皆さんはじめまして、知っている方はどうもです。
オノサカです。
今回ちょっとした小説に挑戦してみました。
初めてなので至らない点も多々あると思いますが、生暖かい目で見守ってくれると幸いです。
─────────────────────────
透き通るような青みを帯びた空。その中で佇む赤き円盤。地上には紅色の花、ツツジが咲いており、そよ風を受けゆらゆらと揺れている。
突如、その豊かさは一転する。そよ風は暴風と変貌し、ツツジは煽られ、花弁が一枚、一枚と散ってゆく。
大空には、この世の物とは思えない巨大な物体、いや"巨人"と言った方が正しいだろうか。体は鋼鉄のような物体で覆われており、頭部には長く伸びた二本アンテナ、腕、脚それぞれの関節には布が掛かっている。それが地上を目掛けて真っ逆さまに落ちてきていたのだ。
「だから言ったろ!?まだ早いって!」
辺りに声が響く。声質からみて相当焦っているようだった。そしてこの声は巨人に向けて発せられたもののようだ。
また巨人の内部、コックピットには1人の少年が先程の声の主と話している。両手は忙しなく動いておりレバー、画面に触れていた。右、左へと何度も動かすが巨人はただ落ちるだけ。
コックピット内が青から赤に染まり、《WARNING》と表示される。
「なんとかして再起動しろ!って…おいおい!前!」
「あ」
爆音とともに、辺りに砂が巻き上がる。
残ったツツジは砂を被ったが、しばらくすると何事もなかったかのようにまた、ゆらゆらと揺れ始めた。
─────────────────────────
灼熱の球体は顔を隠し、白い光を放つ球体が顔を出す。辺はすっかり黒く染まり、人々が寝静まる時間。
住宅街の一室は微かにまだ光があった。室内では少年が机に向かって何かをしている。
「もう少し…あとちょっとでガンプラが完成する…!」
ガンプラ──機動戦士ガンダムシリーズに登場するMS、いわば巨人。それのプラモデルだ。(一部、人型ではないものもいるが)今世間では人気を集め、大人から子供まで楽しめるホビーとなっている。また、塗装、改造なども可能。完成度を競う世界大会なども開催されている程だ。
少年はそれの制作作業中。かれこれここまで一ヶ月弱掛かっている、早く完成させたいと思うのもは無理もない。
「……できた…」
丁寧にその作品を置き、塗装が剥げていないか念入りに確認する。
グフと呼ばれるガンプラをベースに改造したそれは、灰色を基調としたカラーリングに軍艦色でのスプリッター迷彩。バーニアはオレンジの蛍光色。そして赤い1つ目が輝いている。
少年が作るには少し渋すぎる感じもするが、好みは人それぞれ。
一通り確認し終え、時計を確認すると、針は3:00を指していた。
「やば、流石に寝ないと…」
明日はガンプラコンテストに作品を持っていかなかれば行かない訳で、疲れが出てしまっては困るのだ。
ワクワクする気持ちを抑えながら少年は眠りについた。
─────────────────────────
太陽が顔を出す、空は次第に青みを帯びる朝の訪れだ。
目覚まし時計を止め、少年はベットから起きる。そして、紺色カーテンに手を掛け、開ける。部屋に日差しが差し込み、室内に色を持たせてゆく。
「んぁ…行くかぁ…」
机の上に置いてあるグフを丁寧に包装し鞄に入れる。そして1階へと足を進め鏡で自分の容姿を確認する。
黒い短髪に薄紅色のメッシュが入っていて、瞳は同じく薄紅色。
左腕にはめている黒色の時計には、"斧 紗伊都(オノ サイト)age 15"と刻まれている。
そして靴を履き玄関の扉に手を掛けようとした時、背後から母親の声がした。
「サイト、待ちなさい!忘れ物よ」
そう言ってポーチをサイトのベルトへと付ける。母親はいつもサイトが出掛ける時に決まってこれを付けてくれる。理由を聞くと、"昔、貴方が付けてた物よ きっと貴方を助けてくれる"と言う。
「行ってきます、かぁさん」
「行ってらっしゃい」
母親が手を振るのを背にサイトはゆっくりと扉を開けた。
─────────────────────────
会場に着くと、そこにはモデラーだけではなく、自分と同じ歳の子や、女性のグループ、家族で来ている人もいた。
サイトはその雰囲気に圧倒されそうになるが一つ言えるのは皆、同じ目的でガンプラが大好きだということ。それが感じられるだけでもここに来た価値は充分にあると思った。
また、展示されている作品も見事の一言。
各部のエッジ出し、塗装技術、基本工作の丁寧さどれを取っても目を見張る物ばかりで、サイトの視線は釘付けになる。
「こんな風に作れたらなぁ…あ、受けつけしなきゃ」
我に返ったサイトは展示されている作品を跡にし、グフを取り出して受付へ向かう。しばらく待っていると奥の方から黒いハットを被ったドズル・ザビのような大柄な男が出てきた。ずっと見ているとその威圧差ゆえ、夢に出てきそうだ。
サイトはその迫力に少々怯えながらも声をかける。
「あ、あのぅ…」
大柄な男はこちらに気づくとその威圧差とは裏腹にニッコリと微笑んだ。
「おぉ、ようこそ」
「私はこの店の店長である、大原 豪一(オオハラ ゴウイチ)と言う者だ、っとコンテストの受付かな?」
サイトは剛一の透き通るような声に一度ぽかんとするが、すぐに"はい、そうです"と答えた。
すると剛一はまた微笑みコンテストの受付用紙を手渡し、丁寧に注意事項などを説明した。
書き終えるとサイトはペンを戻し作品を展示しようと、するが剛一に引き止められる。
「あれ…君もしかして前の…」
そう言われたサイトは何処かで会っただろうかと記憶を巡らせるが答えは出てこない。
当然だ。サイトは今日"初めて"剛一と会うのだから。
「すみません、多分人違いです…」
サイトは頭を下げてそう答える。いくら初対面と言えど聞かれて何も答えないのはよくない。これはサイトなりのケジメであり、心に刻んでいることだ。
「あぁ、いやこちらこそすまない 展示の邪魔をしてしまったよ、悪いね」
剛一は少し納得のいかない様子だったが、これ以上突き詰めるのも良くないと思い話を切り上げた。
そしてサイトはというと、剛一に一礼し作品展示へと戻っていた。
グフの腰関節に開いている3ミリ穴にベースを差し込みポーズを付ける。ポーズと言っても派手な物ではなく、シンプルな素立ち。頭部から足先にかけて、Sを描くように体制を整え、赤いモノアイがこちらを睨んでいるように調節する。
作品を評価してもらうのだ。どこを一番魅せたいかを最低限の動きで表現する必要があるのだ。
「できた…」
(よし…お楽しみと行きますかぁ…!)
ケースを閉めて展示を終える。だがこれで終わりではない。
ここに来た目的はもう一つある、それは技術の習得。
前述の通り、ここには多くの作品がある。
それを見るだけで終わるのは余りにも勿体ないのだ。
サイトは服のポケットからメモ帳を取り出し、先程見れなかった作品の元へと向かう。
「はぁ〜…幸せ…」
ケースの前でメモを取りながら、時々頬に手を当てる。
美味しいものを食べてほっぺが落ちる、なんて言葉があるが、サイトは今それに似た感覚で満たされていた。
「お、もう最後。」
サイトはその作品へと目を写す。
そこにはトリコロールカラーを基調とし、鋭い二本のアンテナ、薔薇のマークが刻印されたシールドを装備している「RX-78-2 ガンダム」の姿があった。
基本工作も見事なもので、カーモデルの技法を用いた塗装は美しく、かつ力強い印象を受ける。
そして作品の横にはトロフィーが置かれていた。
サイトはトロフィーを見るがその刹那、今まであった笑顔は消えた。
「第1回GBNガンプラ選手権、優勝…」
GBN。今やガンプラに続く人気ホビーの一つである。ガンプラを読み込み、個人データが入った"ダイバーギア"を通してネット世界にアクセス、そして意識移す、というものだ。
また、ネット世界での用途は様々である。
個人で最強を目指すも良し、"フォース"と呼ばれるチームを組むも良し、又バトルせず過ごすも良し。
俗に言う"ガンプラは自由"というやつである。
「ガンプラ…バトル…」
「…ッ!?」
"バトル"と呟いた瞬間、ノイズが走ると共に誰かの声が聞こえてくる。
どこか聞いたことがあるような、懐かしい声。
『お前のせいだ…』 『なぜこんなことを…』
「今のはいったい…」
ノイズが治まり、顔を上げる。
ケースの鏡に写った自身の目にはくっきりとクマができていた。
相当疲れているのだろう。
夜遅くまでガンプラを制作していたのだ、睡眠をとったといえ、疲れないハズがない。
もう帰ろうかと、カバンを持ち直し作品を横目に脚を進める。
突然、背後から話しかけられた。
「このガンプラは君が作ったん?」
後ろを振り向くとボサっとしたした黒色の髪の少年が立っていた。
真っ白い制服に青いネクタイを付けており、どこか大人びた印象があった。
「えっと…はい、そうです」
サイトがそう答えると、少年が寄ってきた。
「ええ出来やな…どうや?この後お茶でも。ちょうど一席余ってたんや。」
「このグフについても色々知りたいし。」
そう言いながら黒髪の少年は作品展示のとなりにあるフリースペースへと案内してくれた。
サイトは強引だなと少し警戒したが、悪い気はしなかった。同じガンダム仲間と語り合えるのだ、断る理由はない。
「あれ、テンマ君。その子は?」
テンマが案内してくれた席には肩まで伸びたピンク色の髪の少女が既に座っていた。
ネクタイの変わりに赤いワッペンを付けており、テンマより少しだけ幼い印象を受けた。
「おう、トウカ。この子はさっき合った子
でな…えっと…」
「サイトと言います。」
「サイト君や。」
トウカが名前も聞かずに連れてきたのかと呆れ、手を横に振る。
「ごめんね〜彼、少し強引だから…なんか奢るから…ね?」
「いえ…お構いなく…」
テンマがテーブルの上から水の入ったコップを手に取りグッと飲み干す。
そしてパチンと手を叩いた。
「で…トウカさっき見たグフ覚えとる?」
「うん、覚えてるけど、それが?」
「実はあれ…この子、サイト君が作ったそうやで」
トウカは紅茶を口に含んでいたが、ケホッケホッと蒸せる。
驚きの目をサイトに向けた。
「らしくないですよね…」
サイトが頭を掻きながらボソッと呟く。
15歳の少年が作るには渋すぎると思うのは当然だろう。それ自体はサイトも少しわかっていたが、それが自分の作風の良さだとも感じていた。
「いやいや、そうじゃなくて!あれを一人で!?」
「凄いよ!」
「え」
そう。迷彩塗装、特にスプリッター迷彩を施すためには正確なマスキングかつ、迷彩のパターンを意識する必要がある。そして黒立ち上げを施しているので手間はざっと2倍。それを一人の15歳の少年が行ったというのだ。
トウカにはその事実が信じられなかった。
サイトはと言うとそれが嬉しくて仕方なかった。自分の周りにはガンプラ仲間がいなくて作品の感想を共有できることができない。それが今こうして話し合えていることが嬉しかった。
(もっとこの人達と話したい…)
サイトがそう考えていると、周りの人が急に増えてきた。手元の時計を見ると両方の針が12を刺していた。お昼時だ。そう言われればお腹が減っている気もする。
「人も増えてきたことだし、ちゃちゃっとご飯食べて"あそこ"行かへんか?」
「良いんじゃない?私もそろそろ行きたいと思ってたし。」
トウカがちょうど運ばれてきた、パンケーキをナイフとフォークで綺麗に切り分け口運びながらそう言う。
「サイト君もどうや?その右のポーチはそのためのもんなんやろ…?」
「右のポーチ…」
サイトがポーチを開けると一体のガンプラが入っていた。
鬼神のような6本の突き出たアンテナ、右手にはライフルを装備しており、鮮やかなトリコロールカラーの"ガンダム"が入っていた。
(いや…これ…僕作った覚えないんだけど……)
「先に行くで〜」
「さぁっサイト君も行こ」
「えっあっ待ってくださいよ!」
急いでポーチにガンダムをしまうと、先に行ってしまったテンマを追いかけるために足を進める。
─────────────────────────
「……結局来てしまった」
サイトが今いるのは、作品展示会場の奥にあるGBNブースだった。ダイブ用の機械が左右に8基ずつ、計16基並んでいた。
室内の青い光がどこか幻想的な雰囲気をかもし出していた。
「二人は先に行ってしまうし…音声に従えば大丈夫だよね…」
No3と書かれた媒体の席に座り、先程登録を済ませておいた"ダイバーギア"をセットする。
最後にバイザーを頭に装着。
ガンプラをセットするとガンプラが黄色の粒子に包まれ、読み込みが始まる。
そして無機質なシステム音が流れ始めた。
ID date convert
please scan your GUNPLA
login date confirmed
Are you ready?
Dive start now!
目を開けると、大きなホテルのエントラスのような場所が広がっていた。ゲームで例えるなら集会所だろうか。
辺りを見ると動物の姿をした人やジオン軍の軍服を着ている人がいた。姿は違えどこの世界にいるということは皆ガンプラが好きだということ。
「ここが…GBN…」
サイトが周りの光景に見惚れていると、前からテンマとトウカが歩いてきた。
身なりは制服からテンマはオーブ軍の青と白の軍服へと。トウカは"ガンダム00"の登場人物フェルトが着ているピンク色の羽織りを着ていたが、容姿は変わっていなかったので一発で二人だとわかったのだ。
「おっサイt…オノサカ君であってるよな?」
「いや、僕の名前はサイトですけど…」
「そうじゃなくてダイバーネームやで」
テンマにそう言われ、サイトは手元の画面の「メニュー」と書かれた項目を押す。
そして個人データを確認した。
ダイバーネーム オノサカ
性別 男
ランク───
ダイブ回数 莠悟鴻逋セ莠泌屓
「なに…これ…」
サイトの背筋に冷たいものが走る。
ランクがないのはまだ分かる。サイトは今日初めてGBNをするのだから。
おかしな点は2つ。決めた覚えのないダイバーネーム、そして文字化けしているダイブ回数。誰かのデータと入れ代わってしまったのだろうか。
あれやこれやと考えていたがそれはテンマの声によって遮られる。
「よっしゃ、オノサカ君ガンプラバトルでもどうや?」
「テンマ君!?彼まだ今日始めたばかりなのよ!?」
トウカが驚いた声をあげる。自分達はBランクで彼オノサカは今日始めたばかり。最悪トラウマを植え付けることになるかもしれない。彼女自身もそういう人を見てきたから尚更。
「何も一対一でやろうなんて言うてないやで、オノサカ君に操作を教えてあげて彼がミッションをやるのを見る感じや」
「勿論、危なくなったら助ける」
「それにな…」
"彼は持ってるで"
「最初からそう言ってよ…」
トウカは胸を撫で下ろすと同時に彼、テンマの"勘"は妙に当たるので怖いと感じていた。
そしてオノサカの方へと、くるりと振り返る。
「オノサカ君もそれで大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
こういうバトル系のゲームは苦手としていて避けてきたが、ガンプラでどう戦うのかという好奇心の方が勝っていた。
それにゲームをプレイしていく内にこのアバターデータの持ち主とも出会えると思ったからだ。
「決まりやな、ミッション受注しといたし、格納庫へ移動しよか」
「相変わらず、そういうとこは早いのね…」
テンマがそう言うと、画面を操作する。
景色がロビーから表玄関、噴水、最後に格納庫へと変化していく。これもGBNならではの移動方法である。
格納庫にはMSドックが左右6基ずつ設置されており、その内3つには巨人、MSが佇んでいた。
「これが僕のガンプラ、ストライクPSや」
テンマが指差す先には青、白を貴重としたカラーリングのガンプラが格納されていた。形から察するにガンダムSEEDに登場するストライクガンダムの改造機だろうか。各部がアレンジされており、その脚は別機体のものが使用されていて、全体が引き締まって見える。そしてバックパックには二本のサーベルが装備されていた。シンプルながら、しっかりと作り込まれている良いガンプラだ。
「で、こっちは私の機体、アストレアよ」
トウカのアストレアは目立った改造はされてないものの、本来青である部分が蛍光ピンクに変更されていた。その塗装はとても丁寧でアストレアの名の通り正義の女神に恥じない出来栄えだった。そして右腕にはGNビームライフル、左腕にプロトGNソード、コンデンサー部にはGNシールド、GNピストルが2丁マウントされていた。
「でそれが、オノサカ君のガンプラか」
「名前はなんて言うの?」
二人そう言われ、慌てて機体データを確認する。ガンダムAGE1をベースに改造した機体で特出すべき点は計17本のビームサーベルを装備されていることだった。そして名前は──
「"ガンダムAGE1.5"です」
「1.5で"アイズ"か…カッコイイやん…」
「よし、じゃあ出撃しましょう〜」
トウカがそう言って画面を操作する。
今度は目線の位置が上がり、周りが暗くなる。オノサカは自分がMSに搭乗し、今カタパルトにいるのだと分かった。
そしてガンダムでカタパルトと言えば、"アレ"しかない。不安はあるがオノサカは覚悟を決める。手元にあるレバーをグッと前に倒し、叫ぶ。
「オノサカ、ガンダムAGE1.5…出ます!」
掛け声と共にカタパルトが火花を立てながらAGE1.5を青空へと打ち出す。
右レバーをゆっくりと前に倒すと機体の背部スラスターに光が灯り、周りの景色が後ろへと流れてゆく。
そしてトウカから通信が入る。
「あーあーオノサカ君聞こえる?今から前のゲートをくぐるから私達に付いてきてね」
「わかりました」
アストレアとストライクがゲートをくぐったのを確認し、オノサカも同じゲートをくぐる。
その先には森林が広がっており、ところどころにツツジの花畑が広がっていた。これがデータと言うことを忘れる程の美しさだ。
3人は少し開けた場所へと機体を着地させる。
「オノサカ君、あそこにバリアがあるのは見える?」
「あれはバトルフィールドの境界であそこに入るとバトルが始まるんや、とりあえず射撃、格闘、回避···主にこの3つを教えるから、まぁ気楽にな?」
そういうとテンマはストライクPSをAGE1.5に近づける。そしてオノサカの隣に突如テンマが現れる。
「!?」
「一種のワープ機能みたいなもんやで、ミッションに行く前フレンド登録したからこういうこともできるってことや。」
「さぁ!気合い入れや!オノサカ君!」
─────────────────────────
「よし、こんなもんで良いやろ。上出来やで」
AGE1.5が地に片膝を付き、テンマをコックピットから降ろす。テンマ、トウカのサポートもあってか、オノサカは基本操作はある程度できるようになっていた。
「そろそろミッション始める?」
「私はバリア外で待機してるから、テンマ君後はよろしくね〜」
そういうとトウカのアストレアのGNドライヴに緑の光が灯りバリアの端の方へと飛んでいった。
「僕は地上で待機してるわ、通信は常時開けとくし、何かあったら絶対助ける」
テンマはストライクPSを起動させ、対シールドを地面に突き刺した。そしてビームライフルを上に乗せ狙撃体制をとる。
ミッション名 「ガンプラ大地に立つ!」
クリア条件 敵3機の完全破壊
乱入 なし
オノサカはAGE1.5を空中に舞い上がらせる。神経を尖らせ周囲を索敵する。しばらくすると水色の光が集まり、やがてそれが3体の人型へと変貌した。すぐにテンマから通信が入る。
「あれはリーオーNPD、要は無人機やな」
「真ん中の目玉、赤いやつが恐らくリーダー機やろうな、さぁ!来たで!」
テンマがそういうと、リーオーNPDはそれぞれ右、左、上へと移動した。オノサカはその内の一機、右のリーオーに狙いを定めレバーのスイッチを引く。
AGE1.5はライフルのトリガーを引き、螺旋状のエネルギーが放たれた。
リーオーNPDは肩部シールドを前へと構える。ビームは多少拡散されたが、シールドごと肩を灼く。内部フレームが溶け、下腕は下界へと落ちていった。
「ええ調子や!今度はグリップを引き出して狙うんや!」
オノサカはテンマの言われた通りにAGE1.5を動かす。ライフルが90度横に回転し、左腕でグリップを掴む。そしてもう一度トリガーを引く。放たれたビームは空を切ることなく、見事リーオーNPDの胴体を貫いた。そして爆散。
「やった……」
安心しているのも束の間。コックピットに敵機接近のアラートが鳴り響く。
振り返ると先程左側にいたリーオーが両腕にビームサーベルを構え、AGE1.5に接近していた。
「なら…!」
AGE1.5は右手のビームトンファーを起動、さらにリアアーマーに装備されているビームサーベルを抜く。桃色の刀身がリーオーの緑のサーベルを受け止める。バチバチと周囲にビームの稲妻が走った。オノサカはより強くグリップを前に倒すとAGE1.5の背部スラスターの輝きが増す。
一見、互角に思われていたが徐々に桃色が緑を飲み込んでゆき、リーオーの腕ごと切断。そして、くるりと一回転を行いリーオーを足から頭に向って真っ二つに切る。すぐにAGE1.5を後ろに下がらせる。まもなくして、モニターの前は爆炎に包まれた。
「あと1機…!」
オノサカはモニター前に映っているリーダー機を確認する。
リーオーの右肩には機体全高に匹敵する実弾兵器、ドーバーガンを装備しており、左肩にはシールド、左腕には2連装グレネードが装備されていた。バックパックの左右に伸びた大型スラスターも注意しなければならない。あの大きさだと"殺人的な加速"を生み出すだろう。
赤い眼がAGE1.5を見つめていた。初心者ミッションにしては少々重武装すぎると感じたオノサカだったが、倒せれば、それ相応の喜びを感じられることも分かっていた。
「行くぞ…AGE1.5!!」
AGE1.5のツインアイが鋭く煌めき、ドッズライフルを発射する。
リーオーはくるりとバレルロールをし、ビームをかわした。お返しと言わんばかりにドーバーガンをお見舞い。ドウッという爆音と共に放たれたそれは加速を受け、真っ直ぐにAGE1.5に向ってきた。
「ッ!」
AGE1.5は肩部スラスターを起動し機体を横にずらし、すんでのところで回避。リーオーはまだまだこんなもんじゃないというように、AGE1.5に向って加速。そしてシールド裏からビームサーベルを取り出し、大きく振りかざした。
「調子に…乗るなっ!」
オノサカは右手のトンファーを起動、片手でサーベルを受け止める。空いた左手の装備しているサーベルのエネルギーを調節。
そして、ドーバーガンの発射口付近に刺した。ダガーとなったそれは確実に発射口を貫いた。
リーオーは危険を察知したのかドーバーガンをパージ、オノサカも同じその場を離れる。
しばらくして、ドーバーガンがスパークしAGE1.5のサーベルを巻き込んで大爆発を起こした。
爆発によって生じた煙は2機の間に停滞し、お互いの姿が確認できなくなっていた。
煙が止むのを待っているオノサカだったが、コックピットにアラートが鳴り響く。
表示は"敵機接近"だった。
「まさか…アイツ!!」
そう、そのまさかだった。煙の中から現われたのはリーオーだった。煙とは言え、サーベルのビーム巻き込んだ煙。突っ込めば武装が誘爆する恐れがある。その証拠にリーオーは背部スラスターを1基失い、シールドも茶色く変色していた。
そして、AGE1.5の胴体へと蹴りを入れた。
激しい振動がオノサカを襲う。辛うじて意識を保ったが、機体が地面に向かって真っ逆さまに落ちていることに気づくのに時間を要した。テンマの慌てた声が聞こえてきた。
「オノサカ君!!大丈夫か!」
「この難易度は何かがおかしい、今すぐやめるべきやと思うで!」
オノサカはすぐにレバーを握り直し、前へと倒す。背部スラスターが起動し、地面ギリギリで機体が反転し膝を付いた。あと少し遅れていたと思うと、背筋が凍った。
「はい…大丈夫です…それに…」
「僕はもっとこの戦いを楽しみたいです」
「そうは言っても…危なくなったら止めなあかn…ッ!!」
テンマの息が詰まったような反応を感じ取ったオノサカはすぐ上を見る。そこには赤眼を轟かせたリーオーが迫っていた。リーオーはグレネードをストライクPSのシールドに向って放つ。発射されたグレネードはシールドにヒットし爆発する。破壊はされなかったもののシールドは空中へと舞う。
これが意味することはテンマが狙い撃てないということ。
そしてサーベルを起動したリーオーがAGE1.5にサーベルを振り下ろそうとしていた。
(この距離だったら回避はできない…!やられる!!)
オノサカには世界が止まって見えた、人が死ぬ瞬間はこんな感じなのだろうかと。テンマが自分を呼ぶ声がぼんやり聞こえた。
─────────────────────────
「オノサカ君!!」
テンマは叫び、吹き飛ばされたシールドを背にストライクPSを加速させる。青を帯びたスラスターの光が激しく光る。間に合え、間に合えと手を伸ばすもリーオーが振り下ろしたサーベルがAGE1.5のアンテナに接触する。そのままコックピットを貫くかとテンマは思ったが──リーオーの右手が吹き飛んだ。
「なっ…!」
なんとAGE1.5がバックパックからサーベルを展開し、リーオーの右手をピンポイントで灼き切っていた。
そして強引にスラスターを吹かし、右手から肩にかけて切断。
リーオーは中を舞ったシールドからサーベルをもう一本取り出すと、横に薙ぎ払う。AGE1.5は脚部スラスターを起動、サーベルの軌道に合わせ上体を捻り回避する。
そして、片脚を地に付けリーオーを蹴り上げる。両腕のトンファーを展開、桃色の光がリーオーの胴体を貫く。
仕上げだといわんばかりに、ドッズライフルを頭部に突き刺し、トリガーを引いた。
ライフルの銃口が光を発して、リーオーを跡形もなく消し去った。
テンマは口をぽかんと開け、その光景を見ていた。こんな人間離れした動きをできる人物は少ないからだ。
オマケにオノサカは今日GBNを始めたばかり。いくら危機的状況だとは言え、これはおかしい。
轟音を立て地面に着地したAGE1.5。AGE1.5はゆっくりと、ドッズライフルの銃口をテンマに向けた。
「バトルしようってことか…ええで…相手になるわ!!」
「……」
なぜかオノサカ側には反応がなかったが、そんなことは今どうでも良い。今、オノサカが自分に勝負を挑んできたのだ。
テンマの中で売られた勝負は買うと決めていたからだ。
テンマはストライクPSを後退させ、シールドを再装着し直すと同じくAGE1.5にビームライフルを向けた。
風が止み、木々は二人の勝負を見ようと黙る。辺りは静寂に包まれた。
まるで砂漠でガンマンが早撃ちをするかのごとく。
テンマの額から汗が滴る。やがて雫がポタリとテンマの足元へと落ちた。
それが開始の合図となる。
両機体がライフルのトリガーを引き、ビームが発射される。二対のビームはぶつかり合い、硬球となり地面をえぐった。
テンマはすぐに機体を上昇させAGE1.5へ向ってニ、三発ビームを放つ。一、ニ発目は左右へ。最後の一発はAGE1.5目掛けて発射。
オノサカはそれが分かっているかのように、その場に佇み腕部トンファーを一振り。正確に真ん中のビームだけを弾いた。残りのビームはAGE1.5の足元を灼くだけに終わった。
「やるな…オノサカ君!まるで人が変わったみたいや!なら、格闘戦どうや!」
テンマはレバーを操作し"ライフルの破棄"を選択。そしてバックパック、ファーストライカーからビームサーベルを引き抜きAGE1.5に向って加速した。
オノサカはライフルをストライクPSへ向って投げ、腕部ビーム・マシンガンで起爆。サーベルが装備されているソレは大爆発を起こし、地上の砂を巻き上げスモークと化す。
「しまっ…!」
「いや…これはッ!」
テンマはビームの稲妻をシールドで防御しつつ、ストライクPSの上体を斜めに反らす。すると、煙の中からAGE1.5が現れ、両手に持ったサーベルをクロスに振り下ろした。
「そうくると、思ってたで!」
上体を反らしていたため右手のサーベルを空を切り、左のサーベルをストライクPSは対ビームシールドによって防御した。
サーベルのビームがバチバチと拡散していく。
AGE1.5はすぐに右のサーベルをシールドに向かって振り下ろし、左右のトンファーを起動。ビームを拡散していたシールドの対ビームコーティングが剥がれ落ち、綺麗に切り裂かれた。
「っと……それがあったんやったな」
テンマはギリギリのとこで"シールドのパージ"を選択していた。そのため、左腕はビームに飲み込まれずに済んだ。
「次はこっちから行かせてもらうで!!」
もう一本のサーベルを引き抜き、AGE1.5に向って75mm対空自動バルカン砲撃システム イーゲルシュテルンを放つ。たかがバルカンといえどシールドを持たないAGE1.5にとっては脅威となる。
テンマの狙い通り右のトンファーが爆発し、AGE1.5の頭部アンテナを破損させた。
オノサカはすぐに、腕部トンファーをパージ。そして迫りくるストライクPSに向って左右のサーベルを投擲した。弧を描いたソレはストライクPSの両手のサーベルによって弾かれるものの体制を崩すことに成功。
すかさずAGE1.5はブースト。ストライクPSの胴体へと蹴りを入れる。
「くぅ…!」
テンマは歯を食いしばり、レバーを小刻みに操作。ストライクPSは各部のバーニアを吹かし、なんとか空中に留まる。
休ませはしない、AGE1.5が上空から二本のサーベルを構えストライクPSに向って突撃してきた。
テンマもそれに答えるように、ストライクPSをAGE1.5へと加速させる。そして両機のサーベルが衝突し、ビームがスパークする。激しい攻防を繰り返す中、先に動いたのはオノサカだった。
AGE1.5の脚部に仕込まれていたサーベルが起動し、ストライクPSの左腕を貫いた。まさに奇襲用の武装であり、初見殺し。
「そんなところに仕込んでたんか…!けどな!!」
ストライクPSのマニピュレータが回転し、ガンダムAGE1.5の左腕をトンファーごと切り裂く。
2機の腕が爆発し、両機とも地に足を付く。まだ、もっと力を見せろとAGE1.5が脚部に装備されているサーベルを取り出しストライクPSへと向ける。
「おう!まだまだこんなもんやないで!」
ストライクPSもサーベルを構え直し徐々にスラスターに光が灯る。そしてグッと脚部に力を入れ、地を蹴ろうしたその時。
「二人とも!逃げて!!」
トウカから通信が入る。その瞬間バリアが消滅し、その端から何かが飛んできた。
テンマが視線を落とすとそれはトウカのアストレアが装備していた、GNシールドだった。
シールドは上半分が溶断されており、激しい戦闘があったことを物語っていた。
よくよく考えればおかしいことだった。オノサカのミッションが終わった時点でクリアの表示がされるはずなのに、それがなかった。勝負に夢中になっていたため気が付かなかったが。
「なんで、こんなことに気づかなかったんだ…!!」
テンマは手元のモニターを叩く。データといえど、手首がじんじんと痛む。
AGE1.5の方を見るとサーベルの刃を展開したまま、シールドが飛んできた方をじっと見ていた。そして、サーベルを構え直していた。
「なんや……?」
次の瞬間、森林から影が飛び出してきた。テンマもすぐさまサーベルを構えるが、それは敵ではないと気づく。
飛び出してきた影はライフルをと左腕を失ったトウカのアストレアだった。
テンマはすぐにストライクPSを寄せトウカに向けて通信を開く。
「トウカ!?大丈夫か!!」
トウカは大丈夫と言って、アストレアを起き上がらせ、GNビームサーベルを起動する。GN粒子から構成されたソレはオノサカ達の物と比べ平たい物だった。より斬ることに特化した形なのだろう。
「くるよ…アイツが…」
トウカはそう呟く。木々がなぎ倒され、いや飲み込まれていくと言った方が正しいだろうか。
確実に味方ではないとテンマは本能的にそう感じていた。3機の目の前まで迫ったソレはオノサカに向って突撃した。
テンマは驚きの声を上げる。
「黒い…ストライクガンダムやと!?」
そう。3人の目の前に現われたのは黒いストライクガンダムだった。メインカメラは片方が破損しており、赤い隻眼が輝いている。
バックパックには紫のエールストライカーが装備されていたがその上部にはサーベルの変わりにAGE2ダブルバレットのドッズキャノンが装備されていた。
右手にはグランドスラムのような大型の大剣。
「オノサカ君!!」
テンマとトウカが黒いストライクに向ってサーベルを振るう。
黒いストライクは、AGE1.5に向ってサマーソルトを放つ。その勢いのままエールストライカーのスラスターを点火。紫の光が灯り、2機の攻撃を軽く躱した。
さらにドッズキャノンから螺旋状のビームを放ち、2機の腕を正確に撃ち抜く。
そして着地。
黒いストライクは2機が動かなくなったのを確認するとゆっくりとAGE1.5へと近づいていく。
リアアーマーに懸架してある、ビームライフルを取り出し、AGE1.5のコックピットへと向けた。
銃口に光が通りビームがチャージされてゆく。テンマとトウカをその光景を見ていることしかできない。
両手を破壊され助けることもできないからだ。今ここで、自分達の無力さを痛感していた。
そして二人の耳にビームが放たれた音が聞こえた。
「「え…」」
二人は目の前に起こった光景に驚愕した。
なんと、破壊されたのはAGE1.5ではなく、黒いストライクの方のライフルだった。そして3人の目の前に現われたのは"ガンダム"だった。トリコロールカラーは同じものの、各部が78-2と異なっていた。それと同時に3人のコックピットへメッセージが表示される。
メッセージ名 対応プロトコルパターン9
GBN上の異常を検知しました。
直ちに排除を行います。
プレイヤー皆様にはご迷惑をおかけしました。
「ガード…フレーム…」
テンマがそう呟いた。
ガードフレーム。GBN上の異常、プレイの妨げになる行為、事象に対しての対応を行う機体。
様々なタイプが存在し、人名救助から戦闘まで幅広い分野で活躍する。プレイヤーの戦闘データを解析、学習することで日々進化しているシステムだ。
黒いストライクはガードフレームを赤い隻眼で睨みつけると、各部スラスターを起動し上空へ飛翔。
上空から迫る2機のガードフレーム空戦仕様すれ違いざまに、大型ソードで纏めて切断。青空へと消えてしまった。
そして、間もなくしてオノサカの目の前に"Mission Complete"と表示された。
─────────────────────────
「えぇぇぇ!!覚えてない!?」
ロビーに戻った3人は、ロビー横の休憩スペースで今日のバトルについて話していた。
そしてサイトはテンマとのバトル、そして黒いストライクについても覚えていないというのだ。
「あ、いや…完全に覚えないって訳じゃないんですけど、ぼんやりしていると言いますか…」
要は断片的に記憶が抜けているということだ。データ上の世界であるのでこういうことも起こるのだろうとサイトは感じていた。何より、それだけの出来事があったのだ。初心者のサイトにとっては濃厚すぎる一日であった。
「でも、一応病院には言っといた方が良いと思うで…?」
「それに時間も遅いし、今日は終わろっか」
テンマとトウカはそう言い、サイトにお別れの挨拶を告げると手元と画面を操作する。そしてログアウトを選択。
アバターが光に包まれ、粒子となり消滅した。目の前の時計は17時を指していた。
「僕も帰るか…」
テンマ達と同じように画面を操作し、ログアウトを選択した。視界が暗くなり現実世界へと精神が引っ張られる。
GBN上には水色の粒子が辺りに残っていた。
はい!という訳でガンダムビルドロンギング、いかがでしたでしょうか……?
念入りに確認はしたのですが、誤字脱字等ございましたら、指摘してくださると嬉しいです…
まだまだひよっ子ですが、これから成長してきたいので、皆様どうかよろしくお願いします!
スペシャルサンクス
赤い彗星「PcR」(@redcomet0303) 様
↑ストライクPS 製作者
アイリス (@airesu1024) 様
↑アストレア 製作者