忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました。十一話です







11話 人間兵器? ぶっ飛ばせばいいのニャ!

 

 

 ファルムス王国から強行部隊が出立して、三日目の夕暮れ時。

 

 

 今日の野営地を決め、下級騎士団員がテントを張る中、ショウゴ達は焚火の前で談笑をしていた。

 

「いやぁー 旅行なんて久振りなんですけどー。でもさ、ウチも選ばれるなんて、()っちゃってもいいのかな?」

「そうだね。問題ないと思うよ」

「おい、キョウヤ。何か聞いてるのか?」

「んー。君も聞いてただろう? ファルムス王国はね、あのスライムの魔物を討伐する事にしたんだよ」

「冗談だろ! たかが、最弱の魔物のスライムなんだぞ? それがこれだけの軍を動かすのかよ?」

「うーん……万単位の魔物を操るんだ。充分脅威じゃないかな」

「どうだかな。大体よ、この国の騎士って、メチャ弱いじゃねえかよ。あんまりこの世界の人間が弱っちいから、雑魚魔物にビビってるだけじゃねえかって、思うぜ」

「アハッ それはさ、ショウゴが強すぎるだけなんじゃないの? 戦いに向いたユニークスキルって、本当にデタラメだよね」

「いやいや。僕からすれば、キララの能力(スキル)の方が怖いんだけどねぇ」

「だよな。俺もお前の方が、ヤバいって思うぜ」

 

 キララのスキル。

 

 それは精神系スキルで、言葉で命令するだけで相手を言いなりに出来る能力(スキル)

 ユニークスキル『狂言師(マドワスモノ)』である。

 

 因みにショウゴの能力(スキル)は。

 

 ユニークスキル『乱暴者(アバレモノ)』。

 

 その名の通り、純粋な肉体強度と身体能力強化を大幅に上昇させる、単純明快なスキルであり。

 特技の空手を生かし、ユニークスキル『乱暴者』と合わさり脅威的な強さを発揮していた。

 

 キョウヤは。

 

 ユニークスキル『切断者(キリサクモノ)』、斬ることにのみ特化した能力(スキル)

 

 特技は剣道。

 エクストラスキル『天眼』をも持ち、自分と周囲を把握できる視野分野に特化したスキル。

 特に『思考加速』にて、三百倍もの速さで認識判断できる、恐るべき剣技の持ち主であった。

 

「ちっ……それにしても、あのクソジジイ、俺達に好き勝手に命令しやがって……まじ腹立つぜ」

「ホント、マジウザイよねえ。いつか必ず、殺してやるし」

「まあまあ、そう怒らないでさ、一応いう事聞いていれば、この世界最高の衣食住は保証してくれるんだし、ね」

 

 思い出したように不満をぶちまける二人を、キョウヤが(なだ)める。

 

 

 その光景を離れた木の枝の上から見ている忍魔猫が、二匹いた。

 

『ニャアー あの人間たち好き勝手いってるニャー』

『ほんとだね~ でも、ユニークスキル持ってるみたいだよ~』

『持ってるだけで、鍛えてないニャ! ツキハ様いわく、技量は磨いてなんぼなのよ! とおっしゃってるのニャ』

『そうだよね~ サンコちゃんはそういうところはぁ、ツキハ様似だね~』

『ニコお姉は、のんびりし過ぎなのニャ!』

『う~ん サンコちゃん。いい? のんびりはね、魔猫の特権なんだよぉ~』

『そんな特権は聞いた事ないのニャ! 物事はビシッズバッとやるのニャ。魔物を舐めてる人間は、ぶっ飛ばせばいいのニャ!』

『だめだよぉ~ サンコちゃ~ん。そんなにカリカリしちゃ~。ネズミ丸ごと、齧る~?』

『いや、カルシウムなんて眷属には必要ないのニャ! って、なんでニコお姉はそんなに、のんびり屋さんなのにニャ。頭、爆発してるのかニャ?』 

『サンコちゃ~ん、それ言うかなぁ~ ぶっ殺すよおぉ~~』

『フニャ!? あわわわわわ、ゴメンなのニャ、今のはあっちの人間が言ったのニャ』

『あらら~ そんなことぉ~ あの人間たち言ってないよねえぇ~』

 

 イチコ、キジ忍魔猫であり。問題娘、三毛忍魔猫二匹の母猫。

 イチオは黒と白のブチ模様の忍魔猫。堅実で真面目な忍魔猫なのだが、ニコとサンコは度々問題を起こす困った忍魔猫であった。

 眷属達からは、〝何をするかわからん姉妹猫〟と呼ばれていた。

 

 のんびり屋さんだが、どこか得体の知れない雰囲気を持ち、怒らせると眷属達の中で一番容赦のないニコ。

 眷属の中で一番血の気が多い、やんちゃ忍魔猫、サンコ。

 

 母猫イチコ(いわ)く、何時まで経っても子供なんだから……早く自立してほしいわと、いつも頭を抱えているのである。

 で、未だにイチコの元で活動をしているのであった。

 

 耳を伏せ前足で頭を抱えるサンコに、ニコが言い放つ。

 

『サンコちゃ~ん。ちょっとあのお兄さんと遊んでみる~?』

『ニャ? なにをするのニャ?』

『ふにゃにゃ~ ちょっと蹴られてみなさいなぁ~』

『ニャんて……? ニコお姉……アチシに死ねと、申すのかニャ?』

『眷属があんな小僧に殺されるわけないじゃない~。それとも、サンコちゃんはメチャメチャ弱いのかなぁ~?』

『ニャにおー! 眷属の中では豪傑と言われたアチシニャ! やってやるニャ! 見とけなのニャ!』

『わあぁ~ がんばってねえぇ~ お姉ちゃん応援してるからねぇ~』

 

 これである。

 ニコが焚き付け、サンコがそれに乗っかる。

 そうして度々トラブルを起こし、ツキハとコハクに説教を喰らうのである。

 

 サンコは『猫騙し』の気配を隠蔽する精度を弱め、木の根元にふわりと降りると。

 これ見よがしに、ほんの少しだけ妖気(オーラ)を発した。

 

 ラーゼンの事でイラついていたショウゴが、それに気付く。

 

 木の根元で毛づくろいをするサンコを、見つける。

 

「あぁ? 魔猫がこんな所にいるなんて、珍しいな。魔物でも底辺にいる魔物のくせに、余裕で寛いでやがるな」

 

 ザシザシと草を踏みしめながら、サンコに近づくショウゴ。

 

「やめなよぉ、ショウゴ。ウチは猫好きなんだよね」

「大丈夫さ、キララ。ちょっと遊ぶだけだぜ」

 

 サンコの前に来たショウゴは、スッと右足を軽く後ろに引き、サンコ目掛けて前蹴りを放つ。

 

 フワリ。

 

 その前蹴りを勢いに逆らわず、ショウゴの右足の爪先に両後ろ足を当てながら、ふわりと宙に飛んだ。

 

「なっ!? 生意気な魔猫だな。この!」

 

 宙に飛んだサンコに今度は、左回し蹴りを見舞う、が。

 

 またも、宙でくるりと身を(ひるがえ)し、タシッと地面に降り立つサンコ。

 

「チッ! いいぜ、少し本気で遊んでやるぜ!」

 

 ニャアァ~ ニャオー(なら、早く本気出すニャ。アクビがでるニャよ)

 

 蹴りの応酬。

 ショウゴは地面にいるサンコを、サッカーボールを蹴る様に狙うが。

 サンコはヒュンと横に避け、そのままジャンプする。

 

 ジャンプした所にショウゴの左回し蹴りが襲う。

 

 それもまた、くるりと身を翻し躱すと――

 そこに右ストレートが飛んで来る。

 

 タタッ 右拳を紙一重で躱し、そのままショウゴの右肩を踏み台にトンッと右真横に飛んだ。

 

『サンコちゃ~ん。いつまで遊んでるのかな~ 早く蹴られなさいな~ お姉ちゃん、待ちくたびれるかもよ~?』

『ニャ! わ、わかったニャ! ま、まつのニャ!』

 

 

「なに!? 俺を踏み台にしゃがった! おら! 逃げんな、おらー!」ショウゴの声がどんどん大きくなり、サンコがまた宙に飛んだ時、左回し蹴りを放った。

 サンコはそれを先程と同じように身をくるりと回転させ躱した、が。

 

 ミギャッ!

 

 間髪入れずに放たれた、右後ろ回し蹴りがサンコを襲う。

 もろに喰らったサンコは物凄い憩いで吹き飛んでいき、林の奥の木に激突し、身体が弾け飛んだ。

 弾け飛んだ肉片が木に張り付き、ばちゃばちゃと血が地面に振り注いだ。

 

「あーあ。殺してしまったし」

「いいんだよ。弱い魔物が粋がるから、こうなるんだよ」

 

 ショウゴはやっと攻撃が当たったとぶつぶつ言いながら背を向け、キョウヤ達の所に戻った。

 

 弾け飛んだ肉片や、血溜まりが、シューッと微かな音を立て、魔素に返って行く。

 

 その様に、ショウゴ達は気付きもしなかった。

 

 ニコがいる木の枝に、何食わぬ顔でサンコが戻って来た。

 

『そこそこにいい蹴りだったニャ。あの魔国の魔物達よりは、ちょっと劣るかもニャ』

『あらあら、おかえりなさい~ サンコちゃ~ん。そうね~ 魔国の魔物の方が、強いわよねぇ~』

 

 弾け飛んだサンコが何故何事も無く、ニコの所へ戻ってきたかと言うと。

 忍魔術を使ったからである。

 

 〝忍魔術・幻遁 変わり身の術 空蝉〟を使ったのだ。

 蹴りが当たる刹那、自分の身代わりを魔素で作り、同時に自分は空間迷彩で周囲の風景に溶け込んだのである。

 

 その身代わり体は、本体とほぼ変わりなく。

 見抜くのは、相当の能力(スキル)を持つ者でなくては不可能なのだ

 

 眷属達のランクは――

 BからA級に匹敵し、一桁番号のイチコ達はA級相当の実力を持つと言われた、恐るべき〝忍魔猫〟であったが……真の実力は未だ不明である。

 

『おい、そこの二匹。なに遊んでんの?』

『『フギャ!』』

『つつつつ、つ、ツキハ様。遊んではないニャよ?』

『えーとーねー サンコちゃんが~ ちょっと、ちょっかいをですねぇ――』

『ちょっと待つニャ! アチシを売るんじゃないニャ! ニコお姉もしっかり共犯猫ニャよ!』

『あら~ サンコちゃ~ん。そんなこというと~ おし――』

『お前らなぁ。しっかり見てたんだぞ。お仕置きが必要かな? 二人とも』

『それは勘弁ニャー! ごめなさいニャーー』

『ひぃー ごめんなさいーー ちゃんと見張りするんでぇ、お許しを~』

『まったくあんたらは! はぁ~ で、本隊の数はどうなんよ?』

『えーとニャ。王立騎士団、五千ニャ。でニャ、ファルムス魔法士連団、千ニャ。あとは――』

『ファルムス貴族連合騎士団、五千で~。ファルムス傭兵遊撃団、六千のぉ。計一万七千にぃ。王国滞在のぉ。神殿騎士団(テンプルナイツ)、三千入れて~ 二万の軍勢ですのよ~』

『二万かぁ。全戦力投入とは、マジもんで魔国を制圧する気だねぇ』

『因みにエドマリス王もレイヒムも、その軍勢にいるニャ』

『あら、国王自ら出陣とは、強欲も極まれりどすなぁ』

『『フギャ! コハク様』』

『ええか、引き続き監視を続けるんやで。お遊びは、もう――あかんえ!』

『はいニャ!』

『了解なの~!』

 

 ちょっとの遊びをツキハに見られ、焦りまくりの二匹は、問われた現状を報告中にコハクまで『思念伝達』に割り込んできて、木の枝の上で尻尾の毛をボワリと逆立てていた。

 

 お遊び厳禁を言い渡され、ニコとサンコは強行部隊の監視を続けていく。

 

 

 魔国の宿屋にて。

 

 三階部屋のベッドの上で座り、話している二人。

 

「困ったもんだわ、あの子たちは」

「仕方ないおすえ。誰かさんに似て、すぐやんちゃしますさかい」

「え? あたし?」

「せやで」

「……コハクにも似た眷属いるじゃない」

「一桁番号の眷属は、あんさんやないどすか。なに、()うてますのん」

「三桁番号に、いるよね? 変な眷属。あんたが名付けした魔猫」

「変じゃないどす。ちょっと変わっとるだけどすえ」

「いや、それが、変て言うんだよ!」

「だまりや! しばきますえ?」

「やってみなよ。逆にしばきたおしてやるわよ!」

 

 他愛の無い話しで、言い合いをしていると。

 

『ツキハ様、コハク様。強行部隊の荷の中に、ニャんか――魔法装置みたいなものが、四つあるニャ。それを神殿騎士団の別動隊が来て、一つづつ持っていったニャよ?』

『サンコ。その別動隊の人数は、何人おすか?』

『えーとニャ……あニャ!? 一人一人がB級のランクニャ! 人数は四百はいるかもニャ』

『そいつらは~ 対魔物戦闘に特化した騎士ですのよ~。なんか四方向に分かれるって言ってたですの~』

『そうか……サンコ、あんたは引き続き、強行部隊の監視。ニコ、あんたはその別動隊の一つを尾行しな。それ、おそらく魔国に結界か何かを張るつもりかもな?。どんな結界かわかったら、直ぐ報告。絶対に(つつ)くなよ? いいなニコ。サンコ、召喚者のガキどもから目を離すなよ』

『は~い。了解ですの~』

『了解ニャ!』

 

 『思念伝達』を切って、ツキハはコハクに問う。

 

「ねえ、コハク。あの魔法装置。レイヒムが研究していた物じゃないかな?」

「せやな。多分間違いおへん。レイヒムの秘術や」

「どうする?」

「どうもこうも、あらへん。うちらは、この国の敵や。傍観するしかないで?」

「だねぇ。やむなしだね」

 

 ツキハはコハクはこのまま魔国に留まるか、一度離れるかを話している所へ。

 

『おい聞こえるか? ツキハ、コハク。どっちでもいい、聞こえるか!?』

 

 いきなりカリオンからの魔法通信が入る。しかもそれは秘匿通信であった。

 ツキハとコハクが右手人差し指に嵌めている、指輪。

 

 〝魔法の指輪(デモンズリング)

 

 これは本来魔王としての証として、与えられるものであり。

 本人を証明するものでありながら、『超時空通信』が出来る優れものである。

 個人間の秘匿会話や、集団会話機能なども出来る便利なものだった。

 

 なぜ、魔王ではないツキハとコハクが持ってるかと言うと。

 ギィの呼び出しには、必ず応じる事と言われていたが。

 

 これが中々捕まらない。

 

 そう、ツキハとコハクに連絡を付けるのがとても困難だったのだ。

 捜そうにも、神出鬼没、今いたかと思えば、もういない。

 最初はレインとミザリーが二人に呼び出しを、伝えていたのだが。

 段々と行方が掴めなくなり、潜伏先を見つけるのが凄まじい労力を要する物だから。

 業を煮やしたギィが、他の魔王と話し合い、特別に与えたものなのだ。

 

 その指輪にカリオンの声が響く。

 

『急で悪いが、二人ともいるか?』

『なに? どうしたの? カリオン』

『お! ツキハか。あのな、今ミリムが宣戦布告に来てな、七日後にまた来ると言いやがったんだ!』

『はあーーーー!?……』

『また、えらい難儀なことやなぁ』

『おう、コハクか。ちょっと依頼いいか?』

『すんまへん。今、依頼中なんや』

『マジかぁー。そうか、なら仕方ねえな。なあ、ミリムの奴本気と思うか?』

『うん、そう言ったなら来るよ。ミリムは』

『どすなぁー ご愁傷様おすな。カリオン』

『そうか、お前らは、ミリムが本気で来ると思うんだな……わかった。すまなかったな、依頼中に』

『まあ、最初から全力全開で、いった方がいいと思うよ』

『ほな、きばりなはれカリオン。ミリムが、黒い鎧を着たら気を付けるんどすえ』

『ああ、わかった。じゃあな、邪魔したな』

 

 そこで通信会話は切れ、ツキハとコハクはやれやれと言った顔で呟く。

 

 なにしてんだか、ミリムの奴 まーた何か企んでるんかな

 

 ミリムが獣王国に戦争仕掛けるなんて、相変わらず無茶やりますなぁ

 

 あれが、〝絶対的な力〟なのね くくくく

 しょうもな こりゃ火傷じゃすまんおすなぁ ふふふ

 

 

 




 十一話を読んで頂き、ありがとうございます!

 次回の更新もよろしくお願いします!





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