転生したOLは女悪魔(超化け物級の)になりました   作:アイリエッタ・ゼロス

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革命機の少女 Ⅳ

「広い温泉ね....」

「実はこの温泉、私が掘りました!」

 セラの手料理を食べ、私とセラは館の中にある温泉に来ていた。

 

「さすがに冗談でしょ....?」

「ん~? どうだろうね~?」

 セラは笑いながらそう言って温泉の湯を身体にかけていた。

 

「シャンプーとリンスはこれ使って」

「ありがとう」

 セラからボトルを受け取り、私は髪を洗った。そして次に身体を洗おうとしたのだが....

 

「はいは~い、お背中お流ししますね~」

 いつの間にか私の背後にはセラがおり、セラは私の背中に石鹸が付いたボディタオルを

 当ててきた。

 

「ちょ、ちょっと! 自分でやるから!」

「いいからいいから。いや~、やっぱ若いから肌ピチピチで綺麗だね~」

 セラは私の言葉を無視し、そんなことを言いながら私の背中を洗い出した。

 

「(何言っても無駄ね....)」

 私はそう思いながら黙って背中を洗われていた。

 

「よしっ! じゃあ次は前を....」

「それはダメに決まってんでしょ!」

 私は自分の胸の前に出てきたセラの手からボディタオルを奪った。

 

「だよね~。冗談だよ冗談」

 セラはそう言って笑っていたが、どこか残念そうな表情をしていた。

 

「(何で残念そうな表情してんのよ....)」

 そう思いながら私は身体を洗い、泡を流すとセラの後ろに座った。

 

「どうしたのサキちゃん?」

「ほら動かない」

 そう言って、私はボディタオルでセラの背中を洗い始めた。

 

「ちょっとじっとしてて」

「....は~い」

 

 ~~~~

 

「ふ~」

「良い湯ね....」

 温泉に肩まで浸かると、不意にそんな言葉が出た。

 

「それは何よりだよ」

 セラはそう言いながら天井を見上げて目をつぶっていた。私はこのタイミングがちょうどいいと

 思ってセラに声をかけた。

 

「ねぇセラ。少し聞いても良い?」

「何を~?」

「この館ってセラしか住んでないの?」

「そうだよ~。それがどうかした~?」

「家族の人は?」

 そう聞くと、セラは目を開き私の方を見た。

 

「ルルから何も聞かなかったの?」

「え、えぇ....」

「そっか....じゃあ教えてあげる。家族は私が殺したよ。もう数百年も前の事だけど」

「っ!」

 そう言いながら、セラは私の隣に座った。

 

「悪魔は戦争してるって言ったの覚えてる?」

「....えぇ」

「私はさ、一応悪魔の中じゃ貴族の家出身だったの。その中でも72柱っていう貴族家系の

 第三位。かなりの権力を持った家の長女だからね、当然悪魔のために人生を捧げろって親には

 言われてた。でもね、そんなのはまっぴらごめん。私の人生は私が決める。そう言ったら

 ブチギレられてね。他の貴族家を纏めて私を消そうとしてきたね。それに反撃したら私に

 向かってきた悪魔は全員消滅、悪魔の土地の三割は更地になったよ。その事件は今でも

 言い伝えられて"魔の蹂躙"って言われてるらしいよ。私も私で"反逆の女帝"って言われる

 ようになったし。それもあってこの森に移住したの。もう何百年経ったか忘れたけどね」

「そういう事だったのね....」

「大人なんて結局自分の利益優先だからね。どの世界でも一緒だっていうのがよくわかったよ」

 セラはため息をつきながらそう呟いた。

 

「....意外と似てるのかもね、私達」

「ん?」

「私の親も、毒親だったの。いえ、私の周りの大人は全員クズだった。私、これでも

 アイドルやってたの」

「アイドル!? すごいじゃん!」

「まぁね....でも、所詮事務所も私が使いにくいってわかったら契約解除。私の人生には、

 クズな大人しかいなかった。だから、私を否定した世界にカーミラで見返してやる....

 そのために、私はカーミラと契約したの。ルルには大切なものを守るために戦ってるって

 言ったけど半分は建前みたいなものね....」

「そっか....確かに私達似てるかもね。でも、サキちゃんはまだまだ変われるよ」

 そう言うと、セラは私の背後に回って抱きしめてきた。

 

「それに、きっと戦争始まったころとは変わってると思うよ。最初はその理由で戦ってた

 かもしれないけど、大切なものを守るためっていうのが最初に出たんでしょ? だったら、

 きっとそれは建前じゃなくて本音の一部なんじゃないかな?」

「セラ....」

「私と違ってサキちゃんはまだまだ若いから。人生はこれからだよ。あ、そうだ。

 手っ取り早く変わってみるなら私の恋人になる? サキちゃんが良ければいつでもウェルカム

 だけど?」

「パス。私好きな人いるから」

「そ、即答された....」

 セラはショックを受けたのか私の肩に顎を乗せてきた。

 

「セラ重い。あといつまで抱き着いてる気?」

「私の心の傷が塞がるまで....」

「....意外とめんどくさいわね」

「ねぇ泣くよ? 本気で泣くよ?」

「(めんどくさ....)」

 私は言葉に出さなかったが、温泉から出るまで心の底でずっとそう考えていた。

 

「(でもまぁ....面倒くさいけど悪い奴じゃないのよね)」

 

 

 

 


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