忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件 作:にゃんころ缶
特殊フォントの反映には時間が掛かる場合がありますので、ご了承ください。
※忍びの少女が着ている服装ですが、ps4,Switchで出てるゲーム〝天穂のサクナヒメ〟の主人公サクナヒメが稲作りをする時に来てる服装がこれに当たります。
上が膝丈迄の小袖に下はハーフスパッツみたいな
後、腕に手甲は付けてません。
半股引はよく祭りで男性が履いてる物です。見た目はハーフスパッツみたいに見えますよね。
この服装はよく忍者マンガや、時代劇物で見られる恰好ですね。
それと、くノ一の服装としてもよく使われてるみたいな感じ?かな。
脚絆については、鬼滅の刃に出てくる禰豆子が脛に巻いてるのも脚絆ですね。
猫娘忍びの服装はこのようなイメージで書いております。
ストーリーは基本書籍版沿いですが、Web版や転スラ日記(アニメ)、コミック版など一部参照しつつ、原作の話にオリ主の話をくっ付けたり、改変しつつ進めたりと、そんな感じで書いていきます。
〝書籍版や漫画版を読んでる方々には、え? この展開またやるのと思われる場面もありますが、そこは作者の妄想オリキャラが、どうその話に食い込んでいくのかを楽しんで頂けたらと思います〟
内容はバトルあり、日常在り、ガールズラブあり、ほんのちょっぴりシリアスあり、ギャグありの内容になります。
それでは、これより始まる。〝異世界転生珍道中〟物語にお付き合い頂ければ、幸いです。
※〝打刀〟
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忍び・月巴
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忍び・琥珀
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1話 忍び転生
天を焦がす黒い炎が荒れ狂う、午後の
そこで、あたしと相棒は、死んだ……。
あろうことか、あたしと相棒は――
転生したんだ。
しかもね、どこかもわからない異世界に、化け物として生まれ変わったんだよ。
そこで、
最初さ、こんなん見たら、ええ!?
でもね、そんな可愛げのある妖じゃなかったんだ……。
この世界でいう、魔物と呼ばれるものだったんだよ。
そうなんだ、あたしと相棒は化け物じゃなく、魔物と呼ばれる者になっていたんだ。
しかも、ここは理不尽極まりない魔物達が生息する世界なんだよ?
ふざけんなこのスカタンが! と叫んだね、あたしは……。
まあ、そんなこんなで、あたしと相棒は異世界で生きる事になってさ――
そしてね、
そう、始まりは――
あの、撤退戦の最中だったんだ……。
時は、元亀元年(1570年 戦国乱世の日ノ本
リムルのいた日本と同じ世界観でありながら独自の世界線へと分岐した、もう一つの日ノ本の国。
ここは、魑魅魍魎が
人の技もある意味特殊で、人ならざる力を持つ者たちが存在した。
それは、〝忍び〟と呼ばれていた。
常人とは懸け離れた能力を持つその者たちを、人々は
人の姿はしていても人ではない、〝異形の
その力を持つ者が、伊賀ノ忍び、甲賀ノ忍び、
他にも大小様々な忍び集団がいたが、この名を連ねる忍び集団が
各諸国の大名たちに恐れられていた。
他国への潜入工作、要人暗殺、情報収集、合戦時の戦力としてなど、請け負う依頼は多種多様に及び。
現代で言う傭兵業とスパイ、暗殺を生業にする、戦闘集団であった。
織田信長が天下を取らんと、戦乱渦巻く戦国時代。
そんな時代に。
二人の少女が、
折しも、朝倉家の越前に攻め入ってた織田軍は。
浅井家の裏切りにより、撤退戦を仕入れられる事になっていた。
俗に言う、〝金ケ崎の戦い〟である。
追撃して来る朝倉軍、二万。
そして秀吉の軍師である竹中半兵衛は、お抱えの雇われ忍び――
乱破ノ忍びたちに、追撃して来る先兵を迎え撃つよう告げよと、
すぐさま家臣の一人が、乱破ノ忍びたちが休息を取ってる場所へ急ぎ向かう。
忍びたちのいる場所に半兵衛の家臣が着くと、大木に身を預け座っている二人の少女の名を呼ぶ。
「
「あぁ~……朝倉軍の先兵を、あたしたちだけで押さえろと?(うぁー……めんどくさ)」
腰を上げた月巴が少しめんどくさそうに返したが、それを気にもせず家臣は話しを続ける。
「うむ。足止めの陣が出来るまでの間で、よいのだ」
「ほんま、かなわんなぁ。先兵二千を相手に、うちらの手勢だけでは……無理おすえ?」
同じく腰を上げた琥珀が、さも他人事のように返すが。
やはり、それも気にせず家臣は話を続けた。
「今ここで……朝倉の本隊を、秀吉様まで通すわけにはいかぬのだ! あと
「はぁ~ わかったよ。軍師の半兵衛様に伝えておいてね。持って……
「かたじけない、月巴殿。では、これにて!」
月巴と琥珀に、事を告げ終えると、足早に家臣は半兵衛の元に戻って行った。
今年十七になる、
忍び
白地の
胴に巻く角帯には、反りのある一振りの打刀を差していた。
〝
免許皆伝を得て、天牙影千流・創始者 十六夜
髪は黒髪で、肩に少し付くか付かないくらいの長さで。
顔立ちは幼さが残る可愛い顔付きであり、どこかめんどくさそうに話す癖があり、普段はのんびりとした性格で、いざ戦いになると豹変するタイプであった。
そして同じく十七になる、
忍び装束は月巴と同じ膝丈迄の紺色の
顔立ちは美人でありながらおっとりとした女性で、京言葉混じりの言葉を話す。
髪は背中の肩甲骨まである長さの黒髪を、していた。
性格は、普段はおっとり。切れると、月巴より過激で。その切れる沸点は付き合いの長い月巴でも、「未だに、よくわかんないのよねぇ」と言い。
「琥珀は、結構変な奴なんだよねぇ」と、言わしめていた。
そんな琥珀も、〝闇夜流・呪符忍術と小太刀術〟の使い手であり、月巴と同じ柔術も納めていて免許皆伝持ちである。
角帯の腰後ろには、反りのある刃渡り一尺三寸(約40センチ)の小脇差を差していた。
この二人。乱破ノ里で、上位五人の中に入る強さを持ち。
秀吉お気に入りの、雇われ忍びであった。
琥珀がパンパンと手を叩きながら、休息で飯を食ってる下忍たちに声を掛ける。
「はいはい、あんたら、聞きましたな? 今ここに居るうちら百人で、朝倉軍の先兵二千と
「なぁ、琥珀。無茶だぜ、二千もの兵相手にこれだけの兵力で、足止めなんてよ。本隊が来たら、ワシら終わりじゃねえか」
焚火の前で飯をかき込んでる下忍の男の一人が、どうすんだ?と言う顔で琥珀に言い放つ。
それに琥珀は、はいはいと言った顔で答える。
「そんなん、わかってるわ。一刻の間だけ押さえればええんやさかい。その後は、秀吉様たちの陣まで撤収すればええんやで。ちゃっちゃと飯をかき込んで。はよ、支度しや!」
「「「「「「「「おう!」」」」」」」」
琥珀の言葉に手勢(下忍)達は、威勢の良い掛け声をあげ。
喰い掛けの飯をかき込み、焚火を消しながら支度を始める。
事を告げ終えると琥珀は、横にいる月巴に話しかける。
「ねえ、月巴。先兵二千の中に……風魔ノ忍びは、いてはると思う?」
「いや……多分いない。あいつらは、本隊と一緒に来るはずだよ。無駄にあたしらと
「そうやろねぇ。乱破ノ里が誇る、
「いやいや、あんたもだろ。琥珀」
「あら、うちは――か弱き〝
「あぁ? なに、他人事のように言ってんのよ。相変わらず、猫かぶるよね?」
「それは、あんさんもや。普段はボヘーッとしてはるのに。いざ戦いになったら、人が変わるんやさかい。かなわんわぁ」
「ほっとけ! それよりさ。今回ばかりは、分が悪すぎる……生きては帰れんかも、よ」
「まぁ……こんな
この二人は乱破ノ里の幼馴染で。
秀吉に雇われた忍びの
その補佐、月巴である。
この年齢で組頭になる琥珀とその補佐をする月巴の、能力の高さが伺えるところでもあった。
そんな中……。
月巴の言葉に憂いた表情で俯き、琥珀は頬をほんのり赤らめ、次の言葉を
「そやけどぉ。月巴がぁ、一緒ならぁ。うちは、死んでも本望やし~。だって、愛する人と死ぬんわぁ――お・ん・な・の、よ・ろ・こ・び。おすのよぉ~」
身をもじもじさせながら言い放った言葉に月巴は、あからさまに嫌そうな顔で返す。
「ねえ、琥珀。いつも言ってるよね? あんたの
「もう、いけずなんだからぁ。そろそろ、観念したらええのに。うふふふ」
「あ゛ぁ゛? 観念も何も、あたしは、男がすきだっつうの! 男も女も好きとか――あんた、たち悪すぎだわ!」
「あらあ~ おなごは、あんさんだけやで?」
「あぁーー もういいわ……頭痛くなってくるし。はぁ~~」
琥珀と月巴は事ある毎にこんなやり取りを繰り返し、月巴が溜息を付くまでが通常であった。
周りにいる男衆や女衆たちも、またやってると言った顔で、皆笑っていた。
琥珀は六歳の時に、野犬に絡まれている所を月巴に助けてもらい。
それからは月巴にべったりになり、今に到るのである。
「は~い、みんなよく聞きや。いつも通り、侍大将の首は一貫文(現代の時価で約15万円)。雑兵は一つに付き五文。後は、うーん……深追いは、厳禁! 言い付けを守らへん奴は、うちが、そっ首落とすで? 以上や!」
琥珀がいつもの、敵の首を取った褒賞の事を告げる。
ここで言う首を取るとは――
雑兵は打ち取るだけで、侍大将は首を持って来るの事である。
この雑兵を
続いて月巴が皆に告げる。
「さあ、
月巴がそう言うと、皆の気があからさまに変わり。
一気に凄まじい殺気が大気を斬り裂き、広がって行った。
特に動体視力と身体能力に優れ、筋力は常人の数倍を有し。
女といえども、同じ忍びの男と引けを取らない強さを誇っていた。
まさに、〝異形の
「さあ、あんさんら。きばりや!!」
琥珀の号令と共に、百名の忍びが一斉に駆けだした。
月巴の方には、打刀、槍、小太刀、鎌、剣鉈など持った男女の下忍七十名が付き従う。
琥珀の方は、呪符忍術を使う男女(下忍)三十名が後に続く。
琥珀の使う呪符忍術。
この
霊力を
それは、自身の姿を隠したり、幻術、果ては爆炎術など相手を軽く殺傷できる現象を起こす。
恐るべき術であった。
既に琥珀たちは、〝幻隠〟と言う呪符忍術で、姿を隠し。
月巴たちより先に、朝倉軍の先兵の前衛に近づきつつあった。
「ほな、びっくりさせましょか~」
峠の一本道に面する、小高い雑木林を駆け下りながら。
小袖の袂から、呪符の束を取り出し、宙投にげ。
右手の人差し指と中指だけを立て、後の指は軽く握り眼前に構える。
ひのはなをさかせ
(火の花を咲かせ)
「いきよし! 火遁・爆炎花!」
眼前に構えた二本の指を立てた右手を、真横に切る。
宙に舞っていた二十枚の呪符が、一斉に先兵の戦闘集団目掛け、飛来した。
先頭にいる足軽兵の眼前飛来した爆炎符は、凄まじい火球と爆発音を響かせ。
あっという間に、二十名の足軽兵を爆殺した。
「敵襲! 敵襲!」
ブオォー ブオォー
反対側の雑木林斜面から月巴達が駆け下りて来て一斉に地を蹴り、宙に飛んだ。
その高さ、十数メートル。
敵集団のド真ん中に、ザシャッと土煙を上げながら降り立ち。
月巴が抜刀する。
剣閃が煌めく! 眼前にいた足軽兵四人が、一刀のもとに斬られ、
右頬に掛かった返り血を、左手の甲で拭うと。
口端を軽く上げ、薄く笑い。
右手と左手をくっ付けた握りで、刃先を後ろに向け右脇に構える。
このくっ付けた握りは、素早い切り返しと、細かい太刀筋のコントロールが出来。
狭い屋内はもとより、広い合戦上でも、猛威を振るった。
「覚悟しな、雑兵ども」
静かに言葉を放つと、敵集団の中を縦横無尽に駆け抜ける。
槍を持った足軽兵をものとせずに、次々と斬り伏せていく。
古来戦場では、槍か大太刀といった長物が主流であり。
打刀は、槍などが使えなくなった時に使う、非常用の武器の類であった。
しかし、この世界では〝忍び〟という異形の
〝天牙影千流・抜刀術〟の使い手、月巴。
その人を斬る事だけに特化した剣術は、次々と足軽兵たちを血祭りにあげていった。
悲鳴が上がる中、幾つもの首や、手足が宙に舞い、血飛沫が舞い踊る。
「こんなとこかなぁ。ん?」
月巴は足を止めて周りを見てると、右横から三人の足軽兵が槍を持ち自分に向かってくるのを見て。
懐に手を入れ、そのまま右横に腕を振った――
ヒュッヒュッヒュッ、風切り音が三つ響き。
カカカッと音がして、足軽兵三人が崩れ落ちる。
投げた飛苦無は見事に、額を貫いていた。
更に正面から刀を振り下ろそうと来た足軽を、右手に持った打刀を地面に突き立てて、スッと左に躱すと。
左手で相手の右手首を掴み、右手で相手の手の甲を内側に曲げ極め。
体を入れ替え、右足を横に出し、体落としのように投げながら小手返しを掛け、くるりと足軽兵は空中で回り、地面に叩き付けられた。
うつ伏せになった足軽兵の首を踏み折り、左横から来た足軽兵の鼻に
鼻を蹴り折られ、血が噴き出る鼻を押さえ呻く足軽兵。
地面に突き立てた打刀を引き抜き、呻く足軽兵を袈裟斬りで一刀両断にし。
刃に付いた血糊を、右斜め下に振り、血振りを済ませ鞘に刃を納める。
チンッ 軽やかな鍔鳴りが響いた。
下忍たちも、次々と足軽兵を斬り伏せていく。
乱戦が続く中、先頭集団の足軽兵たちが後方へ、少しづつ引き始めていた。
それに気付いた、月巴と琥珀が周囲の気配を探ると……。
そこへ――
何発もの銃声が響き渡る。
火薬の爆発する音が峠道の山々に
十数人の下忍たちが、頭や胸を撃ち抜かれ、くたりと地面に崩れ落ちて行った。
「鉄砲隊!?」
銃声が響き渡った瞬間、一斉に草陰や雑木林の方へ身を隠した月巴たち。
月巴が気配を探るも……火縄の匂いは風に乗って漂い感じるが、その火縄銃をもつ者の気配が感じられなかった。
嫌な汗が一筋頬を伝い、ある集団の事が頭を過る。
「マズいな。この異様な気配の消し方……
雑賀衆。忍びとは一線を画する、鉄砲を操る集団。
異能は持たぬが、気配を偽り隠すことに長けており。
その技能を持って敵を狙い撃つ、恐ろしい集団であった。
中忍ならいざ知らず。
下忍では、隠れた雑賀衆の者には近づく事さえ出来ないのである。
唯一、〝幻隠〟を使う呪符忍術士なら近づき殺すこともできるが。
姿を見せた途端、別の者に撃たれることになるのである。
そこへ〝幻隠〟で〝認識阻害〟を掛けた琥珀が、月巴の隣に来た。
「かなわんなぁ。雑賀衆がいてるなんて、聞いてへんわぁ」
相も変わらず、他人事のように吐き捨てる。
「琥珀、下忍たちは引かせた方がいいかもよ? 狙い撃ちで、全滅させられるかもね」
「そうおすなぁ……しかたありまへん、ここまでおすな」
そう言うと琥珀は、呪符を上空に向かって飛ばし、爆発させた。
赤い火球が昼間なのに眩い輝きを放ち、徐々に輝きを失い消え失せる。
それを合図に、下忍たちは秀吉が築いた足止めの陣がある後方へと引いていった。
「さてと。もうひと暴れしたら、引こうか。琥珀」
「そうですなぁ。ほな、もう一働きいきましょかぁ」
だが、この時。
雑賀衆の鉄砲隊数十人が、既に月巴と琥珀を包囲しつつあり。
一度引いた足軽兵達が前線に戻って来つつあった。
鼻の利く月巴が、火縄の匂いだけで鉄砲を持つ者の居場所を探り出し。
そこへ、琥珀が、爆炎符を飛ばしていく。
火縄銃の発射音と、爆炎符の爆発音が織りなす中。
琥珀を狙い、撃ち出された銃弾が一発。
それを月巴が、その優れた動体視力で斬り飛ばしていた。
キキンッ 斬られた丸い弾丸が真っ二つになり、地面に転がり落ちていく。
「ああー まずいぞ、これ! どんどん雑兵共が集まって来やがるよ!」
「もう~ なんぎやわぁ」
しかし、戻って来た足軽兵達の相手もしなければならず。
いつしか、二人は、二千近くもの兵に囲まれる事となる。
そこへ、三発の銃声が轟き。
二発は月巴が斬り落とすも――
残る一発が、琥珀の頬を掠める。
ツーっと左頬から流れ落ちる一筋の血を、右手の指で拭い。
その指の血を、ぺろっと舐め上げ、目を鋭利に細め。
低く重い声でゆっくりと、言葉を吐き捨てていく。
「かなわんなぁ、人ん大事な肌に、傷をつけよってからにぃ。あんさんら、覚悟しいや。もろともに、地獄の業火で焼いてあげますよって!」
冷たく底冷えのする笑みを浮かべ、両袂から黒い呪符に赤字で呪文が書かれた符を両手に持つ。
その呪符を投げると、琥珀の左右に位置取り、そのまま宙に浮いていた。
それを見た月巴が、慌てて琥珀を止めに掛かる。
「ちょっ、ちょっと! なにしてるの? やめてよね! それ、禁忍術じゃないかぁー!」
「いやおす! もう、堪忍ならへんえ!」
「だからそれはやめてって、ねえ琥珀!」
「いやや!!」
完全にキレた琥珀。
体なら良かったのだが、顔だけは駄目だった。
以前も、顔に薄い切り傷を付けられ、激怒し。
三百もの伊賀、根来の忍び混成兵を、魔界の門から召喚した黒炎で焼き尽くしたことがあった。
しかし、それは〝闇夜流・呪符忍術〟における、〝最上級禁忍術〟であり。
琥珀の師匠からも、めったに使うなと言い付けられていたのだが……度々使う、困った娘であったのだ。
そして今回……それが命取りになろうとは――
夢にも思わなかった二人。
「何人も、いかなるものも、近づかせませんえ。禁!」
きんず
(禁ず)
ババっとすばやく、三つ印を結ぶ。
何ものも拒絶する
自身の周りに結界を張った。
〝金剛結界・
二百を数える間、人も弓や銃弾も、琥珀の結界に阻まれて届かなくなる。
尚この呪符術は凄まじく精神負担が大きく、一日一回が限度で琥珀すらも例外では無かった。
琥珀の鼻から細い一筋の血が垂れて来て、それを手の甲でグイっと拭い取る。
「月巴。しばし、時を稼いでおくれやす。魔界の門を招来しますえ!」
「あぁ~……めんどくさいけど、仕方ないかあ。ねえ、くれぐれも、呪文をしくじらないでよね?」
「わかってますえ。はよう、行きよし!」
琥珀の言葉と共に月巴は、敵兵集団の真っただ中に躍り出た。
尋常ならざる体捌きと、反射神経は通常の人間の速さを超え。
兵たちは囲み槍で刺し仕留めようとするも、常に足軽兵たちが密集する所に移動するもので、槍が使えず。
雑賀衆たちも、狙いを定められなかった。
「いきますえ! 臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」
琥珀が九字の印を結び、右手の人差し指と中指を立て後の指は握り、眼前に構えた。
われの めいに したがい
(我の 命に 従い)
まかいの もんを よびよせよ
(魔界の 門を 呼び寄せよ)
きたれ じごくの ごうかよ
(来たれ 地獄の 業火よ)
まかいもん しょうらい
(魔界門 招来)
最後の呪文を言い終え。二本の指を立てた右手を、横にピシッと切るように振る。
同時に宙に浮き出ていた呪文が、掻き消えた。
キキィンッ 先兵千数百名がいる空間が、円形状の結界に囲まれ、金属の棒同士をぶつけたような音が鳴り響く。
琥珀は眼前に構えた左手二本の指の間に挟んだ
この
目を閉じ意識を集中し、要呪符に霊力を込めていく琥珀。
霊力を込められた要呪符が、ぽわっと淡く輝き始める。
輝きが最高潮に達した時、琥珀がカッと目を開け。
術を完成させる。
「魔界の門よ、我が
ガガカンッ! 結界を囲むように無数の黒い鳥居が囲んでいく。
黒い鳥居群を見た月巴は、琥珀がいる結界へ飛び込んで来た。
それと同時に結界が数え二百を終え、解除された。
そこへ、一つの銃声が鳴り響いた。
琥珀を狙った銃弾は、ピュンッと風切り音を立て真っすぐ額目掛け来るも。
ひょいと、頭だけを右に傾げそれを
「しょうもな」と言いながら目線を前に戻す、と。
琥珀の目がいきなり点に……なった。
弾丸が通り過ぎた後いつまでたっても、黒炎を呼ばない琥珀に焦れた月巴が声を掛ける。
「ねえ、琥珀! 早く黒炎を呼びなさいよ! まじであたしら、死ぬぞ!」
「んん……ん……んく……ひぐっ……ふぇ……」
琥珀は振り向きもせずに、何故か肩を震わせていた。
「ねえ、あんたさぁ、なにやってんの?」
琥珀の前に来た月巴は、唇を噛み締め涙目で肩をプルプル震わせている琥珀に更に何かを言おうとしたら――
ある物を見て、固まってしまった。
「あっ!? いや、ちょっ、あぁぁぁぁ……えぇぇ……ないわぁ……それ……」
それは……。
呪符の半分が吹き飛んでる要呪符であった。
琥珀が躱した銃弾が運悪く、
そう……魔界門、黒炎暴走待ったなし――
〝確定である!〟
一瞬呆けてた月巴が正気に戻り、琥珀の両肩を掴んで叫んだ。
「うおおおおいいいいぃ。何とかしてよ! このままじゃ、ほんとにあたしら、黒炎に焼かれて死んじまうぞおぉー!」
「む、むりおす……予備は、持って来て……ないおすえぇー うふ うふふふ ふふふふふ」
「なに涙目で自嘲気味に笑ってるのよぉ! え? なに掴んでんの? 人の襟元をさ」
乾いた笑いを発する琥珀の両肩を掴み、言葉を言い放つ月巴。
そんな月巴を琥珀は、涙目で月巴の襟元を掴み、そのままガバッと抱きしめて胸に顏を埋める。
「なにしてんのよ? 人の胸に顏を埋めてさ。状況わかってるの? ちょ、やめ、って、こら! やめろぉおおおお! くす、くすぐったいって、ぶっ飛ばすぞ琥珀!」
流石にこの
琥珀はお構いなしに月巴の胸元で、顔をグリグリする。
「もう、最後は……あんさんの胸で、死にたいんどすえ! この、
「ねえ……なに遠回しに、小さい胸って言ってんの? 殺すよ? ぶち殺しても、いいかな?」
この状況でも言い合いを始める二人。
しかし、ぐるりと込まれた黒鳥居の真ん中にある異空間が捻じれ、暴走した黒炎が次々に吹き出してくる。
その黒炎は瞬く間に兵達を飲み込み、焼き、灰にしていく。
荒れ狂う黒炎が二人に、襲い掛かって来る。
「ああ、あぁぁ。ここで終わりなのかあ……あっけない十七年だったわぁ。ついてないわぁ、ないわぁ、これ」
「うふふふ うふふふ 大好きなあんさんの胸で、死ねるなら。うちは、うちは、はふぅううう」
月巴は諦め顔で、黒炎に覆われた空を眺める。
琥珀は一心不乱に、月巴の胸で――
顔をグリグリし続けていた。
蛇の様にうねる黒炎が、二人を包み込む。
あぢいいいいいいい くそー なんなのよぉー これはぁああああ
《確認しました。『耐熱耐性』を獲得……成功しました》
あつ うふふふふふふふふ あついおすえぇぇ あはっ あははははははははは
《確認しました。『耐熱耐性』を獲得……成功しました》
最後の断末魔が空間に響き渡り、二人は死んだ。
千数百もの兵を道連れに……。
とりあえずは、これをきっかけに撤退戦は成功し。
死を賭して、撤退戦を成功に導いた功労者の二人となるのだが。
しかし、そこは戦国乱世の世。
こんな死など、日時用茶飯事の死なのである。
二人の死も、惜しい奴を無くしたなと惜しむ声あれど――
またそれも、いずれ忘れ去られていくのである。
暴走した呪符忍術に巻き込まれての、戦死。
何か、そう……残念な、死に様であった、月巴と琥珀。
二人の魂が界渡りを始めた時、いきなり世界の言葉にノイズが走り始める。
《異常発生……ザザザッ……ザザッ……ザッー……時空……乱れ……発生中……》
琥珀が開いた魔界の門が暴走をした時に、時空の歪みが起こり。
その歪みに二人の魂は巻き込まれ。
あろうことか、リムルが転生する五千年前の世界へと、飛ばされてしまい。
そこで転生してしまう。
はてさて、この忍びの娘二人、月巴と琥珀。
いかなものに転生するのか?
ここから二人の、
始まるのであった。
第1話を読んで頂き、ありがとうございます!
では、次回〝暴風竜ヴェルドラ〟! 読んで頂ければ、幸いです。