この素晴らしい世界に森兄弟(サーヴァントユニバース)を! 作:AGIの素
―――ここは某所、ある城のある一室。
行き交う人々の喧騒にまみれた一室にてとある人物が眉をしかめていた。
「ひゃーっはっはっはっは!テメェ今俺のこと睨んだろ!?」
「あ?ぶち殺すぞテメェ!」
「おらおらおらっ!さっさと進みやがれ!」
「今俺のこと止めたやつどいつだコラァッ!?ブチ殺してやらぁっ!!」
「はーははははっ!面白くなってきやがったぜ!」
「とりあえず手近な奴からぶっ殺してやらぁ!」
「んだよその茶器!詫びてんじゃねえの!どうだ?このあと茶の湯でもどうよ?」
「根切りだ根切り!どいつが一番殺せるか勝負しようじゃねぇの!」
…失礼。大分騒がしいの間違いだった。…というより、不思議なことに全員が全員生き写しが如く似通い、頭髪、顔の造形はもとより、声や体格、服装から話し方。その何れもが寸分狂いなく同一のものであり、顔認証システムすら文字通り顔パス出来てしまう程のそっくりさんであった。
「おいテメェらうっせえぞ!ちっと黙っときやがれ!」
そう声を荒げるのはこれまた同じ顔の青年。全く同じ顔同士で波乱の芽を芽吹かせていた彼等だが、なぜだかこの青年の言葉にだけは素直に応じていた。
「オレに指図すんじゃねぇ!殺されてえのか!…って大殿か。ならちっと斬るだけで勘弁してやらァっ!」
「まあ、大殿が言うならそうすっか」
「大殿なら仕方ねぇな、オレら模反とか大っ嫌いだしな!」
彼らが口々に言う『大殿』。その称号が故にこの一人に従っているが、それを呼ばれるたびに当人は顔を顰めていく。
「……だあっっ!やっぱ何か違え!オレはこういうの向いてねぇんだよクソが!もう止めたぜオレはよ!殿様探しの旅出るぜ!」
眼前の卓を叩き割り、激昂と共に外へ飛び出すも咎める者はおらず、むしろ嬉々として凶声を上げた。
「大殿が大殿辞めやがった!」
「つーことは何だ?次の大殿決めっか!一番強え奴な!」
「おっしゃあ!かかってきやがれ!」
「ひゃーはっはっはっは!戦だ戦!」
「ぶっ殺してやらぁ!」
彼らは『長可星人』。サーヴァントユニバースにある惑星の一つ、長可星に住む戦闘民族だ。色んな星で意味不明の蛮行を繰り広げたり、急に真面目になって文明を発展させたりと、その噂はコズミックキョクトー星雲では広く知られているものであった。
その惑星から今一隻の宇宙船が飛び立ったのは、割とみんな知っていたが特に気にされることもなかった。
―――…
『そんな……蘭丸は、敗けたのですか?』
ぐぬぬぬぬ、と。かつての辛酸を思い出し、彼、或いは彼女(可変式)はカワイイ顔を歪めた。
かつて行われた『蘭丸の蘭丸による蘭丸の為の超A級小姓謎の蘭丸X御前試合〜星を征く蘭丸シュトラール〜』通称『蘭丸大戦』にて決勝まで勝ち進んだ蘭丸は、自らを撃破し謎の蘭丸Xの称号を手に入れた彼、或いは彼女(可変式)へのリベンジを望んでいた。
「そしてとうとう辿り着いたのであります!ここが、かつてコスモ・サーヴァントクッキングフェスティバルで移動を余儀なくされたという、蘭丸星第2の秘境…!」
それもう秘境じゃなくない?
ともかく、そんな細かいことを蘭丸は気にしない。因みに秘境は後20個くらいあるけど気にしたらいけないのだ。
ただの蘭丸は、目の前の遺跡にかかる『メディアの撮影、報道などはご遠慮ください』と書かれた垂れ幕を潜り、いかにも迷宮というような構造(案内板つき)の地下へ進むと、意気揚々と案内板に従って歩き始めた。
蘭丸がここへ来た理由。それは蘭丸星に伝わる大太刀、蘭丸ブレードに匹敵するという超級大業物がここに封印されているという噂を聞いたからだった。
この噂は正しく渡りに船。今度こそ自分が謎の蘭丸Xの称号を手に入れるのだと息巻いていた。
案内板に従うこと数分。意外とあっさり着いたそこに、それはあった。異様な雰囲気を醸し出す大太刀。見るものが見れば目を剥くほどのランマニウムを発する業物は、蘭丸を惹き付けてやまなかった。
「これが、蘭丸ブレードⅡ…!」
何言ってんのこいつ?
当然この大太刀はそんな名前ではない。むしろ本来の蘭丸ブレードの真名と一切関係なかったりするのだが、なぜだか蘭丸の頭の中では自動変換されていたのだ。
「これがあれば…蘭丸は真の蘭丸に、謎の蘭丸Xとして蘭丸としてあれるのです」
クスリでもキメてるのかという言葉が次々飛び出しては、それが事実であることが筆者の頭を悩ませる。
「ムムムッ…封印は随分と固く閉ざされている様でありますね。ですかっ、星間飛行剣技3級の蘭丸に破れない筈がないでありま――ぴぃっ!?」
封印結界に手を入れると突如警報が鳴り響き、割と雑に蘭丸ブレードⅡ(仮)を引き抜いてしまった。
『侵入者を発見。侵入者を発見。迎撃システム作動します』
「くっ、見つかってしまっては仕方ありません。ですがこれも蘭丸が蘭丸であるため!突破するでありますよ!」
早速腰に下げた「不動貞宗セイバー」を抜き、その迎撃システムとやらを切り捨てようと構え、部屋全体に仕掛けられていた魔術式が発動。
ゾロゾロと迎撃用古代ロボットが現れる。多勢に無勢。けれど蘭丸は落ち着き払っていた。
単調な動きのソレを容易く切り払い、振り下ろされる腕ごと核を破壊して機能を停止させる。
「何のこれしき!あの辛き戦いを乗り越えた蘭丸には通じません!……ってアレ?出口は?」
出口消えた。
狭い閉鎖空間。それだというのに迎撃ロボットの召喚は止む気配がなふい。寄るロボットを千切っては折り畳み千切っては折り畳み、超A級小姓の性を出しながらも対応するが、蘭丸が一体斬り伏せる間に二体三体とロボットは増え、徐々に逃げ場どころか戦闘可能な空間すら消えていく。
「ああっ!ズルいでありますこれ!潰れ、潰れる…!」
ロボットと蘭丸のおしくらまんじゅう。何故か誤作動した迎撃システムは意図せずしてその機能を十全に発揮していたのであった。雑に抜いたせいだね。うん。
「うぬぬ…こうなったら蘭丸の宝具を…!『
これまでの旅路、戦闘によって本人でも気付かない内に疲弊していた様子である蘭丸。蘭丸星人が持つ元素、ランマニウムが枯渇しかかっており、とても宝具を放つなんてことは不可能であった。
因みに魔力で代用可。ランマニウムって何だよ(哲学)。
「こ、このままでは…」
早速訪れたピンチ。打開出来なければ
仕える主を持つこともなく、謎の蘭丸Xになることもなく、ただ無為に死んでしまうのかと、サーヴァントユニバースでは深刻な想いを抱いたその瞬間。救いの星は現れた。
ドゴーンと、遺跡の天井をぶち抜いて。
「らんっ!?」
落ちてきたのは宇宙船。勢いそのままにロボットを轢き潰し、それでも大きな破損が無いのは流石に立派な宇宙船だと伺える。
もくもくと土煙立ち込め、蘭丸は惨状を眺めていると、影が一つ飛び出した。
「ひぃー!ひゃっはあッ!随分な歓迎じゃねぇの、全員ぶち殺してやるぜ!」
それは一人の長可星人。南蛮銀河の技術を用いて製造された鎧に身を通し、付着しすぎた血で真黒になった直槍を手に豪快に斬り込んできた。
「おらおらぁ!」
その暴れぶりは噂に違わず、先の墜落で数の減ったロボットは見る見る内にただの鉄屑と成り果てた。
「あ?もう終わりかよ?」
遺跡そのものが破壊されたお陰で迎撃システムも根本から機能しなくなり、増援はない。
つまらなそうに呟く長可は、ぽつんと立つ蘭丸に気がつくとその凶相を更に一層歪めた。
「んだよ!まだ生き残りいるじゃねぇの!」
「ま、待つであります!蘭丸は敵ではありません!」
言葉を発したところで止まる長可星人ではない。が、今回に限っては声の主が主だった。ぴたりと動きを止めると怪訝そうに問を返した。
「あ?その声、その顔、いつぞやの蘭丸星人じゃねぇか!久しぶりだなぁ、おい!」
「え、蘭丸の知り合いに長可星人はいないでありますよ?他の蘭丸星人ではありませんか?」
「そうか?まあ、随分会ってねぇからよく覚えてねぇわな」
豪放磊落。からからと笑って長槍を肩に背負う。
「ともかく、助かったであります。このお礼はいつか星に……。あ、あれ?体が…動かない?そ、そういえばランマニウムが不足していたであります…」
直後、倒れ伏す蘭丸。最早指一本すら動かない程までにランマニウムが消費され、体を巡る魔術回路は沈静化した。
「お?介錯してやろうか!」
「やめるであります。……あの、どこかランマニウム補充が可能な惑星に連れて行ってくれないでありますか?」
―――…
「ランマニウムフルチャージ!……まさか長可様の船にランマニウムが保管してあるとは…!このお礼はいつか首を挙げてお返しを」
「おう、別にいいぜオレは。ランマニウムも何となくで積んでただけだしよ。それよかお前何でこんなとこいんだよ」
所変わって船内、たまたま積み込んでいたランマニウムにより元気を取り戻した蘭丸と、運転席で出発の準備を進める長可。
「ら、蘭丸は蘭丸大戦にて今度こそ謎の蘭丸Xの名を襲名するであります!そのためにこの蘭丸ブレードⅡを手に入れたのですから!」
むんっ、とその大太刀を放り投げ、中に浮かぶそれに飛び乗る。そのバランスは見事なもので、一切のブレがない。
「ギャハハハ、要は負けた戦をやり直してぇってことかよ!」
「むっ、確かにそれは事実でありますが……。なんです?こんな封印まで解いて得た武器を使うのは卑怯だとか言うつもりでありますか?」
「は?戦場なんて強いやつが勝つで十分だろうが。何回でもどんな手でも使えばいいだろ」
けらけらと大口を開けていたのが急に真顔で話し出す。その癖偶にインテリ化したり真理をついた一言を言うものだから、周囲のサーヴァントも思わず二度見する。これも長可星人の特徴の一つだ。
「おう、まあオレも特に行く宛もねえし送ってやろうか?」
「いいでありますか!?」
「オレもその惑星最強の蘭丸とかいうのに興味あっかんな!ぶっ殺したらどんくらいのスコアすんだ?」
「えっ…ちょっとそれは。流石に同じ蘭丸星人同士で殺し合いとかはしないです」
そーか?と聞き直しながらも興味がないかのように直ぐに向き直る。やがてマニュアル操作で再起動すると、力強いコズミックエネルギーの胎動が感じられる。
外注パーツで製造されたエンジンはアルトニウムを吹き、この成利星を離陸する。
「そんでそいつの場所どこよ?」
「あ」
「んだその『あ』ってオイ」
「その…詳しくは蘭丸星で調べられると思いますので、そこまで送ってくれないでありますか?」
「オレパスポート持ってねえぞ」
「そこはご安心を!きちんと蘭丸が所有して……して……ぴえぇ」
「無ぇのか」
コクリ、泣き目になりながら首肯する蘭丸。
森星系統は基本的に『疑わしきはとりあえず殺して後のことは後で考えるか』という思想の持ち主が多く、迂闊に無パスで入星などをしたらただではすまない。
しかしそうなると困った。長可はともかく、蘭丸は星にも暫く帰れず、目指す相手の場所も分からない。団体に所属しているわけでもない一個人をこの広いユニバースで無闇に探すのは何万年かかるか分かったものじゃない。
「あうううぅぅう…。蘭丸は、蘭丸は、何て駄目な蘭丸なのですか…!超A級小姓などと言っておきながら、この体たらく。うう、最早蘭丸には謎の蘭丸Xの資格など……!」
そして蘭丸はハッと気づいた。
あの蘭丸と己との決定的な差を。それこそがあの蘭丸大戦において、敗北を喫した理由なのだと。(因みにその蘭丸は超A級小姓のライセンスを紛失している)
「もう、恥ずかしくて故郷にも帰れないであります……。所詮、蘭丸はこの程度。仕えるべき主人も一生見つからないのですよ…」
「おう、じゃあ一緒に来るか!」
「はえ?」
蘭丸は間の抜けた声で返す。長可は気にする素振りを見せずに笑い飛ばす。
「オレも自分の殿様探してるんだわ!みりゃオマエも中々出来そうだし部下多い方が殿様も喜ぶだろ!ふっはははは!お前もそれでいいよなぁ!」
「えっ、えっ…。じゃ、じゃあ蘭丸もお供させて頂きます?」
「おう!やっぱ殿様ってからには家来連れてねーとな!」
ますます上機嫌で語り、勢いよく操縦桿を倒す。
「おらっ、ぶっ飛ばせ『百段『!」
重厚な駆動音を立てて彼の宇宙船『百段』は成利星の重力圏を突破。後は備え付けのAIに進路を入力すると自動で運転してくれるシステムとなっていた。
「あっ、でも主様を見つけたとしても二人同時にはどうなのでしょう?」
「あー…兄弟星だし、義兄弟にでもなるか」
「あっ!それいい案でありますね!やっぱり仕える主様はそれくらい許してくれると蘭丸としても仕え甲斐がありますしね!いいであります!蘭丸に義兄妹!おお…なんか、こう、初めてなのに何でかしっくりくるであります!」
「ぎゃははははは!大殿に歯向かうやつは?」
長可が問い、蘭丸は目を爛々と輝かせ、ギザ歯を剥き出しにして二人同時に叫ぶ。
「「見つけ次第ブッ殺ス!!」」
流石兄弟星。根本の思想が大体同じ。それの何が面白いのか二人はガンギマリの目で大笑し、まだ見ぬ主に思いを馳せた。
『次元跳躍装置起動。星間ワープまで。5…4…3…』
「おお!これが噂の星間転移機能!行き先はどこでありますか?」
「あ?そんな機能つけてねーぞ」
「は?」
『…2…1…0。次元跳躍開始!』
光粒と刹那の白光が網膜を焼き、次元トンネルを抜けると船内から見える景色は一変していた。
――どこまでも澄み渡る青い空。広がる草原。豊かな大自然が溢れ、大小様々の生物が闊歩する。鳥が鳴き、馬が嘶き、畑にはサンマが生え、生きのいいバナナが川を泳いでいる。
そんな新天地へ訪れ、離陸場所を探した瞬間。
「エクスプロージョン!」
大爆発。
「ななななっ、何でありますか〜!?」
「ああ!?敵襲か!?」
突如発生した業炎はワープ直後の『百段』を捉え、爆風と共に灼炎が包み込んだのだった。
展開がかなり早めになったけど、こんなの正直どうでもいいから是非もないよネ!というかこんなのが何人も居るの?ワシ正直あの二人だけでいっぱいいっぱいなんじゃが。
この蘭丸は謎の蘭丸Xになれなかった蘭丸で、勝蔵はただの長可星人ってことかの。
もし面白そうだなーとか続いてほしいなーとかちょっとでも思ったら感想、高評価とかくれんかの?ほら、わしのくぎゅうなボイスに免じて、ね?