく、諦めは悪い方なんだ…。永続魔法、デーモンの宣告の効果発動!」ライフ1600から1100
ええっ?!
「あ、当たるはずがないッス!」
「どうして、そう思うのかな?」
「だ、だって!確率は何分の一だと思っているんスか!」
「…ああ、だから。サイクロンで天変地異を破壊したんだね。デーモンの宣告を残したところで当てられるはずがない、と。ドローエンジンより情報を知られたくないというのもあったんだろうけど。」
「…当たるわけが。」
そんな僕を浦塞先輩は、真剣な顔で見つめるッス。
「丸藤君。確率は半分なんだよ。」
「えっ?」
「直接欲しいカードを宣言するか、デッキに残っている手札増強カードを宣言するかの。私が宣言するのは…装備魔法、堕落!」
カードをめくる浦塞先輩。めくられた、カードは…。
「堕落!?」
「的中!私の場にデーモンがいる事で、装備魔法、堕落を発動!ジャンボドリルは効果でも破壊されなくなっているけれど、コントロール奪取には無力!」
「うっ」
「装備魔法、デーモンの斧をデーモンソルジャーに装備!バトル、ジャンボドリルでジャイロイドを攻撃!」
「でも、ジャイロイドは1ターンに1度、戦闘では破壊されないッス!」ライフ3800から1800
「これで終わり!行け、デーモンソルジャー!ジャイロイドを攻撃!」
「うわあああああ!」ライフ0
ま、負けた。裏サイバー流でもない、本気ではないデッキに…。
「本気だよ。」
「…へ?」
「デュエルする以上は、そのデッキでやれることをやるだけ。本来のデッキだったらどうのこうの、というのは言い訳に過ぎないからね。揚羽、今のデュエルで掴めたものはある?」
「はい!」
「それは良かった。ラーイエローは通過点、オベリスクブルーへの昇格を目指して頑張ってね。」
うう、成長したと思ったけれど…ま、まだまだ上には上がいるッス…でも、僕は頑張るッスよ!
一方、オシリスレッドから昇格した生徒が出たことで、一部の生徒はやる気を出していた。
「サイクロンを発動!第一の棺を破壊!そしてバトルだ!ヒューマノイド・ドレイクでセットモンスターを攻撃!」
「攻撃宣言時にリバースカードオープン!転生の予言!墓地から第一の棺と第二の棺をデッキに戻す!そしてセットモンスターは不幸を告げる黒猫!デッキの上に第一の棺を置く!」
「だとしても、次のターンに伏せたところで」
「罠発動!強欲な瓶!カードを1枚ドロー!」
「何?!」
「罠発動、砂塵の大竜巻!これでフィールド魔法、海を破壊!そして砂塵の大竜巻の効果で、カードを一枚伏せる!」
「くっ、スピリッツ・オブ・ファラオが出てきたら打つ手がない…!ターンエンドだ!」
「うおおおおおっ!行けっ!ブラキオレイドス!金色の魔象を攻撃ぃ!」
「リバースカードオープン!決闘融合-バトル・フュージョン!」
「くそっ!だったらリバースカードオープン!決戦融合-ファイナル・フュージョン!」
[newpage]
デッキトップ操作なしで、デーモンの宣告で当てるというのは実力者感があって好きです。もっとも連発されるとご都合主義を感じてしまうので、デュエル終盤に一回きりというのが良い塩梅だと思っています。