丸藤翔のやり直し   作:交響魔人

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ライフが減ればリアルダメージを受ける地下デュエルなら、どういうデッキだと生き延びやすいのでしょうか?

ノーダメージで勝ち過ぎたら対策されてしまって、長生きできるとは思えません。


翔の過去!

 

 

……燃える三眼が、この世界の『過去』のビジョンを見つめる。

 

 

 2人の少年と1人の少女が、醜悪な表情で丸藤翔に迫っている。

 

 

「なぁ、デュエルアカデミアに行ったら中々会えないよなぁ?だったら、思い出に俺とデュエルだ」

「文句ないよねぇ?」

 

 

 そう言っているが、丸藤がデュエルを断れば暴行を加えるつもりでいる。

 

 

「う、うう…」

 

 

「「デュエルッ!!」」

 

翔 ライフ4000

手5 場 

死堂 ライフ4000

手5 場 

 

 

 

「俺の先攻!儀式魔法、高等儀式術を発動!デッキからレベル3の六武衆の侍従とレベル4の闇魔界の戦士ダークソードを墓地に送り、ガルマソードを儀式召喚!」

「が、ガルマソード…」

「魔法カード、闇の量産工場を発動!墓地の通常モンスター2枚を手札に戻す!さらに、手札の六武衆の侍従を捨てて装備魔法、破邪の大剣-バオウをガルマソードに装備!」

「こ、ここ攻撃力3050ッスかぁ?!」

「俺はこれでターンエンドだ!」

 

 

翔 ライフ4000

手5 場 

死堂 ライフ4000

手2 場 ガルマソード 破邪の大剣-バオウ 

 

 

「僕のターン、ど、ドロー…。も、モンスターをセット、カードを一枚伏せてターンエンドっス…」

 

 

 

 

翔 ライフ4000

手4 場 セットモンスター 伏せ1

死堂 ライフ4000

手2 場 ガルマソード 破邪の大剣-バオウ 

 

 

「俺のターン、ドロー!俺は手札の闇魔界の戦士ダークソードを捨てて、装備魔法、閃光の双剣-トライスをガルマソードに装備!攻撃力は500ポイント下がるが、二回攻撃出来る!」

「ええっ?!」

「バトルだ!行け、ガルマソード!セットモンスターを攻撃!」

「サイクロイドが!」

「そして、ガルマソードでダイレクトアタック!」

「うわあああああっ!」ライフ4000から1450

 

 

 ライフが減った事で、丸藤翔の顔色が悪くなる。

 

 

「な、なにが起きているッスかぁ…?」

 

 

 

 そんな翔を、観戦していた少年の一人が意地の悪そうな顔で解説する。

 

「そういえば言っていなかったな。このデュエルで負けた奴は、魂を吸い取られて廃人になるんだ!」

「そんなっ?!ど、どうして!どうしてそこまでするんスか!僕が何をしたっていうんスか!」

 

 

 黒髪ツインテールでソバカスの多い、ぼってりとした体格の少女が腰に手を当てて言う。

 

「あんたごときが、デュエルアカデミアの筆記試験に合格したからよ!あんたが実技試験に出られなければ、繰り上がりで一也(かずや)が実技試験を受けれるのよ!」

「そ、そんな…」

 

 

「そういう事だ。俺はお前を踏み台に、伝説の決闘者になる!あのラフェールさんのような凄腕の決闘者に!カードを一枚伏せてターンエンド!」

 

 

 

 

翔 ライフ1450

手4 場 伏せ1

死堂 ライフ4000

手0 場 ガルマソード 破邪の大剣-バオウ 閃光の双剣-トライス 伏せ1

 

 

 

「僕のターン、ドロー!う、うううっ…。ま、魔法カード、パワー・ボンドを発動!」

「何ぃ?!」

 

 翔が発動した魔法カードを見て、観戦していた二人は思わず声を上げる!

 

 

「死堂さんっ?!」

「一也っ!」

 

「スチームロイドとジャイロイドを融合!スチームジャイロイドを融合召喚!パワー・ボンドで攻撃力は二倍になるッス。」

「だ、だが!このエンドフェイズにお前はパワー・ボンドのリスクでダメージを受ける…!」

 

 

「サレンダーして。」

「は、はぁ?」

「僕は、僕は。クラスメイトを廃人になんてしたくないッス。だから…」

「丸藤…。」

 

 

 沈痛な表情を浮かべる死堂は直後、豹変して嘲笑する!

 

 

「ダッハハハハハ!サレンダーするわけねぇだろ!俺とお前がクラスメイトォ?俺はお前なんてクラスメイトと思ったことなんてない!踏み台、いや!材料だぁ!」

「っつ!だったらバトル!スチームジャイロイドで、ガルマソードを攻撃!」

「罠発動!ディメンションウォール!戦闘ダメージはお前が受けろ!」

「う、うわあああああああああ?!」

 

 

 

 魂を吸い取られていく、『この世界線の翔』は、虚空に向かって手を伸ばす。

 

「おにい、さ…ん…」ライフ0

 

 

 

 

「やったな!これで119番が失格になれば!」

「繰り上げで、一也が実技試験を受けれる!」

「ああ!よし、ずらかるぞ!」

 

 

 

 中学三年生にして、クラスメイトを廃人にするという悪行をしておいて、その場から逃走する少年達と少女。

 

 

 

……なるほど、そういう事か。

 

 彼らの目論見がうまくいっていれば、確かに試験を受ける事は出来たようだ。最も、燃える三眼の介入によりその目論見は失敗してしまうのだが。

 

 

……ライフが尽きるか、デュエルに敗北すれば取り込まれた魂を食い尽くして廃人にする…事情は把握した。故に翔の魂だけ消滅した…。

 

 

 

 

 

 

 

 その夜。翔は悪夢を見ていた。

 前世で、どうしようもないおろかな自分が、堕ちるところまで堕ちた、忌まわしい記憶。

 

 

 地下デュエル。非合法な衝撃増幅装置をつけさせられ、金持ちの道楽のために命懸けで戦わされる、リスペクト精神など通じない世界。

 

 

 行き来は制限され、安物のベッドと狭い部屋で寝泊まり。

 日々の糧として、注文すれば望んだ食事を提供してくれるが、すべて自腹。

 

 これが最後の晩餐になるかもしれない翔は、海老フライや熟成チーズ、サラダなどを好んで注文していた。

 食べている時だけは、将来への不安なども忘れる事が出来たからだ。

 

 

 デッキを強化する為のカードは、時折提供される物を使うしかない。

 

 

 

 対戦が組まれた。勝てば、今回は48万円が払われる。デュエルに勝てばそれだけ貰えるというのであれば、一見実入りは良さそうに見えるだろう。

 だが、ダメージを受けるたびに、ライフを払うたびにダメージを受ける。ライフを回復しても、体と心の傷は、癒えない世界。

 

 当然、保険などないので、治療費でわずかな貯えなどあっという間に吹き飛ぶ。

 

 

『さぁ、本日のセミファイナル!始ッ!』

 

 

 相手は…幼馴染と一緒に地下に落とされたという男の子だったッス。僕よりも年下で、まだ目に光があるッス。

 

 

「「デュエルッ!!」」

 

翔 ライフ4000

手5 場 

少年 ライフ4000

手5 場 

 

 

「僕の先攻、ドローッ!僕は魔法カード、増援を発動!デッキからマジック・ストライカーを手札に加える。そして墓地の魔法カードを除外することで、マジック・ストライカーを特殊召喚!さらに、アーマー・ブレイカーを召喚!場のマジック・ストライカーにユニオンさせる!マジック・ストライカーに装備魔法、ミスト・ボディを装備!」

 

 

 

 

『これはぁ!相手にダイレクトアタックが出来るマジック・ストライカーに、戦闘破壊耐性を付与したぞ!彼がこの地下デュエルに落とされて連戦連勝記録を支え続けたコンボが完成した!』

 

『あーあ、また勝つのか』

『一体、何時になったらあいつを負かして再起不能にできるんだ!』

 

 

 

「僕はカードを2枚伏せて、ターンエンド!」

 

 

翔 ライフ4000

手5 場 

少年 ライフ4000

手1 場 マジック・ストライカー アーマー・ブレイカー ミスト・ボディ 伏せ2

 

 

「僕のターン、ドローっス。サブマリンロイドを召喚。このカードは、相手に直接攻撃が出来るッス。サブマリンロイドでダイレクトアタック!」

「う、ああああああああああ?!」ライフ4000から3200

 

 

 地下デュエルにおいて、ダメージを避けるのは当然。というのも、ライフ800でも信じられない苦痛を受けるから。

 

 

「サブマリンロイドを守備表示に変更。カードを2枚伏せてターンエンドっス。」

 

 

 

 

 

翔 ライフ4000

手3 場 サブマリンロイド 伏せ2

少年 ライフ3200

手1 場 マジック・ストライカー アーマー・ブレイカー ミスト・ボディ 伏せ2

 

 

 

 

「ぼ、僕のターン…ドロー!永続罠、追い剥ぎゴブリン!そして永続罠、押し売りゴブリン!」

 

 

『これは!マジック・ストライカーが戦闘ダメージを与えるたびに、相手の場のカードを一枚破壊し、押し売りゴブリンで魔法・罠カードを手札に戻し、追い剥ぎゴブリンで手札を破壊する必殺コンボだぁ!』

 

「バトル!マジック・ストライカーでダイレクトアタック!」

 

 

 良いコンボっス。でも、それだけなら…。

 

「永続罠、デモンズチェーンを発動するッス。これでマジック・ストライカーの攻撃と効果を封じるッス。」

 

 正しい・リスペクト・デュエルを重んじる決闘者なら、まず使ってはいけないカード。でも、使わないと翔の命が無い。

 

 

「?!くっ、カードを一枚伏せて、ターン、エンド」

 

 

翔 ライフ4000

手3 場 サブマリンロイド デモンズチェーン 伏せ1

少年 ライフ3200

手1 場 マジック・ストライカー アーマー・ブレイカー ミスト・ボディ 追い剥ぎゴブリン 押し売りゴブリン 伏せ1

 

 

 

「僕のターン、ドロー!」

「罠発動!はたき落とし!ドローカードは墓地に送れ!」

 

 引いたカードを即座に墓地に送る翔。

 

「サブマリンロイドを攻撃表示に変更して、ステルスロイドを召喚。バトル!サブマリンロイドでダイレクトアタック!」

「あぎゃあああああああっ!」ライフ3200から2400

「ステルスロイドで、マジック・ストライカーを攻撃」

「だけど、ミスト・ボディで戦闘破壊は免れる!っがああああああっ!」ライフ2400から1800

 

 

 衝撃増幅装置から、紫電が迸り、相手の少年を痛めつける。

 心も、体もボロボロになる。こうならないために、少年は戦闘ダメージを回避したうえで、ダイレクトアタックできるマジック・ストライカーを主軸に置くことで立ち回って来た。

 

 だが、相手が悪かった。

 

 

「バトル終了ッス、ステルスロイドの効果発動、場にロイドが居る状態でこのカードが戦闘を行った時、場の魔法・罠カードを一枚破壊するッス。アーマー・ブレイカーを破壊。サブマリンロイドの効果発動、守備表示に変更するッス。僕はこれでターンエンドっス」

 

 

 

 

翔 ライフ4000

手2 場 サブマリンロイド ステルスロイド デモンズチェーン 伏せ1

少年 ライフ1800

手1 場 マジック・ストライカー ミスト・ボディ 追い剥ぎゴブリン 押し売りゴブリン

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ…僕のターン、ドロー!マジック・ストライカーを守備表示に変更。カードを一枚伏せる。ターン、エンド」

 

 

 

 

翔 ライフ4000

手2 場 サブマリンロイド ステルスロイド デモンズチェーン 伏せ1

少年 ライフ1800

手1 場 マジック・ストライカー ミスト・ボディ 追い剥ぎゴブリン 押し売りゴブリン 伏せ1

 

 

「僕のターン、ドロー。」

「カウンター罠、強烈なはたき落とし!ドローカードはまた捨ててもらう!」

「僕はエクスプレスロイドを召喚。効果発動、墓地のロイドを二枚手札に戻すッス。はたき落としと強烈なはたき落としで墓地に送られた、トラックロイドとドリルロイドを手札に戻すッス。」

「な、なな…」

「魔法カード、ビークロイドコネクションゾーンを発動するッス。場のステルスロイドとエクスプレスロイド、手札のトラックロイドとドリルロイドを墓地に送り、スーパービークロイド-ステルス・ユニオンを融合召喚!」

「攻撃力、3600!」

「効果発動、マジック・ストライカーを装備するッス。バトル!」

 

 

 

 相手の少年が、絶望的な表情を浮かべるッス。

 

 

『いいぞー!』

『ようやく、ようやくあの憎たらしい小僧がくたばるか!』

 

「や、やめてくれっ!僕は借金を返して、ここの事を公表して…」

「だから?」

「えっ?」

「ここでわざと負けたら、僕の命が無いッス。」

「っつ!お前は、この地下デュエル場がまともだと思って」

「思ってはいないッス。でも、この地下デュエル場以外、もう行き場が無いッス。そもそも…ここの事を公表すると言っている人を。ここの運営者が大人しく逃がしてくれると思っているんスか?」

「?!」

「ステルス・ユニオンでダイレクトアタック!」

「う、うわあああああああああ!」ライフ0

 

 

 周りの大歓声、僕を応援しているというより、対戦相手が気に入らなかったからこその声援。

 そんな中、翔の耳に、少女の絶叫が届く…。

 

 

 

「?!」

 

 僕の眼が覚めたッス。

 僕は即座にトイレに駆け込み…。胃の中の物をぶちまけたッス。

 

 我ながら、細い神経であることに嫌気がさすッス。

 

 

 

 

 

 

 同時刻。星辰のかなたにて。

 燃えるような三眼は、その姿を銀髪少女の姿に変えつつ、送りこんだ丸藤翔の魂を見つめていた。

 

 

 

 コンソールをたたき、様々なシミュレーションを行う。

 

 その中には、『丸藤翔の代わりに死堂一也が入学した場合』のシミュレーションもあった。

 入学初日に高田達にデッキを奪われ、食って掛かるも腐敗した教員たちは死堂が悪いと決めつけて相手にしない。

 

 その後、高田の取り巻きを金属バットで闇討ちして高田を挑発、奪ったデッキの返却を求めたが『もう売り飛ばして金に換えた、大した額にならなかった』という言葉で激昂。

 

 デュエルアカデミアの屋上から高田を突き落とし、高田を殺害。隠ぺいしようとするも、国崎というフリーのジャーナリストが記事にして大事件になり本校は閉鎖。

 三幻魔を復活させるという影丸理事長の計画が根底から破綻する、というシミュレーション結果が出ていた。

 

 

 それは燃える三眼にとって、好ましい展開では無かった。

 

 

 

『…定着は問題なし、と。とはいえ、肉体と魂が一度分離し、同一人物とはいえ並行世界の魂を定着させたことで、やや悪意にさらされますかぁ…。』

 

 

 自分たちとは異なる存在。最も『どこがどう異なるのか』を明確に指摘出来ないが、『どこか違う』存在となってしまった丸藤翔。

 相手を一方的に蔑み、傷つけ、悦に入る。そのような荒廃した精神性を持つ人間からは、丸藤翔は忌み嫌われ、差別され、迫害される。

 

 

『最も、そのような精神性を持つ人間ばかりではありませんがねぇ。ん?』

 

 

 違和感を感じ、詳しくデータを分析する燃える三眼。

 

 

『あーもう、前任者はしっかり管理しておいてくださいよぉ。三幻魔編までの記憶と【チェーンバーン】と【ローレベル】と【メタビート】だけおいて、憑依させるべき魂を別の世界線に転送しちゃっているじゃあ無いですかぁ…。まぁ、この程度の人間が何をしようと世界に影響は出ませんけど。』

 

 




この世界線の翔と、地下デュエルの一幕をお届けしました。
闇のゲームを仕掛けられたのに、相手を気遣える『この世界線の翔』でしたが、その優しさが仇になってしまいました。
地下デュエルで翔に幼馴染を『壊された』少女は翔に復讐しようとしますが、その前に地下デュエルで他の選手に『壊されて』しまいました。



遊戯王の二次創作だとたまに「デッキを奪う」と言い出すキャラがいますが、カードゲームの重要度がはるかに高いあの世界でデッキを奪うのは相当恨まれると思います。
あの世界、誰とは言いませんが『看守の暴行』より『デッキ没収』の方が耐えられないという奇特な人も居ますからね。

次回は、実技試験でバーンデッキを使った受験生が再登場します。
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