「ふぁーーあ」
よーく寝た。
……ん?外明るいなぁ。今何時だ?
「あーーー!!!!!」
まずいまずいー!
今日はトレセン入学の日なのにーー!
ドタドタと階段をかけ降りると、すでにお母さんたちが準備していた。
「急ぎなさい!あんたの入学の日でしょ!」
「はい!」
私は仕立てたばっかりの制服に身を包み、昨日のうちに準備しておいた必要なものが全部入った鞄を持って、車に積んだ。
ふっー!危ない。出版時刻まで10分だよ。
歯磨き歯磨きっと。
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車に揺られて1時間くらい。目の前にめちゃめちゃ大きい学校が姿を現した。
「わぁ……!大きい!」
「ほら、降りなさい。ここからはあなたでしょう。」
ここまで送ってくれたお母さんがそう言う。
「送ってくれてありがとう!……頑張ってくるね。」
そう言うと、
お母さんは深く頷いた。
車のドアを閉じると、少し寂しい気持ちになる。
これからは、あんまり顔も見れないから。
でも!せっかく行きたいって言ったトレセンに入らせてくれたんだもん!期待には応えてみせる!
私の名前は、ビゼンニシキ。ウマ娘!
憧れのトレセン学園なんて……と、中学時代思っていたけど、高校がまさかトレセン高等部に入れるなんて!
うーん!嬉しい!
どんな人がいるんだろう?レースって楽しいのかな?
そんなことを思いながら、ワクワクして正門へ向かうと、
「君がビゼンニシキ君かい?」
すっごくイケメンな女の子がいた。
「私はシンボリルドルフ。この学校の生徒会長もしているよ。」
「よろしくお願いします!ルドルフさん!」
なんだか、制服が様になってるなぁ。なんか、着こなしてるって言うか……
着られてる感が否めない私との差に解せない気持ちになるよ……
「うん、じゃあ、早速だけど入学手続きと、入寮手続き、そして、理事長への挨拶を済ましてしまおうか。」
提出する紙は持ってるかい?と、聞いてくるルドルフさん。
私がその紙を渡すと、あっという間にまとめてしまい、事務室へ提出した。
「はえ……お仕事早いんですね。」
そう私が言うと、ルドルフさんは苦笑して、
「まあ、日々の書類仕事もあるのでね。」
と返した。
うーん、すごいなぁ。なんだかカッコいい。
「見たところ不備はなかったみたいだから、あとは理事長への挨拶と、寮の案内くらいだね。」
こっちに。と、誘導されて後ろをついていく。
はぁー……と、学年内を見ているだけでも一生かかりそうな広さで、流石日本一のマンモス校だとおもうよね。
階段をいくつも登ったところに、明らかに豪華な扉が現れた。
「ここが理事長室だ。」
そう言うと、ルドルフさんは、コンコンコン、とノックをして、
「理事長。転入生をお連れしました。」
と言った。そうすると、中から子供のような声で、
「おお!入ってくれ!」
と聞こえた。それを聞いてルドルフさんは扉を開けると、中に入った。私も一緒に中に入ると、中には頭に猫を乗せた子供と、緑のお姉さんがいた。
「ビゼンニシキです!よろしくお願いします!」
と挨拶すると、
「おお!君が!歓迎!ようこそトレセン学園へ!」
と、子供の方が元気よく言われた。
「私は理事長の秋川やよいだ!きみの活躍を願っている!何かあったらいつでもきてくれていいぞ!」
ああ、理事長さんだったんだ!私は慌てて、いえいえ……と頭を下げた。
「私は駿川たずなです。理事長秘書をしています。もちろん私に相談してくれても構いませんからね?」
と、緑のお姉さんも頼りになりそうな様子。
「はい、何かあったらすぐに頼らせていただきます!」
と言うと、理事長はうんうん。と、頷いていた。
「じゃあ失礼しました。」
と、ルドルフさんを追いかけて部屋を出る。
「さあ、次は寮だよ。」
と言う、ルドルフさんの後ろをついていくと、大きな寮が二つあった。
「こっちの寮が、栗東、こっちが美浦寮だよ。」
「へぇ……!大きいんですね。」
と、感想を述べていると、
「まあ、全校生徒分あるからね。」
君と私は美浦寮だよ。と、歩いていくルドルフさん。
寮に着くと、玄関で、寮長さんに歓迎された。
「おう!新入生か!歓迎するよ!私はヒシアマゾンだ!……でも、規則は破るなよ。」
怖い。規則を破ったら何があるんだろう。
「ルドルフさん……もし規則を破ったら何が?」
「うーん。私は破ったことはないが、ペナルティがあると聞くよ。」
やはり罰が……破らないようにしなきゃ……
「ふふ。そんなに怖がらなくても、簡単な規則ばかりだよ。部屋に着いたら教えよう。」
さあ、ここだよ。と、見せられた部屋の扉には、ビゼンニシキの隣に、シンボリルドルフの名前があった。
「ぇえ!ルドルフさんと同室なんですか!?」
「ふふっ!びっくりしたかい?私の同室は空いていたのでね。そこに君が入ることになったんだよ。」
さあ、中を。と促されて入った部屋は、きれいに整頓されていて、ルドルフさんらしさが出ていた。
「改めて、ルドルフさん、よろしくお願いします!」
と、私が言うと、
「そんなに畏まらなくても、同学年なんだから崩した喋り方でも構わないよ。もちろんルドルフと呼んでくれても。」
「ええ!?ルドルフって同学年だったの!?」
さっきから驚いてばっかりだなぁ。と思っていると、その様子を見たルドルフが笑っていた。
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荷解きも全て終わると、もういい感じの時間になっていた。3時くらい。
「うん?終わったのかい?じゃあ、疲れただろうし寝たらいい。時間になったら起こそう。」
「うん、ごめんありがとう……」
眠かったからありがたいなぁ。本当にルドルフは優しいなぁ。
「おやすみ……」
「うん。おやすみ……」
……
…………
…………………
私は走っていた。
「はっ!はっ!はっ!」
もうどれだけ走ったのかわからない。だけど、みんなのペースが速すぎて、全く着いていけないから、全力でペースを上げていくしかない。
「あっ!!」
足がもつれたと思うと、足に激痛が走った。
「くっ!」
でも、走らねば。もっともっと。
ゴール板を駆け抜けた時、まるで、自分の足が自分のものではないような気がした。
そして、ゆっくり倒れていった。
…………………
…………
……
「ビゼンニシキ。大丈夫かい?」
起きると、目の前には、ルドルフの顔があった。
「すごくうなされていたが……」
「そう?悪い夢見たからかな?」
なんか悪い夢を見た。
でも、あんな未来ありえない。
さあ!切り替えていこ!
なんたって、私のレース人生はこれからなんだから。
私は笑顔を作ると、わっ!と、心配そうに私を見つめるルドルフに掛け布団をわさー!した。
「わっ!なんだ!?」
びっくりした様子のルドルフを見ると、なんだか面白い。
「なんだか、ルドルフ面白いね!」
「そ、そうか?」
困った顔のルドルフ。
「と、とにかく!もうご飯の時間だよ。食堂へ行こう。」
「うん!そうだね。どんな味なんだろう……おいしいのかな?」
「ふふ。それは自分で食べて確かめるといい。」
「えー!?でも楽しみだな。美味しいって評判だもんね。」
連れられて着いた食堂は、かなりの大きさがあり、中ではスタッフが、いろいろな調理法で大きな食べ物を作っていた。
「はー!すっごいね!」
広々としたテーブルが並べられたスペースには、麺類からめちゃめちゃ重そうな揚げ物まで、さまざまなものを食べている人がいた。
やっぱ作ってるものが多いんだから。食べてる量も多いよね。
「あんなに食べれないかも……」
「大丈夫さ。きっとすぐに食べられるようになるよ。」
とりあえず頼んでくるといい。と、促されたので、受付に向かうと、人の良さそうなおばちゃんが出迎えてくれたので、鯖の塩焼き定食を頼むと、にこっと笑って、大盛りね!と、言われた。
「うーん!たのしみ!」
私が定食を待っていると、おーい。と、ルドルフが近くの席を取ってくれているようで、定食が届き次第、すぐに向かった。
「ごめんね!ちょっと遅れちゃった!」
「構わないよ。ほう。鯖か。DHAが含まれているからね。転校してすぐの今の時期には適してるだろうね。それに美味しいからね。」
「へー。体にいいんだ。好物なんだよね。鯖。」
「そうだね。まあ結局は好きなものを食べるのが一番いい。ただ、授業でもやると思うが、栄養にも気をつけた方がいいだろうな。まあ、それを見る限り大丈夫だと思うが……」
私の皿に盛られた野菜を見てルドルフはいう。
「まあね。これでも私、バランスには気をつけてるんだ!」
「そうかい?私はなんだかんだ肉や魚が多くなってしまうんだ。見習わなければな。」
ふふふと微笑するルドルフ。その手元には初めて見るくらい巨大なにんじんハンバーグがあった。
でも、周りを見渡してみたら、ルドルフの量が普通で、私くらいの量しか食べない人は少ないみたい。
……うーん、自然に食べられるようになるって言ってたけど、本当なのかな?
そう思いながら私はとっても美味しい鯖を口に含んだ。
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「どうだった?」
「ん、おいしかったね!」
そうだろう。と、笑うルドルフは、ここのご飯は美味しいと言う確信があるみたい。
確かにここなら誰がきても美味しいっていうだろうな。
何目的かはわかんないけど、フルコースもあるらしいし。きっと欧州の子たちがきても満足してくれるんじゃないかな。
さて、とルドルフは席を立ち、
「もう風呂にするかい?」
と聞いてきた。
「いつがいいかな?」
聞き返すと、うーんと考えた後、
「後少ししたらみんなが入る時間になるし今のうちに入っておくのがいいだろう。」
と答えたので、そうだね。と返し、部屋に着替えとかタオルを取りに戻った。
風呂場は寮合同のもので、一般的な銭湯と同等か大きなもの。
一応男湯も存在しているけれど、女湯と比べるとかなり小さいらしい。
大体この学園の男はトレーナーか事務員か教師しかいないけど、どれも寮に風呂場がついてるらしいし、使う人も少ないんだろう。
服を脱いで風呂場へ入ると、まだあまり多くの人がいるわけではなかったけど、ちらほら風呂に入っている人や体を洗っている人がいた。
「早めにきて正解だったかもしれないね。」
そう言うルドルフは普段は生徒会の仕事で遅くに入ることになる関係上あまりこの時間に風呂に入ることは少ないらしい。
だから、実際この時間に来たことが正解だったとわかって安心している様子。
自分も体を洗って、お風呂に入ると思ってた以上に気持ちよかった。
「ルドルフー……気持ちいいね。」
「うん。普段ならもっと人がいるからね。広い浴場で足を伸ばして風呂に入るというとはいいものだね。」
やっぱり生徒会の仕事は大変なのだろう。すごく気持ちよさそうにしているルドルフは、若干疲れているように見えた。
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「ふぅ……きもちよかったね。」
それからしばらくして、人が増えてきたのでお風呂から出た私たちは、部屋で布団に寝っ転がった。
「うん……たまには休むというのも大切なことだね。」
ルドルフは噛み締めるように言った。
「うんうん!たまには休まなきゃ!ルドルフってやっぱりずっーーっと生徒会の仕事ばっかりやってたんでしょ?潰れちゃったらもう遅いんだから。」
そういうと、ルドルフは微笑しながら、そうだね。と言った後、
「ここの消灯は11時。残りは2時間くらいあるからね。私がレースや練習について説明しよう。選抜レースも近くのうちにあるんだろう?」
「うん!1週間後!最近はずっとその対策ばっかしてたんだー!」
選抜レースや、その後のトレーナーの決め方などのアドバイスを私に合わせながら優しくしてくれた。
「……だから、〜を……」
「ねえ、ルドルフって優しいよね。」
「え?そうかな?」
「そうだよ。普通は初見の相手にはそんなに親切にはできないものじゃない?」
私はずっと思っていた疑問を投げつけた。するとルドルフは、
「そうだね。初対面と言っても、君にはなんだか親近感を覚えるんだ。しかも、同期、同室なんだから、自然とこうなってしまうものさ。」
それに、と、一拍をおいて、
「私の目標は、ウマ娘が全員幸せになれる時代を作ることだ。君なら、これの手助けになってくれると、私は思ってるんだ。つまりは、勘と言ってしまうと寂しいものだけどね。」
とにかく、と続けて、
「私は本当に君と仲良くしたいと思っているよ。」
そう言って、ふふっと笑った。
「うーん。私と仲良くかぁ。嬉しいね。私も仲良くなりたいって思ってたんだ!」
私が布団の上ではねると、下の階に迷惑になるから。とたしなめられちゃった。
「ん?ああ、もうこんな時間だ。そろそろ寝ようとしようか。」
話していると、案外時間は早く流れるもので、すぐに消灯時間前になっていることに気づいた。
「私は明日は生徒会の仕事があるし、寝るとしよう。君も寝るといい。」
「うん。そうだね。寝れるかなぁ?おやすみ。」
「ああ。おやすみ。」
枕が変わって慣れるか心配だったけど、全然気持ちがいい。もうぽやぽやしてきちゃった。
明日はまた色々しなきゃいけないからじっくり寝なきゃね。
そう思いながら、夢の世界に旅立った。