忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件 作:にゃんころ缶
※作中使用の特殊フォントは、〝ライム酒様〟作成の特殊フォントを使用させて頂いています。
特殊フォントの反映には時間が掛かる場合がありますので、ご了承ください。
ヒナタの涼やかな詠唱の声が周囲に響き渡る。
本来は必要ないのだが、どうせ盗まれるなら完璧なものをリムルに見せたいと思ったヒナタ。
「神への祈りを捧げ給う。我は望み、聖霊の御力を欲する。我が願い、聞き届け給え。我が左手に宿れ――
ヒナタの詠唱が完了する。
発動された
ヒナタの周りを輝く光の粒子が飛び交い、凄まじいエネルギーがヒナタを包み込む。
それは、見る者を幻想的な光景に引きずり込むかのように見えた。
右手に持った
撫でられた刀身が光り輝き始め、ホワーッと輝く光が徐々に輝きを強めていく。
最強の魔法を剣に込める準備が整った。
「さあ、いくわよ。覚悟はいい?」
「おう、来い!」
ヒナタの、最後の決着を付ける合図が上がった。
「行くわ――
ヒナタが技名を叫ぶと、一気に光の粒子はヒナタを包み
大地を蹴り、一気に加速するヒナタ。
轟音が鳴り響き、蹴られた大地は爆発したかのように、土くれと粉塵を巻き上げる。
輝く粒子を纏い、人の身を超越した速度でリムルに迫るヒナタ。
「早いッ!!」
リムルの予想を超える、凄まじい速度である。
それは、あらゆる魔を討ち払う破邪の性質を持った剣。
《告。防御不能。回避不能――ッ!!》
『何だってぇ――ッ!?』
『
百万倍に引き伸ばしていた知覚速度でも、その光は普通に迫って来る。
(クソッ! この距離、このタイミング。ヒナタの狙いは俺の胴体から下か! 頭さえ残せば、俺が死なないと判断したのか)
凄まじい速度で迫るヒナタ。
(もう回避は無理だ。『多重結界』も、貫通される。全ての物質を崩壊させる霊子の光。あれは、俺の身に触れた瞬間、俺の身体を焼き尽くすだろうな。耐えろ、俺――ッ!!)
リムルが回避も防御も諦め、運を天に任した時。
《告。
『お! こんな時でも
《了》
ヒナタの速度では途中軌道修正などは出来ない。
ヒナタの剣がリムルに触れた瞬間に、ヒナタ以外の全てを喰らう作戦。
そして――
剣先が触れた瞬間、空間がぐにゃりと
チリッ ヂリリッ ジッ ザザザ ザッ
『つっ、また起きようとしてやがる』
『あ、あれに、反応してるんどす、か?』
チリリッ ジッ ザリリッ
『起きんな、寝てろ!!』
『今はアカン、寝てなはれ!!』
ねてろ
(寝てろ!)
チリッ チリッ チッ チッ ッ
ツキハとコハクに捻じ伏せられ、目覚めかけた〝番外権能〟は、その鼓動を沈めていった。
同時に、
渦巻く空間と太陽の如く眩い光を放つエネルギーが周囲を円形状に包み込んでいった。
ゴオォーッと嵐のような
………………
…………
……
ふいに、空間を鳴らす唸りが
そこには、大の字に倒れたリムルがいた。
「ふふっ、あはっ、あはははははっ!」
倒れたリムルの耳にヒナタの笑い声が聞こえて来た。
周囲の魔素が浄化されて、リムルやツキハとコハクの『万能感知』が働かなくなっていた。
リムルは、久しぶりに耳の鼓膜で聞く音に、懐かしさを覚えながらも戸惑いも与えていた。
ツキハとコハクは、先程の〝番外権能〟の事も気に駆けながら、忍びの頃に鍛えた気配察知の技で周囲の気を探っていた。
『ほんと、気まぐれ全開の権能だな、あの役立たずは……。でも――』
『この周囲一帯の魔素が浄化されてるで。『万能感知』が働きまへんな』
『だな。コハク、気配の怪しいヤツを探るよ』
『へぇ。今、素で気配察知が出来るのはうちらしか、いてへんものな』
『ねえコハク。保険掛けてる?』
『とりあえず、掛けてるえ』
ツキハとコハクは、日頃から『万能感知』を使いながらも、
(不審な匂いはないけども。今の位置は風上……。マズいな、尻尾の先がチリチリしやがるよ。来るとしたら、狙うはリムルか? どこから来る……)
敵の匂いにも敏感なツキハは、猫耳をピクピクと動かしながら鼻をスンスンと鳴らし、周囲に漂う人の気配と匂いと音を探る。
この世界の
日頃から、この自然な気配察知の感覚を鍛えていれば、不測の事態にも対応出来るのだが……。
慣れとは恐ろしいもので、意識してこの気配察知の感覚を維持していかなければ、衰えるのは
倒れたままリムルは周囲の気配を探ろうとするが、
浄化されたこの周辺にまた魔素が満ちていけば万能感知』も使えるが、それまでのタイムラグがリムルには少しもどかしかった。
(っ……。身体が動かない。怪しい気配は……『万能感知』が使えないと、わからない、か。ヒナタの技を相殺するのに、俺の
これをダメージに換算すると、実に七割以上が一気に奪われた事になっていた。
そこへツキハから『思念伝達』が入る。
『リムル、簡潔に言うよ。今、あたしとコハクで周囲の気配を探っている』
『お? そうか、お前達は忍びの技も使えるんだったな?』
『そう。体全体の感覚を使って周囲の気配を探ってるんだけど、どうにも不確かな気配があるような気がするんだよ。でも、それがどこか判明しない。だから、警戒はしておいてね』
『わかった、助かる』
用件だけ言うとツキハの『思念伝達』が終わる。
ツキハとの短い会話を終えてリムルは、ヒナタの技の事を考える。
(はぁ……。しかし、恐ろしい攻撃手段を持っていたんだなヒナタ。これ、警告なしに使われたとした、ら……)
そう考えたリムルの背筋に、冷たい汗が流れるの感覚が襲って来た。
「君、あの状況でワザと受けたね? 凄いよ」
唐突にリムルに向けてヒナタが言葉をかけて来る。
それを受けてリムルは。
(はあ? 何を言ってるんだよヒナタは。こんな危険な技をワザと受ける馬鹿が
《……》
『え、いや、まさか……ね?』
『やっちゃった、
《……》
だがしかし、
(あぁ……これ。何か隠している気配が濃厚ですわ。ツキハが受けるなと言って来た時、
リムルがそんな事を考えていると、ヒナタが言葉を続けて来た。
「この奥義に耐えられてしまった以上、私の負けね。どうせこれ以上は戦えないもの――」
そう言いつつヒナタは、力尽きたように武装を解除する。
だがそれでも、ヒナタは凛とした姿でリムルの返事を待つ。
「そうだな。俺の勝ちって事で、この戦いは――」
ヒナタとの決着はつき、聖と魔の戦いは終わった。
しかしまだ、潜む悪意は消えてはいなかったのだ。
ヒナタに勝利宣言をしようとしたリムルの視界に、ある方向に視線を固定するツキハとコハクが入った。
その瞬間――
何かが光るのを感じたリムル。
同時にヒナタも気付き、そちらに視線を向ける。
視線の先にあるものは、一振りの大剣。
《告。対象への思念干渉と、魔素の
対象とは、大剣の事である。
(何者かの干渉だという事は、俺達を狙った攻撃の一種なのか!?)
「しまった! ここまでするのか、〝七曜〟――ッ!?」
ヒナタはそう叫ぶと、動けないリムルの前に
その直後、激しい爆発音と共に閃光が走る。
そして、真っ赤な熱線がヒナタを襲う――
こうげきをかんち きどう
(攻撃を感知 起動)
リムルを守るように四枚の呪符が虚空から具現化し、リムルとヒナタを包む防御結界を形成する。
一枚は、リムルとヒナタの頭上に行き、残る三枚は二人を囲むように三点に散り、三角
ジャウッ、何かが弾けるような衝撃音が大森林に
片側の面に当たった赤い閃光は、赤い粒子の飛沫を巻き散らしながら上方へと
コハクがこっそりと一騎打ちが終わったリムルに仕掛けた〝呪符結界〟
リムルに対して攻撃が行われれば自動的に発動する、〝呪符結界〟術式であったのだ。
「コハク、か?」
リムルが安堵の声にも似た声を出した。
ヒナタもいきなり現れた呪符が結界を張ったのに驚きもしたが、リムルが無事なのを喜ぶように何か言おうとした刹那――
ある影が、ヒナタから離れた後方の木の陰から音もなく現れた。
しかも、そこは風下の位置。
そして、先程のヒナタをも凌ぐ速度で迫る。
「なっ!? 風下で匂いを隠し、更に気配を隠していたか――ッ!!」
ツキハが叫び、
日の光を浴びた白刃が――
ヒナタの背中から胸へと貫き、伸び光る。
この作品を読んで頂きありがとうございます!
次回の更新もよろしくお願いします!