異形協調曲   作:黒猫子猫

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第六話

あれからモモンガと共に様々な検証を行った。自身の魔法・スキルを試したりアイテムの効果を確認してみて分かったが、どうやらユグドラシル時代の時とは効果が変わった物があるようだ。

 

アイテムに関しては他にも変化した物がないかパンドラズ・アクターに頼んで調べてもらっている。その時のパンドラズ・アクターの喜びようは尋常ではなくモモンガはまた精神安定が発動していた。

 

時間を見つけてはパンドラズ・アクターに会って分かったがオーバーリアクションを抜きにすれば彼はやはり優秀だ。一を聞いて十を知る頭脳、そしてモモンガに対する絶対的な忠誠心。やはり彼を味方に引き込みたいが自身に向ける思念に違和感を感じるためアルベドの件は話していない。

 

アルベドの件は自身が創ったNPCのイディアにしか話していない。彼女は現在も第二階層にて自身が守護する領域にいる。モモンガから‶近くに置かなくていいんですか?"と聞かれたがそれは断った。 

本当は傍に置きたかったが、この世界の住人の強さが分からないので警戒を強めて防衛時の責任者であるデミウルゴスの指揮下のもと防衛にあたっている。

 

問題のアルベドは何かとかこつけてモモンガに会いに来ては一緒にいる自身に殺意を飛ばして来るのでたまったもんじゃない。何度か濃厚な殺意に理性が飛んで殺しそうになったが近くにモモンガが居たおかげで踏みとどまる事が出来た。

 

おかげで分かった事だが強い思念を感じると理性が飛び、精神が異形種になるようだ。

このままだとマズいと思い直ぐにパンドラズ・アクターに頼んで精神安定系のアイテムを装備をしたら興奮はするが理性が飛ぶことはなくなった。

 

モモンガといえば時折、自身に不安と恐怖や寂寥感の思念を向けて来るが、その原因が分からなかった。

 

他にもモモンガと一緒に儀仗兵達やメイド達などを付き従えて大名行列するイベントなどをこなしたりしてあっという間に3日がたった。

 

そして現在ミューズはナザリック地下大墳墓第九階層の自身の私室に居た。ロイヤルスイートとして用意されたこの階層には、ギルドメンバーの私室やNPCの部屋だけではなく、大浴場や食堂、バー、美容院、衣服屋、雑貨屋、エステ、ネイルサロン、劇場など様々な設備が充実していた。ユグドラシル時代は特に意味の無かった施設だが、転移後、これらの施設はユグドラシル時代と異なり実際に稼働している。

 

ミューズの部屋は寝室、浴室、衣裳部屋、書斎など以外にも楽器部屋・スタジオ・作詞作曲用の部屋など完備していた。私室は各々自分好みの外装に改造が出来るのでミューズも理想の私室を作っていた。

 

その私室の一室である作詞作曲用の部屋でミューズは曲作りに集中していた。

護衛及び身の回りの世話用に戦闘メイド(プレアデス)の一人ルプスレギナ・ベータも同じ私室には居るが集中したいので部屋の前で待機しているよう命令したため、現在は一人部屋で転移してから浮かんだ曲を作っていた。

 

(「よし8割がた完成したな、今まで頌歌は作った事なかったが、いい詞が書けたな」)

 

周りのNPCから常に尊敬と崇拝という神の如く崇めてくる思念を受け今までにない着想を得る事ができた。おかげで今までにないジャンルのイメージが湧いてきた。

 

作成にあたって大いに活躍したのはやはり心理を感じる能力だ。デメリットはあるがそれを踏まえてもメリットの方が大きいと考えていた。

 

(「そう考えるとこの世界に本当に来てよかった。こんなに楽しいのはいつぶりだろう」)

 

あの地獄のような世界のせいで久しく忘れていた気持ちに嬉しくて鼻歌交じりに作詞を続けていく。

 

(「ふふっ、完成した。さて作曲に入るか」)

 

詞が完成したので作曲に入ろうとした瞬間頭の中に声が響いてきた。

 

『ミューズさん今大丈夫ですか』

『大丈夫ですよ。どうしました?』

『気分転換にNPCを連れずに外に出ようと思うんですが、ミューズさんも一緒にどうですか?』

 

詞も完成してひと段落しモモンガの折角の誘いなので承諾する事にした。

 

『いいですよ。集合場所はどうします?』

『そうですね…今から30分後に一度円卓に集合してその後、地上に近い中央霊廟に行く流れでどうですか?』

『大丈夫です。じゃあモモンガさんまた後で』

『はい。また後で』

 

時間と場所も決めプツリと通信が切れた。

集合場所に向かおうと詞を書いたルーズリーフやペンを片付け部屋から出ると待機していたルプスレギナが頭を下げ出迎えた。

 

「ルプスレギナ今からモモンガさんと出かけて来る」

「直ちに近衛の準備を致します」

「モモンガさんと二人で出かける約束したから供は結構だよ」

「畏まりました」

 

そう言うとルプスレギナは深くお辞儀をし臣下の礼をする。そんなルプスレギナをミューズは見つめていた。

転移した最初はNPCを道具にしか思っていなかったが、自身を慕い接していく内にペット位の愛着は湧いていた。

 

そんなペット(ルプスレギナ)はミューズに見つめられ。

 

(「めっちゃ見られてるっす!なにかやらかしちゃったすか!?」

 

めっちゃ焦っていた。

 

お辞儀をしたままなので表情が見えないため余計不安になる。そもそもミューズは現在仮面を着けているので表情を読むこと事態出来ない。

 

不安のあまり小刻みに震え変な汗まで出て来る始末だ。

そんなルプスレギナの思念を感じ誤解させてしまった感じ、誤魔化すように手を頭に乗せ撫で始めた。

 

「あ~、別に怒っているわけじゃいよ」

「は、はいっす」

 

突然頭を撫でられる幸福のあまり顔をあげ素が出てしまった。使えるべき至高の御方の前であり得ない失態を詫びようと、自害を使用したが、先にミューズが口を開いた。

 

「今回はモモンガさんと出掛けるけど、時期が落ち着いたら一緒に何処か出かけようか」

「あっ、ありがとうございます!」

「ふふっ、じゃあ行ってくるね」

「行ってらっしゃいませ、ミューズ様」

 

再び深くお辞儀したルプスレギナの顔は褐色の肌が真っ赤になり口元が完全に緩んでいた。他のNPCが見たら不敬だと非難され、姉のユリ・アルファに見られたら鉄拳制裁を受けていただろう。

 

(「ヤバいっす!デートすか!?これはデートの約束すか!?」)

 

ルプスレギナから強い幸福の思念を感じたがモモンガとの約束があるので無視して指輪の力で目的の場所に向かった。

 

 

後にこの事を一般メイドに「ミューズ様のなでなでめっちゃくちゃ気持ち良かったす!マジパネェっす!ゴットハンドだったす!」「デートの約束したっす!このまま伽に呼ばれちゃうかもしれないっすね~!」と話し、それを聞いたイディアが不機嫌になったのはまた別のお話。

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

転移先の円卓にはモモンガは居らず鎧姿をした人物が立っていた。

 

「あっミューズさん」

「モモンガさん?何で鎧姿をしているんですか?」

 

最初誰か分からず警戒したが直ぐに声でモモンガと分かり警戒を辞めた。

 

 

「装備の実験をしていまして」

「実験ですか?」

「はい。魔法などで作った物は装備できたんですが、そうじゃない武器は使えなかったんです」

「つまりユグドラシルの時の様に装備制限があるってことですか?」

「だと思います」

 

装備制限とは種族・クラス・レベル・などによって装備が制限され、魔法職のモモンガが杖や短剣など装備できるが大剣などは装備できない制限だ。

 

「他にユグドラシルの設定が反映されてないか検証する必要がありますね」

「ですね」

 

この世界とユグドラシルの差異を知らずに戦闘をして致命的なミスをする可能性があるので即急に調べた方が良いとモモンガ達は考えた。

 

「所でその恰好たっちさんモデルにしてます?」

「やっぱり分かります。騎士といえばたっちさんですから」

「…似合ってますよモモンガさん」

「本当ですか!?いや~お世辞でも嬉しいです」

 

アインズ・ウール・ゴウンの最強騎士たっち・みーはモモンガの憧れでアイドル的な存在だ。しかしミューズはたっち・みーの事はあまり好きではなかったので楽しそうなモモンガを見ると少し複雑だ。

 

「しかし御忍びで外出するみたいでいいですね。私も変装しようかな」

「おっ!いいですね。どの種族に変更します?」

 

ミューズが納める種族の一つに仮面の妖精(ペルソナ・オブ・フェアリー)は仮面を変えることによって種族が変えられ、着けた仮面の種族の外見に変える事も出来るのでその能力でモモンガは変装すると思っていた。

 

「種族は変えません」

「えっ?」

「まあ見てて下さい」

 

そう言うとミューズから紫色のオーラの様なものが吹き上げ、幼虫が成虫になるための繭の様に全身を包み込む。

数秒してオーラーが晴れると見知らぬ女性が立っていた。

 

「えっ!!み、ミューズさんですか!?」

「はい。どうですモモンガさん?」

 

ミューズは前かがみになり腕を下へ向けて伸ばし胸を寄せるポーズを取った。いわゆるだっちゅーのだ。

その瞬間モモンガは精神安定が起こり慌てて見ないよう片手で目を隠し顔を背けた。

 

「ちょっ!ど、どうしたんですかその姿?」

 

仮面と妖精の羽は変わらないが姿は明らかに変わっていた。

髪はメッシュから黒髪のロングヘアーになり服は白のハイネックロングドレスに変化しエンブレムとギルドサインが黒色の刺繡が施されていた。手袋は白のレースのロンググローブに変わっている。

因みに胸はプレアデスの一人ソルシャン・イプシロンにも負けないサイズだ。

 

「浮かんだ曲が女性メインのがあって、声を変えて試そうとしたら女性になっていました。不思議ですよね~」

「えぇ~」

「お陰で音域や声色の幅が広がって今まで歌えなかった歌も、歌えそうです」

「良かったですねミューズさん」

 

不思議で片付けていい物かとモモンガは悩んだが異世界転移事態も不思議な事だし、本人も喜んでいるので、まあ良いかと思った。

 

「因みにベースは無性ですが性別を変えると生殖器が復活するんです」

「そっ、そうですか」

 

どうコメントしたらいいか分からず戸惑っているとミューズは更に爆弾発言をした。

 

「ふふ、試してみます?」

「ぶふうぅぅー」

 

笑いながら指で輪っかを作り反対の手の指を出し入れするハンドサインの衝撃に、冗談だと分かっていても噴き出してしまった。

 

「冗談でもやめて下さい!俺いま骨ですし…そもそも、実戦経験もないですし」

「あぁ~その…ごめんなさい」

「いや本気で謝れると余計落ち込むんですが」

 

モモンガの声は徐々に小さくなって行き最後には消え入るようになり、憂いの思念も感じ流石に悪い事をしたと思い頭を下げた。

そもそも性的な事を険悪していた転移前のミューズ(音無 奏歌)なら、いくら信頼しているモモンガでも今みたいな冗談は言わなかった。しかし、モモンガとは違い生身の肉体のせいで異形との精神の結合が早く、性への険悪が薄まり妖精の特徴のイタズラ好きが転移初日より強くなっていた。しかしその事はミューズは気付いていなかった。

 

「こほん!話戻りますが、変装もばっちりですし、そろそろ行きましょう」

「そうですね」

 

二人は指輪の力を使い中央霊廟に向かった。

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

第一階層の中央霊廟に転移した二人は地上に繋がる通路に出るべく階段を上ると目の前にデミウルゴスの配下三体が居た。

配下の三体は、燃える翼を持つ凶悪な悪魔をイメージに相応しい憤怒の魔将(イビルロード・ラース)、黒革のボンテージに身を包んだ豊満な女性の体と黒いカラスの頭を持つ嫉妬の魔将(イビルロード・ラスト)、前の開いた鎧を着た美男子に黒い蝙蝠の翼にこめかみから二本の角と永久に満たされない欲望に輝いた瞳を持つ強欲の魔将(イビルロード・グリード)。どれもデミウルゴスの守護階層第七階層にいるべき80レベル台の強力なモンスターだ。

 

『ミューズさん、なぜ第七階層のシモベがここに?』

『恐らくですが、厳戒態勢という事でアルべドとデミウルゴスが配置を変えたんだと思います』

『なるほど80レベルなら、仮に敵を倒せなくても時間稼ぎ位なら出来ますもんね』

 

二人は<伝言>で話していると魔将達の陰で見えなかったデミウルゴスが出て来た。

一瞬デミウルゴスが訝る表情をしたが、直ぐに元の表情に戻り、こちらに近づいてくる。魔将もデミウルゴスの後ろに従いこちらにやってくる。距離が詰まるとデミウルゴスが貴公子さながらの上品な動きで片膝を付き頭を垂れ、臣下の礼を取る。魔将達もそれに倣う。

 

「これはモモンガ様にミューズ様。近衛も連れずにここにいらっしゃるとは、一体何事でしょうか?それにそのお召し物とお姿は?」

 

『変装したのに一発でバレましたね』

『まぁ、指輪持っているの私達だけですから、転移して来たらバレますよね』

『どうします?なんとか誤魔化さないと、ぞろぞろ供なんか連れたら気分転換なんて出来ないですね』

『そうですね…モモンガさんお願いします』

『丸投げですか!!』

 

モモンガはどう誤魔化すか考えたが何も思いつかず、デミウルゴスも待たせているので、ミューズに投げられたのをデミウルゴスに投げ返えしちゃえと考えた。

 

「私がミューズさんと二人で、このような恰好の訳はお前なら分かるだろう?」

「なるほど…そういうことですか」

 

モモンガはえ、何が?と思いミュ-ズに<伝言>を送った。

 

『なんか、デミウルゴスが納得したみたいなんですが?』

『変装してますからお忍びで視察に来たと考えたんだと思います』

『なるほど…ミュ-ズさんもしかして言い訳思い付いていなかったですか?』

『ソンナコトナイデスヨ~』

 

 

あまりにもミューズがスラスラ答えるので疑問に思い追求したら誤魔化すようにそっぽを向いたので更に追求しようと<伝言>を送ろうとしたがデミウルゴスが話し掛けて来た。

 

「まさにこの地の支配者たるお方に相応しいご配慮かと考えます。ですが、やはり供を連れずに、となりますと、私も見過ごすわけにはまいりません。ご迷惑とは重々承知していますが、何とぞこの哀れな者に寛大なる御慈悲を賜りますようお願い申し上げます」

 

『デミウルゴスは忠義者ですね。どうしますモモンガさん?』

『話題変えようとしてませんか?はぁ~、仕方ないですから一人だけ許可しましょう』

『分かりました、お詫びに次は私が話しますね』

 

‶お詫びって、やっぱり思いついてたじゃなですか"とモモンガは思った。

 

「じゃあ一人だけ同行を許すよデミウルゴス」

「私の我が儘を受け入れていただき、感謝いたします」

 

デミウルゴスは優雅な笑みを浮かべた後、後ろに控える魔将に指示を出す。

 

「ではお前たちはここで待機し、私が何処に行ったか説明しておけ」

「んっ?誰かと待ち合わせしてるなら、他のシモベを共にした方がいいんじゃない?」

「ご配慮くださりありがとうございます。しかし、至高の御方々の供をする以上の用事などございません」

「ふ~ん、じゃあモモンガさん行きましょう」

 

そう言いミュ-ズとモモンガは歩き出し、立ち上がったデミウルゴスが付き従った。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

霊廟を出たミューズ達を迎えたの美しい世界だった。

 

夜空に浮かぶ月や星々から降り注ぐ光が、大地を草木をこの世界の全てを照らしていた。元の世界ではけして見る事が叶わない幻想的な世界が広がっていた。

 

「…綺麗ですねモモンガさん」

「…えぇ、ミューズさん」

 

あまりにも美しい光景に見入ってしまい会話が続かないが、二人は気にする事なく夜空を見上げていた。

 

「ミューズさんもっと近くまで見に行きませんか?」

「いいですね」

 

魔法職のモモンガは鎧を着て居ると装備ペナルティで使える魔法が制限されているので、空間に手を入れ小鳥の翼を象ったネックレスを取り出し首にかけ、込められていた<飛行>の魔法でミューズは自身の羽で浮かび、速度を上げ一気に上昇した。デミウルゴスが慌てて追従してくるが、気に留めず二人は上昇し続ける。

 

 

二人はゆっくり止まり美しい世界を眺めているとモモンガがため息混じりに言葉がこぼした。

 

「本当に素晴らしいですね…いや素晴らしいなんて陳腐な言葉じゃ表せない。ブルー・プラネットさんがここにいれば何て言っただろう」

「きっと凄い喜んで色々な話を聞かせてくれましたよ」

「ですね」

 

ブルー・プラネットとはギルメンで最も自然を愛した男。彼は仮想のナザリックの第六階層の夜空を作り込み自然に関する蘊蓄を話してくれた。

 

「現実の世界とは思えない…キラキラと輝いて宝石箱みたいです」

「ふふっ、モモンガさん詩人ですね。本当に宝石みたいで綺麗ですね」

 

「この世界が美しいのは、御二方の身を飾るための宝石を宿しているからに違いないかと」

 

追い付いて来たデミウルゴスが後ろから御世辞が言ってくる。

 

「この美しい宝石が私達の身を飾る為にあるか、確かにこの美しい宝石を身に着けられたら素晴らしいですね」

「ですね。唯この世界が宝石箱ならこの宝石は我々で独占すべきものではないでね。ナザリック地下大墳墓を、そしてわが友達アインズ・ウール・ゴウンに飾るべきですね」

「なんと魅力的な御言葉。御二方が望まれるのならば、ナザリック全軍を持ってこの宝石箱をすべて手に入れてまいります。それを御二方に捧げる事、このデミウルゴスこれに勝る喜びは御座いません」

 

モモンガと話しているのに、さっきからデミウルゴスが横槍をしてくるので少しイラっと来るが、この美しい世界を見ていると怒りなど飛んで行く。

 

「この世界の事が全く分からない状況でその発言は愚かしかとしか言えないがな。我々はこの世界ではちっぽけな存在の可能性もあるんだぞ?ただ…世界征服なんて面白いかもな」

 

「モモンガさん世界征服ですか、ロマンありますね。ウルベルトさんとかも言いそうですね」

「う、ウルベルト様ですか!!」

 

自身の創造主たるウルベルトも世界征服を望むかもしれないと知りデミウルゴスの宝石の瞳が更に怪しく光っていることは景色を楽しんでいた二人は気付く事は無かった。

 

「しかし、この世界にいるのは本当に俺達だけなんですかね?もしかしたら他のギルメンも来ているかもしれないですねミューズさん」

「モモンガさん…」

 

モモンガは嬉しそうに言うがミューズはギルメンが転移する事はまずないと考えていた。現実世界で様々な事情を抱え、最終日にナザリックに居なかった時点で同じく転移したと思えない。

しかし望みが薄くてもモモンガはきっと待ち続けるだろう、友との再会を願って。

 

ミューズはこの美しい世界を見てある覚悟を決めた。

 

「デミウルゴス、モモンガさんと内密の話をしたいから離れていなさい」

「なるほど…畏まりました」

 

臣下の礼を取り地上に降りて行くデミウルゴスを眺めながら、モモンガは何の話だろうと思った。

 

「モモンガさん…今から話す内容は辛い物です…聞いてくれますか?」

「えっ!えぇ…何ですか?」

 

何の話か分からずモモンガから不安の思念を感じ、申し訳ないと思うがモモンガの為にも話さなければならない。

 

「じつは………」

 

そしてミューズは残酷な現実を話した。

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

「嘘だ!!…そんなの嘘だ!!」

「…モモンガさん」

 

あれからミューズは知る限りのギルメンの現状を話した。ある者は家族と職を同時に失い、ある者は犯罪者になり、ある者は正義から悪へと落ち、ある者は病に掛かり余命いくばもない、ある者は殺されたり亡くなった者達。

 

その現実にモモンガは顔を覆い泣き崩れた。モモンガから強い悲痛・失望・絶望などの負の思念を感じた。

 

(「モモンガさんごめんなさい。…貴方に辛い思いをさせてしまって」)

 

それでも話さなければならないと考えた。モモンガはきっと叶わない希望に執着し、ナザリック大墳墓の墓守として永遠に待ち続けるだろうと考えたからだ。

 

執着する事は否定はしない、自身も音楽に執着しているのだから。しかし、その先にモモンガの幸せはないと感じ話をした。

叶わないかつての仲間を求めるより、過去を良き思い出として進んで欲しかった。だからこそモモンガの希望を願いを握り潰した。それがどれ程絶望するのかを知っていながら。

それでも…それでもモモンガに幸せになって欲しい。

 

(「最低だな私は…モモンガさんの願いを潰すなんて、それでも…それでも貴方には幸せになって欲しい」)

 

宝物殿からずっと考えてた、モモンガに何が出来るのだろうと、そして導き出した答えはこの美しい世界でモモンガに幸せになって欲しいと願った。そのためなら自身はどんな非情もやる覚悟だ例えモモンガに嫌われようとも。

 

泣き崩れるモモンガに近づきそっと肩に手を乗せ静かにモモンガに話しかけた。

 

「…モモンガさん貴方の幸せは、望みは何ですか?」

「…おれの幸せ」

 

さっきまでならかつての友人に再び会いたい望みはあったが、それが叶わないと知りモモンガは自身の望みは無くなり、自身の幸せがなんなのか分らなかった。

 

「モモンガさん何かやりたい事はありますか?」

「…やりたいこと」

 

ミューズは静かにモモンガが返事を待つ。

 

「…この美しい世界を見て回りたい」

「モモンガさんが良ければ、一緒に見に行きませんか?」

「えっ!!」

「今は難しいですが、落ち着いたら一緒にこの世界を未知を探しに冒険しましょう」

「…良いんですか?だってミューズさんには元の世界に帰る場所があるのに、早く戻らなくて」

 

この時ミューズは時折、自身に向ける不安や恐怖や寂寥感の理由が分かった。きっと元の世界に戻りたいと言って再び去ってしまんじゃないかと、不安で怖く寂しかったのだ。それでも自身の事を思い送り出そうと考えてたモモンガの優しさが嬉しかった。そしてこの世界に残る事を伝えていなかった自身の落ち度だ。

 

「あの世界に戻っても地獄が待っているだけです。ならモモンガさんも居て、ギルメンの思い出が詰まっているナザリックがある、この美しい世界に残るつもりです」

「でも…ミューズさん夢が叶ったのに」

 

突然ミューズは性別を元の無性に戻し顔の仮面を取った。

 

「モモンガさん私の顔どう思います?」

「えっ!!綺麗だと思います」

 

仮面を取ったミューズの素顔はオフ会で初めて会った時にモモンガは女性と勘違いした元の世界と同じ顔だった。

 

「女性みたいでしょう。この顔のせいで歌と関係ない枕営業したり容姿だけ売り出されてたんです」

「…そんな…だってミューズさんの歌あんなに素晴らしいのに」

 

自身の事を語っているミューズの瞳は徐々に暗く淀んでいった。

ミューズは自身の容姿を嫌っていた。だからユグドラシルの時は仮面を着け容姿が分からないようしていた。しかしゲームと違い仮面を外すせる事に気づき私室の鏡の前で自身の顔を確認してみたら、大嫌いな顔が目の前にあった。その瞬間、嫌悪感が込みあがり鏡をたたき割った。

 

「ありがとうございます。でもあの世界にとって私は富裕層相手の玩具だったんです。モモンガさんだって知っているでしょう?あの世界がそういう世界だと」

「…それは」

 

モモンガ達が居た世界は環境破壊が進み巨大複合企業によって国家は支配されているおり、貧困層は富裕層(巨大複合企業に所属する者)に採取されるだけの存在だ。そしてモモンガ自身も採取される側だった。

 

「だから嬉しかった。好きな歌がまた歌えるかもしれない、そして友人の貴方が居るこの世界に来れた事に」

「俺もです…俺も嬉しかった。家族も恋人もいない。会社に行き、仕事して、帰って寝る。なにもない世界からミューズさんと皆との思い出のナザリックと一緒に転移して来れた事に」

 

ミューズはモモンガの手を両手で優しく包み、優しい瞳でモモンガを見つめた。

 

「モモンガさん私と一緒にこの世界で一から始めませんか?笑って、泣いて、怒って、自由に冒険して楽しみましょう。新しい友人を作るのも良いかもしれないですね」

「ミューズさん…はい、一から始めましょう」

 

モモンガはに答えるように包まれている手とは反対の手でミューズの手を優しく包んだ。

その光景を天空の星々と月の光が優しく照らし包み込む。




観覧ありがとうございました。

友人にこの話を読んで貰った時に「BL?」と言われました。作者はBLの趣味も知識もなく百合属性なので、モモンガとそういう展開にはなりません。
そしてモモンガの幸せを願っているので頑張っていきたいと思います。


【誤字脱字報告】

中村屋(株)さん・あんころ(餅)さん
報告ありがとうございます。
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